2013年1月30日水曜日

乳腺術後症例検討会 24 ”2013年初!”

今日は2ヶ月ぶりの症例検討会でした。先月は年末のため休会でしたので2ヶ月分の症例から厳選していつもより1症例多い5症例の検討でした。

今日も会議室が取れなかったので超音波検査室で行なったのですが、参加人数が非常に多くてあふれかえっていました。今回はいつもの超音波技師、放射線技師、病理医、放射線科医、乳腺外科医に加え研修医2名も参加してくれました。研修医の2人は、現在胸部外科(呼吸器外科、乳腺外科)と超音波検査室で研修中ということもあったのですが、非常に乳腺に興味を持ってくれています。将来、乳腺センターの仲間になってくれないかなと期待しています。

さて、症例の方は、今回は2ヶ月間の症例の中から厳選したために一目見てわかるような典型的な乳がんは少なく、なかなか興味深い症例だったと思います。

①5年の経過で非浸潤がんと診断された症例
②検診発見乳がん(小さな硬がん)
③マンモグラフィで一見腫瘤に見えた乳腺線維症
④経過観察中の超音波検査で石灰化を伴う腫瘤像非形成性病変で発見された微小浸潤がん
⑤典型的な構築の乱れ(distortion)で精査となった放射状瘢痕(radial scar)症例

いずれも活発な意見が出され、充実した症例検討会になったと思います。これで研修医の2人もさらに興味を持ってくれたらうれしいのですが…。

今年度は新病院の移転が控えており、症例検討会も少し様変わりすることになりそうです。会議室が増えますので症例検討会の場所の確保は今までよりは容易になります。ただ、マンモグラフィがfilmlessとなるため、今までのシャウカステン(レントゲンフィルムを貼って映し出す器械)が使えなくなります。そのため乳腺センターでiPADを購入してあらかじめ症例の画像を入れておいて供覧する方式に変更しようと考えています。また、乳腺グループのメンバーも増えそうなので今年は夏頃にでもなにか大きなイベントを行おうかと密かに考えています。この検討会を準備してくれている中心メンバーで企画するつもりです。

2013年1月29日火曜日

2月は…

早いものでもう1月も終わろうとしていますが、今月は予定されていた手術患者さんがいろいろな理由で手術が2月にずれこんでしまい、手術件数は予定より少なく終わりそうです。

ただ、その分来月は今からすでにかなりの数の手術をこなさなければならなくなりそうです。現時点ですでに10人ほどの患者さんの手術が予定されており(大病院では当たり前でしょうが私のところのような病院では珍しいことです)、週2回の手術日でどうやってこなせば良いのか頭を悩ませています(外科全体で手術枠が決まっているので定期手術で組める手術件数には限度があるのです)。あまりお待たせするわけにはいきませんので定期手術日以外に空きがあればやるしかないかもしれません。

最近の傾向としては、一目見て乳がんと診断できるケースは少なく、乳頭分泌症例(悪性っぽく見える乳管内乳頭腫や乳頭腫に合併した非浸潤がんなど)、検診で非浸潤がんを疑う石灰化が見られたのですがどうも良性っぽい症例、超音波検査で発見された小さな非浸潤がん疑いの症例など、診断に苦慮するケースが多いです。診断にも切除範囲の設定にも神経を使います。

とりあえず研修中のN先生が戻るまでは現体制で頑張るしかありません。特にG先生にはかなり負担をかけてしまいますが、なんとか頑張ってくれると信じています(笑)

2013年1月23日水曜日

ワーキング サバイバーズ フォーラム 2013

昨年もここでご紹介しましたが(http://hidechin-breastlifecare.blogspot.jp/2012/01/in-sapporo.html)、今年も「ワーキング サバイバーズ フォーラム」が2013年2月11日(月・祝)に京王プラザホテル札幌で行なわれます。

このフォーラムはピンクリボン in SAPPORO実行委員会主催で行なわれている、がん患者さんの就労問題や雇用問題について考えるイベントです。

今回の内容は、

①基調講演「がん体験者の就労・雇用支援に関する取組み(CSRプロジェクト副代表理事 近藤明美さん)
②リレートーク「がんになっても働き続けるための環境づくり」
③情報交換会(チェアーフラのアトラクションあり)

