2013年12月28日土曜日

仕事納め

昨日は仕事納めでした。

午前からの手術が終了した15時ころから外科の1年間の総括会議を行ないました。乳がんの手術件数は昨年とほぼ横ばいで、まだ新病院効果は現れていませんが、病院内外でのさまざまな医療活動には積極的に取り組むことができた1年だったと思います。来年はさらなる工夫で乳腺センターの発展を目指したいと思っています。

夜は外科の忘年会でした。N先生は残念ながら当直でしたが、関連病院のH先生や研修医数人も加わってけっこうな人数で楽しい時間を過ごすことができました。

今日からは土日も含めて年末年始の体制になります。病棟には、緩和病棟の2人の患者さんも含めて5人くらいは病棟での年越しになりそうです。私の病棟当番は30日だけですので、呼び出しがなければのんびりできそうです!

2013年12月25日水曜日

ワーキング サバイバーズ フォーラム〜がんと仕事〜 2014

今年の2月に行なわれた「ワーキング サバイバーズ フォーラム〜がんと仕事〜」ですが、来年も2014.2.9(日)に京王プラザホテルで行なわれます。今日、主催のピンクリボンin SAPPOROの事務局の方が見えてチラシを置いていって下さいました(写真)。


このフォーラムは、乳がんに限らず、様々ながん患者さんの就労問題について考えることがメインテーマです。このような取り組みを続けているCSRプロジェクトの桜井なおみさん、自宅でパソコン、インターネットを利用してのIT技術習得の訓練と就業支援を行なっているワイズスタッフの田澤由利さんの基調講演など、就労や労働問題に関するお役立ち情報が得られる貴重な機会です。終了後には懇親会もあります。

詳細は、HP(http://pinkribbonsapporo.web.fc2.com/)をご覧下さい。参加には事前申し込みが必要です。同HPの申し込みフォームをご利用下さい。また実行委員のいる病院にはチラシが置いてある場合もありますのでこれをご利用されてもけっこうです。

なお、このフォーラムの前には、北海道対がん協会のご協力を得て、無料マンモグラフィ体験(申し込み先着40名限定)が行なわれます。今までマンモグラフィを受ける機会がなかった方はこのチャンスをご活用下さい!

2013年12月19日木曜日

針生検で鑑別困難?

乳腺疾患の診断は、触診、画像所見、病理学的検索で行なわれます。

特に病理学的検査の比重は大きく、最終判断の根拠となります。病理学的検索方法には大きく分けて4つあります。

①細胞診…病変に細い針(21-22G)を刺して注射器で吸引して引けた細胞を見て元の病変が良性か悪性かを”推定する”検査です。あくまでも推定診断ですので、間違いということもあり得ます。画像検査との整合性がなければ無理に診断せずに次の手段に進むべきです(施設によっては細胞診をしないところもあります)。浸潤がんの場合はだいたいはこの検査で診断がつきます。

②針生検(CNB)③吸引組織生検(VAB)…14-18Gという太さの針で組織を切り取ってくるのがCNB、8-14Gという太い針を穿刺して側孔から陰圧をかけて吸引して切り取ってくるのがVABです。組織を直接診るので通常これが最終診断となりますが、乳腺疾患、特に乳管内乳頭状病変(乳管内乳頭腫や非浸潤がん)の鑑別診断は非常に難しいため、これらの検査を行なっても確定診断に至らないことがあります。特にCNBではVABに比べると組織採取量が少ないために、時に”鑑別困難”となるケースが出てきます。

④外科的生検(切開生検、切除生検)…病変の一部または全体を外科的に切除して病理検索する方法です。病理検索する量が②③に比べるとはるかに多いため、これは最終診断となります。昔は細胞診の精度が低かったため(診断できる医師や細胞診断士が少なかった)、しこりがあればすぐに外科的生検を行なっていた時代がありました。最近では上記の検査法が普及したため、確定診断に④を要するケースは非常に少なくなっています。ただし、どうしても診断がつかない場合や、仮にCNBで良性となっても分泌があるために切除が必要とわかっている場合などはCNBやVABをせずに外科的生検(Microdochectomyなど)を行なう場合もあります。

明らかな浸潤がんの場合は細胞診で診断がつきますし、非浸潤がんなどの場合でもCNBを行なえばだいたいは診断可能です。ただ上で述べたように数多くの乳腺疾患を扱っているとたまにCNBでも良悪の鑑別が難しい場合が出てきます。こういうケースで病理医が無理に診断しようとすると誤診が生まれる原因になります。私たちの施設では、このようなケースでは病理医と乳腺外科医でカンファレンスを行なって、必要があれば東京の坂元記念クリニックにconsultationをお願いすることにしています。VABや外科的生検を行なっても良いのですが、坂元乳腺クリニックには日本の乳腺病理の第1人者の先生方がそろっていますので、CNBの組織で確定診断ができれば患者さんの負担も少なくてすむからです。

最近、またそのようなケースが発生しましたので病理医に依頼して送ってもらいました。最終診断には少し時間がかかりますが、あっても非浸潤がんですので多少待っても大きな問題にはなりません。おそらく非浸潤がんだとは思うのですが、できればconsultationで最終診断がつくことを期待しています。

2013年12月16日月曜日

第22回日本乳癌学会学術総会 明日抄録締め切り!

来年の第22回日本乳癌学会学術総会は、7/10-12に大阪で開催されます。その抄録締め切りが明日に迫っています。

私自身は、かなり前にほぼ完成していたので最近は締め切りも忘れてだらだらしていましたが、N先生とG先生はなかなか抄録を送ってくれないので少し心配していました。昨日、ようやくN先生からの抄録が届いたので、少し修正を加えてほぼ完成することができましたが、G先生からはいまだに届いていません…(汗)。間に合うのか少し心配ですがきっとなんとかするでしょう。

私たちの病院のように症例数がそれほど多くない施設では、学会で報告できるような大規模な比較検討などはなかなか難しいのが実情です。今までも様々な問題意識を持ちながらテーマを探して報告してきましたが、症例数が少ないと言えることに限界があります。したがって自然と症例報告の発表の割合が増えてきてしまうのですが、W先生のブログなどを拝見すると最近の乳癌学会学術総会の傾向としては症例報告は地方会で!ということらしいです。

たしかに学会に参加していると、”どうしてこんなものが全国学会の演題になるんだ?”というような症例報告を見かけることはあります。質を高めることには反対はしませんが、症例報告だから地方会でという考え方はまだ早いように思います。規模の大きな研究は、できる施設が限られてしまいます。エビデンス重視の現代において勝手に民間施設で新しい治療法などを試みることもできません。多施設共同研究をすれば良いと言うかもしれませんが、日常診療に追われながらではなかなかできるものではありません。

と言いわけばかり書きましたが、結局今回の私の演題は症例報告です(笑)かなり貴重な症例だとは自分では思っているのですが、まあ落とされたら仕方ないと割り切ることにします!

2013年12月11日水曜日

乳腺術後症例検討会 29 ”年内最後!”

いつもは月末に行なわれるのですが、先月の月末の日程調整がつかず、今月末が年末ということもあって、今日、年内最後の乳腺術後症例検討会が行なわれました。

今日は院外からの参加者が多かったためか、会議室が一杯になりました。症例は、壊死が非常に強かった充実腺管がん、Mucocele-like tumorのように見えた非浸潤がん、超音波検査では1cmくらいの腫瘤径だったのに、最終病理では3cm以上の浸潤径があり、乳管内進展も著明だった硬がんの3症例でした。

何年もこの症例検討会を続けてきていつも思うのは、乳がんの診断は本当に難しいということです。良悪はもちろん、組織型、広がりなど、いつも勉強させられることばかりです。参加者にとってどのくらい役立っているのか不安になることもよくありますが、少なくとも私の目から見ると私たちの病院(関連病院も含めて)の放射線技師さん、超音波技師さんたちは成長してくれています。来年もさらなる飛躍を期待して、この検討会を継続していきたいと思っています。

2013年12月9日月曜日

癒しのヨガ

今日、午後から病院のホールでがんサロン開設記念のイベントとして、”癒しのヨガ”が開催されました。

講師にヨガインストラクターの方をお招きして、患者さんとご家族、職員にヨガの由来などのお話のあとで簡単にできるヨガの基本的を教えていただきました。とても体が硬い私としては最初からかなりの不安を持っていたのですが、患者さんが主な対象ということもあって、無理がかからないような優しいヨガを中心に教えて下さいました。

不安な時、イライラする時などに心を落ち着かせる呼吸法など、日常にとても役に立つことを教えていただきましたが、1回だけではすぐに忘れてしまいそうです(汗)とりあえず、”ベッドの上でも寝ながらできる簡単ヨガ”の方法を印刷した紙をいただいたのでさっそく今晩からやってみます(写真)。最近どうもイライラすることばかりでストレスがたまっていたのでちょうど良かったです!


そういえば患者さんたちと一緒に夢中になってヨガをやっていたので残念ながらイベント風景の写真を取り忘れてしまいました(汗)終わってから緩和病棟に回診に行くとちょうどヨガのインストラクターの方が見学にいらしていて、”今度ヨガの乳がんケアの研修を受けてくるんです!”と教えて下さいました。来年の1/25に札幌であるそうです(写真)。研修が終了してからでも今度は患者会でお招きしてみたいと思っています。

2013年12月2日月曜日

師走…

11月中旬に一度積もってからは比較的落ち着いていたのに、師走に入った途端、また雪が積もり始めています。毎年のことではありますが、私にとって天敵の冬がまたやってきました…(泣)

病院の方は、週末に消化器センターの臨時入院が多数入ったためベッド調整が厳しくなって師長さんが大変そうでした。乳腺センターの方は、手術患者さんはそうでもないのですが、ここ数日でかなり進行した乳がんの方が立て続けに入院したためにN先生は忙しくなっています。

それにしても、芸能人の闘病などがマスコミで話題になったり、映画化をきっかけにピンクリボン運動が広く認知されてきたにもかかわらず、何年も我慢してどうにもならなくなってから受診する乳がん患者さんはまったく減った感じがしません。数年前にしこりを自覚した時に受診してくれていたらと思うと残念でなりません。検診不要論、乳がん治療不要論を説く医師はこのような患者さんを診てどう思うのでしょうか?その時受診したとしても、手術と放射線や抗がん剤をされて苦しんだあげく、結局再発するから結果は同じだと主張するのでしょうか?まったく根拠のない暴論に惑わされないようにしたいものです。少なくともしこりが小さいうちに手術していたら、こんなに大きな胸壁の腫瘤による痛みで苦しむことはなかったはずです。来年はこのような患者さんが少しでも減ることを祈っています。


今週末は病院の忘年会のため、G先生は病棟の出し物の準備に追われています。毎年G先生が企画して病棟の看護師さんや外科医たちと一緒に頑張っています。ちなみに私は病棟の出し物には参加せず、化学療法室の席からこっそり見るだけにするつもりです(笑)

これからますます寒くなります。インフルエンザもそろそろ流行り出すはずです。しっかり栄養を摂りつつ、運動にも心がけて冬を乗り切りましょう!

2013年11月28日木曜日

授乳期乳がん

授乳している時期に発見された乳がんを授乳期乳がんと呼びます。”授乳期乳がん”という特別なタイプの乳がんがあるわけではなく、診断時期による分類です(妊娠期乳がんも同様)。

授乳期の乳がんは、一般の乳がんに比べて腫瘍径が大きく、リンパ節転移率も高く、予後が悪いと言われていますが、これは授乳期の乳腺はしこりを発見しにくいということが原因と考えられており、最近では病期をそろえると予後には差がないとする報告が多いようです(「乳癌診療ガイドライン 2013年度版」より)。”授乳期は血流が豊富なので進行しやすく予後が不良”とする意見もネット上ではあるようですが、十分な根拠がある意見ではないように思います。


ただ、授乳期乳がんの場合には、検査、治療に関していくつか注意しなければならない点があります。

①造影剤を用いた検査…造影CT(イオパミロンなど)は48時間、造影MR(ガドリニウム)は24時間、母乳中に造影剤が排出されると言われています。しかし、実際に母乳中に移行する造影剤の量は微量であり、経口摂取した造影時が乳児に実害を与えるかどうかについての情報は調べたかぎりではなく、問題ないとする見解もあるようです(http://kawaguchi-mmc.org/wp-content/uploads/mrimm.pdf#search='CT+%E9%80%A0%E5%BD%B1%E5%89%A4+%E6%8E%88%E4%B9%B3')。ただ、不明な点もありますし、添付文書上では授乳を避けるように書かれていますので、避けれるのでしたら授乳を控える方が無難であるとしか言いようがありません。

②核医学検査(骨シンチ、PET-CTなど)…核医学検査は放射線を出す核種というものを体内に入れて、集積した核種から出る放射線を感知して画像にする検査です。ですから、体内に吸収された核種からしばらくの間は放射線を放出しますので幼い子供さんを持っている方は注意が必要な場合があります。注意すべき点は、乳汁内に排泄される場合の内部被爆と母体に接近した場合の外部被爆の2つがあります。

以前は骨シンチ(テクネシウム)でも授乳は一定時間禁止となっていたようですが(今もテクネMDPインタビューフォームには、”注射した放射能の1.5~2.0%が乳汁中に排泄されるため,投与後最初の授乳は避けるべきであるという報告がある”と記載されています)、最新版のICRP(国際放射線防護委員会)Publication 106では授乳制限は不要となっているようです。PET検査も、24時間は授乳を避けるというネット上の記載が多いようですが(FDGスキャンの添付文書にも、24時間授乳中止と書いています)、帰宅2時間後に一度搾乳すれば飲ませても良いという記載も見受けられますので、実際に検査する医療機関でご確認下さい。なおPETで用いるFDGという核種もICRPPublication 106では、授乳を控える必要がないことになっています。

外部被爆(抱っこなどの子供との接触)についての核種別の具体的な記載はわかりませんが、一般的には検査当日または24時間はできるだけ接触を控えるようにと指導されるケースが多いようです。ただしこれも核種によって放射線を放出する半減期と体内にどのくらい残っているかという生物学的半減期が異なりますので一概に24時間赤ちゃんを抱っこしてはいけないとは言えないと思います。骨シンチの場合は、半減期が6時間と短く、比較的短時間に多くの核種が尿中にされますので、帰宅後にはかなり放射線量は減少しているものと推測されます。しかし、この点に関してテクネMDPの添付文書上は明確な接触禁止時間の記載がありませんので、個々で判断せざるを得ないのかもしれません。FDGスキャンの添付文書では、12時間は乳幼児との密接な接触を禁止と書いてあります。
結局どれを信用したら良いのか微妙な状況ですが、もしできるだけ被爆を避けたいと考え、授乳制限や接触制限が可能であるならば24時間は乳幼児との濃厚な接触時間をできるだけ短くするというのが良いのかもしれません。

③術前の断乳…「乳癌診療ガイドライン 2013年度版」には、”授乳期乳癌に関しては,術前にカベルゴリン,ブロモクリプチンなどの内服によりあらかじめ乳汁分泌を止めることが勧められる。”との記載があります。しかし、その根拠となる引用文献の記載はありません。手術前に断乳しなかった場合の問題点としては、
1.入院後の急激な断乳によって周術期にうっ滞性乳腺炎(対側も)が起きる可能性
2.乳房温存術を行なう場合、乳管が切離、閉塞してしまうことによって乳腺炎が起きる可能性
3.乳房温存術の場合、切離された拡張した乳管から母乳が創部内に流入して創部の治癒が遷延したり感染が起きやすくなる可能性
などが考えられます。

④抗がん剤、ホルモン剤の投与…抗がん剤(エピルビシン、シクロフォスファミド、タキソテールなど)、ホルモン剤(タモキシフェン)の投与を受ける場合は、授乳を中止しなければなりません(母乳に移行し、乳幼児への悪影響が予測されるため)。

赤ちゃんにとってとても貴重なお母さんとの接触が、乳がんという病気で制限されてしまうのは心が痛みます。しかし、赤ちゃんへの影響を最小限にしなければならないということもまたとても大切なことです。結局、秤にかけて判断せざるを得ないところもありますので、最終的には担当医からよく説明をお聞きになってからご判断下さい。

2013年11月18日月曜日

ティッシューエキスパンダー/インプラントを用いた乳房再建の学習会

今日、夕方からアラガン社の方が見えて、関係職員向けの乳房再建と製品(ティッシューエキスパンダー/インプラント)の説明会を開いて下さいました。

スライドを用いて、製品の種類と特徴、インプラントを用いた乳房再建の歴史と問題点などについて説明して下さったあとで、実際にサンプルに触らせてもらったり、生理食塩水を注入させてもらったりもしました。

いろいろお話を聞いた中で気になった点は、材料費として今回算定されたティッシューエキスパンダーとインプラントの保険点数では、実際に購入する値段をまかなえない、つまり、1人に挿入するたびに病院に持ち出しが生じるという点です(その他に手術手技料が算定されるのでその分をカバーはできますが…)。特にティッシューエキスパンダーでは顕著なようです。

アラガン社の方は、保険点数を上げてもらえるように申し入れをしていくと説明していました。私は製品の価格を下げることはできないのか?とごねてみましたが、欧米ではもっと高く販売しているから…とのことでした。しかし、今までのように主に豊胸術で使用されるだけではなく、今回の保険適用によって乳房切除後に使用される機会が増えるわけですから需要は大幅に増すと思います。売れ行きが良くなればもう少し価格を下げることができるのではないかと密かに期待しています(いずれ近いうちに他社製品も認可されるわけですし…笑)。

学会から正式な認定が決定されていたにもかかわらず、ごちゃごちゃと理不尽なクレームをつけてきた某役所のせいでのびのびになっていた乳房再建実施施設の認可がようやくおりました。これでようやくいつでも一次再建が可能となりました。あとは希望される患者さんを待つのみです!

2013年11月14日木曜日

再発巣がHER2陰性から陽性になった興味深い症例

以前ここでも紹介したことのある患者さんですが(http://hidechin-breastlifecare.blogspot.jp/2012/07/her2her2.html)、原発巣、鎖骨上リンパ節再発巣ともに免疫染色でHER2(2+)にてFISH法にまわしましたがともに陰性だったため、再発後もER陽性、HER2陰性乳がんとしてホルモン療法を中心に治療を行なってきました。

しかし、ホルモン療法に対する反応が鈍く、一時的に縮小するのですがすぐに再燃を繰り返すため、やむを得ずハラヴェンに変更しましたがやはり再増大をきたしてしまいました。

当初の予定では、ホルモン療法でできるだけ縮小させてから放射線治療の方針だったのですが、もう待てない状況となってしまったため、放射線治療科のDrと相談の上で、可及的に再発巣(鎖骨上、胸骨傍リンパ節)を切除することになりました。

手術は無事終了し、病理結果を確認したところ、今度もER陽性のままだったのですが、HER2が(3+)という結果で返ってきました。前回も書いたように、この患者さんは血清HER2が一時陽性に出たため、実はHER2陽性なのではないかと内心では思っていたのです。どうして原発巣と前回の生検ではHER2陰性という結果が出たのかは不明です。標本の固定法を含めた測定法の問題なのか、モザイク状に存在するHER2陽性細胞の少ない部分を採取、測定したのか、それとも治療によってHER2陰性から陽性に変化したのか…。

いずれにしてもHER2陽性なら今までの治療に抵抗性だったのも納得できます。幸い遠隔臓器には再発はありませんので、今後は局所に放射線治療を加えた上で、強力な抗HER2療法(ハーセプチン+パージェタ)+抗がん剤(ドセタキセル)→アロマターゼ阻害剤(アロマシン)で再発巣の根治を目指します。再燃の繰り返しでかなり頭を悩ませていましたが、これで光が見えてきたような気がします!

