2013年4月4日木曜日

「乳房再建エキスパンダー/インプラント講習会」 in 東京

昨日「第1回 乳房再建エキスパンダー/インプラント講習会」に参加してきました。これは、ティッシュエキスパンダー(皮膚拡張器)とインプラント(人工乳房)挿入を保険適応で行なうための医師および施設要件として新たに定められた講習会です。責任者と執刀医、および指導にあたる形成外科医のいずれもこの講習会を受けなければなりません。実際の保険収載はまだですが、いつでも可能になるようにまずは私が受けに行きました。

午前に検診と化学療法室の患者さんを3人診てから千歳空港に向かったところ、東京が悪天候のために軒並み東京便に遅れが出ていました。14:30発が結局15:50発になって、あやうく19:00開始の講習会に遅れるところでした(遅刻したら受講証はもらえません)。ちょうど形成外科学会に合わせて行なわれていたのでD病院のE先生に連絡をとって一緒に聴講しました。

内容は、
1. 挨拶・概論
2.「使用要件基準(ガイドライン)の概略」(大慈弥裕之先生 福岡大学 形成外科)
3.「製品説明およびインフォームドコンセントについて」(アラガンジャパン 学術担当者)
4.「乳腺切除とティシュエキスパンダーの使用法」(福間英祐先生 亀田総合病院 乳腺外科)
5.一次二期再建ー皮膚拡張後のインプラントによる再建ー」(矢島和宜先生 がん研有明病院 形成外科)
6.「エキスパンダーおよびインプラントを用いた二次再建」(岩平佳子先生 ブレストサージャリークリニック 院長)
7. 質疑応答
でした。

質疑応答も含めて気になったことを書いてみます。

①思いのほかインプラント挿入後の再手術(摘出、入れ替えなど)が多いこと(乳房再建後の再手術は7年で53.3%でインプラント摘出は23.7%)。
②今回採用されたインプラントはラウンドタイプのみで自然な形状のアナトミカルタイプではないこと(特に頭側にくっきりと不自然な隆起が出る)。ティッシュエキスパンダーはアナトミカルタイプなのになぜインプラントがラウンドタイプのみなのか不思議です。岩平先生は、「今回は保険適応でインプラントの再建ができるようになるというだけであって”美しい乳房を作る再建”ができるようになるということではない」ということを強調されていました。
③このインプラントは、穴が開いても内容物が漏れない”コヒーシブタイプ”ではなく、粘稠性はあるけど漏れてしまうタイプであること(なぜこのタイプを認可したのかは不明…)。
④除外条件に”乳癌の再発や残存を認める症例”とあり、乳房温存術後の局所再発で全摘を行なう場合にもこれが該当するのかどうかについての回答が回答者によってばらばらであやふやだったこと。
⑤術後のトラブルでインプラントを入れ替える場合に保険適応になるのかどうかについても同様に微妙な回答だったこと。
⑥施設要件に、”形成外科医が常勤または非常勤(二次再建、一次二期再建は常勤)していること”という部分があり、非常勤の定義に関する疑義や常勤であることの必要性(特に今まで乳腺外科医が普通に二期再建をやってきた施設でできなくなる可能性があります)に関する疑義が出されたこと。

有意義な内容ではありましたが、2時間の講演を聞くだけで10000円、そして施設責任者の義務である日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会入会金(年会費)5000円×約800人…。集まったお金は1200万円…。しかもこの講演会は学会に合わせて今年は3回行われます。学会や講習会ってこんなにお金がかかるものなのですね(苦笑)

4 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

記事内容と関係のないコメントお許しください。
乳がんについて、調べていたら、このブログにたどり着きました。

最近、2,3日ほど乳房から出血をしており、下着に出血のあとがありました。
今はもう出血は止まっているのですが、これは乳がんの可能性はあるのでしょうか。

病院で診察を受けるつもりではあるのですが、医師としてのコメントを頂戴したいです。
とても心配です。よろしくお願い致します。

まったりーな さんのコメント...

おとといの夜、主治医から学会での平岩先生のお話や、質疑応答の内容の一部を伺いました。保険収載になっただけで、決して美しい乳房の再建が実現するわけではないとのことだったとか。先生のブログを拝見し、主治医がないを伝えたかったのか、より詳しく理解できました。
美しさを求めての再建で、美しくならない物が認可されていくのかわからないと主治医に申しますと、これまで使用してきた経過から実績があるということが認可の決め手になるのではないかとのことでした。
もともと胸がおおきく、皮下乳腺全摘してシリコンでの再建では、今のエキスパンダーの大きさでは足りないらしく、部分切除+広背筋皮弁になりました。4か月経ってようやく落ち着いてきて、全摘じゃないとシリコンは使えないみたいですし、なんだかなあ・・・と思いました。
私の通っている病院は乳腺外科医による再建なのですが、エキスパンダー入れるところまではされています。自己組織は広背筋だけ。ほかは他院の形成外科の紹介になります。前回のブログに形成外科医がいないとダメみたいなことが書いてありましたが、これからどうなっていくんだろうと思います。
乳腺専門医はいませんが認定医はいます。ぐだぐだ書いてしまってすみません

hidechin さんのコメント...

>匿名さん
はじめまして。
ご心配なお気持ちは理解できますが、このようなご質問は一番返答に困るのです。
”乳がんの可能性はあるか?”と聞かれたら、”あります”とお答えするしかありません。
実際は、血性乳頭分泌の原因として1番多いのが乳管内乳頭腫(良性)、次に乳がん、というのが正しい返答です。しかし、がんの可能性があると聞いて必要以上に不安になったり、良性の可能性が高いと聞いて良性だと思い込んだり、ということが質問した方の心境として起きます。これはお答えする立場としてはちょっと困るのです。可能性が高かろうが低かろうが、その方にとっての真実は一つなのですから、ここで憶測を話しても仕方がないということです。おわかりいただけましたか?
匿名さんにとって一番大切なのはできるだけ早くに専門医の診断を受けることなのです。
以上です。

hidechin さんのコメント...

>まったりーなさん
保険適応で人工乳房の再建をするにあたって乳腺専門医または形成外科専門医がいること、形成外科専門医が非常勤、または常勤で関わっていることなどが条件になったことは、今まで乳腺外科医が再建をしていた施設では様々な障害が生じると思います。しかし当局には当局の理由があるのだと思います。専門的知識や技量もないまま、経営のためにいいかげんな乳房再建をあちこちでやりはじめることだけは避けなければなりません。今回はその第1歩ということでしばりが多いのだと思います。
すべての患者さんに美しい再建乳房を保険診療でどこの施設でも受けれるようなシステムができると良いですね。