2012年3月28日水曜日

乳腺術後症例検討会 17 ”奇妙なOccult cancer”

今日、第55回の乳腺術後症例検討会がありました。

今回も4症例でしたが、2例は嚢胞内がん(1例は微小浸潤あり)、1例は超音波検査で発見された非浸潤がん、そしてもう1例が腋窩腫瘤で発見された乳がん(広い意味ではOccult cancerとも言える症例)でした。

このOccult cancer症例は、同時に行なったマンモグラフィは異常なし(比較読影でわずかな濃度上昇あり)、乳腺超音波検査異常なしで診察室に入ってこられた方でした。触診で腋窩に4cm大のしこりを触れたため、再度超音波検査を行ないましたがはっきりした腫瘤を認めませんでした。MRでは外上領域の脂肪内に小さな染まりを認めたため(従って厳密に言うとOccult cancerではありません)、合計4回にわたって超音波検査を行ないましたが結局原発巣は指摘できませんでした。今まではMRで明らかに染まった症例の原発巣は少なくとも再検査の超音波検査で指摘できたのですが、今回ばかりはどうしてもわかりませんでした。

最終的に患者さんの同意を得て胸筋温存乳房切除術を行ないましたが、病理結果もかなり変わっていました。原発巣はMRの指摘通りの部位に認められ、硬がんと浸潤性微小乳頭がんが主成分でごく一部に粘液がんの成分を混じる複雑な形態をとっており、腋窩リンパ節転移巣は、ほとんどが粘液がんの形態をとっていたのです。

通常、Occult cancer様の形態をとる場合、原発巣より転移巣が大きいわけですから、理論的には転移巣の細胞は悪性度が高いことが推測されます。しかし今回のケースでは一般的におとなしいはずの粘液がんの成分の転移リンパ節が大きく腫大しており、原発巣の悪性度が高いはずの浸潤性微小乳頭がんの成分は転移巣には認められませんでした(リンパ節転移巣が浸潤性微小乳頭がんの細胞が主成分なら理解できるのですが…)。悪性度の高い浸潤性微小乳頭がんが原発巣でなぜ大きくならなかったのか、おとなしいはずの粘液がんがどうして転移リンパ節であんなに大きくなったのか、非常に興味深い症例でした。


最近、札幌では暖かくなったと思ったら雪が降って冷え込んだり、おかしな天気が続いています。そのせいかまた風邪を引いてしまいました。天候不順は全国的なようです。皆さんも体調管理には気をつけましょう!

2012年3月25日日曜日

ハラヴェンの研究会

昨日市内のホテルでエーザイ主催のハラヴェンの研究会が行なわれたので参加してきました。

市内の2施設からの使用経験の報告とハラヴェンの使用方法(どのタイミングで使うか、サブタイプ別で使い分けをするか、用量の設定をどうするかなど)や副作用対策についての活発な討論が行なわれました。G先生が参加できなかったので私も何度か発言してきました。

当院においては今までハラヴェンを使用した患者さんの中で、著効したと言えるのはER陽性で長い治療歴のある肝転移症例の1例のみです。今回の2施設からの報告でも肺やリンパ節再発にも一定は効きますが、著効例には肝転移が多いようでした。サブタイプ別では特に大きな傾向はないようです。フロアからはHER2陽性乳がんの再発にハラヴェンとハーセプチンとの併用を行なっているとの発言がありましたが、現在臨床試験中で安全性と有効性は確立していないため、当面は慎重に行なった方が良いようです。

副作用に関しては、やはり骨髄抑制、特に好中球減少に注意が必要との意見で一致しました。放射線治療歴がある患者さんについては骨髄抑制からの回復が悪い傾向を示すという報告もあり、大変参考になりました。投与量の維持と投与スケジュールを守るためにG-CSF(白血球を増加させる薬剤)を予防的に併用すべきかどうかについて意見を求められましたが、私は再発治療であることを考えると、予防的なG-CSF投与は行なわず、投与基準に従って休薬や減量を行なうべきではないかと思うと答えました。

標準的な投与方法は、2週連続投与、1週休薬ですが、好中球減少によって投与のスキップが生じると、結果的に隔週になってしまうことがあります。しかし減量しないで隔週で投与する場合と、減量して2週投与1週休薬にする場合とでは効果はあまり変わらないかもしれないということです。今後の臨床試験の結果を待ちたいと思います。