今回のケースのように、治療を繰り返すうちに、または測定法の問題などから、ホルモンレセプターやHER2が変化することがあります。効くはずと思った治療がなかなか効果が見られない場合は、簡単に採取できる再発部位があれば生検をしてレセプターの再検索をするのも一つの方法です。

2013年11月10日日曜日

乳房温存術後の寡分割照射法に関する長期成績(START-A/START-B)

国内外のガイドラインにおいて、乳房温存術後には残存乳房への放射線照射が推奨されています。標準的には、総線量45~50.4Gy/1回線量1.8~2.0Gy/4.5~5.5週の照射が行なわれていますが、1ヶ月から1ヶ月半、毎日のように通院しなければならないのは患者さんにとってはけっこうな負担となります。

そのため、1回の線量を増やして回数を減らす、寡分割照射法(少分割照射法)が各国で検討されてきました。今回はその10年経過時点での成績が、英国のJohn R. Yarnold教授らの研究グループによってThe Lancet Oncology に報告されました(The Lancet Oncology 2013; 14: 1086-1094)。

概要は以下の通りです。

臨床試験名:
START-A/START-B

研究手法:
ランダム化比較試験

内容:
START-A 50Gy/25回/5週,41.6Gy/13回/5週,39Gy/13回/5週の3者を比較(1回線量を増やして回数は減らすけど照射期間は同じ)
START-B 50Gy/25回/5週,40Gy/15回/3週の2者を比較(1回線量を増やして回数も照射期間も減らす)

結果(10年経過時点):
START-A 局所再発率 50Gy群7.4%,41.6Gy群6.3%,39Gy群8.8%と有意差なし。周囲の正常乳房組織の損傷はほとんど同等。
START-B 局所再発率 50Gy群5.5%,40Gy群4.3%と有意差なし。照射期間が短い40Gy群では,正常組織の損傷が有意に少なく,5年時点で見られた生存に対する効果が依然として維持されていた。

*これらの結果は,年齢,腫瘍Grade,病期,化学療法の有無,腫瘍床へのブースト照射の有無には関係していなかった。

つまり、このデータからは、少なくとも心配された局所の有害事象(皮膚の収縮、浮腫、血管拡張など)の増加はみられず、むしろ減少する可能性を示しており、局所成績も標準照射法に比べて同等であるという可能性を示す結果と言えます。ただし、日本人の体型でも同じ結果が得られるかどうかは不明ですし、心臓や肺に関する有害事象はabstractからは確認できませんでした(近日中に原文を読んでみます)。現在日本でも「乳房温存療法の術後照射における短期全乳房照射法の安全性に関する多施設共同試験(JCOG 0906)」が行なわれていますので、実臨床に取り入れるのはこの結果を待った方が良さそうです。ただし、患者さんの状況によっては(遠方、高齢など)、オプションとして寡分割照射が行なわれる機会がこれからは多くなるのかもしれませんね。

ちなみに「乳癌診療ガイドライン ①治療編 2013年版(日本乳癌学会編)」においては、以下のようになっています。

<推奨グレード B>
「50歳以上,乳房温存手術後のpT1―2N0,全身化学療法を行っていない,線量均一性が保てる患者では勧められる。」
<推奨グレードC1>
「上記以外の患者には,心臓等への線量に留意し,細心の注意のもと行うことを考慮してもよい。」

これは、米国放射線腫瘍学会(American Society for Radiation Oncology;ASTRO)における「50歳以上,乳房温存手術後のpT1-2N0,全身化学療法を行っていない,中心軸平面での線量均一性が±7%以内の患者については,寡分割照射も従来の照射と同等である」との報告に基づいているようです。今回のSTARTの結果を受けて、次回のガイドラインでは年齢などの制限がなくなって推奨グレードBになるかもしれません。

2013年11月6日水曜日

放射線治療の有害事象2 「肺障害(放射線肺臓炎、BOOP様肺臓炎」

乳腺領域の放射線治療でもっとも注意が必要な有害事象が放射線による肺障害です。

代表的なのは「放射線肺臓炎」です。これはふだんよく聞く「気管支肺炎」とは違います。簡単に言うと風邪がこじれたりしてウイルスや細菌による気管支の炎症が気道内を進展して肺胞にまで及んだのが気管支肺炎です。一方肺臓炎というのは、間質性肺炎とも言いますが、空気の通り道(気道)の外側の間質に起きた炎症です。薬剤性や放射線によるもの、そして原因のはっきりしない特発性などがあります。

間質性肺炎の特徴は、痰をあまり伴わない乾いた咳と呼吸困難で発症することです。抗生物質は無効です。放射線に伴う放射線肺臓炎は、多くは照射中から照射終了後3ヶ月くらいの間に発生します。乳房温存療法後の発生率は、0.04%とか1-2%などと報告されていますが、これはおそらく症状を呈した症例の頻度だと思います。実際は術後のCTを撮影してみると無症状の肺臓炎はけっこうな頻度(70%という記載もあります)で見られます。治療は無症状の場合は経過観察です。呼吸困難などの症状が強い場合はステロイドを投与しますが、乳房照射後では非常に稀だと思います。

もう一つ重要な放射線治療関連の肺障害は、BOOP(bronchiolitis obliterans organizing pneumonia)様肺臓炎(radiation induced BOOP syndrome)です。これは照射終了3ヶ月後以降(1年以内)に主に起きます(6ヶ月以内が約90%)。国内での乳房温存術後照射症例の調査では、その頻度は1.8%と報告されています(http://www.cancerit.jp/xoops/modules/pubmed/index.php?page=article&storyid=215)。この疾患の特徴としては、放射線照射野外に炎症像をきたすことです。この炎症像は時間とともに移動(遊走性肺臓炎)することがあります。

このBOOP様肺臓炎も無症状の場合と強い症状を呈する場合があります。CT上、炎症像は1-4ヶ月で改善傾向を示し、5-12ヶ月で消失することが多いようです。治療は症状があればステロイドを使いますが、ステロイド治療症例は再燃症例が多いという報告もあるようです。またタモキシフェンとの関連を指摘している報告もありますが、エビデンスレベルはあまり高くないように思います。

私が経験した有症状のBOOP様肺臓炎は1例のみです。初診時の検査ではマイコプラズマ肺炎かなと思われるような所見でしたが、最終的にはBOOP様肺臓炎という診断となりました。この患者さんは、呼吸困難症状があったためステロイド治療を要しました。放射線治療が終了してしばらくたってから(1年以内)風邪症状(咳、呼吸困難、発熱)が出現した時にはこの疾患も頭に入れておく必要があります。

2013年11月4日月曜日

Breast Cancer Symposium 2013 in Tokyo

11/2(土)に東京でC社主催のシンポジウムがありました。

会場は、非常に大きなホールがいくつもあるような新しい豪華なホテルでした。参加者はおそらく700-800人くらい?いたかもしれません。会場では旭川のI先生とお会いしたので一緒に聴くことにしました。

内容は大きく2つに分けられており、Session1がHER2陰性乳がん、Session2がHER2陽性乳がんの治療に関するものでした。とは言っても、その両方のSessionともにC社の製品に関する話がほとんどでありました(苦笑)

Session1に関しては詳細は書きませんが(もしかしたらそのうちご高名な腫瘍内科のW先生がブログにお書きになるかもしれませんが…)、ちょっと誤解を招くような内容と話の流れのように感じました。一度ここにその詳細を書いたのですが、いろいろ考えた末に削除しました(あくまでも個人的な感想ですので…)。

Session2に関しては期待の新薬2つに関する基礎から臨床試験に関すること、副作用に関する注意点、そして今後の使い分けに関するdiscussionが行なわれました。今までの知識の整理と今後の自分たちの治療指針を立てる上でとても役に立ったと思います。

終了後に、シンポジウムがあったホールと同じくらいの広さがある場所での懇親会がありました。立食でしたが、食事もワインもとても美味しかったです(笑)。何人かの知人の先生方とお話しし、C社の担当の方々ともいろいろ話をしてきました。

翌朝、チェックアウトしようとしたら、G病院時代に一緒に研修した、宮崎のB病院のF先生に偶然会いました。タクシーに乗りながら久しぶりにゆっくり(でもないですが)話ができて良かったです。

今年発売された抗HER2薬、そして来年発売予定の抗HER2薬…。これら高価な薬剤をいかに有効に患者さんに使用していくか、組み合わせや順番、投与期間、副作用の問題など、なかなか難しいところもあります。ただ言えるのは、私たちは公平な立場でこれらを評価していかなければならないということです。今回のシンポジウムではそのことを一番強く感じました。

2013年11月1日金曜日

乳腺術後症例検討会 28 ”非浸潤性小葉がん”

今週の水曜日は定例の乳腺術後症例検討会でした。

今回も症例は4例でした。

1例目は、ご本人のお話では約20年の経過のある10cm大の葉状腫瘍の症例でした。針生検では良性葉状腫瘍の診断でしたが、最終診断は、一部に核分裂像の多く見られるところがあったため、悪性葉状腫瘍と診断された症例でした。もしかしたら長い経過の中で、線維腺腫→良性葉状腫瘍→悪性葉状腫瘍と変化してきたのかもしれません。

2例目は、浸潤性乳管がんの術前検査のMRで別の部位に病変が認められ、2回目の超音波検査と針生検で非浸潤性小葉がんと診断され、術後の標本でも浸潤部分は伴わず、2個の別々のがんの1つが非浸潤性小葉がんだったケースでした。非浸潤性小葉がんが発見されるのは、乳がんの手術標本内に偶然合併しているのを指摘されるか、微細石灰化のステレオガイド下生検で診断される場合がほとんどだと思います。今回のように超音波検査(2回目でしたが)で病変が描出され、術前に非浸潤性小葉がんと診断されたケースは非常に珍しいのではないかと思います。調べてみても、非浸潤性小葉がんの超音波画像というのはほとんど検索できません。今回のケースは、発見された時には広く拡がっていることが多い浸潤性小葉がんの前段階を現しているのではないかと考えています。非浸潤性小葉がんは米国ではいわゆる”がん”の扱いにはなっていません。浸潤がんのリスク因子の一つと捉えられているだけです(このあたりはわかるようでわからない話なのですが…)。でも浸潤性小葉がんには必ずその前段階があるはずです。一律に非浸潤性小葉がんを”がんではない”と軽んじて良いのだろうかと私は少し疑問を感じています。

3例目は、妊娠期に発見された乳がん症例でした。妊娠中のため、マンモグラフィは施行しなかったので画像的には超音波検査のみでしたが、拡張した乳管内に病変が非常に広く広がっていました。

4例目は、マンモグラフィで石灰化の集簇と構築の乱れを呈し、超音波検査では乳頭に至るまで乳管の拡張を伴っていた症例でした。

今回も院外から3人の参加がありました。今年もあと2ヶ月、12月は症例検討会はない予定なので残りは1回です。月日が経つのは本当に早いですね!もうすぐ大嫌いな冬がやってきます…(泣)

2013年10月28日月曜日

放射線治療の有害事象1 「放射線皮膚炎」

乳がん術後の放射線治療でもっともよく見られる有害事象は皮膚障害です。

放射線治療は抗がん剤と同様に細胞周期の速い細胞に影響が出やすいため、骨髄細胞や消化管粘膜、そして皮膚の基底細胞などが障害を受けます。その症状は、軽度(第1度皮膚炎)では皮膚の発赤、乾燥、かゆみ、脱毛が出現します。そして徐々に発赤の悪化、腫れ、痛みが出現し(第2度皮膚炎)、第3度皮膚炎になると水泡、びらん、出血、そして第4度皮膚炎では、潰瘍、壊死が起きる場合もあります。第4度皮膚炎を起こすことは非常にまれで、私はまだ経験がありません。

ブースト照射を追加しない場合の皮膚障害の場合の多くは第1-2度の一時的な皮膚炎です。ただ第2度皮膚炎では、色素沈着や皮膚の乾燥状態はは1年くらい続くことが多いような印象です。ブースト照射を追加した場合の線量は60Gyくらいになるため、時に第3度の皮膚炎を起こします。この場合はしばらく痂皮化したような状態(ひどい日焼けのあとで皮が剥ける前のような状態)が続き、血管拡張や皮膚の萎縮をきたすこともあります。

対処法は、施設によって様々なようですが代表的な対処法は以下の通りです。
・軽度のほてり、かゆみ、ひりひり感→まずは冷庵法を試します。氷嚢、アイスノン、濡れタオルなどを使用します。
・皮膚乾燥→ワセリンの塗布。
・かゆみや発赤などの炎症が強い場合→症状に応じてアズノール、またはアズノール+ステロイドの軟膏を使用。
・皮膚剥離やびらん→アズノール+抗生物質の併用。
・皮膚潰瘍、壊死→皮膚被覆剤の使用や植皮などの形成外科的治療を検討。

軟膏については、医師の指示に従うこと、放射線治療前には洗い流しておくことが大切です。軟膏を塗ったまま放射線照射を受けると皮膚障害がかえって強く出る場合があるようです。

このようなことを書くと放射線治療が怖くなる方もいらっしゃるかもしれませんが、ほとんどの場合の皮膚炎は時間とともに軽快し、色調の左右差も目立たなくなってきます。また、それでも気になる方にはスキンカモフラージュという方法もありますのでご興味のある方は検索してみて下さい。

2013年10月19日土曜日

明日は”ジャパン・マンモグラフィー・サンデー(J.M.S)”

明日はJ.POSHが全国の医療機関に呼びかけて日曜日にも乳がん検診を受けれるようにと数年前から始まった”ジャパン・マンモグラフィー・サンデー(J.M.S)”です(http://jms-pinkribbon.com/)。

私たちの施設と関連施設でもこの運動に賛同して毎年行なっています。今回も乳腺外科医3人が3カ所の病院で乳がん検診を行ないます。私はいつも関連病院の担当で、G先生は本院、N先生は釧路に出張しています。

今年は例年以上に乳がん検診受診者数が多い印象です。関連病院のマンモグラフィも週1回の外来の時だけでは読影が困難なので、今日も外来はなかったのですが行ってきました。無料クーポンが報道通りに来年からなくなってしまったら検診受診率が減ってしまうのではないかと少し心配ですが、現時点でも日常診療を行ないながらすべての検診マンモグラフィをダブルチェックするのはなかなか大変です。検診受診率はもっと増やしたいのですが、精度を落とさずにマンモグラフィを読影する工夫が必要だと思っています。

とりあえずやれる範囲内で頑張ります。乳がん検診が無意味だと主張する人たちをなんとか日本の検診データで説得したいものです。

2013年10月16日水曜日

速報! アナトミカルタイプの人工乳房(インプラント)が承認!

今年、ようやく一次再建、二次再建に対する皮膚拡張器(ティッシューエキスパンダー)と人工乳房(インプラント)が保険適用となったことはここで何度かご紹介しました。

ただ、皮膚拡張のために挿入するティッシューエキスパンダーがアナトミカルタイプ(自然な乳房の形に近いしずく型)が承認されたにもかかわらず、当初承認されたインプラントは、ラウンドタイプというちょっと上側の立ち上がりが急峻な丸いタイプのみでした。これに関しては承認に至る様々な事情があることは聞いていましたが、私たちとしてはなんとか早くアナトミカルタイプのインプラントを承認して欲しいと思っていました。

噂では来年春くらいにはアナトミカルタイプが承認されるのではないかと言われていたのですが、インプラントの発売会社のアラガン・ジャパン担当者から、”昨日、ゲル充填人工乳房「ナトレル® 410 ブレスト・インプラント(医療機器承認番号:22500BZX00460000)」(アナトミカルタイプ)の製造販売承認を厚生労働省から取得した”というメールが届きました。

実際の発売は来年度第一四半期?くらいになりそうですが、これでより美しい乳房を再建するための選択肢が増えることになります。目処が立ったので、これからはとりあえずティッシューエキスパンダーを挿入しておいて、拡張しながらアナトミカルタイプの発売を待つということができそうです。

2013年10月15日火曜日

リンパ浮腫チーム

今日、リンパ浮腫治療の今後の方針を決めるカンファレンスを行ないました。

乳がん術後のリンパ浮腫は一度発症してしまうと完治はなかなか困難です。施設によってはリンパ浮腫外来を行なっているところもありますが、現在の診療報酬では力を入れるのは困難な状況ですので、結局自費診療でやっている施設がほとんどで、しかもかなり混雑しています。日常診療では十分な時間をかけて指導することは困難で、結局重度のリンパ浮腫は専門施設にご紹介する場合がほとんどでした。それも経済的に余裕がある方に限られますので入院中の患者さんに対しては一定の研修を受けた化学療法室の看護師が適宜対処するくらいが精一杯でした。

この間がん診療委員会でそういう問題に対して検討してきたのを受けて、リハビリ技師が2人研修を受けてきました。研修を受けたことによって彼女たちはリンパ浮腫に対する問題意識を持ってくれたようで、術前後のリンパ浮腫に対する予防の指導を始め、リンパ浮腫の治療にも取り組んでくれることになりました。まだまだ経験は不十分ですが、これから病棟、外来の看護師たちと連携しながら軽度から重度までのリンパ浮腫の治療に対しても彼女たちが中心になって頑張ってくれそうです。

今日の会議ではとりあえず術前後の指導を徹底することと、軽度のリンパ浮腫に対する外来での治療の流れについて検討しました。今後は病棟看護師にも会議に参加してもらって重度のリンパ浮腫に対する入院治療に関しての流れを検討する予定です。

これからも乳腺外科医、緩和治療医、リハビリ技師、外来・化学療法室・病棟看護師でリンパ浮腫チームを作って少しでも治療の室を高める努力をしていきたいと考えています。

乳がん検診の現況と社会情勢とマイブーム

ここのところ病棟は比較的落ち着いています。外来は検診の数が相変わらず多くて(特に関連病院)今日も外来をこなしながら大量のマンモグラフィを読んできました。

そう言えば40-60才まで5才ごとに配られていたマンモグラフィの無料クーポン券が来年から40才のみになるような報道がこの前新聞に出ていました。ただネット上で検索しても公式な厚生労働省の見解は見つけられませんでした。どうなるんでしょうね…。財政的に余裕があれば対象者の検診全てを無料にすればいいのにと思うのですが現状では難しそうですね。せっかくようやく日本でも乳がん死亡率が低下する兆しが見えてきたところですのでこの流れは止めたくないものです。

悲惨なニュースも多くてなかなか明るい話題がない日々が続いていますが、自分なりに気分転換は心がけています。つまらない話ですが、最近のマイブームをご紹介します。

①紙兎ロペ…フジテレビの”めざましテレビ”で朝7:00前くらいに放送されているアニメ。紙兎の主人公ロペとアキラ先輩(むしろこっちが主人公?)のやりとりがなんともいえない癒しです(笑)。でも監督が内山勇士さんから変わってからなんとなく雰囲気が変わった印象が…。写真は娘がロフトで買ってきてくれたクリアファイルです!



②ふなっしー…最近”笑っていいとも”でも準レギュラー?で出ているようですね!非公認なのに頑張っているから応援しています!なぜか家にはふなっしーグッズがいっぱいあります(笑)

③斉藤和義…最近よく聞いています。先日アルバムをレンタルしてきて車の中でも聞いています。CMでも使われていますが”Always”いいですね!”ずっと好きだった”の替え歌があるのを知っていますか?もう2年も前にアップされたものですが、最初にYou Tubeで見つけた時にはその歌詞にびっくりしました。自分の考えをきちんと主張する彼は勇気があります。批判する人たちもいることを知っていながらなかなかできることではありません。


乳がんと闘っているとどうしても気分は重くなってしまいがちです。たしかに病気について考えることは大切なことですが、気分転換も必要ですので何か夢中になれるもの、笑えるようなものを見つけましょう!

2013年10月12日土曜日

昨夜はイタリアンで病院連携!