です。参加費は1500円で、申し込み・問い合わせは、三角山放送局のHP(http://www.sankakuyama.co.jp/contents/2012/12/21/003489.php)をご参照下さい。

昨年は所用で参加できなかったのですが今年は参加できそうです。なかなか普段聞けない内容ですので勉強して来ようと思います。

2013年1月20日日曜日

臨床研究グループの全国Meeting

夕方東京から帰ってきました。何度かここにも書きましたが、ある全国規模の臨床研究グループ(JCと省略)の北海道エリアの作業のお手伝いをしてきたのですが、今回はその内容を持ち寄って全体で討議するというMeetingが東京であったのです。

最初T先生から頼まれたときは十分内容がわかりませんでしたが(完全に理解できたのはこのMeetingでですが…)、要するに現在の乳腺診療(主に治療)におけるエビデンスが不十分ないわゆる”グレーゾーン”を洗い出して、その中で有意義な臨床試験を計画できないか討議するのが今回の主旨です。

まずは全国を6つのエリアに分けて、それぞれにテーマが与えられました(”トリプルネガティブ”、”DCIS”など)。今回の集まりまでに各地域で討議して4つのCQ(Clinical Question)に絞り込んで、それぞれについての臨床試験をデザインして発表するといった感じです。ただどこまで煮詰めた状態で発表するのかが今ひとつよくわからなかった(今回は概要のみの発表で、今回のプレゼンのあとで指示を受けて煮詰めるのだと考えていました)ため、北海道エリアは熟成が少し足りなかったような印象です。

代表のI先生のお話を伺って、”各臨床試験グループ、全国の乳腺外科医・腫瘍内科医が力を合わせたALL JAPAN体制で有意義な臨床試験を立案して日本から世界に新たな知見を発信したい”という強い思いが伝わってきました、これこそが今回JC以外の私たちのような乳腺外科医を巻き込んだ(表現は適切ではないかもしれませんが…笑)理由なのだとようやく理解できました。

国内にはJCを含めて4つの大規模な臨床研究グループがあります。今回のMeetingのもう一つの大きな意義は、はじめてこれらの4つの臨床グループ(JC以外は主に代表者)が一堂に会して、各エリアからの臨床試験案を一緒に吟味したということです。なぜこのことが意味があるのかというと、例えば対象患者さんが重複するような臨床試験を2つの臨床試験グループで別々に開始してしまった場合、臨床試験に登録する患者数がなかなか集まらず、質の高い結果が得られない、時間がかかるなどの問題が生じるからです。お互いに情報を共有して重複を避けて効率よく臨床試験を行なうほうが理にかなっているということです。

それにしても全国の若手乳腺外科医たちは非常に良く勉強しており、豊富な臨床試験に関する知識を有していることをあらためて感じました(北海道エリアはおそらく平均年齢が他のエリアより10才近く高いのでは…)。もっともっと勉強しなければついていけないと危機感をもって帰ってきました。

2013年1月17日木曜日

参考になった??ネット情報(笑)

先日外来で面白い出来事がありました。

その患者さん(Xさん)は、診断に苦慮していて現在病理標本のコンサルテーション中の方なのですが、針生検の結果のご説明の際に、”コンサルテーションの結果を待って、もしセカンドオピニオンのご希望があればお知らせ下さい”とお話ししたところ、”前回(細胞診の結果をご説明)受診したあとで、ネットでもいろいろ調べたのですが、先生がおっしゃったこととまったく同じことが書いてありましたので先生の判断を信じます”と言われたのです。

”それはどんなサイトなのですか?”とお聞きしたところ、”北海道の乳腺外科医が書いているブログみたいです”とのこと。”う〜ん、それはそうでしょう。おそらくそれは私が書いているブログですから…。”と言いたいところを我慢して、素知らぬ顔でお話を終えました(汗)

ネットで調べた情報が私が書いた情報ではなんの参考にもならないのですが、まあ信じていただけるのであればありがたいことです。でもなんだか不思議な感覚でした(笑)

