女性ホルモンの働きの一つに骨吸収を抑制して、骨形成を促進する作用があります。ですから女性は閉経後に女性ホルモンが急激に低下すると骨粗鬆症になりやすいのです。
乳癌術後のホルモン療法のうち、タモキシフェンなどのSERMsと呼ばれる抗エストロゲン剤は、骨に対してはエストロゲン様の作用を呈しますので、むしろ骨粗鬆症に対して抑制的に働きますが、閉経前のゾラデックスやリュープリン(LH-RH agonist)や閉経後のアリミデックス、アロマシン、フェマーラなどのアロマターゼ阻害剤はエストロゲン自体を低下させますので骨粗鬆症が出現します。
骨粗鬆症の有無は、骨密度(骨量測定)検査で調べます。骨に沈着したカルシウム量が、若年成人の平均(Young Adult Mean=YAM)の70%以下になると骨粗鬆症と判定します。また、YAMの70-80%で、脆弱性骨折(軽微な外力で生じた非外傷性骨折)をきたした場合も骨粗鬆症と判定します。骨量は年齢とともに自然に低下し、80歳くらいになると平均値が70%くらいになりますのでこの年齢になればだいたいの人が骨粗鬆症の状態になると考えて良いです。しかし、乳癌術後の患者さんが、上に書いたようなホルモン療法を行なうと、同年齢の平均より骨量が低下してしまう(骨年齢が上がってしまう)ため、通常より早く骨粗鬆症になる危険があるということです。
骨粗鬆症になると、骨痛が出たり、骨折しやすくなったりします。特に骨折は著しく生活の質(QOL)を低下させますので注意が必要です。私は、これらのホルモン療法を行なう患者さんには6ヶ月から1年に1回、骨密度の検査を行なっています。実際は、それほど急激に著しく骨量が低下するわけではありませんが、通常の人の年齢に伴う骨量の低下に比べるとやはり少し減り方が大きいようです。
骨粗鬆症の治療には、以前はカルシウム製剤とビタミンDの併用+運動療法が一般的でした。現在でも軽度の骨量減少の場合にはこれらを投与することがありますが、その効果は不十分と言われており、最近はビスフォスフォネート製剤(ボナロンなど)を投与することが多くなっています。ちなみに骨転移の場合に点滴で投与するゾメタもビスフォスフォネート製剤の一つです。強力な骨吸収抑制作用を持っているため、骨粗鬆症に対しては6ヶ月に1回程度の投与で良いと言われています。内服薬よりも簡便なため、患者さんにとってはこちらの方が楽ではないかと思いますが、残念ながら骨粗鬆症に対しては保険適応外です。また、ラロキシフェンというタモキシフェンと構造が似た薬剤も骨粗鬆症の治療に効果があると言われています。なお筋力の維持が転倒の予防や骨の保護にも役立ちますので、運動療法はいずれにしても大切です。
乳癌が心配だけど、どこに受診したらいいかわからない、乳癌になってしまって不安…、再発したからもうだめかもしれない…。そんな不安や悩みに少しでもお役に立てればと思って始めてみました。 (*投稿内容と無関係なコメント、病状のご相談はご遠慮願います*)
2009年9月28日月曜日
2009年9月26日土曜日
患者会温泉旅行
来月の半ばに、乳癌術後の患者会の日帰り温泉旅行があります。
この旅行は年1回恒例で行なわれていて、近郊の温泉にみんなで行ってゆっくり温泉につかって食事をして帰ってきます。今まで行った温泉は、新篠津村のたっぷの湯、由仁町のユンニの湯、小金湯温泉、豊平峡温泉、南幌温泉、岩見沢健康ランド…、他にもあるかもしれません。どこもバスを出してくれるので、行き帰りのバスの中でも患者さんたちと歓談しながら楽しい時間をすごします。時々、するどい質問や病院に対する要望も出されてたじたじになることもありますのでちょっと緊張もしますが…。