予定時間を20分ほどオーバーしてしまったのは私が質問や意見を述べすぎたからかもしれません(汗)
非常に期待していた抗がん剤ですが、残念ながらまだ著効例はわずかです。なんとか他の施設の経験を自分なりに解釈して、どのような患者さんにどのタイミングでどのような投与方法で治療すればもっとも期待できる結果が得られるのかをこのような研究会を通して勉強していきたいと思っています。

2012年3月23日金曜日

N先生の壮行会と新年度の乳腺センター

昨日、私が勤めている病院の外科医8人と研修医1人によるN先生の出向研修壮行会が行われました。

N先生は月曜日で病棟勤務を終え、現在引っ越し準備中です。出向研修が決まった頃は不安でいっぱいの様子でしたが、実際にG病院を見学してからは気持ちも落ち着いて、意欲満々の状態で出発することができそうです。私やG先生がいた頃から10年以上たちますので、今のG病院はあの頃とはまったく変わってきています。新しい知識と技術を学び、国内トップクラスの先生方と交流を深めることによって得るものはとても大きいと思います。1年後に新しい風を新病院に吹かせてくれることを期待しています。

さて一方残される私とG先生ですが、この1年間をどうやって乗り越えるか頭を悩ませています。幸い、呼吸器外科のH先生がN先生不在の間の乳腺外科病棟業務を手伝ってくれることになりましたので、少しはG先生の負担を軽減できそうです。しかし、G先生は今でも重い病態の患者さんを多く抱えていますので、私もなんとか少しでもサポートできればと考えています。

そして新病院では乳腺センターが消化器センターと同じフロアになる(もともとは長年連れ添った呼吸器センターと一緒の予定でした)ことが先日の会議で決定されました。できれば避けたかった病棟編成の変更ですが、呼吸器センターと乳腺センターの患者増によるベッド確保困難な状況を乗り越えることはできませんでした。このような結果になったことに対して言いたいことはたくさんあるのですが、そろそろ気持ちを切り替えて新しい病棟編成でさらなる乳腺センターの発展を目指したいと思っています。

新年度の課題はたくさんありますが、まずは消化器センターの看護師に対する乳腺診療の教育から始めることになりそうです。学習会の資料作りをG先生と分担してシリーズでやっていきたいと考えています。それから新病院ではがんサロンもできることですし、今まで以上に患者会とのつながりを強めていかなければなりません。患者会による乳がん検診の啓発活動やがんサロンでの患者さん同士のアドバイスや交流など、アイデアを集めたいと思っています。患者会の幹事さんたちと私たち病院職員の面談を定期的に行なって、より良い新病院作りを目指していきたいと考えています。

2012年3月19日月曜日

いつの間にかあと2ヶ月…

昨年末に乳癌学会の演題申し込みをしてから、あれこれ忙しくてすっかり忘れていました。演題採用の通知が先日届いた時もあまり気にしていませんでしたが、今日面談した製薬会社の方に言われて、もう2ヶ月先に迫っていることに気づきました(汗)

今回の学会は熊本で行なわれます。九州は今まで何度も訪れていますが、熊本は初めてです(九州で訪れたことがあるのは、福岡、大分、宮崎、長崎、鹿児島ですのであとは佐賀県のみです!)。城好きの私としては熊本城は是非とも観光してみたいと思っています。昨年の乳癌学会では初めて病棟看護師も参加しました。今回は残念ながら演題発表まではできませんでしたが、見るだけでも是非参加して欲しいと思っています。

4月には製薬会社の講演を頼まれていて、そちらも宙ぶらりんの状態です。早く何とかしなければなりません…。再来週は京都に出張ですし、もたもたしているとあっという間に6月になってしまいます。そろそろ準備に取りかからなければなりません。ちなみに今回のテーマは検診発見乳癌の悪性度に関する内容です(この内容すら忘れていました…最近忘れっぽいです…)。

N先生は今日で一応病棟業務は終了です。明日からは東京での研修の準備に入ります。1年の研修で大きく成長して戻ってきてくれることを期待しています。それまでG先生となんとか現状維持で頑張っていきたいと思っています。

2012年3月17日土曜日

2日連続の乳がん検診と病棟当番

今週末は、G先生がマンモグラフィ講習会の講師、N先生はマンモグラフィ読影医の更新講習会で不在です。昨日まで私はそのことに気づいていませんでした(N先生の件はなんとなく耳にしていたのですが…)。