最近、高校生の娘に連日数学を教えています。教えると言ってもこちらも30年くらい勉強していないのですっかり忘れてしまっています。教科書やテキストの答えを見ながら思い出しつつ教えているところです。昔、必死に勉強したころを思い出して楽しみながらやっています。そんなこんなで最近はブログの更新ペースがすっかり落ちてしまいました。土曜日からは、例の臨床研究グループの集まりで東京に行ってきます。

2013年1月14日月曜日

再発治療の卒業

以前「再発巣完全消失後の治療継続期間(http://hidechin-breastlifecare.blogspot.jp/2010/07/blog-post_15.html)」の中でも書きましたが、再発治療で病巣が完全に消失した場合、治療をどこまで継続するかということについては何もエビデンスがありません。実際そう多いことではないということもありますが、再発したらいずれまた再再発するものだという意識が強いためにそのような検討が十分になされていなかったからなのかもしれません。

先日受診された患者さんは、乳房全摘後2年ほどで皮膚のリンパ管因子由来と思われる局所再発をきたし、その後2年くらいの間にリンパ節、肺に転移をきたしました。化学療法、SRT(定位照射)を含めた放射線治療を繰り返し、最終的にアリミデックス投与中に完全寛解状態(CR)になってから今月でついに10年が経過しました。

途中で患者さんとご相談した時には、「完全寛解してから10年はアリミデックスを続けましょう」とお話ししてきました。この患者さんは幸いアリミデックスの副作用はほとんどなく、この間の内服継続にはまったく抵抗がありませんでした。今回無事10年が経過したため、「これで治療を終了しましょうか?」というお話をしたのですが、「なんとなくやめると再発しそうなので心配です」とのこと。たしかに再発を繰り返した経過があるのでそういうご心配はよく理解できます。

実際ホルモンレセプター陽性の乳がんは何年経っても再発のリスクは一定あります。飲み続けるリスク(長期内服の副作用についてのデータは不十分)と治療を中止するリスク(再再発)を秤にかけなければなりません。こちらとしてはどちらが良いとも言えませんので、「とりあえずもう少し継続して、もしなんらかの副作用が問題になるようなら中止にする」ということにしました。

この患者さんは70才台半ばです。あと平均寿命まで10数年、なんとか再発なく過ごしてもらえればと願っています。今年中にもう一人、同じように肝動注+アリミデックスでCRになってから10年が経過する肝転移の患者さんがいらっしゃいます。この方はどう判断するかわかりませんが、再発治療の卒業の判断はなかなか難しいです。




2013年1月10日木曜日

がん臨床研究グループ(北海道エリア)の会議

昨日、全国規模のがんの臨床研究グループの北海道エリアの会議がありました。

この臨床研究グループは乳がんに限らず、様々ながんの治療などについて臨床試験を計画したり、研究活動を行ったりしています。今回は全国を6つのエリアに分けて、それぞれにおおまかなテーマ(たとえば「トリプルネガティブ乳がん」「非浸潤がん」など)を与えて、現在まだ十分なエビデンスが不十分な治療や検査法などについての研究テーマを掘り起こす作業を行っているところです。私自身はこの研究グループには所属していませんが、北海道エリアの責任者の先生にお手伝いを頼まれて仲間に入らせていただきました。

私は大学を卒業後、医局には入らずに民間病院に出たものですから、臨床試験などの研究には直接携わったことがありません。なかなかこのような仕事には慣れませんが、大学やがんセンター、乳腺クリニックのの先生方とディスカッションをするのは楽しいですし、勉強になります。北海道地区のテーマは、画像診断と局所治療についです。再来週の全国の関係者の討論会までに4つのテーマにしぼって持っていくことになっています。私が興味を持っていたテーマも採用されましたので楽しみです。ただ、興味があるということと、臨床試験でそれを証明するというのは別物です。自分が正しいと信じて行なっている方法が本当に有効であるということを臨床試験で証明するためには症例数を数多く集めて、長期間にわたって追跡しなければなりません。お金も時間も手間もかかりますので、質の高い臨床試験を行なうのはなかなか難しいようです。