私たちの病院の乳癌患者会はかなり前(20年くらい?)からあります。設立当初のことは私もあまり知らないのですが、乳房切除をした患者さんが、傷あとが気になって温泉になかなか行けない、という意見が出され、”みんなで行けば怖くない!”と計画したのが温泉旅行のきっかけだったと聞いています。こういう患者さんの気持ちは、当然全国どこでも同じで、患者会設立のきっかけの一つになっているんだと思います。
全国組織の患者会である、あけぼの会や各病院の患者会だけではなく、”1・2の3で温泉に入る会”という、乳癌患者さんみんなで温泉に入ることを目的とした全国組織の会があったことを先日ある集まりで耳にしました。残念ながらある事情でこの会は解散してしまったようですが(詳細はお聞きしなかったのでわかりません)、きっと病院単位の患者会に参加していらっしゃらない患者さんの中には、このような集まりがあればいいのに、と思われている方が多いのではないかと思います。
もちろん、中には傷のことはまったく気にならずに入っているよ、とおっしゃる方もいらっしゃいますし、乳房温存術や乳房再建をされた場合は手術をうけたこともわからないくらいの方もいらっしゃると思います。本当は傷跡があってもまったく気にせずに入れる雰囲気があれば問題ないのでしょうが、中には好奇の目でじろじろ見られて嫌な思いをした患者さんもいたようです。心ない人はどこにでもいるんですね…。患者さんは好きで病気になったわけでもないのに、こういうお話を聞くととても悲しくなります。
北海道は10月にはもう紅葉が見ごろです。昨年の小金湯温泉の露天風呂から見た、山々の紅葉はとてもきれいでした。
今年も天気に恵まれて、みんなで楽しい時間を過ごしてリフレッシュできればいいなと思っています。
この旅行は年1回恒例で行なわれていて、近郊の温泉にみんなで行ってゆっくり温泉につかって食事をして帰ってきます。今まで行った温泉は、新篠津村のたっぷの湯、由仁町のユンニの湯、小金湯温泉、豊平峡温泉、南幌温泉、岩見沢健康ランド…、他にもあるかもしれません。どこもバスを出してくれるので、行き帰りのバスの中でも患者さんたちと歓談しながら楽しい時間をすごします。時々、するどい質問や病院に対する要望も出されてたじたじになることもありますのでちょっと緊張もしますが…。
私たちの病院の乳癌患者会はかなり前(20年くらい?)からあります。設立当初のことは私もあまり知らないのですが、乳房切除をした患者さんが、傷あとが気になって温泉になかなか行けない、という意見が出され、”みんなで行けば怖くない!”と計画したのが温泉旅行のきっかけだったと聞いています。こういう患者さんの気持ちは、当然全国どこでも同じで、患者会設立のきっかけの一つになっているんだと思います。
全国組織の患者会である、あけぼの会や各病院の患者会だけではなく、”1・2の3で温泉に入る会”という、乳癌患者さんみんなで温泉に入ることを目的とした全国組織の会があったことを先日ある集まりで耳にしました。残念ながらある事情でこの会は解散してしまったようですが(詳細はお聞きしなかったのでわかりません)、きっと病院単位の患者会に参加していらっしゃらない患者さんの中には、このような集まりがあればいいのに、と思われている方が多いのではないかと思います。
もちろん、中には傷のことはまったく気にならずに入っているよ、とおっしゃる方もいらっしゃいますし、乳房温存術や乳房再建をされた場合は手術をうけたこともわからないくらいの方もいらっしゃると思います。本当は傷跡があってもまったく気にせずに入れる雰囲気があれば問題ないのでしょうが、中には好奇の目でじろじろ見られて嫌な思いをした患者さんもいたようです。心ない人はどこにでもいるんですね…。患者さんは好きで病気になったわけでもないのに、こういうお話を聞くととても悲しくなります。
