2012年9月5日水曜日

抗癌剤の副作用20 口腔粘膜障害

口腔内の粘膜障害(口腔内アフタが代表的)は、抗がん剤の副作用としてはよく見られる症状です。投与のたびに繰り返すことはありますが、一般的には軟膏やうがいなどで対処可能です。

ただ時には非常に重篤になり、摂食はおろか、口を開けるのもままならなくなり、会話やうがいさえも困難になってしまうことがあります。白血球が減少する時期と重なれば、カンジダ(真菌)感染を併発してさらに症状が悪化したり、傷ついた粘膜から容易に細菌が侵入して敗血症の原因になったりしやすくなり、危険な状態になってしまうこともあります。

口腔内の粘膜障害に用いられる治療の基本は、
1.口腔内を清潔に保つ
2.口腔内を乾燥させない
3.薬物治療
の3つです。以下に主な治療法を書きます。

①軟膏…ステロイド系の軟膏(デキサルチン軟膏®、ケナログ軟膏®)が代表的です。通常のアフタ性口内炎(パンチ状に粘膜が白くなる状態)にはよく効きますが、なんとなくべとっとした感じが嫌な方も多いと思います。

②貼付剤…口腔内に貼るタイプです。抗炎症作用をもつトリアムシノロンアセトニドを主成分にしたアフタッチA®などが代表的です。最近はスプレー式のものやフィルム状の製剤もあるようです。

③徐放性口腔内崩壊錠…アズノールST錠®などがあります。口腔内に留めておくと、徐々に薬剤がしみ出して効果を発揮する製剤です。

③うがい薬…口腔内を清潔にする目的と、アズノールなどの抗炎症作用を期待して用いる場合がありますが、アズノールの場合は、さっぱりする場合もありますが逆にしみるように感じてしまう場合もあります。

④民間療法…昔からハチミツを塗ると口内炎によく効くと言われていました。科学的にもハチミツは殺菌作用と粘膜の保護作用があるので一定の効果はあるようです。ただ、かなりしみて激痛が走るとも言われていますので使用するには覚悟が必要かもしれません(私はまだ使用したことがないので詳細はわかりません)。

⑤口腔内の痛みが強い場合は、対症的に表面麻酔剤の塗布を行なったり、アセトアミノフェンなどの鎮痛剤の内服を併用する場合があります。

いま入院患者さんで口腔粘膜障害が強い患者さんがいらっしゃいます。痛みが強くて口も開けられないので薬を含むこともできず、うがいもうまくできない状態です。表面麻酔剤の併用が必要かもしれません。早く回復して食事が摂れるようになれば良いのですが…。

0 件のコメント: