2009年7月21日火曜日

抗癌剤の副作用3 悪心・嘔吐

脱毛と並んで、患者さんが最も恐れる抗癌剤の副作用の一つが悪心・嘔吐です。
ひと昔前は、抗癌剤で吐くのはある程度仕方ないと思われていた時期もありました。乳癌の場合は、アンスラサイクリン系(アドリアマイシン=ドキソルビシンやエピルビシン)で高頻度に悪心・嘔吐がみられていました。

その後、5-HT3受容体阻害剤という薬剤が使用されるようになってからは、特に急性期(投与当日から翌日)の嘔吐はかなり予防できるようになりました。現在当院では、高頻度に吐き気を生じる抗癌剤を使用する際には、投与当日、ステロイドと5-HT3受容体阻害剤の注射、その後3日間のステロイド内服を行なっていますが、実際に吐く患者さんはかなり少なくなりました。ただ、投与数日後から、食欲の低下、むかつき、吐き気などの症状はよくみられます。このように抗癌剤投与から遅れて生じる症状を遅延性悪心・嘔吐と言いますが、これを完全に抑えるのはなかなか困難だったのが現状でした。

しかし、ついにこの遅延性の悪心・嘔吐に有効な薬剤が使用できるようになりそうです。これはニューロキニン(NK)1受容体拮抗剤の一つであるaprepitantという薬剤です。年内に国内で承認される予定とのことですが、すでに2003年のASCOで現行薬との併用を推奨されていた薬剤です。最近ではさらに協力なNK1受容体拮抗剤のcasopitantという薬剤の優れた効果が発表されたようです。

このように、抗癌剤による不快な副作用を極力少なくするような手だてが開発されれば、抗癌剤を目の敵にして怪しげな治療に誘い込む悪徳業者を排除できます。これからもさらなる抗癌剤の改良や副作用予防薬の開発を期待したいと思います。

6 件のコメント:

ふじくろ さんのコメント...

遅延性の悪心・嘔吐に有効な薬剤、aprepitantとcasopitantなのですね。
悪心・嘔吐にはかなり悩まされましたから、こんな薬ができるなんて夢のようです。
6年前にアンスラサイクリン系を6クールしましたので、自分自身はもうあまり関係ないかもしれませんけど、これから治療する方は希望が持てますね。
とてもうれしいニュースのご紹介、ありがとうございました。

Unknown さんのコメント...

医学の進歩によって、悪心・嘔吐に悩まされる患者さまが少なくなりました。喜ばしい事です。更なる新薬に期待したいです。怪しげな治療、、、あふれていますよね。不安・悩みは是非、医療従事者に話していただけたらと思います。^^kimikomew

hidechin さんのコメント...

ふじくろさんへ
6年前でしたら5-HT3受容体阻害剤とステロイドは投与したと思いますが症状が出てしまったんですね。吐き気は個人差が大きいんです。つわりの強かった人には強く出ると言われていますが、私の経験上も当たっているようです。
新薬がつらい副作用を軽減してくれるようになればいいですね!

hidechin さんのコメント...

kimikomew3824さんへ
そうですね。人の弱みにつけこむ悪い人たちが多すぎます。抗癌剤は以前に比べるとずっと安全になっていますし、副作用対策も進歩しています。効果の評価もきちんとされるようになって、患者さんを実験的に扱う医師も稀になってきたと思います(いなくなった、と言えないのが残念ですが…)。それでも、抗癌剤を悪者にしようとする一部の人たちはいまだにいます。ですから、そういう意味でも少しでも患者さんの苦痛が少なくなるような努力をこれからもしていかなければならないと思っています。

kimity0115 さんのコメント...

私達患者の知らないところで、私達の為に一生懸命このように、新薬開発に向けて研究していただいているんだなって今回この記事を拝見して思いました。
患者さんによって症状は違いますが、患者は遠慮、我慢せずに、少しの不安、不快でも、主治医に訴えなければ、副作用の症状の改善にはなりませんものね。
医学の進歩はほんとに目覚しいものがありますよね。
これから抗がん剤を治療選択として提案された患者さんが、副作用を怖がらずに、迷うことなく抵抗なく、スムーズに抗がん剤を受けようと思えると本当にいいですよね^^

hidechin さんのコメント...

kimity0115さんへ
本当にその通りだと思います。これからさらに副作用が少なくなるような薬の開発が進むといいですね。