北海道は10月にはもう紅葉が見ごろです。昨年の小金湯温泉の露天風呂から見た、山々の紅葉はとてもきれいでした。
今年も天気に恵まれて、みんなで楽しい時間を過ごしてリフレッシュできればいいなと思っています。
2009年9月21日月曜日
ジャパン・マンモグラフィーサンデー
10月の第3日曜日(10/18)は、ジャパン・マンモグラフィーサンデー(JMSプログラム)です(http://www.j-posh.com/jms.htm)。
これは、J.POSHが今年から、平日は仕事や子育てでなかなか検診を受けられない女性のために、年に一度、日曜日に全国どこでもマンモグラフィー検査が受診できる環境づくり実現を目指して始めた企画です。
賛同施設は、9/19現在、全国で218施設だそうです。北海道は10施設ですが、札幌には3施設しか登録していません。やはり、日曜日に検診体制を取るのはなかなか難しいのでしょうか?もっと多くの医療機関で行なえるようになればいいですね。
うちの病院は普段から時々日曜日の検診(対象は基本的に40歳以上)をしています。今回はそれとちょうど日程が合ったのでスムーズでした。来年以降は、40歳未満も対象にした特別な検診の日にできればいいなと考えています。もちろん、その場合は超音波検診も併用できるような体制が取れるように健診課と検討していこうと思います。
私はおそらくこの日も検診当番だと思いますが、せっかくの機会ですので、たくさんの女性に検診を受けに来て欲しいですね!
これは、J.POSHが今年から、平日は仕事や子育てでなかなか検診を受けられない女性のために、年に一度、日曜日に全国どこでもマンモグラフィー検査が受診できる環境づくり実現を目指して始めた企画です。
賛同施設は、9/19現在、全国で218施設だそうです。北海道は10施設ですが、札幌には3施設しか登録していません。やはり、日曜日に検診体制を取るのはなかなか難しいのでしょうか?もっと多くの医療機関で行なえるようになればいいですね。
うちの病院は普段から時々日曜日の検診(対象は基本的に40歳以上)をしています。今回はそれとちょうど日程が合ったのでスムーズでした。来年以降は、40歳未満も対象にした特別な検診の日にできればいいなと考えています。もちろん、その場合は超音波検診も併用できるような体制が取れるように健診課と検討していこうと思います。
私はおそらくこの日も検診当番だと思いますが、せっかくの機会ですので、たくさんの女性に検診を受けに来て欲しいですね!
2009年9月19日土曜日
細胞診と針生検
乳癌の診断をする場合、マンモグラフィや超音波検査に引き続いて行なう検査が、細胞診または針生検(組織診)です。患者さんからの問い合わせやコミュニティの書き込みを読みますと、”医師にClass5と言われたから、末期なんですよね?”などと、かなり誤解されているケースも多いようです。
1.細胞診
23-22Gという細い注射針を病変に刺して、細胞を吸引して調べる検査です。針生検に比べると麻酔も不要で侵襲も少ないため、繰り返し検査可能です。小さな病変や、嚢胞性の病変の検査に適しています。組織を切り取るわけではなく、吸い取ってばらばらになった細胞(細胞集塊)を見て、元の病変がどんなものかを推定する検査なので、この検査単独では確定診断にはなりません。
判定は、以前はClass1-5(1 正常、2 良性、3 境界病変、4 悪性疑い、5 悪性)で行なっていましたが、現在は、「検体適正」と「検体不適正」に大別し、「検体適正」は“正常あるいは良性”、“鑑別困難”、“悪性の疑い”、“悪性”の4 項目に分類しています。ただ、まだ国内ではClass分類で判定しているところが多いようです。
問題は、病変に正しく穿刺されているか、十分な細胞が採取されていて判定可能な検体かどうか、ということです。Class分類では、そのあたりがあいまいなため、例えば画像的には硬癌を疑うのに、穿刺が不十分で脂肪しか採取されていない場合、Class分類では”Class1”になってしまい、場合によっては誤診につながってしまいます。新しい分類では、”検体不適正”となって、再検査が必要と判断できます。
いずれにしても、上で述べたように細胞診は確定診断ではありません。特に乳腺腫瘍は他の臓器より判断が難しいため、誤りが起きうるのです。ですから画像所見と合致した場合にのみ、最終診断とみなされます。施設によっては、慣れた病理医やサイトスクリーナーがいない場合、このような判断の間違いを避けるため、細胞診はやらないところもあります。
なお、細胞診を何度もすると癌が進行するのではないかと聞かれることがありますが、そんなことはありません。
2.針生検
11-18Gという太い針で組織を切り取って採取する検査です。細胞診に比べると針が太いため、局所麻酔が必要です。検査後の出血の可能性もあり、侵襲は少し大きな検査になります。組織診ですので、これだけで確定診断になりますが、中には判断が難しい症例もあります。その場合は、開放生検(腫瘤摘出術など)を行なうこともあります。また、針生検は、良悪の診断だけではなく、ホルモンレセプターやHER2などの検査も可能なため、術前に化学療法を行なう場合には、その前に必ず針生検を行ないます。
針生検の装置には、針が2段階に飛び出して内筒と外筒の隙間に組織を切り取るタイプの従来のものと、太い針の窓から組織を吸引して回転する刃で組織を切り取って採取するマンモトームの2種類があります。採取する組織量はマンモトームの方がはるかに多いので、十分な情報が得られますし、針を抜かずに何度も採取が可能です。従来のタイプで複数回採取する場合は、その都度刺し直しますが、同じ穴に入ってしまうため、2回目以降はあまり組織が取れなくなることがあります。
判定基準は、細胞診と同様です。非浸潤癌を疑う場合には、細胞診では”悪性の疑い”止まりのことが多いため、針生検の方が診断には適しています。また、マンモグラフィにしか写らない微細石灰化の場合は、ステレオガイド下(マンモグラフィでモニターに映しながら)で石灰化が取れるまで何度も生検を要することが多いので、マンモトームが最も適しています。
針生検も、検査によって癌が進行することはないと考えて良いですが、針の穴を手術時に切除しないとそこから局所再発する可能性がありますので、特に乳房温存術の場合には注意が必要です。
1.細胞診
23-22Gという細い注射針を病変に刺して、細胞を吸引して調べる検査です。針生検に比べると麻酔も不要で侵襲も少ないため、繰り返し検査可能です。小さな病変や、嚢胞性の病変の検査に適しています。組織を切り取るわけではなく、吸い取ってばらばらになった細胞(細胞集塊)を見て、元の病変がどんなものかを推定する検査なので、この検査単独では確定診断にはなりません。
判定は、以前はClass1-5(1 正常、2 良性、3 境界病変、4 悪性疑い、5 悪性)で行なっていましたが、現在は、「検体適正」と「検体不適正」に大別し、「検体適正」は“正常あるいは良性”、“鑑別困難”、“悪性の疑い”、“悪性”の4 項目に分類しています。ただ、まだ国内ではClass分類で判定しているところが多いようです。
