2011年8月5日金曜日

タモキシフェンの長期にわたる再発予防効果報告

タモキシフェンによるER陽性乳癌に対する再発予防効果はかなり前から証明されていますが、今回、タモキシフェン内服終了後の長期にわたる再発予防効果についての報告がLancet Online版に掲載されました。

概要は以下の通りです。

[報告者]
英オックスフォード大学 Christina Daviesら

[対象および方法]
5年間のタモキシフェン投与と非投与を比較した約20件の無作為化対照試験の結果を分析。
被験者は米国、ヨーロッパ、中国および日本を含めた12カ国の女性約21,000人。

[結果]
タモキシフェン投与群10,645人のうち、10年目で約26%に再発がみられたのに対し、非投与群では40%であった。15年目までに再発がみられたのは投与群で33%、非投与群では46%であった。死亡率についても同様の結果がみられ、10年目では非投与群25%、投与群18%で、15年目では非投与群33%、投与群24%であった。

[結論]
タモキシフェンを投与された女性は、診断後15年(投与期間5年+投与中止後10年)でも、非投与群に比べて死亡リスクの低下が継続していた。最近では高齢の閉経後女性にはアロマターゼ阻害薬が処方されることが多い。アロマターゼ阻害薬への変換の理由の一つは、タモキシフェンにより子宮内膜癌や肺血栓症のリスクが増大することが示されているためだが、今回の分析から、リスクよりもベネフィットがはるかに大きいと考えられる。


閉経後乳がんに対する術後内分泌療法は、St.Gallen2007くらいから徐々にアロマターゼ阻害剤へと移り変わり、いつの間にかアロマターゼ阻害剤が術後内分泌療法の中心になっていました。ところが最近(今年のSt.Gallen2011でもそうでしたが)、一時期のアロマターゼ阻害剤偏重の流れから、タモキシフェンへの揺り戻しが起きているようです。今回あらためてこのような報告があったのもその一つの現れなのかもしれません。

タモキシフェンの利点としては安価であること、骨密度の低下をきたさないことなどがあります。一方、子宮への刺激(おりものの増加や不正出血、子宮体がんの増加)や血栓症が欠点としてあげられます。一方、アロマターゼ阻害剤は重篤な副作用は生じにくいのですが、長期的には骨密度の低下をきたすことと、不快な関節痛を伴うことが欠点です。

いずれにしても患者さんの再発リスクやがんの性質、生活背景(経済状態や職種)なども考えて治療の選択をすることが大切だと思います。

8 件のコメント:

  1. こんにちわ^^
    今回の記事を、読ませて頂き、
    とても、安心しました^^

    タモキシフェン内服は、やっぱり、嫌で・・
    長いし・・そんなに、薬飲んで大丈夫かな?
    しかも、ホルモン療法だし・・って・・
    なんか、不安でした・・
    本当に、このお薬5年飲みきった人いるのですか?と、G先生に聞いちゃいましたよ^^
    大丈夫です^^と言われてましたが・・

    やっぱり、飲んだほうが、先の事を考えると
    いいのだな~と思いました^^

    私は、そんなに副作用は強くないと、思います・・
    生理も、不順には、なりましたが、がんばってきてます^^
    もう、必要は、ないのですがね~^^
    でも、来ると安心しますよ~やっぱ女ですから~^^

    先生!ありがとうございます!
    これからも、ブログ続けてくださいね~^^

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  2. >ホワイトさん
    ありがとうございます。
    このニュースで内服を継続することに前向きになっていただけたなら良かったです。
    副作用も人それぞれですので耐えられない方もいらっしゃるとは思いますが、内服することの意義をきちんと理解した上で飲むのと疑問や不安を持ちながら飲むのとでは違う場合もあると思います。
    ホワイトさんも予定通り5年間継続できるといいですね!

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  3. こんにちはサクラです。
    以前コメント書かせていただきました。
    お久しぶりです。
    先生はまだ夏休み中でしょうか?
    大通公園のビアガーデンでリフレッシュ中ですか~?(^^)

    術後、病理検査の結果が出て
    腫瘍の大きさ10×6ミリ
    センチネルリンパ節生検0/6
    Luminal Aと言われました。

    タスオミン服用して2週間経ちます。
    今のところ目だった副作用は無いんですが、
    「いつ副作用くるのかな~?どんなのくるのかな~?5年も飲み続けるのか~」と不安です。
    が、先生のブログを読んで、今後の事を考えて飲み続けなきゃ!頑張ろうって気になってきました。
    ありがとうございます。

    お盆休み明けから放射線に入ります。
    LH-RH はやってもやらなくてもどちらでもいいと言われましたが、やろうと思ってます。
    タスオミン・放射線・LH-RH
    それぞれいつどんな副作用がくるか不安ですが頑張ります!