この土日は関連病院の乳がん検診が予定されていました。私は関連病院の乳がん検診の担当をしているので連日朝からその病院に行かなければなりません。一方の本院の方も術後患者さんや再発治療患者さんたちの回診をしなければなりません。つまりG先生、N先生がいなければ両方の病院の仕事を一人でしなければならないのです。

とりあえず朝早くに本院に行って回診を済ませてから関連病院に移動して検診をすれば大丈夫ですので、7:30過ぎに本院に着くように家を出ました。ところが病院に着くとN先生は一足早くに回診に来ていたらしく、昨日の手術患者さんの退院の手配も済ませてありました(今日は来なくても大丈夫だと言っておいたのですが…)。そしてG先生の患者さん(外来では私が担当していました)が昨夜状態が悪くなっていたのですが、その患者さんの対応もしておいてくれていました。

私自身も回診をしてからナースステーションに戻ってみるとなんとG先生の姿が…。彼は昨夜深夜までその患者さんの対応をしていて、今朝も早くから講習会に行かなければならないはずなのにその前に患者さんの様子を見に来てくれたようです。

回診が終わってから関連病院に行くと、マンモグラフィのダブルチェックが山積みになっていました(昨日も結構読影したのですが、最近とても多いのです)。これらを読影しながら乳がん検診を済ませて、昼ころにまた本院に戻って患者さんの様子を見てから帰宅しました。明日も同じパターンの勤務になりそうです。


G先生、N先生の2人は本当に一生懸命に仕事をしてくれています(私が頼りないからなのかもしれませんが…笑)。4月からN先生が研修に出てしまうとG先生の負担が増えてしまうので今からちょっと心配です。どうにか対応策を考えなければなりません。

札幌は住むには良いところです。私たちと一緒に働いてくれる乳腺外科医の方はいらっしゃいませんか?

2012年3月16日金曜日

「もしも、がんが再発したら」


先日私たちの病院に、「もしも、がんが再発したら」という本の見本が送付されてきました(写真)。

編著:独立行政法人 国立がん研究センターがん対策情報センター
出版社:英治出版
価格:788円

ちなみに国立がん研究センターがん対策情報センターのがん情報サービスのHP<ganjoho.jp>(http://ganjoho.jp/public/qa_links/hikkei/saihatsu.html)にアクセスするとPDF版の同じ内容を見ることができます。

さっそくざっと読んでみました。再発・転移の定義、治療(薬物、放射線、手術、緩和治療の内容と、それぞれの選び方)、痛みや心の不調と対処(リラクゼーションやアロマテラピーなど)、臨床試験について、補完代替療法について、相談支援センターについて、再発経験者のお話などとてもわかりやすく解説しています。

もし再発を宣告されて、頭の中が真っ白になってしまったときには、この本は少し心を落ち着かせてくれるのではないかと思います。

2012年3月12日月曜日

抗癌剤の副作用19 認知障害(ケモブレイン)

あまり聞き慣れない言葉ですが、化学療法を行なったあとで起きる認知障害(慢性的な記憶力および注意力の障害)を”ケモブレイン(chemo brain)”と言います。全脳照射後の晩期後遺症としての認知障害については有名ですが、化学療法後の認知障害についてはあまり日常診療で意識させられることはありません。ケモブレインには、脳の代謝および血流の変化が関わっていると言われています(「Breast Cancer Research and Treatment」オンライン版2006年10月5日号)。他にも今までもさまざまな基礎および臨床の研究、報告がされてきました。特に乳がん患者さんに多いと言われているそうで、化学療法を受けた乳がん患者さんの25~80%が後に記憶障害を訴えているという報告もあります。

今回、オランダ癌研究所/Antoni van Leeuwenhoek病院(アムステルダム)のSanne Schagen氏が発表した、乳がん化学療法後のケモブレインの長期観察結果の内容は以下の通りです。

対象:1976~1995年(平均21年前)に化学療法(CMF療法=シクロホスファミド+メソトレキセート+5-FU)を受けた乳がん患者196人(50~80歳)
方法:記憶力、処理速度およびその他の思考(認知)能力を調査
結果:単語を思い出す能力、情報処理速度、思考と手の運動の協調(板に釘を打つなど)のスコアが、化学療法を受けていない女性に比べて低かった(およそ6歳の加齢による精神機能低下に相当)。