問題は、病変に正しく穿刺されているか、十分な細胞が採取されていて判定可能な検体かどうか、ということです。Class分類では、そのあたりがあいまいなため、例えば画像的には硬癌を疑うのに、穿刺が不十分で脂肪しか採取されていない場合、Class分類では”Class1”になってしまい、場合によっては誤診につながってしまいます。新しい分類では、”検体不適正”となって、再検査が必要と判断できます。
いずれにしても、上で述べたように細胞診は確定診断ではありません。特に乳腺腫瘍は他の臓器より判断が難しいため、誤りが起きうるのです。ですから画像所見と合致した場合にのみ、最終診断とみなされます。施設によっては、慣れた病理医やサイトスクリーナーがいない場合、このような判断の間違いを避けるため、細胞診はやらないところもあります。
なお、細胞診を何度もすると癌が進行するのではないかと聞かれることがありますが、そんなことはありません。
2.針生検
11-18Gという太い針で組織を切り取って採取する検査です。細胞診に比べると針が太いため、局所麻酔が必要です。検査後の出血の可能性もあり、侵襲は少し大きな検査になります。組織診ですので、これだけで確定診断になりますが、中には判断が難しい症例もあります。その場合は、開放生検(腫瘤摘出術など)を行なうこともあります。また、針生検は、良悪の診断だけではなく、ホルモンレセプターやHER2などの検査も可能なため、術前に化学療法を行なう場合には、その前に必ず針生検を行ないます。
針生検の装置には、針が2段階に飛び出して内筒と外筒の隙間に組織を切り取るタイプの従来のものと、太い針の窓から組織を吸引して回転する刃で組織を切り取って採取するマンモトームの2種類があります。採取する組織量はマンモトームの方がはるかに多いので、十分な情報が得られますし、針を抜かずに何度も採取が可能です。従来のタイプで複数回採取する場合は、その都度刺し直しますが、同じ穴に入ってしまうため、2回目以降はあまり組織が取れなくなることがあります。
判定基準は、細胞診と同様です。非浸潤癌を疑う場合には、細胞診では”悪性の疑い”止まりのことが多いため、針生検の方が診断には適しています。また、マンモグラフィにしか写らない微細石灰化の場合は、ステレオガイド下(マンモグラフィでモニターに映しながら)で石灰化が取れるまで何度も生検を要することが多いので、マンモトームが最も適しています。
針生検も、検査によって癌が進行することはないと考えて良いですが、針の穴を手術時に切除しないとそこから局所再発する可能性がありますので、特に乳房温存術の場合には注意が必要です。
2009年9月16日水曜日
乳癌術後の後遺症 リンパ浮腫②〜治療
一度リンパ浮腫になってしまうと完全にもとの状態に戻すのはなかなか困難になります。
ひと昔前の治療は、
①セルフマッサージ…具体的な指導はあまりせず、間違った手法が行なわれていた場合が多かったと思います。
②患肢の挙上…寝るときは枕を横に置いてのせておくなど。
③弾性スリーブ着用…以前は保険も利かず、高価でした。いきなりスリーブを着用するとすぐにゆるくなってサイズが合わなくなることもあったようです。
という感じでした。でもなかなか良くならないとあきらめていた患者さんも多かったようです。細いリンパ管を吻合して流れを良くする手術も一部の施設で行なわれていますが、成績は必ずしも良好とは言えないようです。
乳癌の罹患率が上がり、リンパ浮腫が社会問題になったことによって、本腰を上げて治療に取り組む施設が次第に増えてきました。欧米では日本より何歩も先に進んでいたため、そこで得られた治療法を導入する形でリンパ浮腫治療が普及して来ています。その代表的な治療法が、フェルディ式複合的理学療法(リンパドレナージ)という方法です。
<フェルディ式理学療法>
①スキンケア
②徒手リンパドレナージ
③弾性包帯(→安定したらスリーブ)による圧迫療法
④運動療法