それにしても昨日ディスカッションしていて、それぞれ臨床経験の長い乳腺専門医が集まっているのに、施設によって微妙に考え方が異なっているということが驚きでした。乳房温存術後の局所再発チェックにマンモグラフィにエコー検査を併用している施設、しない施設、断端陽性の場合に再手術を勧める基準、センチネルリンパ節に転移があった場合に郭清をどうしているか、などエビデンスがまだ十分ではない、または新たな知見が加わった部分については、かなり施設間の違いがあるようです。

来週末は東京で長時間にわたる議論が展開されます。疲れますが得られるものも大きいですので今から楽しみです。

2013年1月9日水曜日

治療の選択と生き方に対する価値観

1/4が仕事初めでしたが、外来はまだなんとなく正月気分が抜けないようなまったりした状況です。でもそろそろ忙しくなりそうです。手術の方は1/4からもう始まっています。

乳がんと診断されると、手術、術後補助療法、放射線治療と考える余裕もないまま医師の勧めるままに治療が進んでしまうことが多いと思います。初期治療については様々な臨床試験が行なわれ、St.Gallenの国際会議などで治療指針のガイドラインが出されていますので、きちんとした知識を持った乳腺外科医であれば、その勧めの通り行なっていればそう大きな問題はないですし、まったく異なる選択(たとえば手術をしないで薬剤のみで治療するなど)の余地はあまりないと思います。化学療法などは副作用がつらいものですが、いつまでも続けるわけではありませんし、期待できる効果に対するエビデンスもありますから、なんとか頑張って受けていただけるようにできる限りの説明を行ないます。

しかし、再発治療に関してはある程度の治療選択の幅があります。薬剤の使用順序やどこまで強力な治療を行なうか、放射線治療や再発巣の切除を行なうかなど、まだ十分にエビデンスがないことがたくさんあります。私たちとしては、効果(治癒→延命→症状緩和)が期待できるのであれば、可能な限りの治療を考えて提示します。しかし患者さんの立場としては、あまり苦しい治療をしたくないものです。病状にもよりますが、こちらが十分に治療内容と期待できそうな効果、副作用などについて説明した上で積極的治療を受けないことを選択するのであれば、それも尊重しなければなりません。人間にはそれぞれ生き方に対する価値観がありますからそのような選択も許容されるべきだと思っています。ただし、標準的な治療について正しく理解していることが前提ですが…。

私の経験の中でも途中から積極的治療を拒否したり、入院の勧めを断ってぎりぎりまで自宅での生活を選択された患者さんがいらっしゃいます。十分に治療について話し合いをした上でそのような選択をされた場合、私たちが考えるベストの治療ではなかったとしてもできる限りその患者さんが望む生活をサポートしてあげたいと考えています。最近もそのような事例がありましたが、ご自分の信念を貫き通すことはなかなかできることではありません。その生き様には私たちも多くのことを教えられるのです。

2013年1月1日火曜日

!謹賀新年!

あけましておめでとうございます。2013年が皆さまにとって幸多き1年になりますようお祈り申し上げます。

さて私は今年、○回目の年男、そう、巳年(へび年)生まれなのです。執念深いとか、あまり良い印象を持たれない巳年生まれですが、私は早生まれのため同期には巳年生まれが少なく(辰年が3/4)、真偽のほどは明らかではありません。私はというと…う〜ん…執念深いところもあるかもしれませんが、B型なのでころっと忘れていたりしますのでどっちとも言えませんね(笑)

まあこんな非科学的なことはここで書いてはいけないのかもしれませんが、この手の話を仲間内ですることはまったく罪はなく、お金もかからず、話題の一つとして楽しめる内容です。しかし世の中にはいまだにお金儲けのために科学的根拠がないことで人を騙そうとする輩がたくさんいるようですので注意が必要です。特にがん患者さんは彼らにとっては格好のターゲットです。情報は一つからではなく(例えば知人の勧めやネット情報)、できるだけ多くの情報を集めること、必ず医師に相談することが重要です。

これからもできるだけ多くの正確でホットな情報をアップしていきたいと思います(最近ちょっと更新回数が減少気味ですが…)。今年もよろしくお願いいたします!