2012年5月27日日曜日

骨転移治療の研究会

昨日ヒルトン名古屋で「第1回 Bone Management Consensus Conference」が行なわれました。この研究会は乳がんに限らず、各領域のがんの骨転移に対して、どのような治療方針が最適なのかを整形外科医、放射線科医、乳腺外科医、泌尿器科医、呼吸器内科医、腫瘍内科医などが集まって討論する初めての試みです。

まったく普段関わりを持っていない腎がんや前立腺がんの話もあるので当初はどんな会になるのか疑心暗鬼でしたが、結論から言えばとても勉強になりましたし、興味深かったです。

第1部は「症例ディスカッション」で前立腺がん、多発性骨髄腫、乳がん×2、腎がん、肺がんの骨転移症例についての症例検討でした。印象に残った内容を箇条書きにしてみます。

①がん種によって放射線治療の効果は異なり(腎がんは放射線が効きにくい)、そのために手術の適応、判断が異なることを初めて知りました。
②最近では単発の脊椎転移に対して根治的な切除法である脊椎全摘術(Total en bloc spondylectomy: TES)を行なう施設も増えてきているようです。
③金沢大学ではTESに加えて、摘出した脊椎を液体窒素で凍結した後に粉砕して元に戻す治療を行なっているそうです。がん細胞は液体窒素で死滅しますが、腫瘍抗原は残るので免疫治療にもなるようです(今度もう少し詳しく勉強します)。その治療を受けた患者さんの術前術後の廊下を歩く姿の変化にはびっくりしました。術前は手すりを使って歩くのもやっとの状態だったのに、術後には駆け足というかまるでスキップをするような感じにまで改善していたのです!
④TES後にゾメタを併用するかどうかについては意見が分かれました。肉眼的には骨転移がなくなった状態で予防的にゾメタを投与することが骨転移の再発や予後の改善に効果があるのか?という問題はなかなか難しいところです。
⑤整形外科医の中にはそのがん種についての知識が不十分なために、予後が十分見込める患者さんに対しても手術は適応外だと決めつけてしまう場合もあるようですし、担当医側においても骨転移診断時には積極的に整形外科医に相談しに行かず、結局症状がひどくなってから手術の依頼に行くケースがあるなどの問題点もあるようです。
⑥いずれの発表からも共通して言えることは、整形外科医や放射線科医との密接な連携をとることが骨転移治療においては非常に重要だということです。

第2部は京都府立医科大学の田口哲也先生の「乳癌治療におけるゾレドロン酸の可能性」についての講演でした。集まっているのが乳腺外科医以外が多いため、乳がんの基礎的な事柄から最新の知見までわかりやすくお話して下さいました。知識の整理をする上でもとても良かったです。

研究会の終了後には、美味しい味噌カツや手羽先などを堪能して、今朝の便で札幌に帰ってきました。今までにないタイプの研究会でしたが、参加して良かったです!

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