この4つを基本とした理学療法です。
第1段階(集中排液期)は入院または通院で集中的に浮腫の軽減を行ない(週4-5日から毎日)、浮腫が軽減・安定したら、第2段階(現状維持・改善期)のセルフマッサージ+可能な場合は週1−2回の通院で治療を行ないます。
この治療の禁忌は、感染症を併発しているとき、心不全状態、静脈血栓症がある場合などです。癌が浸潤したために起きてしまった浮腫に対しては慎重に適応を判断する必要があります。
一般的に行なわれているリンパ浮腫マッサージは、逆効果のことがありますので注意が必要です。フェルディ式であればだいたい大丈夫だと思いますが、日本医療リンパドレナージ協会(http://www.mlaj.jp/)の講習会を受けた理学療法士や看護師のいる治療施設に受診するのが良いと思います(http://www.mlaj.jp/information/information.html)。
ひと昔前の治療は、
①セルフマッサージ…具体的な指導はあまりせず、間違った手法が行なわれていた場合が多かったと思います。
②患肢の挙上…寝るときは枕を横に置いてのせておくなど。
③弾性スリーブ着用…以前は保険も利かず、高価でした。いきなりスリーブを着用するとすぐにゆるくなってサイズが合わなくなることもあったようです。
という感じでした。でもなかなか良くならないとあきらめていた患者さんも多かったようです。細いリンパ管を吻合して流れを良くする手術も一部の施設で行なわれていますが、成績は必ずしも良好とは言えないようです。
乳癌の罹患率が上がり、リンパ浮腫が社会問題になったことによって、本腰を上げて治療に取り組む施設が次第に増えてきました。欧米では日本より何歩も先に進んでいたため、そこで得られた治療法を導入する形でリンパ浮腫治療が普及して来ています。その代表的な治療法が、フェルディ式複合的理学療法(リンパドレナージ)という方法です。
<フェルディ式理学療法>
①スキンケア
②徒手リンパドレナージ
③弾性包帯(→安定したらスリーブ)による圧迫療法
④運動療法
この4つを基本とした理学療法です。
第1段階(集中排液期)は入院または通院で集中的に浮腫の軽減を行ない(週4-5日から毎日)、浮腫が軽減・安定したら、第2段階(現状維持・改善期)のセルフマッサージ+可能な場合は週1−2回の通院で治療を行ないます。
この治療の禁忌は、感染症を併発しているとき、心不全状態、静脈血栓症がある場合などです。癌が浸潤したために起きてしまった浮腫に対しては慎重に適応を判断する必要があります。
一般的に行なわれているリンパ浮腫マッサージは、逆効果のことがありますので注意が必要です。フェルディ式であればだいたい大丈夫だと思いますが、日本医療リンパドレナージ協会(http://www.mlaj.jp/)の講習会を受けた理学療法士や看護師のいる治療施設に受診するのが良いと思います(http://www.mlaj.jp/information/information.html)。
乳癌術後の後遺症 リンパ浮腫①〜リンパ浮腫とは?
乳癌の術後に起きる後遺症でもっともやっかいで、一生気をつけなければならないのがリンパ浮腫です。
リンパ浮腫の一番の原因は、腋窩のリンパ節を郭清することによって、リンパ液の流出ルートが切断されてしまうことです。
例えるならば、高速道路が通行止めになったようなものです。交通量が同じなのに、流れの良いメインルートが遮断されてしまうと一般道で混雑が起きます。これがリンパ節郭清をした状態(浮腫の準備状態)だと考えてください。それでもまだこの状態であれば、時間はかかるけどなんとか目的地に着けるかもしれません。
では、この状態で一般道で事故が起きたらどうなるでしょう?