今回の研究は、あくまでもCMF療法を受けた患者さんのもので、現在行なわれている標準的な化学療法が同じ結果をもたらすわけではありません。またこの後ろ向き研究1つが導き出した結果が真実とも断定できません。さらに言うとこの化学療法を受けたことによる恩恵で平均21年以上生きることができた患者さんがこの196人の中にいることも事実ですので一概にこの副作用があるために化学療法が悪いとも言えません。ここはきちんと理解しておく必要があります。過剰に副作用を恐れたり抗がん剤を悪者扱いするのではなく、このような晩期障害が起こりうる可能性を医師側も患者さん側も認識し、そのリスクをできるだけ軽減する努力を行なっていくことがもっとも大切なのではないかと私は考えます。

2012年3月11日日曜日

乳がん診療とアロマテラピー1


先日アロマテラピーについて書きましたが、今日ようやく精油を買ってきました。

行ってきたのは、アリオ札幌の「生活の木」という店です。いかにも「アロマ」という雰囲気で来客は女性のみ…。中年男が品物を見たり、匂いを嗅ぐのはとても違和感がありましたが、仕事と割り切り恥ずかしさを我慢していろいろ見てきました。

今回買いに行った理由はもちろん化学療法を始めとした日常診療に生かすためではありますが、実はもう一つ理由があります。

私には重度の障害を持った息子がいます。いま養護学校の高等部にいますが、東京で暮らしていた2才の時に原因不明の脳症に罹ってしまい、重い後遺症を残してしまったのです。記憶はすべて失い、意思疎通もまったくできなくなってしまいました。そして日常生活で最も神経を使うのは、一日何度も繰り返し起きるてんかん発作です。今までさまざまな薬剤を試してきましたがなかなか十分な効果が得られませんでした。夜間にも発作が起きるため、睡眠が十分に取れないこともあります。

今回アロマを知ってからいろいろ勉強してみると、てんかんを悪化させるアロマ(ローズマリーやペパーミントなど)とてんかんに有効な可能性のあるアロマ(ネロリ、ユーカリ、フランキンセンスなど)があることを知りました。そんな息子の状態に効果があるかどうか試してみたいということもあって、緊張緩和と睡眠に効果のあるラベンダー、オレンジ・スイートとてんかんに効果があると言われているフランキンセンス、そして10分間で自動的に止まる電池式のディフューザーを買ってきました(写真)。

ラベンダーは鎮静・緊張緩和効果がありますので、化学療法室や乳腺外来で検査結果などのご説明をする時にでも使ってみようかと思っています。明日ディフューザーも一緒に持っていくつもりです。アロマが本当に医学的な効果があるのかどうかはわかりません。でも患者さんがアロマで心地よくなってくれるのであればそれでいいのではないかと思っています。ただ、香りには好き嫌いがありますのであまり強すぎたり癖のあるようなものは避けるつもりです。その点ラベンダーは禁忌も少ない(マイルドな血圧降下作用があるため低血圧の人には禁忌と書いてあるものもあります)ですし、比較的多くの人が嫌いではないと思いますので手始めには良いのではないかと考えています。

さて効果は…?

<ラベンダー>
学名:Lavandula angustifolium
特徴:もっともポピュラーで多目的に使用できる精油。直接肌につけても害のない数少ない精油の一つ。
主な効能:不安な気持ち、憂鬱な気分、ストレスや神経の緊張、不眠症 、敏感肌や乾燥肌などの皮膚のトラブル、筋肉痛、けいれん、腰痛、 消化不良、吐き気、上気道炎、月経困難症、月経前緊張症、花粉症、二日酔い、時差ぼけなど。
乳腺診療への応用:細胞診や病理結果などの不安・緊張を伴う検査結果の説明時、術前日の就寝時、化学療法施行時、定期検査の結果を聞く時など。

*ここに挙げた効能は、いわゆる医薬品としての効能ではなく、エビデンスのあるものではありませんのでご了承下さい。

2012年3月7日水曜日

特殊型(b5) 扁平上皮がん

上皮細胞(消化管や肺、乳腺など)が悪性化したものを”癌(がん)”、非上皮細胞(脂肪や筋肉、神経、血液など)が悪性化したものを”肉腫”と呼びます。がんはさらにいくつかの種類に分類されますが、その代表が腺がんと扁平上皮がんです。腺がんは胃粘膜や大腸粘膜、乳腺などの腺細胞ががん化したもので、扁平上皮がんは食道や皮膚などの扁平上皮ががん化したものです。