昨夜はいつも大変お世話になっているD病院形成外科のE先生からのお誘いで、D病院のH院長先生、形成外科のI先生との会食でした。場所は、E先生に誘われて何度か行ったことがあるすすきののイタリアン&ワインのお店V。この店は美味しいイタリアワインが手頃な値段で飲めて料理もとても美味しいので私のお気に入りです。

I先生とは一度面識はあったのですが、H先生は実際にお会いするのが初めてだったので私は少し緊張していました。でもとても気さくな先生ですぐにリラックスした雰囲気で楽しい時間を過ごすことができました。ちなみにH先生の弟さんは私の大学の同期で、現在K病院で乳腺外科をやっている乳腺仲間です。

会食では手術に関する話はもちろん、病院経営や人事に関する話など医療に関する話題が中心でしたが、それ以外にもとても勉強になるお話を伺うことができました。夢中になって話していたら、あっという間に4時間以上たっていました。その間にいつの間にかスパークリングワイン1本、赤ワイン3本が空になっていました(汗)。I先生は女性ですが、ほとんど酔った感じはなく、けっこうお酒は強そうでした(笑)

最近はますますE先生にご紹介する患者さんが増えています。北海道は首都圏などに比べると乳房再建に対する要望が少ないと言われてきましたが、少しずつ変わってきているのかもしれません。今も数人再建予定の術前術後の患者さんが待機しています。またやっかいな乳輪下膿瘍の患者さんの手術も快く受けてくれますので本当に助かっています。これからも患者さんにとってベストの選択ができるようにE先生と良い連携を取りながらやっていきたいと思っています。

2013年10月6日日曜日

「大丸・松坂屋ピンクリボンキャンペーン2013」

10月は乳がん検診の啓発活動を全国で展開するピンクリボン月間です。今日は、H病院のO先生からのお誘いで、大丸札幌店の3Fで行なわれたピンクリボンキャンペーンのお手伝いに行ってきました。



14:30まではO先生、その後18:00までは私がブースで待機して、訪れたお客さんに自己検診模型を使った触診の方法の説明や、病院・検診機関のかかり方や若年者の乳がん検診についてなどのご説明をしました。

午前中の来客数は比較的少なかったようですが、私が担当してからは結構な数の女性がブースを訪れてくれました。特に目立ったのはベビーカーを押した比較的若いお母さんグループやご夫婦でした。やはり40才未満の女性の乳がん検診方法が確立していないことが背景にあるようです。お母さんが乳がんで手術したというような家族歴のある方もいらっしゃいました。一緒にいらしたパートナーの方々も興味深そうに触診モデルに触れていってくれました。

若年者の検診に関しては、現時点の対応としては自己検診を定期的に行なって気になることがあればすぐに乳腺外科を受診すること、会社の健診でマンモグラフィや超音波検査を受けることができる場合は有効活用して良いですが、その検診精度の限界と有益性が確立していないことを理解した上で受けることなどについてご説明しました。

トータルでは50名くらいの方がブースを訪れて下さり、イベントとしては成功だったのではないかと思います。なお、このブースにも置いていましたが、大丸のマスコットキャラクターのさくらパンダを使ったピンクリボンピンバッジはなかなかかわいいです!10月中は大丸で売っているようですので(200円)興味ある方は是非大丸でゲットして下さい(私は5個買ってきました 笑)。


(写真は大丸・松坂屋ピンクリボンキャンペーンHPより転載 http://dmdepart.jp/pinkribbon/)

ブースには偶然私の患者さん(Mさん)のご友人がいらっしゃって、その後連絡を受けたMさんまで来店して下さったり、製薬会社(N社)の方が私用でたまたま通りかかってわざわざピンクリボンピンバッジを買いにきて下さったりというサプライズもありました。3時間半ほぼ立ちっぱなしではありましたが、大丸の社員の方々や、マンモグラフィの器械の説明をして下さっていたT社の方などと交流しながら楽しい時間を過ごすことができました(笑)。

2013年10月2日水曜日

ご自身の病状に関するご質問について

このブログを始めて4年半ほどが経過しました。おかげさまでたくさんの方々に訪問していただき、温かいコメントもいただいてなんとかモチベーションを保ってここまで続けてこれました。

書き込んでいただいたコメントのほとんどは、ブログの内容に関することなのですが、時に記事の内容と関係のないご自身の病状に関する質問がコメントされることがあります。診断や治療に関して悩んでいることは十分に理解できますので、今まですべてのご質問に 対して私がわかる範囲でお答えしてきました。

しかし、最近このようなご質問が非常に多くなってきており、ここ数年ずっと悩んでいました。このようなご質問にお答えする際には、私も文献やガイドライン、インターネットなどを調べなければならないことがあります。無責任に適当なことをお答えするわけにはいかないからです。そういう質問が複数同時に来るとかなりの時間を要してしまいます。本当はこのようなご質問を寄せる場を設けて、多くの疑問にお答えできれば良いのですが、なかなか時間的には厳しいのです。

このブログは、乳がんに関する情報を提供する目的で始めました。患者さん個人個人の医療相談やセカンドオピニオンを主目的にしているわけではありません。また、患者さんからの一方向の情報では正確にお答えすることはできません。セカンドオピニオンであるなら、主治医からの病理所見や検査データなどの資料が必須です。インターネットは気軽に聞けると思われるかもしれませんが、答える側としては非常に神経を使うものなのです。

さらに、本来主治医に聞くべき内容なのにここで質問される場合も多いです。主治医には聞きにくいと思っているのだと思いますが、主治医と風通しの良い関係を築くことは大切なことです。納得がいくまでまずは主治医に聞いてみて下さい。メモをあらかじめ用意しておくとスムーズに話は進むと思います。

以上を踏まえた上でもやはり疑問が解消されず、参考程度でも良いので意見を聞きたいという場合には、コメントでご質問いただいてもかまいませんが、画像やデータの不十分な中でお答えできる内容には限界があることを是非ご理解下さい。

2013年9月29日日曜日

患者会温泉1泊旅行 2013 in 定山渓温泉

昨日から1泊で患者会旅行に行ってきました。かなり前から年1回日帰りの温泉旅行には行っていましたが、1泊で行くようになってからは今回が4回目です。2010年は定山渓、2011年は朝里川温泉、2012年はニセコ温泉、そして今回はまた定山渓温泉でした。

昼過ぎに病院からバスで定山渓に向かいましたが、天気もまずまずで良かったです。ホテルSに到着後、みんなで付近を散策してきました。前回も歩いた場所ですが、今回はメンバーも少し異なるのでまたかっぱ大王のいる二見公園に行ってきました。




散策後、入浴タイムを取ったらもうすぐに夕食の時間になりました。急用などで直前に3人がキャンセルになってしまったのは大変残念でしたが、総勢22人でにぎやかな宴会でした。



今回は宴会場を貸し切っての夕食で、カラオケセットも借りてくれていました。患者さんたちもG先生も看護師さんたちも美声で宴会を盛り上げてくれ、楽しい時間を過ごすことができました(私は今回もまた…笑)。N先生にも皆さんがリクエストしていたのですが、今回は残念ながら時間切れとなってしまいました。来年こそは必ず!(笑)



宴会時間終了後は、私たちの部屋に集まって遅くまで飲みながらカードゲームやおしゃべりで大騒ぎでした(隣室の宿泊客には大変ご迷惑をかけてしまったと思います…汗)。普段はなかなかゆっくり患者さんとお話しすることができませんので患者会旅行は貴重な時間だと思います。初対面の患者さんたちもいる中、看護師さんたちも積極的に話の輪に加わってくれて良かったです!

今回の旅行では、患者会としてのがんサロンの利用法についても少しお話をしました。患者会の存在と活動内容を術後の患者さんたちに知っていただいて、もっと多くの方に入会してもらうためにはどうすれば良いのかということについて少し提案もさせていただきました。今回は、最近手術した2人の患者さんも初めて参加して下さりとてもうれしかったです。来年はさらに多くの患者さんに参加していただけるように、スタッフみんなで患者会のサポートを頑張りたいと思っています。

参加された患者さん、スタッフの皆さん、お疲れさまでした!

2013年9月27日金曜日

ホルモン陽性乳がんの長期再発予測

最近、術後の内分泌治療の投与期間(5年または10年、それ以上)がホットな話題になっています。ここでもタモキシフェンの10年投与の有益性の報告について書きましたのでご記憶の方もいらっしゃるかと思います。

ただ、すべてのホルモン陽性乳がん症例に10年投与が必要かどうかは結論が出ていません。術後長期にわたって再発する可能性が高い群を抽出できれば、適切な10年投与群を選別できるのですが、まだその抽出方法は確立されていません。

今回Lancet(2013.9.13 オンライン版)にこの件に関する興味深い報告が掲載されました(http://www.thelancet.com/journals/lanonc/article/PIIS1470-2045(13)70387-5/abstract)。

簡単に内容をご紹介すると、ホルモン陽性、リンパ節転移陰性乳がん665人の標本を検査し、「オンコタイプDX 」と「ICH4遺伝子シグネチャー」、そして「BCI(breast cancer index)」という3つの遺伝子解析方法を用いて術後の再発リスクに関して比較検討したところ、5年目までの再発リスクはどれも同じように予測可能でしたが、長期の再発リスクに関してはBCIのみが予測できたということです。

「BCI(breast cancer index)」というのは、7つの腫瘍特異的遺伝子の発現レベルに基づくバイオマーカーです。まだもちろん一般的な検査ではありません。Online版では詳細なデータはわかりにくいのですが、これが再現性のある結果であると判明したら、患者さんごとに適切な内分泌療法投与期間を提示できることになり、非常に有用ではないかと感じました。今後のさらなる研究に期待したいところです。

2013年9月25日水曜日

乳腺術後症例検討会 27 ”祝 ご出産&還暦第2弾&症例集!”

今日は定例の乳腺症例検討会がありました。

症例はいつもの4例。症例的にはものすごく珍しい症例はありませんでしたが、当院初のステレオガイド下バコラ生検で非浸潤がんの診断がついて手術をした症例は、何年間も不変だった淡い石灰化に多形性の微細石灰化が加わって診断されたというなかなか興味深い症例でした。結果的には壊死型の非浸潤がんの周囲に乳腺症に伴う石灰化があり、おそらくこれが長い間不変だった石灰化だと推測されました。
もう1例、一見硬がんのように見えた浸潤性小葉がんの症例でPaget様進展(乳管内の乳管上皮細胞と筋上皮細胞の間をがん細胞が広がっていく、浸潤性小葉がんでみられる進展形式)で断端陽性になったケースは広がり診断という意味で難しい症例でした。

今回は、製薬会社のC社の担当の方が、個人的な乳腺疾患の勉強のためということで初めてこの症例検討会に参加されました。抗がん剤と乳腺疾患の診断は直接は関係ないはずですが、彼はいくつもの乳がん検診の啓発イベントにもプライベートの時間を使って参加していますし、とても勉強熱心なMRさんです。少しでもお役に立てたならうれしいです。

そして今回の症例検討会では、現在産休中のM技師さんの初出産とN技師さんの還暦といううれしい?報告がありました。M技師さんには育児はしっかりやりつつもできるだけ早く戻ってきてこれからの乳腺超音波の中堅として頑張って欲しいと思っていますし、N技師さんにはまだまだ体力の続く限り超音波技師として頑張って欲しいと願っています(彼女はマンモグラフィの読影にも鋭い意見を発してくれます 笑)。

今回の症例検討会ではついに70回という節目を迎えました(初回から約7年)。今日は、以前から中心メンバーとして頑張ってくれている超音波技師のTさんとEさんが、今までの症例検討の中から厳選して組織型別の症例集を作ってお披露目してくれました。長い月日をかけて時間外に作業をしてくれた2人には感謝しています。これからは100回記念に向けてこれをもっと充実させて対外的にも役立てるものに発展できればと思っています。

2013年9月20日金曜日

Second opinion

以前は、もうすでに手術の日程が決まっているのに突然、”他の病院で手術をすることにしたので入院をキャンセルして欲しい”という連絡が入ったこともありました。そのたびに”何が悪かったのだろう…”とショックを受けていたものです。やはり有名病院やクリニックでの診断は信用するけど私たちのような一般病院では信用できないのだろうか…とずいぶん悩みました。

G病院から戻ってからのこの15年あまり、私たちの病院でも乳がんの診療を頑張っているんだということをアピールするために、さまざまな活動を行ってきました。学会活動や研究会への参加はもちろん、ピンクリボン運動、With youなどの患者さん関連のイベント、マスコミへの出演、Web上の活動など、考えうる限りで努力してきました。その甲斐あって、札幌の乳腺外科の先生方には顔を覚えていただけましたし、臨床試験の策定に関する活動に声をかけていただいたり研究会の症例提示の依頼をしていただけるようにもなれました。

一方その間にセカンドオピニオンという考え方も徐々に普及し、私たちの患者さんへの説明の方法も変化してきました。セカンドオピニオンが認知された最近では、こちらから”セカンドオピニオンのご希望があればご紹介します”とあらかじめご説明するようにしています。こちらからお話しすると以前のように黙って他の病院に受診してしまうことがなくなりますし、同じ検査を2回も3回も受ける必要がなくなり患者さんの負担も軽減します。

それでもセカンドオピニオンという概念が出始めたころは、セカンドオピニオン=転院と考えていた患者さんも多かったですので、一度セカンドオピニオンを受けてしまうと戻ってこないケースもありました。しかし、最近では本当のセカンドオピニオンが行なわれるようになってきたような印象を受けます。紹介先の先生もよく知っている先生方ですので、こちらの診断・治療方針には問題ないと説明して下さり(追加のアドバイスを下さる場合もあります)、患者さんもこちらで安心して治療を受けて下さるようになってきました。

最近も2人、セカンドオピニオン後にこちらで手術を希望されたケースがありました。SクリニックのO先生にはいつも大患者さんへのご説明を丁寧にして下さり感謝しています。セカンドオピニオンを希望されたときは、いつも”戻って来てくれるだろうか?”と心配になるのですが、戻って来て下さったときは本当にうれしいです。そして患者さんも、より納得して治療を受けることができますので、セカンドオピニオンは患者さんにとっては望ましい手段なのだと思います(画像データのCDR作成や紹介状を書いたり、何度も説明の時間を確保したりとけっこう大変ではありますが…)。ただ、セカンドオピニオンに送り出す主治医は、診断や方針に違いがなければ患者さんが納得して戻って来て下さることを待ち望んでいるのだということを理解していただければと思います(もちろん医師との相性もありますし、最終的に判断するのは患者さん自身です)。

2013年9月19日木曜日

頼りになるバレー部の後輩医師

いま再発患者さんの治療方針でとても悩んでいます。再発巣がホルモンレセプター陽性でしたので、内分泌療法を繰り返したのですが効果はごく短期間ですぐに増悪するため、ハラヴェンに切り替えました。しかし腫瘍マーカーが下がったと喜んだのもつかの間、またもや増加に転じてしまいました。再発巣をできるだけ縮小させてから放射線治療をと考えて1年間治療してきましたが手詰まりになってしまいました。

これ以上はもう限界と考え、H大から来ている放射線治療医のH先生に相談したところ、なんとか照射は可能とのこと。ただ術後にH大で乳房照射をしているために照射野が重なる可能性があるので前回の乳房照射のデータを取り寄せて欲しいとの指示をいただきました。

この患者さんの手術&乳房照射は7年前で、紙カルテの時代でした。病院の引越の関係で紙カルテは旧病院に置いて来たため、取り寄せるのには時間がかかります。カルテで確認できなかったために当時のH大放射線治療科の担当医が不明だったので、やむを得ずH大放射線治療科にいるバレー部の後輩のO先生に電話でお願いしたところ、快く手配をしてくれることになりました。彼とは何度も患者さんのやり取りをしていますが、患者さんからの評判も良いDrです。バレー部のOB会の仕事も様々な雑用を快く引き受けてくれるとても頼りになる後輩なのです。やはり困ったときは知り合いに頼むのが一番安心です!

大学を卒業して24年以上たちますが、やはり大学時代の友人や後輩は困った時にとても頼りになります(私たちが入学後にできた部活なので先輩は2人しかおらず、1人は東京、1人は小児科開業医なのであまり患者さんのやり取りはありません)。患者さんとの人間関係はもちろんとても大切ですが、医師同士のつながりもとても重要であることを最近年を取ったせいかよく実感します(笑)

2013年9月15日日曜日

乳房再建(一次再建 ティッシュ・エキスパンダー&インプラント)実施施設認定!

今年の4月に日本乳房オンコプラスティックサージジャリー学会主催の講習を受けてからもう5ヶ月がたってしまいましたが、先日ようやくティッシュ・エキスパンダー&インプラントを用いた乳房再建(一次再建)の実施施設認定の通知が来ました。

どうしてこんなに時間がかかったのかというとこの手続きがとても複雑だからです。詳細は省きますが、簡単に書くと以下のような流れになります。

まず、講習(受講料10000円+入会金5000円)を受けただけでは責任者や手術実施者としては認定されず、登録申請書類(ごく簡単なもの)を書いて申請料20000円を支払って月1回の審査を通ってようやく登録医師となれます。その登録完了通知が来てから施設登録を行なうのですが、一次再建実施施設は形成外科医の常勤または非常勤勤務が必須のため、D病院のE先生の登録が終了していなければなりません。ところがこの形成外科医の登録がまたとてもわかりにくい状態になっていたためになかなか手続きが進めずに今に至ったということです。E先生には何度かご連絡して手続きのやり直しや追加書類の送付をお願いしたりして大変お手数をおかけしてしまいました。また、施設登録には、ティッシュ・エキスパンダーとインプラントそれぞれで30000円ずつの審査料が必要です。私たちの施設では対象となる同時再建患者さんはおそらく年間何人もいないのに登録だけでかなりの費用がかかります…。

まあそんなこんなでいろいろありましたがとにかく施設認定されて良かったです。あとは厚生局に届ければ10/1から私たちの施設でも同時再建が可能になります!

*認定施設の一覧は、日本乳房オンコプラスティックサージジャリー学会のHPで調べることが可能です(http://jopbs.umin.jp/index.html)。

2013年9月14日土曜日

北海道乳腺疾患研究会&乳癌学会地方会

昨日は夕方から北海道乳腺疾患研究会がありました。今回は診断困難症例の症例検討と招待講演2題でした。私は症例検討の1例を担当し、報告してきました。

今回の症例検討は、画像を提示して参加者に読んでもらうのではなく、症例報告のような形式で行なわれ、がんセンター病理部のY先生にコメントをいただきながらフロアからの質問を受けるような感じでした。

SクリニックのS先生の症例は、多発の乳管内乳頭腫のフォロー中(何度も生検、摘出を施行)に乳がんが発生してきた症例でした。どうも乳頭腫の一部ががん化したように見える部分もあった非常に貴重な症例だったと思います。このような症例をどうフォローしていくか、非常に頭の痛いところです。

私の症例は、細胞診によって良性腫瘍の細胞が播種し、浸潤がんの一部のように見えた症例でした。発表自体は問題なく終了しましたが、なかなか目撃することがないような珍しい症例だったためか、終了後の懇親会の際にも何人かの先生方に声をかけていただきました。

講演は、1題は、乳がん患者(特に若年)のサバイバーシップに関するお話、もう1題は、乳がん治療、特に内分泌療法に関する最新の知見と課題に関するお話でしたが、2題ともとても興味深い内容で非常に勉強になりました。できればスライドをいただきたかったです。演者の先生方お二人は九州で一緒に仕事をされていた経歴があります。昨日は札幌の寒さに驚かれていました。


そして今日は乳癌学会の北海道地方会でした。今回はG先生、N先生に発表してもらうことにして私はサポート(ほとんど何もしませんでしたが…)にまわりました。ですから私は午前中は病院で検診を行なってから会場に向かいましたが、2人の発表は午後からでしたので余裕で間に合いました。G先生は、再発を繰り返すうちにサブタイプが何度も変化した症例の報告、N先生は、フルベストラントの使用成績についての検討でした。2人ともつつがなく発表できてほっとしました。

教育セミナーは、画像診断、治療方針に関するディスカッションでした。乳癌診療ガイドラインに基づいた解説がとてもわかりやすく、知識の整理に役立ったのではないかと思います。またS病院のT先生の超音波診断に関するミニレクチャーもわかりやすくて良かったです。コーヒーブレイクセミナーは、アブラキサンに関する問題点と賢い使用法について四国のH先生がユーモアを交えながらわかりやすく解説して下さいました。

途中からの参加でもかなり盛りだくさんの地方会でした。ちなみに初めて母校のH大学医学部の臨床講義棟なる建物に入りましたが、私たちが学生だったころの汚い階段教室の大講堂と比べると雲泥の差でした。今の講義は黒板などは使わずにほとんどスライド中心におこなっているのでしょうか?一度講義を聴いてみたいものです。

2日連続でしたのでちょっと腰が痛くなりましたが、様々な講演、ディスカッションを聞けてとても勉強になりました。

2013年9月10日火曜日

がんサロン

新病院に移転して4ヶ月がたちました。ようやく院内のオリエンテーションがついてきたところですが、まだまだ思い描いた状況まで到達していない部門があります。その一つががんサロンです。

がんサロンは、稼働しはじめてからまだ2ヶ月あまりですが、いまだにその使い方が定まっていません。がん診療委員会がその責任を負っているのですが、なにせ2ヶ月に1回の会議ですし、その役割の範囲が広いためにがんサロンの活用方法について十分に討議できていませんでした。

そういうこともあって、がんサロンの使用に関していくつかの課題が見えてきました。今日はその問題に関して、私と関連事務職員2人、認定看護師1人、患者会代表2人でディスカッションを行ないました。がんサロンはコンビニの前、患者図書室の横という微妙な位置にあり、しかも当初の予定より狭くなってしまった関係で使い勝手が悪くなっています。相談などで使用するのは良いのですが、患者会で大人数で楽しく会話するには環境が悪すぎます。それが原因でちょっとしたトラブルも起きてしまいました。

個人的には、がんサロンはがん患者さんが、静かに相談できる場所でもあり、遺族が思い出を語り合う場所でもあり、元気をもらうために楽しく過ごす場所でもあって欲しいと思っています。ただ、今のままではなかなか難しそうです。患者図書室と時間調整したり、大人数が集まるような患者会活動は別の場所で行なわざるを得ないような状況です。新病院のがんサロンに期待していた私としては少し残念です。

ただ、今回の話し合いで、がんサロンに関する問題点、課題が少しはっきりしてきましたので今後の運営にプラスになるのではないかと期待しています。患者会には、私が今後期待していることを伝えました。これからもがんサロンの有効活用法についてもっと話し合いの機会を持ちながらやっていきたいと考えています。

2013年9月6日金曜日

再発治療終了のタイミング…判断は難しいです…

患者さんのことを一生懸命考えても医師の間で意見が異なることはよくあります。特に再発治療に関してはエビデンスが乏しいこともあり、症例ごとに治療法の選択や治療をいつまで継続するかの判断は異なります。

再発患者さんの状態が悪化して治療変更を繰り返していく場合、積極的治療を中止する判断基準はどこにあるのか今でも私には正確にはわかりません。日本でもHortobagyiのアルゴリズムを基本に考えている施設が多いと思いますが、再発に対する化学療法を何レジメン行なうかについては施設、医師によって多少異なるようです。また、次々に新しい治療が使用できるようになったこともあり、実際はレジメン数では決めきれないように思います。私の患者さんの中にも全てのホルモン療法をやりつくし、抗がん剤を点滴で5レジメン、内服の抗がん剤を5種類投与しながら15年経過している方もいらっしゃいます。