そう、大変な大渋滞になってしまいます。乳癌術後の患者さんで言えば、この”事故”は、手の怪我(化膿、骨折など)や皮膚炎、日焼け、不適切な医療行為(患肢での点滴や採血、頻回の血圧測定など)なのです。
もちろん、腋窩郭清をした患者さんすべてがリンパ浮腫になるわけではありません。リンパ浮腫になりやすい危険因子は、広範囲のリンパ節郭清(鎖骨下や鎖骨上までなど)、術後の腋窩-鎖骨上下領域への放射線照射、肥満、感染しやすいような皮膚病などです。これらに該当しなくても、ちょっとしたきっかけでリンパ浮腫になってしまうことがあります。
予防のために自分でできることは、手の怪我や日焼けの予防(畑仕事は長袖にゴム手袋着用など)、手術した病院以外で治療を受けるときには、腋窩リンパ節郭清をしていることを告げること(患肢への医療行為の予防)、体重を増やさない(肥満の場合は減量)ことなどです。
それでもリンパ浮腫になってしまうこともあります。その場合にどうしたら良いかは次回に書きます。
なお、センチネルリンパ節生検は、リンパ浮腫の発生を防ぐために考えられた手法ですが、この手技で終わってもリンパ浮腫の可能性はわずかながらあり得ると言われています。
リンパ浮腫の一番の原因は、腋窩のリンパ節を郭清することによって、リンパ液の流出ルートが切断されてしまうことです。
例えるならば、高速道路が通行止めになったようなものです。交通量が同じなのに、流れの良いメインルートが遮断されてしまうと一般道で混雑が起きます。これがリンパ節郭清をした状態(浮腫の準備状態)だと考えてください。それでもまだこの状態であれば、時間はかかるけどなんとか目的地に着けるかもしれません。
では、この状態で一般道で事故が起きたらどうなるでしょう?
そう、大変な大渋滞になってしまいます。乳癌術後の患者さんで言えば、この”事故”は、手の怪我(化膿、骨折など)や皮膚炎、日焼け、不適切な医療行為(患肢での点滴や採血、頻回の血圧測定など)なのです。
もちろん、腋窩郭清をした患者さんすべてがリンパ浮腫になるわけではありません。リンパ浮腫になりやすい危険因子は、広範囲のリンパ節郭清(鎖骨下や鎖骨上までなど)、術後の腋窩-鎖骨上下領域への放射線照射、肥満、感染しやすいような皮膚病などです。これらに該当しなくても、ちょっとしたきっかけでリンパ浮腫になってしまうことがあります。
予防のために自分でできることは、手の怪我や日焼けの予防(畑仕事は長袖にゴム手袋着用など)、手術した病院以外で治療を受けるときには、腋窩リンパ節郭清をしていることを告げること(患肢への医療行為の予防)、体重を増やさない(肥満の場合は減量)ことなどです。
それでもリンパ浮腫になってしまうこともあります。その場合にどうしたら良いかは次回に書きます。
なお、センチネルリンパ節生検は、リンパ浮腫の発生を防ぐために考えられた手法ですが、この手技で終わってもリンパ浮腫の可能性はわずかながらあり得ると言われています。
2009年9月13日日曜日
外来担当医とネクタイ
私は普段病院では下は白衣のスラックス、上は検査着とブレザータイプの白衣を着ています。学会に出発する日など、特別なとき以外はネクタイとワイシャツは着ません。どうもネクタイは首が苦しくて苦手なんです。それに、処置をする際にネクタイがぶら〜っと垂れ下がると邪魔だし、傷に触れると不潔です。ですから今はそんな格好をしています。もっと若いころはケーシータイプ(半袖で首のところまでボタンのついているタイプ)の白衣を着ていました。
そんなネクタイ嫌いの私ですが、一時期だけ外来の時だけはネクタイを着用していたことがあります。それにはあるきっかけがありました。
それは乳腺外科の専門研修のために、東京に行っていたころのある日のことです。
仕事が終わったあと、私たち研修医と指導医数人でいつも行く、近くの居酒屋で飲んでいたのですが、そのうちの一人が、
”K先生(その病院の乳腺外科のトップの先生)が○○新報に、外来医はネクタイを着用すべきだって書いていたよ。”
と言いだしたのです。そこで、ネクタイ問題について大議論になりました。
私は、
”ネクタイは医療行為には邪魔なだけだし、普通の接客業とは違うので必ず着用しなければならないものではない!”
という反対派でした。
賛成派は、
”ネクタイをするほうが、患者さんに信頼されるし、社会人の身だしなみなんだから着用すべきだ!”
と主張していました。
”ネクタイ着用と医師の信頼性は別だよ!”