通常、乳がんのほとんどは乳管上皮細胞ががん化した腺がんです。ただ、ごく稀に扁平上皮がんが発生することがあり、乳癌取扱い規約では特殊型の一つとして分類されています。その頻度は0.1%と稀で、私自身、研修先のG病院で1例、今の病院で1例経験しただけです。

乳がんの扁平上皮がんのほとんどは、真の扁平上皮がん(扁平上皮ががん化したもの)ではなく、腺がんが扁平上皮化生という変化を起こしたものだと考えられています。特徴をいくつか挙げてみます。

①急速に増大する(発見時4cm以上のことが多い)
②超音波検査で壊死による嚢胞を伴う(50%以上)、比較的境界が明瞭な腫瘍のことが多く、境界部の高エコーは伴わないことが多い
③ホルモンレセプターとHER2は陰性のことが多く、EGFRは陽性のことが多い(85.7% 下記文献より)
④リンパ節転移率は高い(52% 下記文献より)
⑤局所・遠隔再発しやすく、遠隔再発は骨、肺が多い
⑥通常の化学療法には抵抗性を示すため、奏効率は約15%と低い(プラチナ製剤を用いたレジメンは有効だったという報告あり)
⑤予後は通常型に比べると不良

2005年のJ Clin Oncol にM.D. Anderson Cancer Centerから報告された論文に詳細な内容が書いてありますので興味のある方はご参照下さい(http://jco.ascopubs.org/content/23/31/7827.full.pdf+html)。

2012年3月3日土曜日

乳がん患者さんのためのアロマテラピー


今までも乳がん関連のイベントなどでアロマテラピーについて触れる機会がありました。ここでも何度か取り上げた「With you HOKKAIDO」でも以前、アロマテラピストの方をお招きして講演をしていただきましたし、昨年、院内で行なった乳がん啓蒙イベントの中でもアロマのご紹介をしていただきました。

ただ、実際の診療にアロマを取り入れるチャンスはなかなかなく、その経験を生かすことはできませんでした。先日は香水に関することを中心に香りについて書いてみましたが、そこに書き込んで下さった方のコメント内容を読ませていただいて、乳がん患者さんの中にはけっこうアロマに興味をもっていらっしゃる方が多いのではないかという印象を持ちました。そこでさっそくご紹介していただいたアロマの本をAmazonで購入してみました。


タイトル:「乳がんの人の心と体に〜素敵にアロマテラピー」(写真)
著者:千葉治子、飯田智子
監修:三上杏平、橋本由佳、霞富士雄、唐澤久美子
協力:Ruban Rose
出版社:保健同人社
価格:1600円(+消費税)


著者のお二人はともに乳がん患者さんで、アロマテラピーインストラクターの資格を有していらっしゃいます。飯田さんは看護師さんでもあります。乳がんの基礎知識から、乳がん診療の各状況に応じたアロマの選択の仕方や効果と注意点などについてとてもわかりやすく、かつ詳細に記述されています。写真もふんだんに使用されており、視覚的にも読みやすい構成になっています。乳がんの基礎知識については恩師の霞先生が監修をされており、なんとなくうれしくなりました(笑)

乳がん自体に対する直接的な効果を期待することはできませんが(抗腫瘍効果のあるアロマも紹介されていますがもちろんエビデンスはありません)、各状況において生じる不安感や不眠、イライラ、悲しみなどの精神面への効果、そして治療によって生じる副作用に対しては補助的な効果を期待できるのではないかと思っています。

アロマテラピーを行なうことは、病院においてはまったく経営的効果はないのかもしれません。しかし患者さんが少しでも安楽に治療を受けられるようになるのでしたらアロマを勉強する意義はあると思います。看護師さんたちの中で一緒にアロマを勉強してくれる人が出てきてくれるとうれしいのですが…。

2012年3月1日木曜日

パソコンメールが…

業務連絡です。

一昨日から私のパソコン(Mac)のメールが受信できなくなっています(送信はできます)。あれこれトライしてみましたが原因は今のところ不明です…。受信状況の診断をしても問題ないのですが…。

ということで、このブログを見ている方のなかで私のパソコンにメールを送った方は連絡が取れなくなっていますので直接病院まで電話でご連絡願います。