2009年6月4日木曜日

ASCO2009レポート2 ホルモン剤と認知機能

ホルモン療法(タモキシフェン)によって認知機能が影響を受けるという報告があります。
今回、BIG1-98試験におけるタモキシフェン投与群とレトロゾール(商品名フェマーラ)投与群の認知機能の比較解析結果が報告されました。 今回の解析は、5年間の治療後の認知機能の程度を、精神運動機能の速度や視覚的注意、作業記憶(ワーキングメモリ)、言語性記憶や学習の能力のスコア化で解析したものです。
 結果は、治療開始前の認知機能が測定されていないという解析上の欠点はあるものの、術後治療としてレトロゾールを投与した乳癌患者は、タモキシフェン治療を受けた患者に比べて、認知機能が維持されていた、ということでした。
私には、タモキシフェン投与後の患者さんが明らかに認知力が低下したという経験はありませんが、タモキシフェン投与中の患者さんがうつ傾向になることがあるのと関係があるのかもしれません。
最近は閉経後の患者さんには最初からAI剤(レトロゾールなど)を処方しています。高齢者の場合、骨粗鬆症が問題になりますが、ビスフォスフォネート製剤を併用することで一定予防できます。認知機能の低下があるのであれば、高齢者であってもタモキシフェンよりAI剤のほうが良いのかもしれませんね。

8 件のコメント:

  1. 始めまして、こんにちわ。
    タモキシフェンを4年以上続けました乳がん患者です。

    物忘れや集中力・決断力の低下などがありました。
    他の患者さんでも同じ事を仰る方は少なくありません。
    よほど酷くならない限り、これらは外から(家族や主治医も含めて)は、わかりにくいと感じます。

    にもかかわらず、こういう事を研究されるKarin E. Ribi氏達にとても感謝しています。

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  2. 副作用についての説明は意外と漠然としていたり あまり詳しく知らない医師がいると聞きます
    体調の異常を訴えても「人それぞれだからね」と言われて、改善方法も考えようとしてくれなかったと怒っている人もいます
    「気のせいでしょ」と言われた人もいます

    前向きに研究、情報収集をしてくれる先生に感謝です。

    いつもありがとうございます。

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  3. ふじくろさんへ
    はじめまして。
    そうですね。症状が強くない限り、あまり気にしない方もいらっしゃるでしょうし、薬のせいだと思わなければ(年齢のせいかな?とか)外来で私に相談することもないですよね。
    これからは少し気を配って診ていこうと思います。

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  4. ちっこさんへ
    乳癌の患者さんは、ちょうど更年期の年代の方が多いので、症状が薬の副作用なのか、更年期の影響なのか、判断が難しいことがあります。うつ状態もそうです。症状が強い場合は薬の変更や中止も患者さんと相談しながら検討しています。ただ、閉経前の患者さんに使える内服のホルモン剤はタモキシフェンしかありませんので、なんとか我慢できる範囲であれば継続しましょうとお話ししています。それでも中止せざるを得なかった患者さんは、少数ですがいます。
    話を聞いてくれない、主治医は私をわかってくれない、というのが、症状を悪化させるひとつの要因にもなりますから、できるだけ患者さんの訴えに耳を傾けるようにしたいと思っています。

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  5. 先日hidechin先生にご相談させて頂いたことを思いだしまして、今回の内容は特にとても興味深く拝見しました。

    こういった臨床試験の結果のデータが出るたびに、薬の有効性なりがしっかり数字で表されるから、患者さんも治療を選ぶのに非常にわかりやすいですよね。
    これも参加されていた患者さんのおかげだと思います。
    これから治療をされる患者さんの方達に、主治医も根拠あるエビデンスとして、ひとつの今後の治療の指針も示すことができますものね。

    今回はタモキシフェンの影響が報告されたようですが、現在もいろんな薬の組み合わせの臨床試験が期待をこめられて試されてますよね。

    その試験の結果をもとに、閉経前の患者さんに、タモキシフェン以外にも効くような有効な薬が確認され、治療の選択肢が広まるような結果が出ることをとても期待します。

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  6. kimity0115さんへ
    おっしゃるとおりだと思います。
    閉経前の患者さんに対するホルモン治療の選択肢が少ないのが今の問題点です。
    LH-RH agonist(ゾラデックス、リュープリン)とアロマターゼ阻害剤の併用の有用性が、現在行なわれている臨床試験で証明されれば、今後の治療に大きな変革をもたらすことになると思います。報告が待ち遠しいです。

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  7. こんにちは
    閉経前の患者に使える内服のホルモン剤はタモキシフェンしか無いと言う事ですが
    私は45才から50才までゾラデックスの注射での治療をしていました。
    30代で子宮を全摘しているので「閉経」が分かりませんが、年齢的に閉経前なはずです(卵巣は残っています)
    内服での治療で無いからゾラデックスでも良かったと言う事なのでしょうか?
    閉経前でゾラデックス→リュープリンでの治療をしている人もいます
    お互いに5年以上再発しないで来れましたが、治療が正しかったのか?偶然なのか?ふと疑問を感じました。
    無知な患者の疑問です すみません

    5年経過した事と50才になった事で今年からアロマシンの服用に変わりました
    これで良かったのでしょうか?

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  8. ちっこさんへ
    閉経前のホルモン療法は、ゾラデックスやリュープリンなどのLH-RH agonist(注射)と内服のタモキシフェンがあります。
    通常は、タモキシフェンの内服のみか、LH-RH agonist+タモキシフェンの治療を行なうことが多いです。LH-RH agonist単独でももちろん再発予防効果はあります(そもそも最初のホルモン療法は卵巣摘除ですから)。ただ、実際はタモキシフェンの副作用が問題にならない限り、タモキシフェンの内服は行なうことが多いです。ちっこさんの主治医の先生がなぜタモキシフェンを投与しなかったかはわかりません…。LH-RH agonist単独が効果がないというわけではありませんし、現在まで再発なく、アロマシンを投与しているということですので間違った治療というわけではないとは思いますよ。ただ、正確には女性ホルモンの血中濃度を測定した上でアロマシンは投与すべきだと思います。なぜなら50才ならまだ卵巣が働いている可能性があり、そのようなホルモン環境でのアロマシン投与は全く無効だからです。もし、調べていないなら一度血液検査をお勧めします。

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