というこちら側の反論が出たので、結局その居酒屋のおばさん2人に、患者としてどう思うかを聞いて決めることにしたのです。
おばさん曰く、
”私はネクタイをした医師のほうがきちんと診てくれるような気がするね。だって初対面じゃその医者がどんな人かわからないでしょう?ネクタイをしていないとだらしないんじゃないかと思っちゃうよ。”
とのこと。
結局、おばさんの意見を尊重し、それ以降はネクタイを着用することにしました。
K先生は私の恩師でもあり、一番尊敬している方ですから、やはりおっしゃるとおりにすべきでした。
その後地元に戻ってからもしばらくはネクタイをしていましたが、途中からは今の服装に変えました。理由は、院内感染の問題が出てきたからです。私たち医療従事者は、腕時計をするのも感染対策上望ましくないと言われています。もちろん私もしていません。ましてやネクタイをぶらぶらさせるのは危険です。長白衣の前のボタンを全部留めればぶらぶらはしませんが、それでなくてもネクタイで苦しいのにそんな格好をするのは私には耐えられませんでした。
結局、恩師の教えを守れなかった私ですが、幸い田舎の病院なのでそのことをうるさく言われることもなく仕事ができています。
逆にたまにネクタイをしていくと患者さんにびっくりされるくらいですので、当面はこのスタイルでいこうと思っています。
でも中には不快に思ったり、信頼できないと思ったりする患者さんもいるのかなあ…。ときどきあの居酒屋での議論を思い出して自問自答しています。
そんなネクタイ嫌いの私ですが、一時期だけ外来の時だけはネクタイを着用していたことがあります。それにはあるきっかけがありました。
それは乳腺外科の専門研修のために、東京に行っていたころのある日のことです。
仕事が終わったあと、私たち研修医と指導医数人でいつも行く、近くの居酒屋で飲んでいたのですが、そのうちの一人が、
”K先生(その病院の乳腺外科のトップの先生)が○○新報に、外来医はネクタイを着用すべきだって書いていたよ。”
と言いだしたのです。そこで、ネクタイ問題について大議論になりました。
私は、
”ネクタイは医療行為には邪魔なだけだし、普通の接客業とは違うので必ず着用しなければならないものではない!”
という反対派でした。
賛成派は、
”ネクタイをするほうが、患者さんに信頼されるし、社会人の身だしなみなんだから着用すべきだ!”
と主張していました。
”ネクタイ着用と医師の信頼性は別だよ!”
というこちら側の反論が出たので、結局その居酒屋のおばさん2人に、患者としてどう思うかを聞いて決めることにしたのです。
おばさん曰く、
”私はネクタイをした医師のほうがきちんと診てくれるような気がするね。だって初対面じゃその医者がどんな人かわからないでしょう?ネクタイをしていないとだらしないんじゃないかと思っちゃうよ。”
とのこと。
結局、おばさんの意見を尊重し、それ以降はネクタイを着用することにしました。
K先生は私の恩師でもあり、一番尊敬している方ですから、やはりおっしゃるとおりにすべきでした。
その後地元に戻ってからもしばらくはネクタイをしていましたが、途中からは今の服装に変えました。理由は、院内感染の問題が出てきたからです。私たち医療従事者は、腕時計をするのも感染対策上望ましくないと言われています。もちろん私もしていません。ましてやネクタイをぶらぶらさせるのは危険です。長白衣の前のボタンを全部留めればぶらぶらはしませんが、それでなくてもネクタイで苦しいのにそんな格好をするのは私には耐えられませんでした。
結局、恩師の教えを守れなかった私ですが、幸い田舎の病院なのでそのことをうるさく言われることもなく仕事ができています。
逆にたまにネクタイをしていくと患者さんにびっくりされるくらいですので、当面はこのスタイルでいこうと思っています。
でも中には不快に思ったり、信頼できないと思ったりする患者さんもいるのかなあ…。ときどきあの居酒屋での議論を思い出して自問自答しています。
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