一方、他に抗がん剤の治療選択肢があっても、これ以上の積極的治療はやめた方が良いと考える場合もあります。例えば全身状態が悪すぎて抗がん剤に耐えられない状況になってしまっている場合は、仮にその治療が少し奏効していたとしても抗がん剤を継続することは患者さんのためにはならないと私は考えています。この判断を見誤ると、患者さんのための治療ではなく、医師の自己満足の治療になってしまう可能性があります。私たちが治療をしている対象は画像上のがんの大きさや腫瘍マーカーの値などではなく、患者さん自身だからです。

私も今までの乳腺外科医としての経験の中で、亡くなる直前まで抗がん剤を投与していた患者さんをたくさん見てきました。昔はそれもしかたのないこととして考えられていましたが、今はそのような治療方針を立てたことは自分たちの誤りだと考えるようにしています。ただ実際はこの判断が非常に難しいのです…。

ある患者さんは、脳転移で放射線治療を繰り返したのですがすぐに再発してしまい、大変厳しい状態にありました。それまでに強力な抗がん剤はすでに2レジメン行なっていました。他に未使用の抗がん剤はありましたが、脳転移は抗がん剤が非常に効きにくい再発部位のため、患者さん、ご家族と相談し、結局それ以上の積極的治療はせずに緩和治療を選択したのです。病状から余命は短いと思いましたが、まったくの無治療で6ヶ月間、穏やかに過ごすことができました。

患者さんができるだけ長く、穏やかに生活できるようにするためには、いつまでどのような治療を行なえばいいのか、私はこれからもずっと悩み続けると思います。

2013年9月3日火曜日

医療従事者の乳がんと乳がん検診

16人に1人は乳がんになる時代ですし、女性が多い職場ですので病院内で乳がんがよく発生するのはある意味当然なのかもしれませんが、それにしても多いです。

私がざっと思い出すだけでも退職者も含めて医師4人、看護師14人、検査技師1人、薬剤師3人、調理師・栄養士2人、リハビリ技師1人、歯科技術職1人、事務系3人、清掃職1人…。ここのところ毎年のように職員の乳がんが発生しています。

有病率が他の職種に比べて高いのかどうかは調べていないのでわかりませんが、病院内に女性が多いのは確かですので啓発活動は重要です。以前よりは職員検診で乳がん検診を受けてくれる職員は増えましたが、まだおそらく半分以上の対象者は受けていないと思います。せっかくN先生という女性医師も増えたことですし、なんとか100%の乳がん検診率を目指して、まずは職場の中から乳がん検診啓発活動を進めていきたいと思っています。

とは言ったものの、無料クーポン券が8月に配布されたのと職員検診が重なったために異常に乳がん検診受診者が増えていて、特に関連病院の方では読影が追いつかなくなっています。今日は朝7:40に外来に着いたのですが、カルテチェックも多かったためマンモの読影開始が遅れてしまいました。しかも今日の読影数はいつもの1.5倍くらい(63人分)…(写真)。1時半に外来診察が終わった時点でも未読影のマンモがかなり残っていました(汗)


常勤先の病院で、どうしてもやらなければならない仕事があったため、マンモはそのままにしてとりあえず戻って仕事を終わらせてからまた関連病院に戻って残りのマンモの読影をしてきました。そして17時から患者さんとご家族の面談、そして術前検討会もあるために常勤先の病院にまた戻りました。片道約15分くらいの運転ではありますが、その都度着替えて行ったり来たりでけっこう疲れました(泣)

検診受診者が増えるのはとてもうれしいことなのですが、どうにも時間が足りないと嘆く今日この頃です。

2013年8月28日水曜日

乳腺術後症例検討会 26 ”祝 還暦!”

今日は2ヶ月ぶりの乳腺術後症例検討会でした。関連病院以外の施設からの1名も含めてけっこう集まってくれました。


今回の症例は5例。

最初の2例は、ともにエコー上、比較的境界明瞭な等〜低エコー腫瘤でMRはT2 high(出血や嚢胞、壊死、粘液を反映)で内部が不均一に造影される腫瘤でした。病理結果は1例は粘液がん、もう1例は乳管内に血液の貯留がみられた充実腺管がんの症例でした。

その他は、3ヶ月の間に乳頭陥凹と腫瘤の増大を認め、乳がんを疑った乳腺膿瘍の症例と腋窩に硬い明瞭な腫瘤を形成し、やはり乳がんを疑ったリンパ管嚢腫の症例、そして典型的な硬がんの画像を呈し、細胞診も硬がんの診断でしたが、病理結果で多発病巣が認められた浸潤性小葉がんの症例でした。

症例の提示後、関連病院のE技師さんが同じ関連病院のH先生の還暦をお祝いするスライドを作って供覧してくれました。H先生は、私が外科に入ったときからずっとお世話になっている大先輩のDrです。横綱北の湖関(現親方)の友人(相撲仲間…当時は近隣の地区の相撲大会を2人で荒らしまくっていたとか…笑)でもあり、毎年北海道マラソンに参加しているアスリートでもあります。最近ではアスベスト関連の仕事をしたり、キューバに行って肺がんの手術指導などの医療交流をしたりと精力的に活動されています。専門は肺がんなのですが、私が乳がんを専攻するまではH先生が中心になって乳腺疾患にも携わっていましたし、関連病院に移動してからは、乳がんにもいっそう力を入れて取り組んで下さっています。この症例検討会にもいつも参加していただいています。

そのH先生がいつの間にか還暦(私とちょうど一回りちがう巳年です)…。時の流れは早いものです。H先生は大ベテランの先生なのにとても腰が低く、誠実で、なおかつ愛されキャラなのです。12年後にH先生のようにみんなに還暦を祝福されるような医師に私もなりたいと思いました(笑)。

2013年8月25日日曜日

「ピンクリボン in SAPPORO 2013 ピンクリボンロード」終了!

今日はあいにくの天気…。朝刊の予報では午後から雨でした。事務次長のMさんに迎えに来てもらって大通の会場に向かう途中にはいきなりの雷と豪雨が…。大丈夫かなと思いながらホコテンに向かいました。結果的にはイベント前半は小雨が降っていましたが後半は晴れ間も見えてなんとか無事にイベントを終了することができました。

以前ここでも書きましたように、今回初めて私たちの病院でブースを出すことになったため、私とG先生、事務系職員3人、看護師4人の計9人の職員で、以前病院で作ってもらったピンクのTシャツを着て参加しました。


ブースには、自己検診用の乳がん模型を2つとG先生手作りの触診体験モデル(1cm、1.5cm、2cmのゴムボールをゲルの中に隠しておいて探してもらうもの)、遺伝性乳がんについてのパネルと遺伝性乳がんについて心配している方用のチェックシート、そして乳がん検診啓発と自己検診の方法を書いたビラと先日完成した乳腺センターが紹介された病院の広報誌を置きました。パネルやビラの準備は、検診センターのSさんが中心になって何度も修正しながら頑張ってくれました。また物品の準備やブースの横断幕作りなどは事務の2人がきっちりとやってくれました。ブースに来て下さった方達の対応は看護師と私たち医師で行ないました。


実際にブースに足を運んで下さった方の数は例年と同様にさほど多くはなかったのですが、親子でG先生お手製のモデルを触ってくださった方や母親が若年性乳がんで遺伝子検査を受けたいと思っている女性(予防的乳房切除や卵巣摘除まで考えておられるようでした)など、それなりににぎわいを見せていました。また、うれしいことに昨日のWith Youのために本州のS病院からいらっしゃっていたO先生がビラ配りまで手伝って下さいました。ありがとうございました!

ステージの方では、素晴らしいジャズ演奏、みんなで参加するドラムサークル(G先生と事務のNさんも参加 写真撮れなくてすみません)、合唱、チェアーフラなどで盛り上がりました。ジャズの間は雨が降っていたのですが、たくさんの方が足を止めて聴き入り、傘をさしながら椅子に座って演奏を聴いて下さいました。


今回は病院として初めての参加でしたが、参加した職員がこの経験を日常診療に生かしてくれることを期待しています。連日のイベントでちょっと疲れましたが、実りの多い2日間でした。

今日までのイベントの下準備、そして会場のセッティングの指揮、司会進行をして下さった三角山放送局をはじめとしたピンクリボン in Sapporoの事務局の皆さん、大変お疲れさまでした。来年もまた頑張りましょう!

「第10回 With You 北海道~あなたとブレストケアを考える会〜」 終了!

昨日は札幌医大で「第10回 With You 北海道~あなたとブレストケアを考える会〜」が行なわれました。今回のテーマは「乳がん患者をサポートする」でした。


私たちスタッフは11:00に集合しましたが、今回は医大のK先生プロデュースのラベンダー色のTシャツが全員に配られました(写真 自宅で撮影したのでちょっと色が変かもしれません…汗)。ピンクというよりは紫に近い色ではありましたが、とてもきれいな色でデザインも素敵でした。K先生のセンスの良さを伺わせる作品ではないかと思いました(笑)


イベントは12:30開始。会場は昨年より多くの患者さん、ご家族、医療関係者が集まっていたのではないかと思います。特に今回は男性(おそらく患者さんのご主人)が多かったような印象を受けました。

特別講演を含めた講演は、盛りだくさんの5つでした。

・「乳がん最新治療」…パージェタ®(一般名 ペルツヅマブ)などの新薬やインプラントを用いた乳房再建が保険適用になったお話などをわかりやすく説明されていました。
・「がん治療の公的制度と医療保険」…普段私たちがわかっているようで十分にわかっていない医療制度に関するお話が聞けました。
・「10回目の With You Hokkaido を開催するにあたって」…今までの全国、北海道のWith Youの歴史についてビデオも交えて振り返ることができました。また今後の課題についての提案も出されましたので来年のWith Youは北海道から変化していくかもしれません。
・「がんになった親とその子供に対するサポート」…演者の先生のアメリカでの経験も織り交ぜながら、がん患者の親を持った子供に対する心身のケアと実際の活動について解説していただきました。なかなか心配りができていなかったことをあらためて知る機会になり、今後の私たちの医療活動にも貴重なヒントをいただきました。
・「がん患者の就労支援、現状と課題」…CSR プロジェクトの活動内容と日本のがん患者の就労状況について、内容はシビアではありましたがユーモアを交えた楽しい語り口で説明して下さいました。


そして今回の私のグループワークの担当は「再発後の不安・治療」でした。毎回このセッションは大変緊張します。私の役割はファシリテーターと言って、患者さん同士の会話がスムーズに進行するように補佐する仕事です。医療従事者、特に医師がその場にいるとどうしても医師に対する質問コーナーのようになってしまったり、1人の患者さんばかり話してしまって、まったく話に参加できない患者さんがいる状況になってしまうこともあります。この調整がなかなか難しく、私は下手なのです(汗)

今回のこのグループの参加者はスタッフ5人、患者さん5人、患者さんのご主人1人でした。最初に自己紹介をしていただきましたが、それぞれがけっこうシビアな再発状況にあることがわかりました。なんとかこのグループワークで自分の状況改善のヒントを得たい、救いが欲しいという思いを強く感じました。予想以上に厳しい状況で、話し合いが始まる前から涙を流す患者さんもいらっしゃり、私はさらなる緊張感を覚えたのですが、幸い再発後長い経過の方もいらっしゃった関係もあり、かえって皆さんが自主的にお話を進めて下さるという形で進むことができました。

具体的な内容については割愛しますが、私たち医療従事者(乳腺外科医、緩和治療医、精神科医、看護師など)が、再発患者さんの心のケアを十分にできていないという現状をあらためて強く感じました。うつ症状に対しては医師は薬を処方するだけ。でもそれよりも犬を飼ったり、同じような再発患者さんとお話しできる方がずっとこころの癒しになっているということがわかりました。私たち医療従事者はこのような状況をもっと理解していく必要があるようです。進行役の私の役目が十分果たせたかどうかわかりませんし、患者さんたちももっと話をしたかったような感じではありましたが、このグループワークに参加して良かったと少しでも思っていただけたらうれしいです。

今回で10回目を迎えたWith You 北海道ですが、さらなる進化を遂げて、少しでも多く患者さんと医療従事者の垣根を取り払う役目を果たしていきたいと考えています。

2013年8月23日金曜日

明日はWith you 北海道、明後日はピンクリボンロードです!

先日ご紹介しましたように、明日、札幌医大で「第10回 With You 北海道~あなたとブレストケアを考える会〜」が開催されます(http://hidechin-breastlifecare.blogspot.jp/2013/06/10with-you.html)。そして明後日は大通のホコテンで「ピンクリボン in SAPPORO 2013 ピンクリボンロード」が行なわれます。イベント続きでなんとなく頭がこんがらがっていますが、私は両日とも参加します。

心配なのは週末の天気です。明日は室内なので問題はないのですが、明後日は屋外です…。天気予報は、明日は午後から弱い雨、明後日は曇りのち雨…微妙な感じです(泣)なお、明後日は雨が降ったらさっぽろテレビ塔に場所が変更になります。

明日は乳がん患者さんたちと一緒に勉強をして、交流を深めてきたいと思っています。また明後日のイベントは、結局病院のスタッフは全部で9人くらいの参加になりそうです、みんなで乳がん検診の啓発活動を頑張ってきたいと思います!

2013年8月16日金曜日

もう少しで「ピンクリボン in SAPPORO 2013 ピンクリボンロード」!

先日「ピンクリボン in SAPPORO 2013 ピンクリボンロード」について告知しましたが(先ほどまで2013ではなく2913になっていたことに気づきませんでした…汗)、ついに私たちの施設でもブースを出すことが決まりました(ブースと言っても長机1個分ですが…)。

今回は検診センターのスタッフや看護師さん、乳腺センター担当の事務員や医療連携室、管理部の職員などが一緒に手伝ってくれています。当日は、以前ママチャリレースに出た時に作ったピンクリボンのTシャツをスタッフで着る予定にしています。きっと暑いので熱中症にならないように交代しながらブースを担当したいと考えています。

どんなことをするかはいまスタッフで検討中ですが、ホコテンを歩いている人たちが注目してくれるような内容を考えています。先日完成した乳腺センターの活動を載せた病院の広報誌も乳がん検診の啓発ビラと一緒に置く予定です。

ジャズなどのイベントを楽しみながら、集まった人たちが乳がん検診について興味を持ってもらえるようなお手伝いができればいいなと思っています。ご家族や友人に乳がんになった方がいらっしゃる方はもちろん、乳がんや乳がん検診について興味、疑問がある方は是非8/25(日)の13:30に大通のホコテン(札幌市中央区南1西3)にいらして下さい!


(写真は昨年のピンクリボンロード)

2013年8月14日水曜日

人工物留置者の検診マンモグラフィについて

胸部に人工物が留置してある場合にはマンモグラフィを避けた方が良いことがあります。何も言わずに検査を受けるとトラブルが生じる原因となる場合がありますので以下のような場合は注意が必要です。

①心臓ペースメーカー装着者

前胸部に留置したペースメーカーと心臓の間は細い金属のリード線でつながっており、このリード線を介して心臓を動かすための電気信号を伝えています。マンモグラフィを撮影する際のように強く乳房を圧迫すると、このリード線が断裂してしまうなどのトラブルが生じる可能性があります。
有症状の受診者の場合は、十分な説明を行なった上で同意を得てから慎重に撮影することがありますが、一般の検診においては撮影に十分な配慮ができない場合もあるために、平成18年に出されたマンモグラフィ検診精度管理中央委員会の見解ではペースメーカー装着者に対してはマンモグラフィ検診を行なわない方が良いとされています(代わりに超音波検査を推奨)(http://www.mammography.jp/mammo/oshirase17.html)。

②豊胸術後

精中委の見解ではインプラントの破損の可能性、インプラントのせいで病変が十分に写らない可能性があることなどを考慮して、原則的には検診マンモグラフィはお勧めできないとされています(http://www.mammography.jp/mammo/oshirase16.html)。もしどうしてもマンモグラフィ検診を受けたい場合や精査でマンモグラフィが必要な場合は、これらのトラブルなどの可能性を十分にご説明の上で同意が得られた場合にのみ行なうべきです。

③CVポート留置者、脳室・腹腔(V-P)シャントカテーテル留置者

精中委としての見解は確認できませんでしたが、私が調べた限りにおいては、宮城県対がん協会を始めとした多くの施設において破損の可能性があるために両者ともにマンモグラフィ検診の対象外とされているようです。私の施設ではCVポートを留置してマンモグラフィを受ける患者さんのほとんどが乳がん術後の患者さんです。マンモグラフィの必要性は一般の検診受診者に比べると高いですので、技師に十分注意してもらいながら可能な範囲内で撮影してもらっています(この場合は検診ではなく診療マンモグラフィです)。乳がん術後以外でCVポートを留置している方が乳がん検診を受けるケースはまれですが、もしそういう方でマンモグラフィを受けたいと思われる方は乳腺外科医に確認した上で検査を受けることをお勧めします。

放射線治療開始!

今日からついに当院での放射線治療が開始しました。

たまたま別の用事で放射線治療室に行ったところちょうど1例目の照射が始まるところでした。無事に終了して戻って来た放射線技師さんたちはかなり緊張していたようでほっとした表情でした。

今日の1例目をはじめ、当面は乳がん術後の乳房照射の症例が中心になりそうです。ただこれから再発症例への照射も予定されており、今日放射線治療科に受診した患者さんも私が担当の再発患者さんでした。その患者さんに付き添って放射線治療計画策定の流れを見させてもらいましたが、今まではH大、がんセンター、K病院などにご紹介していたためにその詳細は見たことがありませんでしたからとても勉強になりました。

今日の患者さんは以前にK病院で放射線治療を受けた経験があります。今回は前回とは違って少し体調が悪い中での照射になりますので、私たちの病院で放射線治療を受けられることを喜んで下さいました。しばらくはドキドキしながらの治療になりますが、技師さんたちも一生懸命勉強しながら慎重に頑張ってくれていますので、きっと良い放射線治療を提供できるようになると信じています。


写真は放射線治療装置です。これからもH大から来て下さる放射線治療科の先生方、当院の放射線技師、看護師さんたちと密に連携を取りながら安全で効果的な放射線治療を提供できればと考えています。

2013年8月5日月曜日

第1回 放射線治療カンファレンス

いよいよ新病院での放射線治療が始まります。今日は午後からH大学のT先生をお迎えして第1回の放射線治療カンファレンスが行なわれました。

私は温存術後の乳房照射の1例、G先生は、乳房照射2例と胸壁照射の症例3例、N先生は胸壁再発の症例1例をさっそくカンファレンスにかけました。乳腺以外にも相談症例が数例あり、1回目としてはまずまずの症例数ではないかと思います。

ただ当院での放射線治療は今回が初めてのため、まだいくつかの制限が加わっています。そういう理由もあって、今回の症例のうち数例は当院ではなくH大学での照射予定となりました。今後技師を含めたスタッフの慣れ具合をみながら徐々に適応を拡大していく予定です。

今までは放射線治療に関する相談は、患者さんに受診していただくか、診療の合間での電話相談が必要でしたが、これからは放射線治療の専門医が来てくれますので気軽に相談することができます。私たち乳腺外科医にとってもとても勉強になりますし、ありがたいことです。

これからも大学との連携を密にしながら、患者さんにとって有益な治療を提供していきたいです。何か役に立つかもしれませんので私もこれから本格的に放射線治療の勉強を始めようと思っています!

2013年8月4日日曜日

医師会の乳がん・子宮がん検診普及啓発講演会&個人相談会

昨日は、医師会主催の乳がん・子宮がん検診普及啓発の講演会がありました。

乳がん検診はT病院のT先生が、子宮がん検診はF病院のF先生がご講演されました。
T先生は、乳がんの基礎知識に関してと欧米と比べた日本の検診普及状況の現状、乳がん検診を定期的に受けることの大切さなどについてわかりやすく話されていました。

子宮がん検診については、私も不十分な知識しかありませんのでF先生のお話はとても勉強になりました。子宮頸がんワクチンについては賛否両論ありますが、F先生のような婦人科医の立場からすると、やはり受けるべきだということでした。マスコミがかなりセンセーショナルに書き立ててしまったためにとても怖いものだという印象を与えてしまっていますが、他のワクチンに比べて重篤な副作用の頻度は変わりないとのことです。

もちろん、ワクチンによる副作用で重篤な障害が残ったり、命を失った方が身近にいたりすると、ワクチンに対する怒りや恐れを持っていても当然かもしれません。ただ様々なワクチンの開発によって、多くの命を奪っていた病気を予防できるようになってきた歴史的な経過があることも事実です。例えば天然痘にしても、ワクチンによる脳炎などで命を落とした方はけっこういらっしゃったようです(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A8%AE%E7%97%98)。でももしそのことでワクチンは危険だからと世界中で接種が行なわれなかったとしたら、もしかしたら今も天然痘は生命を脅かす脅威になっていたかもしれません。個々のリスクと全体のメリット、秤にかけて比較することは難しいですね…。

講演会が終わってからは、演者の2人の先生とS病院婦人科のW先生、そして私の4人で個人相談会を行ないました。例年けっこういらっしゃって何時に終わるかわからないということでしたが、今年は少なかったのでわりと早く終わりました。私のところにいらっしゃった方の相談内容は40才未満の検診について、乳房再建について、良悪の鑑別が困難なケースなどでした。特に問題なく終わりましたが、こんなに少ないならもう少し1人1人に時間をかけてお話しすれば良かったかなと後で思いました(人数をあらかじめ教えていただいた方が良かったのではないかと思います)。

日本の乳がん検診受診率は、マンモグラフィの導入、啓発運動、そして無料クーポン導入などによって、徐々に増加し、ようやく30%を越えたようです。しかし、目標の50%にはまだまだ遠く、70-90%という欧米のレベルにははるかに届きません。
今回のような普及啓発活動を地道に繰り返しながら、できるだけ早くに目標をクリアできるように私も頑張っていきたいと思います。

2013年7月29日月曜日

「ピンクリボン in SAPPORO 2013 ピンクリボンロード」

先日ようやく「ピンクリボン in SAPPORO 2013 ピンクリボンロード」のチラシ(写真 携帯ではうまく撮影できないので三角山放送局HPより転載させていただきました)が届きました。さっそく院内の各所に置いてもらうことにしました。



日程は、2013.8.25(日)13:30-16:00で場所は「さっぽろホコテン(南1西3)」です。詳細は三角山放送局のHP(http://www.sankakuyama.co.jp/contents/2013/07/04/003753.php)をご覧下さい。

昨年はゴスペルライブで盛り上がりましたが今年はジャズコンサートです!他にもドラムサークル、合唱団やチェアーフラなど盛りだくさんです。楽しみながらピンクリボン運動を広めるのがこのイベントの主旨ですので多くの人々が足を止めてくれるようなにぎやかなイベントになればいいなと思っています。

今年から私たちの病院もピンクリボン in SAPPOROの活動に協賛させていただくことになりましたので、もしかしたら会場にブースを出すことになるかもしれません。今日の乳腺センターの会議では結論は出ませんでしたが、アイデアを募集してできれば多くのスタッフで参加したいと思っています(最近はほとんどが私とG先生くらいしか参加できていませんでした)。

みなさん、8/25(日)はさっぽろホコテンに遊びに来てくださいね!

2013年7月22日月曜日

来月から放射線治療開始!

新病院に移転して2ヶ月あまりたちました。8月から待ちに待った放射線治療施設が稼働になります!

当院には今まで放射線治療施設がなかったため、術後の乳房照射や胸壁照射をはじめ、リンパ節再発や骨転移、脳転移など、放射線治療が必要な患者さんはすべて大学病院やがんセンターなどの放射線治療科にご紹介していました。病院の近くに住んでいる方にバスなどで遠くの病院に毎日照射に通ってもらわなければならないことはとても申し訳ないとずっと思っていましたが、ようやくそれも解消します。

もうすでに乳腺の術後患者さんだけで4人ほど当院での照射が予定されて待っています。放射線治療医が当院にはいないため、大学から週3回診察とカンファレンスのために来ていただいて診療を行なう予定になっています。いま急ピッチで大学との打ち合わせを行なって治療の流れなどを確認しているところです。

初めてのことなので最初は戸惑うことも多いと思いのですが、軌道に乗っていけば患者さんの負担はかなり軽減されると思います。当院での放射線治療が順調に発展することを期待しています。

2013年7月16日火曜日

ハーセプチン+タイケルブ(+ゼローダ)は保険適用?

いまHER2陽性乳がんの再発患者さんの治療で悩んでいます。

この患者さんは合併症をたくさん抱えているためにかなり全身状態が悪く、使用できる薬剤に制限があります。ですから今までは他院でホルモン療法を中心に治療を行なってきました。しかし骨転移と胸膜転移が徐々に悪化して来たために総合病院である当院に紹介となったのです。

合併症の中で特に問題となるのは糖尿病とそれによる重度の腎機能障害です。吐き気止めやアレルギー予防として用いるステロイドは糖尿病を悪化させますのでできるだけ避けたいと考え、まずはハーセプチンにアブラキサン(パクリタキセルと成分は同じですがステロイドは不要)を併用してみました。しかし、今回のCT検査では効果は見られておらず、治療方針の変更を迫られています。骨転移に対して広範囲に放射線治療を行なっているために骨髄抑制の強い抗がん剤の併用を避けたいということも選択肢を狭める要因となっています。

当初次の手段として、タイケルブ+ゼローダを予定していたのですが、よく調べてみると”重度の腎機能障害には禁忌”となっていました。タイケルブは国内ではゼローダとの併用しか認められていません。海外での臨床試験では、ハーセプチン+タイケルブの有効性が報告されているのですが(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20124187、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22257673など)、国内では使用している施設はほとんどないようです(保険診療として認められずに査定される可能性があるためと思われます)。

製薬会社の方に聞いてみたのですが、返答は微妙でした。ハーセプチンは併用する薬剤のしばりはありません。抗がん剤は何でもOKですし、今までホルモン剤との併用でも査定されたことはありません。ですから、ハーセプチンの保険適用が認められないことはないと思います。問題はタイケルブです。タイケルブは、ゼローダとの併用が保険適用上は必須です。ただし、途中で副作用が現れた場合は、ゼローダを中止しても問題はないと聞いたことがあります。

では、タイケルブ+ゼローダにハーセプチンを併用した場合はどうなるのでしょうか?ハーセプチンはまず大丈夫でしょう。タイケルブもゼローダを併用していれば問題ないはずですが…。添付文書に”ハーセプチンとの併用は認めない”と書いているわけではありませんから(ゼローダ以外の薬剤との併用の安全性と有効性は確立していないというよくある微妙な表現)、併用したっていいのではないかと考えてしまいますが、ハーセプチンもタイケルブも高価な薬剤ですので目を付けられて査定される可能性は完全には否定できません。

患者さんの状態を考えると、ゼローダは避けてハーセプチン+タイケルブで治療したいところです。しかしタイケルブにゼローダ併用のしばりがあるためにとても悩んでいます。ごく少量のゼローダを併用して3剤での治療を今のところ第1候補に考えていますが、「ハーセプチン+タイケルブ」もしくは「ハーセプチン+タイケルブ+ゼローダ」の治療を受けた患者さん、もしくは治療を行なったDrがいらっしゃったら情報をお待ちしています。

2013年7月14日日曜日

遺伝性乳がんに関する知見〜第21回乳癌学会学術総会から

先日の乳癌学会では、遺伝性乳がんに関するセッションが2つありました。世間一般的にもアンジェリーナ・ジョリーさんの件もあって非常に関心が持たれているテーマですので私も注目していました。
(遺伝性乳がんの一般的な内容に関しては、以前書いたhttp://hidechin-breastlifecare.blogspot.jp/2009/08/blog-post_2165.htmlをご参照下さい)

ランチョンセミナーの方は、チケットをもらい損ねてしまったために聞けませんでしたが、「検診診断プレナリーセッション5 遺伝性乳がんをめぐる諸問題」の方はしっかり聞いてきました。この中でメモすることができたいくつかの点について取り上げておきます。

①米国では、遺伝性乳がんに関する検査、治療(予防的乳房切除術、予防的ホルモン療法など)はすべて保険適応になっている。これは、がんになってからの治療だけではなく、がんを予防するということの重要性を認識しているからである。米国では年間約10万件の遺伝子検査を行なっている(遺伝性乳がんが疑われる対象者に関する遺伝子検査は”推奨される”となっており、予防的切除を行なうことは”選択”として提示されている)。
→いま国内でも国会などで少しずつ取り上げられて来ているようですが。米国に比べると15年ほど遅れをとっているのが現状です。いくつかの施設で予防的乳房切除術が倫理委員会を通ったというような報道がされていますが、今のところ検査、治療にかかるすべての費用は全額自己負担です。

②遺伝性乳がんのカウンセリングを行なうためには、専門の教育を受けた遺伝カウンセラーの存在が重要(日本遺伝カウンセリング学会http://plaza.umin.ac.jp/~GC/index.htmlが認定)。しかし実際はカウンセラーの資格を取得しても、働き場がなかなかないのが現状。
→遺伝カウンセラーが必要な場合は、日本認定遺伝カウンセラー協会(http://plaza.umin.ac.jp/~cgc/index.html)にアクセスするのが良いようです。今後は遺伝性乳がんの相談は避けて通れない業務になっていくことが予想されます。現在、遺伝性乳がんのカウンセリングを行なえる施設は非常に少なく、札幌でも2施設程度です。私たちが遺伝性乳がんに対してより積極的に関心を持つことと、カウンセラーの確保が重要と考えられます。遺伝性乳がんの遺伝子検査は、気軽に受けるべきものではありません。検査を受けることによる利益と不利益をきちんと知り、陽性だった場合の対応も考えた上で検査を行なわなければなりませんので専門の遺伝カウンセラーの存在はとても大切です。

③BRCA1変異はトリプルネガティブ、充実腺管がんが多く、非浸潤がんは少ない、BRCA2変異は、Luminal typeが多い。
→BRCA1/2はがん抑制遺伝子と呼ばれるもので、遺伝性乳がん・卵巣がん症候群(HBOC)の多くの原因はこれらの遺伝子の変異によるものと考えられています。最近の研究によってそれぞれの遺伝子変異について様々なこと(地域性や細かい遺伝子変異の部位など)がわかりつつあるようです。

④日本HBOCコンソーシアム(http://hboc.jp/)を設立し、日本における遺伝性乳がん(+卵巣がん)のデータベースの充実をはかり、今後の遺伝子診療に活かしていこうとしている。
→日本における遺伝性乳がんの情報収集は今後の診療においてとても重要になってくると考えられます。またこれらの情報を元に、遺伝子検査・治療の正当性や重要性について政府に働きかけることが、保険適応を早めることにつながるものと期待しています。

⑤HBOCに関する情報を収集するにあたって、被験者の法的保護や情報管理の整備が必要。
→これは大変重要だと私も思っています。今までなかなか遺伝性乳がんの研究、検査、治療がなかなか勧められなかった原因の一つは間違いなくここにあります。遺伝性乳がんであることを知ってしまったことがその人の不利益(就労問題や結婚問題、差別など)にならないような法整備が必要です。

これからもっとHBOCについて勉強しなければならないと強く感じた今回の乳癌学会でした。

2013年7月10日水曜日

病院広報誌の取材

今では多くの病院でその病院の活動内容などを定期的に掲載する広報誌を発行しています。私たちの病院にも以前からありましたが、当初は病院内部の職員が原稿作成や写真撮影などを行なって広報誌を作成していました。しかし前号からはプロの方に依頼するようになり、内容もかなり充実してきました。

そして今回のメインテーマは乳腺センターの活動ということで、今日、取材の方が見え、午後から乳腺センターの医師3人(G先生、N先生、私)の取材と撮影、そして関連施設(化学療法室、レントゲン室、超音波検査室など)の撮影を行なっていきました。

以前乳腺に関する記事を広報誌に載せたときは私が原稿を書いて写真を追加するという感じでしたが、今回は取材内容をもとにプロの方が原稿にしてくれます。作業的には楽になりましたが、自分の話した内容がどんな感じに記事になるのかちょっとどきどきしています。

そして写真撮影があるとは思わなかったのでまったくの普段着で撮影されてしまいました。前回撮影の時にはきちんとネクタイをしてきたのに、今回は白衣の下はブルーの検査着でした(泣)そしてなんとなくぎこちない表情で写ってしまったような…まあいいですけどね(汗)

(最近、いろいろ忙しくてなかなかブログの更新ができませんでした。というか、一応、この間に2つ書いたのは書いたのです。でもさまざまな理由でここに書いて良いのか迷ったのでアップできませんでした。公の目に触れるブログではいろいろと神経を使います。個人情報保護法や守秘義務の問題もありますしね。書きたいことはたくさんあるのですが…。)

2013年7月1日月曜日

乳癌の治療最新情報36  ペルツズマブ承認!

乳癌の治療最新情報28(http://hidechin-breastlifecare.blogspot.jp/2011/12/28.html)でご紹介してから1年半もたってしまいましたが、ようやく抗HER2ヒト化モノクローナル抗体ペルツズマブ(商品名 パージェタ®)が承認されました!

HER2陽性乳がんに対する分子標的薬は、トラスツズマブ(ハーセプチン®)、ラパチニブ(タイケルブ®)に続いて3剤目になります。

この薬剤が承認される元になった主な臨床試験は、多国籍無作為化プラセボ対照二重盲検第Ⅲ相臨床試験であるCLEOPATRA試験です。この試験の概要を以下に示します。

対象: HER2陽性転移性乳がん
方法: パージェタ®にトラスツズマブ(ハーセプチン®)およびドセタキセルを併用した群(「パージェタ®」併用群)と、プラセボにトラスツズマブおよびドセタキセルを併用した群(対照群)の比較試験。
結果: 「パージェタ®」併用群では、病勢進行または死亡(無増悪生存期間:PFS)リスクが38%減少し(ハザード比0.62;p<0.0001)、PFS中央値は対照群の12.4カ月に対し「パージェタ®」併用群では18.5カ月と、6.1カ月の延長が認められた。また、全生存期間(OS)については「パージェタ®」併用群の死亡リスクが対照群に対して統計学的に有意に34%減少した(ハザード比0.66、p=0.0008)。
有害事象はトラスツズマブおよびドセタキセルでこれまでに報告されたものと同様であり、「パージェタ®」を併用することにより有害事象の顕著な増加は認められなかった。

パージェタ®はトラスツズマブ(ハーセプチン®)とは異なる機序(HER2の二量体化というものを阻害します)で作用するモノクローナル抗体です。ハーセプチン®の作用を補完すると言われていますので併用によって作用が増強すると考えられています。

実際の薬価収載、発売にはもう少しかかると思います。添付文書を読まないとまだわかりませんが、問題はこの薬剤が「ハーセプチン®+ドセタキセルとの併用」のみにしか適応されないのか、「ハーセプチン®+タキサン系抗がん剤との併用」となるのか、「ハーセプチン®+抗がん剤との併用」となるのか、まったくしばりがないのか、ということです。上記の臨床試験に基づくとなればドセタキセルとの併用に限定されてしまうのが最近の傾向です。ただ、術後補助療法や再発治療にすでにドセタキセルを使用してしまっている場合には、このしばりがあるとけっこう使いにくいことになります(タイケルブ®がゼローダ®との併用のしばりがあって使いにくいのと同様に)。全身状態によっては、抗がん剤の併用は避けたい患者さんもいらっしゃいますので、その場合はハーセプチン®+パージェスタ®のみで治療したいところです。できるだけ使いやすい形で保険適応となることを望みます。

*併用薬に関しては以下の”関西の専門医さん”とのコメントのやり取りをご参照下さい(2013.7.3)。

2013年6月29日土曜日

第21回 日本乳癌学会学術総会 in 浜松 〜帰ってきました!〜



浜松から新幹線に乗って品川経由で羽田に行き、予定を少し早めて午後の便で札幌に帰ってきました。

出発した水曜日は雨模様で富士山はかすんで見えず、湿度も異常に高くて浜松に着いた時にはぐったりでした(汗)。でも木曜日からの会期中は幸い傘が必要になるような雨は降らず、まずまずの天気でした(湿度はやはりこちらよりかなり高かったですが…)。

初日はN先生の発表(ポスター討論)がありましたが、つつがなく終了しました。私の演題はe-Posterだったので口頭での発表はありませんでした。その他は、放射線治療(乳房照射)に関する新しい試みについてのセッションとラジオ波焼灼療法の臨床試験の中間報告に関するランチョンセミナー、専門医制度の改正に関するセッションなどを聞いてきました。

2日目は脳転移の治療戦略のセッションと遺伝性乳がんに関するセッション、画像診断セミナーなどに参加してきました。

内容についてはまたいずれここでも書いていこうかと思っていますが、日進月歩の乳腺診療になかなか追いついていけていないことを実感し、もっと勉強しなければならないと思いを新たにしました。

ポスター会場ではP1グランプリという全国各地、様々な団体のピンクリボングッズの投票が行なわれていました。いつもはJ.POSHのブースだけなのですが、今回はずらっとブースがならんで様々なグッズを販売していました(残念ながら北海道からは出店なし…)。


またこれに関連して(?)ゆるキャラ(和歌山のこうやくんと静岡の出世大名家康くん)も来ていました(笑)。


うなぎに浜松ぎょうざ、黒はんぺん、根わさび、しらす、桜えびのかきあげなど美味しいものもたくさん食べれましたし、乳腺仲間の友人たちにも久しぶりに会えましたし、なによりとても勉強になった学会でした(G先生、留守番お疲れさまでした)。

2013年6月23日日曜日

第21回日本乳癌学会学術総会 in 静岡

6/27(木)から6/29(土)ににかけて静岡県の浜松市で乳癌学会が開催されます。私は水曜日に出発して土曜日に帰る予定です。

今回は会長のW先生の意向でかなり今までとは違う形式で学会が開催されます。いつも最大の演題数となる示説(ポスターを掲示してその前で発表する形式)の中で特に多数を占める症例報告が削減されました。そしてそのかわりにe-PosterというWeb上で公開するような形式が新たに採用されました。今回は私はこのe-Posterに採択されたのですが、今までにない形式なので完成するのにけっこう手間がかかりました。でも当日の発表がないので会場では気分的にとても楽です。

また、通常は事前に抄録集という分厚い冊子が送られて来て当日はそれを持ち歩くのですが、今回はこの冊子がなくなりすべてWebからダウンロードする形式に変更されました。スマホ派の人たちにとっては便利なのかもしれませんが、ガラケー派の私としてはとっても困ります(怒)。せめて今回は両方で配布して数年後に移行するというような事前通知があれば良かったのですが突然だったので非常に困惑しました。結局今回はやむを得ず子供のiPADを持っていくことにしました…(泣)

新しいことにチャレンジしたい気持ちはわかりますが、もう少し配慮が欲しかったですね。しかも抄録はすごく見づらい!!PDFなので何百ページもめくり続けなきゃなりませんし、検索するのも困難です(使いこなせていないだけ?)。少なくともアナログ世代の私には合いません…。さらに検索機能のついたアプリがダウンロードできるようになるはずなのにいまだに機能してません。間に合うのでしょうか…(泣)

文句ばかり書いてしまいましたが、静岡は初めてなので楽しみです。新幹線から世界遺産の富士山を眺めてみたいですし、うなぎをはじめとした食べ物も楽しみです。地震だけはちょっと心配ですが、楽しみながら勉強してきます!

2013年6月17日月曜日

ピンクリボンの自動販売機!

新病院がオープンして1ヶ月が過ぎました。ようやく病院内のオリエンテーションがついて右往左往しなくなりました(笑)

以前も書いたような気がしますが、新病院にはピンクリボンマークのついた自動販売機が設置されています(写真 乳腺センターがある病棟のデイルームの自動販売機)。



これは「キリンビバレッジ」が、乳がんの早期発見・早期診断・早期治療の大切さを啓発するピンクリボン活動に賛同し、またこの活動について多くの方に知って頂き、検診へ一歩踏み出して頂く社会貢献活動の一環として行なわれているものです。

売上の一部は日本対がん協会の「乳がんをなくすほほえみ基金」に寄付され、乳がんの啓発・検診率向上に様々な形で活用されているそうです。商品を購入することにより、手軽にピンクリボン活動に参加出来ますので、もしこの自動販売機を見かけたら是非商品を購入してピンクリボン運動に参加していただければと思います。

2013年6月13日木曜日

第10回 With You 北海道~あなたとブレストケアを考える会〜

先日実行委員会での内容を簡単に書きましたが(http://hidechin-breastlifecare.blogspot.jp/2013/05/10with-you.html)、正式にポスターとチラシ(申し込みハガキ付き)が届きました。



今回のテーマは、「乳がん患者をサポートする」です。

概要は以下の通りです。

日時:平成25年8月24日(土) 12:30~16:30

場所:札幌市中央区南1条西16丁目 札幌医科大学研究棟1階 大講堂

内容:
①開会の辞(With You あなたとブレストケアを考える会代表 霞富士雄先生)
②情報コーナー(司会:市立札幌病院 大川由美先生)
『乳がん最新治療』(札幌医科大学 消化器・総合、乳腺・内分泌外科 島宏彰先生)
『がん治療の公的制度と医療保険』(札幌医科大学 地域連携・総合相談センター 田邑泉さん)
③講演
『10回目のWith You Hokkaidoを開催するにあたって』(東札幌病院 ブレストセンター 大村東生先生)
④参加者グループワーク(「手術後の不安・治療」、「再発後の不安・治療(再発の方のみ)」、「リンパ浮腫」、「補完・代替医療」、「ご家族のケア」、「仕事のケア」、「遺伝性乳がん」)+何でもコーナー(グループワークに参加されない方対象)
⑤特別講演
『がんになった親とその子供に対するサポート』(北海道大学病院 緩和ケアチーム、チャイルドライフスペシャリスト 藤井あけみ先生)
『がん患者の就労支援、現状と課題』(CSRプロジェクト代表理事 桜井なおみさん)
⑥エンターテイメント
『落語』(桂枝光師匠)
⑦各地のWith You報告
⑧閉会の辞(札幌医科大学 消化器・総合、乳腺・内分泌外科 平田公一教授)

参加費:1000円(定員 300名)

申し込み方法:市内の主な乳がん診療病院に置いてある(以前住所を書いた参加者には直接郵送)チラシに付属したハガキを切り取って郵送

問い合わせ先:東札幌病院内 With You Hokkaido事務局 TEL: 011-812-2311 FAX: 011-823-9552(受付時間:月曜日-金曜日 9:00-17:00)

今年の夏も札幌医大大講堂で一緒に楽しく乳がんについて学びましょう!