    プロフィール見たんですが、B'z好きなんですか?
    私も好きなんです。
    今の目標は10月のきたえーるでのLIVEに元気に参加する事です(^^)

    では夏バテなどしないようにお体に気をつけてください。

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  4. >サクラさん
    サクラさんもB'zお好きなんですね!ライブ見に行けるなんてうらやましいです。楽しみがあるときっと治療も頑張れますよ!
    副作用、軽く済めばいいですね。私の患者さんの多くはタモキシフェンを問題なく内服できています。不安が強いと副作用も強く出やすいですので、なるべく気分転換をしながら治療を続けて下さいね。お大事に!

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  5. はじめまして 毎回読ませて頂いております。
    タモキシフエン飲みたいのに飲めません
    子宮内膜が増殖傾向のため1年8か月でやめて
    しまいました今は、注射だけです。
    不安なのですが年齢も49才だし腫瘍も5ミリの粘液がんだったのでこれでいいのだと納得してますが閉経前だと、他に飲む薬がないですよね・・・
    もっと閉経前に飲める薬がたくさん増えることを願います。
    先生もお体に気おつけて頑張ってください
    またいろんな記事を書いてください。

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  6. >minnminnさん
    はじめまして。
    そうなんですよね…。
    閉経前のホルモン陽性の患者さんに使用できるホルモン剤が少ないんですよね。
    早く新たな薬剤が開発されると良いですね!

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  7. はじめまして。
    現在乳がん治療中で、再発予防のホルモン治療について調べていたところたどりつきました。

    43歳女性
    現在タスオミンとリュープリンで治療しており、2年半経過しました。

    術後にTC療法→5年間のホルモン療法と聞いておりました。
    現在リュープリンかタスオミンのどちらなのかわかりませんが、ひどい副作用に悩まされ、一日も早く終わってほしいと思っていたら、先日の診察で10年たっても再発の可能性が残る病気だから、10年治療する場合もあるようなことを言われ、ショックを受けました。
    リュープリンは5年経ったらやめても良いそうですが、5年目以降、私の病理結果は追加の治療をやはりしたほうが良いのでしょうか?
    私の乳がんはルミナールBです。
    タスオミンを10年間継続するのでしょうか?
    それとも、タスオミンを5年間飲んだ後に薬が変わりますか?
    5年で治療をやめても良いでしょうか?
    他の乳腺外科の先生の治療法をお聞きしたいです。

    (術後結果 2011年5月 40歳)
    タイプ…硬がん、乳頭腺管がん
    しこり…1.4cm(周りには非浸潤があった)
    手術…左乳房全摘、放射線なし、センチネルリンパ節生検(0/3)
    脈管侵襲あり(エルワイ1)
    血管侵襲なし
    核異型度3
    MIB1(ki-67)40~50%
    ホルモン受容体、両方80~90%
    HER2 ゼロ

    抗がん剤はTC療法4回をしました。

    宜しくお願いいたします。

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  8. >ひまわりさん
    はじめまして。
    タモキシフェンの投与期間は、5年より10年の方が良いというデータが最近出てきていますが、まだ完全なコンセンサスが得られたというところまでは来ていません。私たちも様子見の段階です。おそらく再発のリスクが高いと推定される方は10年の方が良いということになるのではないかと思いますがまだわかりません。きっとひまわりさんが5年の内服が終わる頃までにはコンセンサスが得られるのではないかと思います。
    なお、5年たってから他のホルモン剤に変更することは閉経前の方はありません(現在閉経前に使用できる術後ホルモン療法はタモキシフェンとリュープリンなどのLH-RH agonistだけです)。閉経後の方はアロマターゼ阻害剤をその後5年飲むというオプションもあり得るとは思いますが、こちらのデータは不十分です(アロマターゼ阻害剤を最初から内服した方が10年内服するデータはそろいつつありますが、こちらも十分なコンセンサスは得られていません)。
    そういう状況ですので、ネット上で無責任にひまわりさんに10年続けるべきかを私がお答えすることはできません。実際に診ている主治医の先生とよくご相談し、再発リスクとともに副作用の状況も十分に考慮した上で決めるべきだと思います。それでも納得できない場合は、きちんとセカンドオピニオンを受けた上でご相談なさって下さい(トップページの注意事項をご一読いただければ幸いです)。以上です。

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