2013年6月9日日曜日

乳がん体験者コーディネーター第9期生募集中!

昨年も書きましたが、今年もNPO法人キャンサーネットジャパンの第9期乳がん体験者コーディネーター養成講座が開催されます。

この講座の目的は乳がんと診断されて直面する問題(主に医療情報に関する)を解決できる、あるいは解決に導く既存の信頼性の高い情報にアクセスし、提供できる能力を身につけることにあります(こころのケアやカウンセリングを学ぶものではありません)。受講資格は主たる治療を終えた乳がん体験者、乳がん患者を持つ成人家族、その他同NPO法人が認める人となっています。

受講・実施要項(写真)によると受講申し込み開始は5/7からですでに始まっており、7/31までは割引期間になっています(通常申し込み期間は10/31まで…けっこう高額です…)。開講は7/5からです。詳細はhttp://solasto-learning.com/kouza/health/coordinator/index.phpをご覧下さい。



私たちの病院の乳がん術後患者さんの中にこの講座を受講し認定を受けた方がいらっしゃいます。先日移転した新病院には狭いながらもがんサロンができましたので、ここで力を発揮していただく予定になっています。さまざまな悩みに直面する乳がん患者さんにとって、私たち医療従事者とは別に、院内に同じ病気を経験した乳がん体験者コーディネーターがいてくれることはきっと心強いのではないかと思います。乳がん体験者コーディネーターの存在が乳がん診療発展の一助になってくれることを期待しています。

2013年6月8日土曜日

札幌乳癌カンファレンス 2013

今年もAZ社主催の「札幌乳癌カンファレンス」が、市内某ホテルで昨夜行なわれました。

この研究会は今回が3回目で、G病院病理部のA先生をお招きしてミニレクチャーをしていただき、診断困難症例を持ち寄って症例検討を行なうというものです。

今回のミニレクチャーは、「どうする?乳管内病変」というタイトルで乳管内病変(低乳頭型や平坦型の非浸潤がんと乳腺症、乳管内乳頭腫と非浸潤がんの鑑別や新しいWHO分類とその中における疾患概念などについてわかりやすく(でも難しい…)解説をしていただきました。質問が多数出たため予定をかなりオーバーしてしまいましたが、とても勉強になりました。

そのあとの症例検討は、腋窩腫瘤(Occult cancer)の症例、針生検、摘出標本ともに病理医によって良性、非浸潤がんと診断が分かれた症例、そして私が提示したMRで描出されなかった広範な非浸潤がんに粘液浸潤を伴っていた症例の3例でした。詳細は割愛しますが、非常におとなしい非浸潤がんに対してどこまで診断と治療を追求すべきなのか、経過観察という判断はどのような基準で行なえば良いのかということに関してとても考えさせられるディスカッションとなりました。

これからは、早期発見による乳がん死亡率低下という大きな目標を目指すだけではなく、すぐに診断・治療しなくても良い非浸潤がんを見分ける方法も同時に研究していかなければならないのかもしれません。長い間、がんに対して非常に厳格な治療方針を国内外に示してきたG病院の中においても時代とともに変化が起きてきているということをA先生の言葉から強く感じました。

2013年6月2日日曜日

新病院開院祝賀会&すすきの散策!

昨日市内某ホテルで新病院の開院祝賀会が行なわれました。

この祝賀会は、主に日頃大変お世話になっている道内の病院の先生方を中心にお招きして行なったパーティでした。大変ご多忙の中、大学の教授や病院の院長先生ほか、たくさんの先生方がお祝いに来て下さいました。

私の両隣りはD病院形成外科のE先生とPET-CTなどでいつもお世話になっているCクリニックのT先生でした。医学的なお話もしましたが、3人ともファイターズファンという共通点があったため、とても楽しい時間を過ごすことができました(笑い)

また、会場に来てからE先生に言われて初めて気づいたのですが、ここに集まって下さった先生方の中に高校の同期生が私とE先生以外にも2人いることがわかりとても驚きました。医学部の同期ならなんとなくわかりますが、高校の同期が4人もこのような会で集まるなんてとても不思議な感覚でした。

祝賀会がつつがなく終わってから、E先生と2人で飲みに出ました。E先生とはGWにも飲みましたが、今回もやっぱり3軒はしごすることになり、今朝はすっかり二日酔いでした(笑)でもいつもE先生には美味しい店を紹介してくれますし、楽しい会話で楽しませてくれます。

昨日は2軒目に生ライブをやっている店に連れて行ってもらいました。南6西3のセントラルビル2Fにある「Live Zone」という店で、店長自らがボーカルとして歌うのですが、びっくりするほどの素晴らしい声でした!

歌の教室を日中に行ないながら夜はライブをしているそうですが、メンバーの演奏も上手ですし、女性ボーカル(生徒さんでもあるようです)もとてもきれいな声をしていました。60分に1回のライブの合間には、店長やメンバーがテーブルに来て会話にも加わってくれました。とても明るく気さくな店長さんでまた近いうちに行きたくなるようなお店でした。値段もお手頃でオススメです。市内にお住まいの洋楽(昨日はスティービーワンダーが中心でした)好きな方は是非一度立ち寄ってみて下さい!

今回はあまり乳がんとは関係ないお話でしたが、いよいよ近いうちにティッシューエキスパンダーとインプラントを用いた一次再建が保険適応になりそうです。できるだけ早くに対応できるように準備を進めていきます!

2013年5月22日水曜日

乳癌の治療最新情報35 高齢者乳がんに対する重粒子線治療

乳がんに対する手術以外の局所治療としては、ここでも何度も取り上げましたが、国内で臨床試験が行なわれているラジオ波焼灼術(http://hidechin-breastlifecare.blogspot.jp/2010/03/blog-post_22.html、http://hidechin-breastlifecare.blogspot.jp/2012/01/rfa.html、http://hidechin-breastlifecare.blogspot.jp/2012/05/rfa.html)、国際間での臨床試験が行なわれているMRガイド下FUS(集束超音波手術)(http://hidechin-breastlifecare.blogspot.jp/2009/11/mr.html)などがあります。

今回、それらに加えて新たな局所治療の臨床試験が開始されると発表されました。今回の局所治療は「重粒子線」を用いた治療です。重粒子線はお聞きになったことがある方も多いと思いますが、専用の加速器で作られた放射線をピンポイントで病巣に照射するもので、切除不能な悪性腫瘍に対して繰り返し治療ができるという利点があります。一方欠点としては設備が非常に大がかりになるために全国でもごく限られた施設でしか行なえないこと、費用が非常に高額であることが挙げられます。

放射線医学総合研究所が発表した臨床試験の概要によると対象は以下の通りです。

年齢:60歳以上
腫瘍の大きさ:2cm以下で広範な乳管内進展がない
進行度:リンパ節転移や遠隔転移がない早期乳がん

最近では高齢者の乳がん患者さんは少なくなく、合併症で手術が行えない方もいらっしゃいます。そのような方に対する局所療法としては期待できるかもしれません。ただ広く普及するためには上に述べた欠点の解決が必要です。また2cm以下の乳がんなら局所麻酔での手術でも切除可能ですのでそれを上回るメリットがあるのかどうかの検討も必要でしょう。ただいずれにしてもこのような臨床試験が新たな局所治療の道を切り開いてくれる可能性はあると思いますのでその成果に期待したいものです。

2013年5月19日日曜日

PEM(Positron Emission Mammograohy)のお話

昨日は市内某ホテルにて製薬会社主催の研究会がありました。

この会はもう年々も続いている研究会で、毎回トピックな内容の講演を聴くことができます。今回の講演のテーマは、
①「PEM(Positron Emission Mammograohy)について」(ゆうあいクリニック 小澤幸彦先生)
②乳癌骨転移-BONE-Modifying Agentsの最適な使い方を目指して」(国立がん研究センター東病院 向井博文先生」
の2つでした。

PEMというのは、乳房専用のPET検査だと考えれば良いと思います。通常のPET-CTでは、小さな乳がんの検出率はあまりよくありませんでしたが、PEMではマンモグラフィのように乳房を挟んだ状態でさらに検出器を乳房に近づけることによってより明瞭な画像を作ることができるようになったそうです。マンモグラフィや超音波検査、MRとは異なり、PETやPEMは糖代謝が盛んな部位(がん細胞もその一つ)に核種(FDG)が集まることを利用した生理的機能を画像化した検査です。

いろいろな症例を見せていただきましたが、若年で乳腺濃度が高い方のマンモグラフィではまったく見えない腫瘤が明瞭に描出されていたり、指摘されていなかった多発病巣が発見されたりとなかなか優れものの器械だと思います。ただ、本当の早期(微細石灰化で発見されるような非浸潤がんなど)の検出率(感度)がどのくらいあるのかなどの検討はまだ不十分です。また一人あたり両側乳房で約40分かかること、被爆線量の問題(2.4mSv)、費用の問題(自費で3-4万円とのことですが、現状では必ず全身PET検査にオプションの形で追加されることになりそうですので自費で総額約13-14万円くらいになる見込みいうことです)など通常の乳がん検診としてマンモグラフィより適しているとは言い難いのが現状のようです。

ただMRと同様にある特定の対象(若年者、マンモグラフィでdense breastだったり人工乳房の入っている方)に対する検診としてや遺伝性素因のある方に対する追加検査として、乳がんと確定した患者さんの術式決定のための補助的検査や乳房温存術後の局所再発検索目的などにおいては有用性が期待できそうです。

骨転移の治療に関するお話は今までもここで何度か取り上げています。今回は技師さんたちが参加していたこともあり、骨転移とBone-Modifying Agents(ゾメタやランマーク)について基礎からわかりやすく説明して下さいました。ゾメタからランマーク(逆についても)への変更のタイミングや有益性などについて検証する臨床試験が計画されているというお話はとても興味深かったです。

2時間の講演会終了後は懇親会に参加して帰宅しましたが、とても勉強になりました。

2013年5月16日木曜日

ピンクリボン in SAPPORO 理事会&懇親会

昨日市内某ホテル地下の中華料理店にて「ピンクリボン in SAPPORO(旧ピンクリボン in SAPPORO 実行委員会)」の 第1回理事会が行なわれました。

今までの実行委員会をもう少しきちんとした形にするということで今回初めて理事会が結成され、規約の改正や今年度の活動などについて討議されました。

理事会結成の経過の詳細や規約については割愛しますが、地方自治体や企業から寄付や協賛金をいただきながら活動しているので、様々な点に留意しなければならない大変さを知りました。三角山放送局の皆さんをはじめ中心になって会を運営して下さっている皆さんには本当に頭が下がります。

今年度の活動として、まずは夏のピンクリボンイベントがあります。今年も大通の歩行者天国を使用して8/25に開催されます。詳細は後日アップしますが、今年もまたにぎやかなイベントになりそうです。これに関連して、いつか札幌駅と大通を結ぶ地下歩行空間を利用したイベントが何かできないかというような意見が出されました。パネルを用いた乳がん啓発活動などができれば良いと思うのですが、予約がかなり先まで埋まっているようで簡単ではないようです。

また、ピンクリボンコンサートという催しも行なっているのですが、今年度はまだどこで行なうかは決まっていません。私の病院でもいつかできれば…と思いましたが、あの場では言えませんでした(泣)

そして昨年まで行なわれていた日本ハムファイターズの田中賢介選手の乳がん検診イベントですが、賢介選手が移籍してしまったために後継者の選択が行き詰まってしまっているようです。賢介選手の意向や球団がどこまで関わってくれるかという課題があり、なかなか簡単ではないようです。個人的には、選手個人にお願いするより、ファイターズにお願いして「1勝につき1人の乳がん検診をプレゼント」みたいにすると良いのでは?と意見を述べたのですが、1つの団体にOKするとさまざまな団体から同じような依頼が来る可能性があるので難しいようです。誰か後継者になってくれると良いのですが…。

理事会が終わってからは懇親会がありました。私は高名なS医大のH教授の隣りでしたのでかなり緊張しましたが、H教授は気さくな先生でいろいろと話しかけて下さり、私と同じ高校の大先輩であることもわかりましたので楽しくお話しさせていただきました。また、ちょうど昨日、アンジェリーナ・ジョリーが予防的乳房切除を受けたニュースが大々的に報じられていましたので、遺伝性乳がんや予防的乳房切除、乳房再建の話で大変盛り上がりました。

18:30に始まった会でしたが気がつくといつの間にかすっかり遅くなってしまいましたがとても楽しい時間を過ごすことができました。また、中華料理(なんとなく洋風な印象でした)も紹興酒もとても美味しかったです(笑)リニューアルしたこの会をさらに発展させて、乳がんの啓発活動を盛り上げていければと思いながら帰ってきました。



2013年5月11日土曜日

乳がん検診実施医療機関以外で精検を受ける場合の注意点

検診で精査が必要と判定された場合、その施設によって通知方法は様々です。対がん協会からのご紹介の場合は、検診の判定用紙、精検医療機関宛の紹介状、精検結果報告用紙そして返却不要のマンモグラフィフィルムを持参して来院されます。こういう場合は非常に対応がしやすいです。

最近増えてきたビル内にあるような検診専門のクリニックでの乳がん検診の場合は、所見には比較的細かく書いている場合もありますが(「カテゴリー3:右UにFAD」 など)、フィルムは持参されない場合がほとんどです。

しかし、乳腺外科のある一般病院での検診の場合は、要精検と判定された場合は自施設に来院することを前提と考えているためか要精検の通知内容が不十分で、マンモグラフィフィルムも持参されないケースが多いようです。

先日、市内の病院で乳がん検診(企業検診)を受けて要精検となった方が精査を希望されて私の外来に受診されたのはまさにこのケースでした。検診結果には「右カテゴリー3」のみしか書かれていません。所見の部位も内容(石灰化なのか腫瘤なのかFADなのか構築の乱れの疑いなのか)もまったく記載がありませんでした。もちろんフィルムの持参はありませんでした。

こういう場合は非常に困ります。通常、マンモgフラフィ検診で要精検になった場合はまずは超音波検査を行ないますが、微妙な病変の場合(淡い石灰化の集簇や構築の乱れなど)部位も所見内容もわからない状況で観察するのは技師にとってはかなりのストレスであり、見逃しの可能性も出てきます。

以上について受診者にお話しし、やむを得ず以下の選択を提示しました。

①当院ではなく検診を受けた医療機関に戻って精査を行なう
②検診医療機関に連絡をしてフィルムを送ってもらってから(もしくは取りに行ってもらってから)再度受診して当院で検査を行なう
③当院でマンモグラフィをもう一度取り直して再度判断する
④とりあえず超音波検査を行ない、同時に検診機関にフィルムの借用を依頼し、後日超音波検査結果と整合性をこちらで判断し、場合によってはもう一度来院してもらって追加検査を行なう

①は何かあった場合の通院の利便性から患者さんは希望しませんでした(検診は企業の指定があったためその施設で受けたようです)。③については本来不必要な被爆と費用が生じてしまうため、私はお勧めしないとお話ししました。②か④かというところでしたが、忙しい方のようでしたので、今回は④を希望され超音波検査を受けてお帰りになりました。同日その検診機関にマンモグラフィフィルム借用の依頼状を送り、後日再検討の予定です。

他の医療機関では③を選択している所が多いようです。しかし上に述べた理由で私はあまり望ましいとは思いません。本来、検診機関できちんとフィルムをご本人にお渡しするべきなのですが、なかなか実際にはそのシステムがうまくいっていないように思います。

検診はやりっ放しではやはりまずいですね。結果通知はもう少し受診者がわかりやすいような工夫が必要だと思います。要精検結果の通知の用紙に、「他施設に受診する際はフィルムをお渡ししますのでご連絡願います」と記載するだけでも良いのではないかと思います。また、検診受診者も検診施設以外の医療機関で精査を受ける場合、フィルムの持参がなければもう一度同じマンモグラフィ(本来受ける必要のない)を受けなければならないかもしれないことを知っておく必要があります。検診施設に問い合わせればなんらかの形でフィルムを渡してくれるはずですので無用な被爆と出費を避けるようにした方が良いと私は思います。

2013年5月8日水曜日

第10回 With You 北海道~あなたとブレストケアを考える会〜実行委員会

今日、第10回 With You 北海道~あなたとブレストケアを考える会〜の実行委員会がありました。

午後の手術開始が遅れたため間に合わないかと思いましたが、少し早めに手を下ろさせてもらってなんとか19時からの会議に間に合いました。

今年度初めての実行委員会でしたが、すでに札幌医大関連の先生方がほとんどの下準備をしていて下さっていますので、内容の確認と意見交換が主でした。もう講演の内容や演者もほぼ決まっていますが、詳細はポスターが完成してからまた報告します。

現在のところ公表しても差し支えなさそうなのは以下の内容です。

日時:2013.8.24(土) 12:30-16:30
場所:札幌医大研究棟1F大講堂(いつもの場所です)
参加費:1000円
申し込み方法:市内の乳腺疾患を扱っている主な病院に置いてある(以前住所を書いた参加者には直接郵送)チラシにあるハガキを切り取って返送
チラシ配布(申し込み開始)時期:2013.6上旬予定

もし札幌市外在住などでチラシを受け取ることが難しい方は、以下の問い合わせ先に6月上旬以降に連絡してみて下さい。

問い合わせ先:東札幌病院内 With You Hokkaido事務局 TEL: 011-812-2311 FAX: 011-823-9552(受付時間:月曜日-金曜日 9:00-17:00)

2013年5月6日月曜日

明日はいよいよ新病院オープン!

今日は新病院移転後初めての回診当番でした。

外科病棟の乳腺患者さんは引越の関係もあって非常に少なく、緩和病棟にいる2人も含めて落ち着いていましたので回診自体はすぐに終わりました。創処置のために1人外来受診したので中央処置室で診察しましたが、新しい処置室は広くてなかなかいいです(笑)

そのあとまた病院内を探索してみましたが、まだオリエンテーションがつかず、迷子になりそうでした(汗)それにしても休日だというのに、今日も多くの職員が来ていて、明日の開院のための準備をしていました。まだすべての機器の準備が整っていないようです。明日までに間に合うのかちょっと心配です。

化学療法室も覗いてみましたが、誰もいませんでした。荷物の搬入は終了し、無事明日の開院を迎えられそうです。今度からベッド数は6床から10床に増えますので受け入れ患者数に余裕ができます。新しく面談室もできますし、全体的にかなりスペースは広くなります。

また、新しい化学療法室には診察室あります。他の医師の診察の時に私が居場所を失うこともなくなりますのでうれしいです(化学療法室長とは名ばかりなのです 笑)。

いよいよ明日開院です。でも私は午前中は関連病院の外来のため開院セレモニーには出れません(泣)
せっかく建物をリニューアルしましたので、内容もさらに充実させて、多くの患者さんにここにかかりたいと思っていただけるような病院にしていきたいものです。

2013年5月3日金曜日

豊胸術と乳がん術後の予後

豊胸術後に乳がんと診断された患者さんの予後に関する研究結果が報告されました(BMJ 2013; 346: f2399 http://press.psprings.co.uk/bmj/may/breastimplants.pdf)。

北米では,美容目的で行われる豊胸手術がこの10年間で増加の一途をたどっているそうです。その一方で,豊胸のために用いられたインプラントがマンモグラフィによる乳がん検診の妨げとなる可能性も指摘されています。日本における精中委の見解では、インプラントを挿入している患者さんへのマンモグラフィ検診は、圧迫による破損の可能性なども考慮して原則的に推奨できないとされています(http://www.mammography.jp/mammo/oshirase16.html)。

今回の報告は、1990年以降に発表された、豊胸手術が乳がんと診断されたときのステージと診断後の生存に影響するか否かに関する12の研究についての系統的レビューとメタアナリシスです。

結果は、
①豊胸手術を受けていない女性を基準とした場合,豊胸手術を受けた女性で乳がんの診断が遅れるオッズ比(OR)は1.26(95%CI 0.99~1.60)で,リスクは上昇傾向にあった。
②乳がんによる死亡のORは1.38(同1.08~1.75)で,豊胸手術を受けた女性で有意に高かった。
というものでした。

しかしこの研究の発表者は、この解析にはいくつかの問題もあるため、今回の結果はあくまで警告レベルにとどめるべきとしているようです。ただ実際に豊胸術後の患者さんには検診マンモグラフィは施行できない(または施行しても診断精度が落ちる)ため、この問題を解決する手段を考えなければなりません。先日参加した乳房再建の研修会でお聞きした話では、インプラント挿入後は少なくとも2年に1度のMRまたは超音波検査の実施が推奨されていました。これはインプラントの破損をチェックすることが主な目的ですが、豊胸術後の女性に対する乳がん早期発見のための基準作りも必要なのではないかと私は思います。

2013年5月1日水曜日

新病院引っ越し完了!

今日は新病院への患者さんの引っ越し日でした。

新病院移転に関しては数年かけて計画を立て、何度も変更を繰り返してようやく今日の日を迎えました。特に患者さんの移送に関しては万が一のことが起きないように綿密に計画を立ててきました。しかし、なにせ病院としては初めてのことですし、もちろん私たちスタッフも未経験のことですので、実際に患者さんの移送を行なうとなかなかうまくいかないこともあったようです。午前の移送は30分遅れになってしまい、午後もずれずれになってしまいました。新旧病院の配分がうまくいかなくてスタッフの弁当が足りなくなったり、スタッフが多すぎてなんだか手持ち無沙汰な人がいたり…。でも患者さんの移送中の急変やトラブルもなく、なんとか無事終了しました。

患者さんがいなくなってしまった病棟は、物品もほとんどなくなってしまって閑散とした状態でした(写真)。

私が研修医としてこの病院に来てから24年…いろいろなことがありましたが、これでお別れです(泣)

新しい病棟に移った患者さんは、真新しい病室に大変満足しているようで、良かったです!(ちょっと新築独特の臭いが気になりましたが…)まだまだ新病院の中は、物品の整理が終わっていなくてごちゃごちゃしていますが、明日1日と4連休中にそれぞれのスタッフが整理をして、5/7の開院に向けて準備する予定です。医局の机の上も大量の段ボール箱を開けて整理してようやく片付きました。

明日からは新病院に出勤です!

2013年4月26日金曜日

T-DM1 vs Trastuzumab+Docetaxel(Phase Ⅱ)続報

トラスツズマブ(商品名ハーセプチン)に抗がん剤のエムタンシンを結合させたHER2陽性乳がんに対する新規治療薬、T-DM1に関してはここでも何度か取り上げました。

①http://hidechin-breastlifecare.blogspot.jp/2010/07/18adc.html…T-DM1のFDA迅速承認申請
②http://hidechin-breastlifecare.blogspot.jp/2010/10/adc.html…今回の臨床試験(T-DM1 vs Trastuzumab+Docetaxel Phase Ⅱ)の中間報告
③http://hidechin-breastlifecare.blogspot.jp/2012/12/2012asco.html…カペシタビン+ラパチニブに比べ,生存期間中央値が延長(EMILIA試験 Phase Ⅲ)

今回は②の最終結果が論文化されたというお話です(J Clin Oncol. 2013 Mar 20;31(9))。

”Phase II randomized study of trastuzumab emtansine versus trastuzumab plus docetaxel in patients with human epidermal growth factor receptor 2-positive metastatic breast cancer.(HER2陽性転移性乳がんに対するTrastuzumab Emtansine(T-DM1)とTrastuzumab+
Docetaxelのランダム化第II相試験)”

概要は以下の通りです。

対象: HER2陽性進行再発乳がん患者137人( トラスツズマブ+ドセタキセル=HT群  n = 70、T-DM1群  n = 67) 。1st line(再発に対して初めての治療)に限定。

方法: 病状進行または毒性による治療中止まで治療を継続。Primary end pointは、無増悪生存期間(PFS)と安全性。secondary end pointは、全生存期間(OS)と奏効率(ORR)など。

結果: PFS(中央値) は、9.2ヶ月(HT群) vs 14.2ヶ月(T-DM1群)(観察期間中央値14ヶ月)、ORRは58.0% vs 64.2% 。grade3以上の有害事象発生率(90.9% vs 46.4%)、治療中止につながる有害事象発生率(40.9% vs 7.2%)、重篤な有害事象発生率(25.8% vs 20.3%)といずれもT-DM1群のほうが安全性において上回っていた。また、OSも2群間で同様の傾向であった。

つまり、この臨床試験においては、有効性、安全性ともにT-DM1群が上回っていたということです。

すでにEMILIA試験の結果を受けて、2013.2.22には米国FDAでT-DM1は承認されています。国内でも2013.1.29に中外製薬が承認申請を行なっています。近いうちに承認されそうだという噂がありますがいつなのでしょうか?待っている患者さんがいます。できるだけ早く使えるようになることを望んでいます。

2013年4月23日火曜日

第21回日本乳癌学会学術総会 in 浜松

今年の乳癌学会総会は6/27-29に静岡県浜松市で行なわれます。静岡での学会参加は初めてですので楽しみです。

今回は初めての試みでe-posterというセッションがあります。今までの示説(ポスター)発表は、印刷したものを指定の場所に張り出す(グループに分かれてポスターの前を移動しながら発表)という発表形式のみでした。今回のe-posterは、あらかじめ指定された様式(Power Point)でweb上にポスターを作成しておき、会場で閲覧できるという形式です。通常のポスターを張り出して討論する発表形式もありますが、症例報告は主にこのe-posterでの発表となりました。

私の演題も症例報告ですので、このe-posterで採択されました。通常のスライドはほぼ作成が終わりましたが、慣れないために指定の様式(1枚のポスターに内容を貼付ける)にどうやって貼付けたら良いのかこれから考えながら作業をするところです。締め切りが早いですし、ちょっと手間ではありますが、これさえ作成してしまえば学会当日の発表はありませんので気分的にはとても楽です。連休中にある程度完成させてしまおうかと考えています。

それにしてもここ数年、偶然ではありますが乳癌学会前後に学会開催地が大きな自然災害に見舞われています。2011年はご存知の通り、3/11の東日本大震災があり、仙台での学会が秋に延期となりました。2012年は、学会直後に熊本で大水害が起きました。そして今年は静岡…。ここのところ日本各地、そして世界中で大きな地震が頻回に起きています。ちょっと心配ですね…。念のため地震の備えはしておくつもりです。何ごともなく、無事学会が終了することを祈っています。学会期間中だけでなく、大きな自然災害(+人災)はもう起きて欲しくないですよね。でも自然には逆らえませんから、自分たちの身は自分たちで守る心構えも必要だということを忘れないようにしましょう。

2013年4月17日水曜日

新病院視察

今日、手術が終わってから新病院の視察をしてきました。もうほとんどの職員は一度は見て来ているのですが、私はなかなかチャンスがなくてこんなぎりぎりになってしまいました。

病院の外観は、今の病院とは雲泥の差です。やはり新しい病院はいいですね!駐車場が少し狭くて、職員駐車場が確保できていないのがちょっと問題ですが…。

建物の中で見学したのは、外来、化学療法室、放射線検査室、医局、手術室、病棟、がんサロンなどです。

見に行った職員からの情報を聞いていたのでだいたい予想通りでしたが、更衣室のロッカーが異常に狭いのはちょっと心配です(写真)。冬のコートは入りそうもありません(泣)。
医局の机周りはまあまあでなんとか荷物は収納できそうです(写真)。

化学療法室(写真)は、思ったよりベッドとベッドの間が狭かったですが、まずまずといったところです。カンファレンスルーム&面談室もできましたし、診察室が2つになったのはとてもうれしいです(今は1つの診察室の争奪戦が毎日繰り広げられています…泣)。

がんサロンはまだ設備が十分整っていなかったので雰囲気はあまりわかりませんでした。どんな感じになるのか少し気になります。多くのがん患者さんが集まってくれるような憩いの場になれれば良いのですが…。

今週末は、近隣の医療機関の関係者、そして一般の方々向けの病院内覧会があります。そして急ピッチで引っ越し準備をすすめて、5/1に患者さんの移送、5/7から新病院の一般診療開始です。もう時間がありませんが、なんとか患者さんに支障が出ないように準備を進めたいと思います。

来週はあまり大きな手術はしない予定でしたが、けっこうびっしり手術予定が入っています。そして引っ越し時には患者さんを減らしている予定でしたが、満床状態です…(汗)。患者さんの移送が無事時間内に終わることを祈りたいです(泣)。

2013年4月12日金曜日

デュロキセチン〜抗がん剤による末梢神経障害に対する新たな治療薬

抗がん剤によるやっかいな副作用に、しびれなどの末梢神経障害があります。乳がん領域においては、タキサン系(特にパクリタキセル)やビンカアルカロイド系(ビノレルビンなど)でよくみられます。生命を脅かすような副作用ではありませんが、日常生活においてかなりわずらわしい副作用であり、時にQOLを低下させる原因となります。私たちの病院でもパクリタキセルの反復投与で長く神経障害に苦しむ患者さんたちを経験しています。

この末梢神経障害に対する特効薬はなかなかないのが現状です。以前ここでも書きましたが(http://hidechin-breastlifecare.blogspot.jp/2010/12/10.html)、今まで効果があると言われてきた治療には限界があり、まったく効かないこともよくありました。

このやっかいな末梢神経障害に対して、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬のデュロキセチン(商品名:サインバルタ)という薬剤が効果的であったというCALGB-170601試験の報告がJAMA誌2013年4月3日号に掲載されました。この薬剤はもともとうつ病やうつ状態、糖尿病性神経障害に対して保険適応となっている薬剤です。

この臨床試験の概要は以下の通りです。

<CALGB-170601試験>
「化学療法薬誘発性末梢神経障害に伴う疼痛に対するデュロキセチンの効果を評価する二重盲検プラセボ対照クロスオーバー第III相試験」

対象: 25歳以上、化学療法薬(パクリタキセル、オキサリプラチン、ドセタキセル、ナノ粒子アルブミン結合パクリタキセル、シスプラチン)によって誘発された末梢神経障害と診断され、治療終了後3ヵ月以上持続するGrade 1以上の神経障害性の疼痛(NCI-CTCAE ver3.0)を伴う患者。

方法: 化学療法薬および疼痛リスクで層別化したのち、デュロキセチン治療後にプラセボ投与に切り替える群(A群)またはプラセボ投与後にデュロキセチン治療に切り替える群(B群)に無作為に割り付けた。両群とも5週の治療を行い、2週休薬後にクロスオーバーしてさらに5週の治療を行った。投与量は第1週が30mg/日、第2~5週は60mg/日とした。
疼痛の重症度の評価には、簡易的疼痛評価用紙短縮版(Brief Pain Inventory-Short Form)の疼痛スコアを用いた(疼痛なしを0とし、重症度を1~10で評価)。

結果: 2008年4月~2011年3月までに220例(平均年齢59歳、女性63%、パクリタキセル40%、オキサリプラチン59%、乳がん38%、消化器がん56%)が登録され、A群に109例、B群には111例が割り付けられた。フォローアップは2012年7月まで行われた。
最初の5週の治療における疼痛スコアの低下は、デュロキセチン治療(A群)が平均1.06[95%信頼区間(CI):0.72~1.40]と、プラセボ(B群)の0.34(95%CI:0.01~0.66)に比べ有意に優れていた(p=0.003)。低下した疼痛スコアの両群間の差は0.73(95%CI:026~1.20)だった。
最初の5週の治療で疼痛が軽減したと答えた患者の割合は、デュロキセチン治療が59%と、プラセボの38%に比べ高かった。デュロキセチン治療の30%が疼痛は不変とし、10%は増大したと答えた。
クロスオーバー後の治療期間中の疼痛スコアの低下は、プラセボ(A群)が0.41(95%CI:0.06~0.89)、デュロキセチン治療(B群)は1.42(95%CI:0.97~1.87)であり、低下した疼痛スコアの差は1.01(95%CI:0.36~1.65)であった。


この結果から、デュロキセチンは化学療法の神経障害に一定の有効性があると推測されます。ただ、詳細な解析からは、デュロキセチンはタキサン系薬剤よりもオキサリプラチンによる末梢神経障害性疼痛に有効だったそうですので、乳がん領域における神経障害の治療には直接結びつかないかもしれません。タキサン系やビンカアルカロイド系の神経障害に対してどの程度有効性があるのかということに関してはもう少し追加の検討が必要だと思います。続報を待ちたいと思います。

2013年4月8日月曜日

新体制!

東京のG病院からようやくN先生が戻って来て、今日からまた3人体制になりました!

この1年間は、かなりハードでした。N先生のいた2011年度は急激に乳がん症例が増えましたが、2012年度も同じくらいの症例があったため、特に病棟の責任者のG先生はかなり大変だったと思います。なんとかN先生が戻るまでと思いながら耐えてきましたがこれでようやく一安心です。

さっそくN先生希望の患者さんが手術を待っていて今日入院になりました。明日の術前検討会にも私が外来で診ていた患者さんの症例提示をお願いしました。マンモグラフィの読影もたくさんあります。帰ってきた早々でちょっと大変かもしれませんが、若いので大丈夫でしょう(笑)

N先生がG病院で学んで来てくれたことはこれから徐々に病院に還元してくれるものと期待しています。とりあえず、新病院移転後はステレオガイド下生検が開始になります。そして保険適応が通れば、一次再建がいよいよ可能になります。近隣の2施設に新たに乳腺専門医が勤務することになりましたので、ぼーっとしているわけにはいきません。さらなる向上を目指して3人で努力し続けなければならないと思っています。ただ乳腺を専門とする外科医が近くに増えたことはうれしいことです。症例検討会などで交流できればいいなと思っています。

5/1の新病院移転に向けて準備が急ピッチで進んでいます。荷造りも徐々に始めていますが、化学療法室の本棚を整理していたら、カビ?とホコリで気持ち悪くなりました(汗)やっぱりこまめに掃除しなきゃだめですね!

2013年4月4日木曜日

「乳房再建エキスパンダー/インプラント講習会」 in 東京

昨日「第1回 乳房再建エキスパンダー/インプラント講習会」に参加してきました。これは、ティッシュエキスパンダー(皮膚拡張器)とインプラント(人工乳房)挿入を保険適応で行なうための医師および施設要件として新たに定められた講習会です。責任者と執刀医、および指導にあたる形成外科医のいずれもこの講習会を受けなければなりません。実際の保険収載はまだですが、いつでも可能になるようにまずは私が受けに行きました。

午前に検診と化学療法室の患者さんを3人診てから千歳空港に向かったところ、東京が悪天候のために軒並み東京便に遅れが出ていました。14:30発が結局15:50発になって、あやうく19:00開始の講習会に遅れるところでした(遅刻したら受講証はもらえません)。ちょうど形成外科学会に合わせて行なわれていたのでD病院のE先生に連絡をとって一緒に聴講しました。

内容は、
1. 挨拶・概論
2.「使用要件基準(ガイドライン)の概略」(大慈弥裕之先生 福岡大学 形成外科)
3.「製品説明およびインフォームドコンセントについて」(アラガンジャパン 学術担当者)
4.「乳腺切除とティシュエキスパンダーの使用法」(福間英祐先生 亀田総合病院 乳腺外科)
5.一次二期再建ー皮膚拡張後のインプラントによる再建ー」(矢島和宜先生 がん研有明病院 形成外科)
6.「エキスパンダーおよびインプラントを用いた二次再建」(岩平佳子先生 ブレストサージャリークリニック 院長)
7. 質疑応答
でした。

質疑応答も含めて気になったことを書いてみます。

①思いのほかインプラント挿入後の再手術(摘出、入れ替えなど)が多いこと(乳房再建後の再手術は7年で53.3%でインプラント摘出は23.7%)。
②今回採用されたインプラントはラウンドタイプのみで自然な形状のアナトミカルタイプではないこと(特に頭側にくっきりと不自然な隆起が出る)。ティッシュエキスパンダーはアナトミカルタイプなのになぜインプラントがラウンドタイプのみなのか不思議です。岩平先生は、「今回は保険適応でインプラントの再建ができるようになるというだけであって”美しい乳房を作る再建”ができるようになるということではない」ということを強調されていました。
③このインプラントは、穴が開いても内容物が漏れない”コヒーシブタイプ”ではなく、粘稠性はあるけど漏れてしまうタイプであること(なぜこのタイプを認可したのかは不明…)。
④除外条件に”乳癌の再発や残存を認める症例”とあり、乳房温存術後の局所再発で全摘を行なう場合にもこれが該当するのかどうかについての回答が回答者によってばらばらであやふやだったこと。
⑤術後のトラブルでインプラントを入れ替える場合に保険適応になるのかどうかについても同様に微妙な回答だったこと。
⑥施設要件に、”形成外科医が常勤または非常勤(二次再建、一次二期再建は常勤)していること”という部分があり、非常勤の定義に関する疑義や常勤であることの必要性(特に今まで乳腺外科医が普通に二期再建をやってきた施設でできなくなる可能性があります)に関する疑義が出されたこと。

有意義な内容ではありましたが、2時間の講演を聞くだけで10000円、そして施設責任者の義務である日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会入会金(年会費)5000円×約800人…。集まったお金は1200万円…。しかもこの講演会は学会に合わせて今年は3回行われます。学会や講習会ってこんなにお金がかかるものなのですね(苦笑)

2013年4月2日火曜日

新年度スタート!

昨日から年度が変わり、2013年度の新体制がスタートしました。ただ、5月に新病院に移転することもあり、なんだか新年度は5月からみたいな感覚です。

今日、昼に医局に行くと東京に研修に行っていたN先生が顔を見せに来ていました。元気そうに見えましたが、ちょっとやつれたような印象が…。短期間の研修で盛りだくさんのことを学んで来たのでちょっと疲れがたまっているのかもしれません。わずかですが休息を取ってリフレッシュしてこれからの乳腺外科を支えていって欲しいと願っています。

外来化学療法室も人事異動に伴ってちょっとごたごたしています。長く化学療法室を支えてくれていた看護師さんが病院の事情によって異動になりそうで化学療法室としては大打撃です…。1年前にも化学療法室の中心になってくれていた看護師さんが異動になり、これで2人目。いろいろ事情があるにせよ、室長としては黙っていられず、かなり抵抗してみたのですが厳しい状況です…。チーム医療を安定的に維持していくのはなかなか難しいです。

それにしても新病院移転に向けての一番の悩みは看護師不足の問題です。さまざまなアプローチをして確保を試みてきましたが、まだ少し足りないようです。女性の多い職種ですので、結婚、出産、育児などによる欠員が常に発生しますので、慢性的な看護師不足状態が続いています。病院としても、国に対してもっと看護師さんを増やして欲しいという活動をしてきましたが、なかなか改善しません。乳腺診療に意欲を持っている看護師さん、うちで働いてみませんか?(笑)

2013年3月29日金曜日

乳腺術後症例検討会 26 ”2012年度最後!”

今週の水曜日に今年度最後の乳腺症例検討会がありました。

今回は厳選した3症例。
1例目は、左乳がん、右葉状腫瘍の術前診断で手術をしたら、両側乳がん、両側葉状腫瘍だった症例でした。2例目は、区域性の微細石灰化を呈した粘液浸潤を伴う広範囲の非浸潤がん主体の乳がん症例、そして3例目は良性腫瘍の細胞が細胞診の際の針穴に播種したために針生検で浸潤がんのように見えた症例でした。

いずれも非常に珍しく、興味深い症例でしたので活発な意見の交換が行なわれました。

そして年度末という事でそのあと懇親会が某居酒屋で行なわれました。今回は病理の先生も2人参加してくれて楽しい時間を過ごす事ができました。

この症例検討会が終わってから私的な事情と新病院移転にからむ問題があってバタバタしていたため、報告が遅れてしまいました。GW明けには新病院がスタートします。そろそろ医局の荷造りにも取りかからなければなりません。しばらくの間はいつも以上に忙しくなりそうです。

2013年3月25日月曜日

がん性胸膜炎の治療

乳がん患者さんの再発形式の一つにがん性胸膜炎(胸膜の再発=胸膜播種によって胸水が貯留すること)があります。

胸水が貯留しても少量では無症状のこともよくあり、定期検査の胸部写真やCTで発見されたり、腫瘍マーカーの異常の精査で発見されることもあります。咳が続いて診断されることもありますが、時に呼吸困難になるほどの大量の胸水が貯留して初めて診断されることもあります。

がん性胸膜炎の治療は、基本的には他の再発と同様にサブタイプに合わせた全身治療がメインになります。しかし、量が多かったり呼吸困難がある場合は、胸腔ドレーンというチューブを胸腔内に留置して胸水を排液します。胸水を抜ききったら一度ドレーンを抜くことが多いのですが、胸水貯留を繰り返す場合は、胸膜癒着術という治療を行ないます。この治療は、胸腔ドレーンから薬剤(タルクという鉱物やピシバニールという免疫賦活剤、ミノマイシンという抗生物質など)を注入して、肺側の胸膜と胸壁側の胸膜を人工的に炎症を起こして癒着させ、胸水の貯留を防ぐ方法です。

この治療に関連する副作用や合併症としては、以下のようなものがあります。

①胸腔ドレーン挿入時の出血、気胸(肺のパンク)…慣れた医師が行なえば通常ほとんど起きませんが、胸水の量が少なかったり、もともと複雑に癒着していたり、胸膜のがん自体を穿刺してしまったりしたときには起こりえます。

②再膨張性肺水腫…長く貯留した大量の胸水を短時間で排液した時に起きることがある肺水腫。重症では呼吸困難、低酸素血症、ショックを起こし、命に関わることもあります。ですから大量の胸水が貯留している場合は、数回(数日)に分けて排液するほうが安全です。

③胸膜癒着術施行時の痛み、発熱、ショック…薬剤によって引き起こされる炎症が原因で起きます。あらかじめキシロカインなどの麻酔薬を注入しておいてから行ないますが、それでも起きることがあります。鎮痛解熱剤や輸液などで対処します。

④癒着後の再貯留時の気胸、血胸…癒着術を行なって部分的に癒着を形成したあとで胸水が再貯留すると癒着していた肺が裂けて気胸を起こすことがあり、時に出血を伴うこともあります。先日も軽い気胸を起こしていた患者さんがいらっしゃいました。

がん性胸膜炎は乳がん患者さんにとって厳しい状態であることは確かです。しかし呼吸困難がきっかけでがん性胸膜炎を伴うⅣ期の乳がんと診断されてから10年以上生存された患者さんや、がん性胸膜炎で再発してから10年以上生存中の方もいらっしゃいますので、長期の生存を期待できる場合もあります。少なくとも自覚症状を局所治療でうまくコントロールしながら全身治療で病状全体を安定させることで、良いQOLを保たせることは可能なのです。

2013年3月18日月曜日

乳がんとPTSD(心的外傷後ストレス症候群)

乳がんと診断された患者さんの4人に1人がPTSDを発症していることが米国のコロンビア大学内科・外科学部教授でMailman公衆衛生学部教授のAlfred Neugut氏らによって報告されました(「Journal of the National Cancer Institute」オンライン版)。

PTSDは、日常とはかけ離れた強烈なストレスによって、心に深い心的外傷を負った後に発症する心の病気です。地下鉄サリン事件などの凶悪事件を目撃、または被害にあった方に発症したことで日本の一般の方々にも徐々にこの病気が認知されてきたと思いますが、かつてベトナム戦争帰りの米国の若者たちに同様の症状が見られたことがこの疾患概念の確立のきっかけになったとされています。

症状としては、精神的不安定による不安、不眠などの過覚醒症状、トラウマの原因になった障害、関連する物事に対しての回避傾向、事故・事件・犯罪の目撃体験等の一部や、全体に関わる追体験(フラッシュバック)などがあげられ、これらが1ヶ月以上継続する場合に、PTSDと診断されます。

このPTSDが乳がんと診断された患者さんにも発生するというのが今回の報告です。今回の研究では、1100人強の20歳以上の乳がん患者さんから聞き取りを実施した結果、23%が診断後2-3カ月以内にPTSDの症状を経験していたということです。しかし、その後3カ月で症状は軽減したとのことですので、事件や事故によるPTSDとは少し異なるような印象を受けます。これは、がん告知を受けた患者さんを数多く見ているとなんとなく理解できます。がん告知を受けた時のショックはもちろん大きいのですが、検査を受けているうちに徐々にですが自分の状況を冷静に見ることができるようになり(がんという言葉に対する漠然とした不安が少し解消するのだと思います)、手術や治療が終了すると少し安心感が出てくる(もちろん再発の不安はありますが)というように、時間とともに状況が変化していくというのが、事件や事故を目撃、経験した方たちとは違うからではないかと私は思っています(もちろんかなりの個人差はありますが…)。

なお、若い女性は高齢女性よりも高い比率でPTSDの症状がみられ、人種ではアジア人と黒人の女性は、白人女性よりもPTSDリスクが50%高かったということです。このあたりは、生活環境、人生観や宗教観なども関係しているかもしれません。いずれにしても、中途半端だったり、一方的な告知、患者さんの心情を理解しないような不適切な告知を行なうと、時間が解決してくれるはずの心の傷が癒されず、回復に時間を要するPTSDになってしまう可能性はあると思います。私たち医療従事者は、そういうことにも細やかな心配りをしなければならないということを警鐘する点でも意味のある研究なのではないかと思いました。

2013年3月13日水曜日

Mucocele-like tumorと乳がん

以前もここで書きましたが(http://hidechin-breastlifecare.blogspot.jp/2010/11/mucocele-like-tumormlt.html)、粘液を貯留した腫瘤であるMucocele-like tumor(MLT)は、基本的に良性なのですが、時に乳がん(非浸潤がんや粘液がん)を合併することがあると言われています。

私たちの病院でも何例か切除したことはありましたし、経過観察している方もいらっしゃいますが、今まではがんの合併を証明された方はいらっしゃいませんでした。ですから「MLTはがんの合併があるので細胞診で粘液が引けた場合は切除したほうが良い」と言われていても少し懐疑的な印象を持っていました。

しかしついに私たちの施設でもMLTという術前診断で切除した結果、がんの合併があった患者さんを経験しました。もともと検診施設で区域性の微細石灰化(典型的な壊死型の石灰化に比べると角が丸い多形性)ということで紹介を受けた患者さんだったのですが、診断にかなり頭を悩ませた結果、最終的には乳腺部分切除を行なってようやく乳がんという診断に至りました。

最近も同様の所見の患者さんがいらっしゃったので、これから手術を検討するところです。術前にがんの診断がついていない状況での手術は少しストレスですし(切除範囲の設定は難しいのです)、患者さんに理解していただくようにご説明するのも大変ですが、今回のようながんの合併症例を経験すると患者さんにも説得しやすくなるのではないかと自分では思っています。

2013年3月9日土曜日

連日の研究会〜神戸の研究会は断念しました…

昨日は、不定期に行なっている再発治療の研究会がありました。G先生は私用で欠席したので7人というこじんまりとした会でしたが、今回は「乳がん肝転移に対する動注療法」についての講演があり、活発なディスカッションが行なわれました。

肝転移に対する抗がん剤の動注療法は以前はよく行なわれていましたが、エビデンスがなく、合併症のリスクを考えると推奨されないというガイドラインの記載(推奨グレードD)がなされてからは、この治療法を行なう施設は減ったと思います。また、ここ15年ほどの間に次々に新たな抗がん剤が使用可能となり、以前は他に打つ手がなかった肝転移に対しても有効性が認められるようになってきたことも動注療法が行なわれなくなったもう一つの理由ではないかと思います。

しかし、私の施設でも肝動注療法と全身療法の組み合わせによって5年以上の長期にわたって肝転移の消失(CR)がみられた患者さんは3人ほどいますし、症例によっては劇的に効くことがあるのも事実です。今回講演して下さった先生は、かなり数多くの肝動注療法の経験がある先生で、合併症を防ぐコツや治療法の詳細、その治療成績についてわかりやすく解説して下さいました。もちろんランダム化試験ではありませんが、その治療成績が一般的な肝転移の治療成績に比べると非常に良好だったことに驚きました。また、ちょうど私の患者さんで肝動注療法を考えていた方がいましたので、その治療法について相談することもでき、大変有意義な会でした。

そして今日は神戸で「16th Breast Cancer UP-TO-DATE Meeting」が行なわれることになっていて、10:30の便に乗る予定でした。今朝は6時に起きたのですが、昨夜からの猛烈な吹雪の影響でかなりの積雪…。そして強い風が残っていました。フライト情報では新千歳空港からの便は欠航にはなっていないようでしたが、高速道路は通行止めになっていました。JRも微妙な状況であることと、今日は無事に飛んでも明日は先週並みの低気圧で猛吹雪になるという予報だったため、明日帰れない危険性があると判断し、非常に残念ですが参加を断念しました。月曜日は予定がいっぱい入っているのです。

いつも大変勉強になる研究会なので参加したかったです…。いつもいつもどうして週末ばかり悪天候になるのでしょうか…。もうとっくに3月だというのに本当におかしな天候が続きますね。

なお北海道新聞の夕刊を読んでみたら、JRが遅れたために関西空港行きの便に間に合わなかった方が10:30発の神戸空港行きに乗り換えることができたという話が掲載されていました。それは私のキャンセル分かも…。お役に立てて良かったです(笑)

2013年3月6日水曜日

人工乳房とティッシュエキスパンダー挿入に関する使用要件基準

2012.9.28に、ブレスト・インプラント(シリコンゲル充填人工乳房)とティッシュ・エキスパンダー(皮膚拡張器)が薬事承認されました。これに先立って設立された「日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会」がガイドラインを策定し、2013.2に日本乳癌学会と日本形成外科学会の承認を得ました。これによってようやく上記医療機器使用の保険適応承認が間近となったのです。

ところがこのガイドラインを読んでみると、これらの医療機器を使用するためにはけっこう条件があることがわかりました。

主な内容は、
①責任医師:乳腺専門医または形成外科専門医で、かつ同学会に所属し、同学会主催の講習会(3年に1回必要)を受講していること。
②実施医師:乳腺専門医または形成外科専門医、およびその指導下で研修を行なう医師で上記講習会を受講していること。
③実施施設:一次再建は、①を満たす形成外科医専門医が所属(常勤、非常勤)し、①を満たす乳腺専門医が1名常勤していること、二次再建は、①を満たす形成外科専門医が常勤し、乳腺専門医との連携が取れていること。
です。

詳細は「日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会」HPのガイドラインのページの中に(http://jopbs.umin.jp/guide.html)PDFファイルがありますのでご参照下さい。

このガイドラインを読んで、ただちに院長に掛け合って研修会の参加を認めてもらいました。
問題は、③です。私たちの施設には形成外科医がいません。二次再建は無理でもせめて一次再建ができるように非常勤でも良いので形成外科専門医を探さなければなりません。このままではN先生がせっかく研修してきたのに無駄になってしまいます。そこで院長の許可を得たのでさっそくD病院のE先生にメールで打診してみました。ただどの施設でも条件は同じなので、E先生をはじめ形成外科医の奪い合いになるかもしれません。間に合うと良いのですが…(汗)。形成外科専門医が少ない現状ではなかなか難しい問題ですね…。

2013年3月3日日曜日

暴風雪のあとの乳がん検診

昨日はまたもやひどい天気でした。午後から猛烈な地吹雪で雪が真横から降っているような状態でした。時折まったく視界がなくなるような状態で今にも電線がひきちぎれそうなくらいの強風でした。夕方から乳腺MRの研究会に行く予定だったのですが、あまりの悪天候で家から出れる状態ではなかったため断念しました。

今朝、オホーツク海側中心に8人も吹雪で亡くなるという痛ましいニュースが流れていました。若い方も命を落としたとのことで非常に悲しい暴風雪となってしまいました。もう3月だというのに今年の冬はなにかおかしいですね…。

そんな暴風雪明けの今日は関連病院での乳がん検診でした。吹きだまりにタイヤを取られて埋まってしまったためにあやうく遅刻しそうになりましたが、なんとか無事到着して検診を終えてきました。今日も触診でがんを疑う患者さんはいませんでしたが、3月になって駆け込みの無料クーポン利用者が増えているようです。

いつもこの時期に検診受診者が増えるのですが、無料クーポンがない年齢でも定期的な検診を受けていただけるように、来年度はさらに乳がん検診の啓発活動を頑張ろうと思っています。

2013年2月27日水曜日

乳腺術後症例検討会 25 ”ドキドキ!”

今日は定例の症例検討会がありました。いつも通り技師さんたちが準備をしていたのですが今回は諸事情であまり良い症例がなかったため、時間が余ったら提示しようと思って今後の症例検討会を含めた乳腺診療活動についての原案をスライドにまとめて用意していました。

今回は今ひとつかなあと技師さんたちと話しをしていたのですが、昼休みに突然関連病院のT技師から電話が入り、全国的にも著名なK乳腺クリニックの超音波技師のSさんが症例検討会に参加したいと連絡が入ったとのこと。よりによって今月かあ…(汗)と思いつつ、せっかくなので物足りないかもしれませんが是非ご参加下さいとお返事しました。

で、Sさんが参加されるということでドキドキしながら症例検討会が始まったのですが、今回はK乳腺クリニックからだけではなく、他の施設の技師さんたちも多く参加して下さり、先月以上に大盛況となりました。今回も超音波検査室で行なったのですが熱気でむんむんするような状況の中、症例検討会は進行しました。

今回の症例は画像診断上、特に珍しい症例はありませんでしたが、悪性黒色腫も鑑別に上がった未分化がんの成分を有した充実腺管がん、マンモグラフィで構築の乱れを呈した硬がん、腫瘤を自覚して来院し、乳がんを疑った炎症性腫瘤、閉経期に増大傾向を呈した線維腺腫の4例でした。

それぞれ活発な意見が出されましたが、Sさんがタイムリーに発言された超音波画像に関する技術的な問題点の指摘はとても勉強になりました。私自身は超音波検査をしているわけではありませんので、なかなか技術的な問題点について適切なアドバイスや指導をすることは難しいのですが、Sさんは日常あまり気にしていないような細かい点についてアドバイスして下さったので技師さんたちは大変勉強になったと思います。今回は、3月に行なう勉強会の参考にしたいということがSさんがこの症例検討会を見学する主な目的だったようですが、これからも機会があれば是非参加して助言をいただければと思いました。

症例検討会終了後には、私が用意したスライドで2013年度の活動計画についての案を提示しました。来年度は、症例検討会の充実や学会発表などはもちろんですが、今までなかなか実現できなかった細胞診や超音波検査、放射線検査に関する招待演者による講演会や学術交流合宿を企画したいということを強調しました。

これからも技師さんたちや他科の医師と協力しながらこの会を充実させていけたらと思っています。

2013年2月21日木曜日

暴風&大雪!

昨夜は雷が鳴るほどの荒れ模様で、ものすごい地吹雪でした。寝る前に除雪しようと思って外に出てみるとあまりの風の強さで玄関前はあまり雪が積もっておらず、駐車スペースの隙間に吹きだまっているくらいでした。

ところが今朝起きてみると玄関フードの出入り口の高さ以上にまで雪が積もっていて、さらに大雪が続いている状態でした(汗)いつもならとりあえず除雪に取りかかるのですが、6時に起きたときから激しい頭痛とだるさで、もしかしたらインフルエンザかも…と思い、とりあえずG先生に午前中は様子を見みる旨をメールして休んでいました(結局G先生も大渋滞で病院に着いたのは10時過ぎだったようですが…)。

私の自宅がある場所は札幌の北のはずれにあり、どちらかというと石狩や当別の天候に近いため、札幌の天気予報は当てになりません。ネットの情報では私の自宅付近では今朝6時までの12時間で49cmの雪が積もったそうです。交通網は完全に寸断され、JRもバスも止まってしまいました。娘もバス停でしばらく待ちましたがまったくバスが来ないため戻ってきました。結局そのままこの地区の学生は休んでも良いことになりました。

そんな状態でしたので今日は出勤は無理だと思っていましたが、頭痛が治まり、雪も小降りになってきたので除雪に取りかかることにしました。1時間半くらいかかって家の前と2台の車の周囲の除雪が終わりました。ようやく車が出せるようになったのでなんとか出勤することができました。

病院周辺もかなりの積雪で、空いている駐車場に止めようとしたら埋まりかかったので諦めて別の安全そうな場所を探して駐車しました。今日は私に限らず、病院から離れた場所に住んでいる職員の多くは大遅刻だったようです。患者さんの数も少ないような印象でしたが、午後の乳腺外来は天気が回復したためかだいたい予定通りの患者さんが来院されました。細胞診の結果をお話しする患者さんが3人いらっしゃったので休まなくて良かったです(汗)

その後は天候の悪化は今のところありません。でも週間天気予報では今週いっぱい雪が降るようです。もう雪はいらないです(泣)

2013年2月17日日曜日

2013年 患者会新年会

昨日、市内某ホテルで少し遅めの患者会新年会が開催されました。

場所は昨年と同じ市内が展望できる19Fの和食レストランの個室でした。患者さん、外来・病棟看護師、担当事務、医師で横長の個室はびっしりでした。

食事は昼からかなりボリュームのある料理でしたがなかなかおいしかったです!
写真はその一部です。真ん中にある魚の唐揚げは小さなフグだったようですが、これを骨ごと食べるか骨を取ってから食べるのかでけっこう盛り上がりました(笑)。私は何も考えずにそのまま食べれるものと思い込んで食べてしまいましたが(けっこう歯ごたえはありましたが…)、患者さんが取り出した骨を見るとかなりの太さでびっくりでした(汗)。でも丸ごと食べる派と骨を取る派は半々でしたので仲間がいて良かったです(あとで腸管穿孔が起きなければ良いのですが…汗)。

昨日は朝からかなりの雪でしたし、夕方からもかなり降りましたが、ちょうど新年会の間だけとても良い天気できれいな景色を見ながら楽しい時間を過ごせて良かったです!

2013年2月11日月曜日

ワーキング サバイバーズ フォーラム〜がんと仕事〜

先日ここでご紹介しましたが、今日、京王プラザホテル札幌で「ワーキング サバイバーズ フォーラム〜がんと仕事〜」(ピンクリボン in SAPPORO実行委員会主催)が開催されました。


この取組みは今回で2回目ですが、私は前回は都合がつかなくて参加できませんでしたので今回が初めての参加でした。私たちの病院からは外来の看護師と私の2人だけでしたが、会場は100人以上の患者さん、医療関係者、企業の方などでいっぱいでした。

まず最初にCSRプロジェクト副代表理事の近藤明美さんによる「がん体験者の就労・雇用に関する取組」という演題の講演がありました。


近藤さん自身、乳がん患者であり、術後に社会保険労務士の資格を取ってこのプロジェクトに参加したというご経験をお持ちの方です。スライドを使ってわかりやすくがん罹患と就労問題、就労・雇用支援に関する取組み、第2次がん対策推進基本計画と就労、これからの就労・雇用支援などについてご説明していただきました(CSRプロジェクトHP http://workingsurvivors.org/)。

スライドで紹介されたアンケート結果などを見ても、いまだにかなりの方ががんと診断されてから仕事に対する問題(退職、解雇、配置換えなど)に直面していたということがあらためてよく理解できました。

CSRプロジェクトでは、3つの就労支援として、
①場づくり(相談、話せる、共有する場→サバイバーシップラウンジ、個別電話相談)
②ツールづくり(情報発信→がん経験者、企業、支援者に対する書籍、パンフレットなど)
③人づくり(スキルアップセミナー、企業向けセミナーなど)
を行なっているそうです。是非一度CSRの書籍(「がんと一緒に働こう!必携CSRハンドブック」は、がんになった時に仕事を辞めることを決める前に一度読んでみると良さそうです)やパンフレットを読んでみたいです。また、もし札幌でこのようなセミナーがあれば私たちの病院のメディカルソーシャルワーカー(MSW)も参加させたいと思いました。

次に4人の演者による各7分間のリレートークがありました。アスパラの会(婦人科がん患者会)代表 大島寿美子さん、あけぼの会北海道支部長 関川正美さん、市立札幌病院乳腺外科 大川由美先生、北海道保健福祉部健康安全局地域保険課がん対策・健康づくりグループ主幹 永沼郭紀さんの4人がそれぞれの立場から、がんと就労の問題について語って下さいました。残念ながら時間の制限がありましたので質問はできませんでしたが、就労問題について私たちが今後取り組んでいくべき課題のヒントをいただいたような気がします。

そのあと情報交換会として、三角山放送局のパーソナリティでもあり、上半身のみで踊る「チェアーフラ」のサークルを立ち上げた武部未来さんらによる聴衆も参加してのチェアーフラで盛り上がり、軽食を摂りながらのパーティが行なわれました。


パーティでは、久しぶりに小樽の患者さんたち(SNSやブログでのお知り合いです)ともお話できましたし、悪性リンパ腫の患者会の方が私たちの病院でもともと手話通訳をされていたというお話を聞いて盛り上がったり、協賛企業のキリンビバレッジの方々とは新病院にピンクリボンロゴ入りの自動販売機を入れていただくように依頼したお話をしたりと楽しい時間を過ごさせていただきました。

がん患者さんの就労・雇用問題というのは、企業側の様々な課題もありますのですぐに大きく変えることはできないかもしれませんが、このようなイベントを地道に継続すること、マスコミでももっとこの問題を取り上げてもらうことが(今日もTV局が来ていました)さらに国や地方自治体、企業を動かす力となり、いずれがん患者さんの就労・雇用問題の解決につながるのではないかと私は思います。来年ももしこのようなイベントが開催されたら、もっと多くの職員を誘って参加したいと思います。