昨日の北海道新聞の夕刊、今日の朝日新聞朝刊などに、このニュースが大きく載っていました。
がんワクチンは以前にも書いたように(http://hidechin-breastlifecare.blogspot.com/2009/12/10.html)、現在世界中(国内も含めて)で開発、臨床試験が行なわれています。様々なタイプがありますが、理論的には非常に効きそうに思えても、実際の人体はそう単純ではなく、なかなか十分な効果は得られていないようです。
今回北大遺伝子病制御研究所の西村孝司教授(免疫学)らの研究チームが開発したのは、がんを撃退する免疫細胞「ヘルパーT細胞」と「キラーT細胞」を同時に活性化させるという新しいタイプのがんワクチンです。
従来の研究では、がんに特有のペプチド(アミノ酸が数個結合したもの)を投与し、がん細胞を直接攻撃するキラーT細胞(リンパ球の1種)の活性化に力点が置かれていましたが、西村教授らは、免疫の司令塔であるヘルパーT細胞(同)に注目し、40個のアミノ酸を人工的につなぐことによって、ヘルパーT細胞とキラーT細胞を同時に活性化させるペプチド「H/K-HELP(人工ヘルパー/キラー-ハイブリッドがんペプチドワクチン)」を人工的に合成したということです。
北大病院や近畿大医学部などで臨床試験を行ったところ、一定の投与を終えた6人のがん患者のうち、4人にがんへの免疫反応の増強を確認。近畿大では乳がんから転移し、抗がん剤や放射線療法が効かなかったリンパ節のがんが消失した例もあったそうです。今のところ重い副作用は認められなかったということです。
まだまだ少数例での報告ですので、実用化されるかどうかはわかりませんが、がんワクチンの進歩につながる結果が得られると良いですね。北大は私の母校でもありますので、今回の報告はうれしいニュースでした。今後に期待したいと思います。
乳癌が心配だけど、どこに受診したらいいかわからない、乳癌になってしまって不安…、再発したからもうだめかもしれない…。そんな不安や悩みに少しでもお役に立てればと思って始めてみました。 (*投稿内容と無関係なコメント、病状のご相談はご遠慮願います*)
2010年8月18日水曜日
2010年8月16日月曜日
体験型乳がん検診イベント
東芝メディカル、財団法人・近畿健康管理センター、アストラゼネカの共催で、体験型乳がん検診イベント「マンモグラフィ検診OSAKA 10」を10/9-10の両日、大阪市の梅田スカイビルで開催するそうです。
対象は40歳以上の女性120人で費用は1500円。マンモグラフィ撮影のほか、乳腺専門医による予防法レクチャーや視触診などを実施するとのことです。
申し込みはインターネット(http://www.astrazeneca.co.jp/10_08mammography/index.html)から可能です。
通常の自治体検診とほぼ同じくらいの費用はかかりますが、今まで受けたことがない方の検診受診のきっかけになるのではないかと思います。今後、大阪だけではなく、全国で開催して欲しいものですね。
対象は40歳以上の女性120人で費用は1500円。マンモグラフィ撮影のほか、乳腺専門医による予防法レクチャーや視触診などを実施するとのことです。
申し込みはインターネット(http://www.astrazeneca.co.jp/10_08mammography/index.html)から可能です。
通常の自治体検診とほぼ同じくらいの費用はかかりますが、今まで受けたことがない方の検診受診のきっかけになるのではないかと思います。今後、大阪だけではなく、全国で開催して欲しいものですね。
2010年8月11日水曜日
代替補完療法6 ホメオパシー
最近ニュースでこのような代替治療の存在を初めて知りました(http://www.asahi.com/health/feature/homeopathy.html、http://www.asahi.com/health/news/TKY201008100476.html)。ホメオパシーを信じて標準治療を拒否して亡くなった患者さんの関係者が「憂慮する会」を設立し、ホメオパシー療法家らに真相解明を求めて運動を始めたということです。
Wikipedia(http://ja.wikipedia.org/wiki/ホメオパシー)によると、海外ではけっこう前から行なわれていたようです。その後、日本の団体でも財団法人日本ホメオパシー財団、下部組織の日本ホメオパシー医学協会などが活動をしているようです。
詳細はWikipediaに書いてありますが、そもそもこの治療法(と言えるか疑問ですが)は、ドイツ人医師Samuel Christian Friedrich Hahnemann,(1755年 - 1843年)によって始められ、さまざまな病原になりうるような物質(鉱物、植物、動物などの成分)を極端に希釈したものを砂糖粒にしみ込ませて(レメディ)服用させるという治療法です。体にとっての毒物を非常に少量体内に入れ、この毒物に対する体の抵抗力を意図的に引き出すことにより、自己治癒力を含む生命力を高め、肉体的、心理的、精神的な方向が本来あるべき方向へ修正するというのがこの治療の基礎となる理論です。
当初はイギリスなどの欧米で保険適応になるほど浸透した代替医療でしたが、次第にその根拠が理論的ではないこと、この治療を信じたために手遅れになったなどの事例が続出し、ほとんどの国で正当な治療法とはみなされなくなってきています(一見、アレルギーに対する減感作療法に似ていますが、病態がまったく異なりますのでアレルギーに対する治療と同じ効果は理論的に期待できません)。
何度も書いていますが、私は代替補完療法のすべてを否定するつもりはありません。標準治療を受けながら、または標準治療が無効と判断された場合に、有害ではなく、著しく高価ではなく(この判断は難しいですが…)、患者さんが望むのであれば試みるのはダメだとは思いません。しかし、この件における一番の問題点は、標準治療を拒否することによって本来きちんと治療できるはずのチャンスを逃してしまう危険性があることです(最終的にはその患者さんの自己責任なのかもしれませんが、標準治療を受けてはいけないと思わせるような雰囲気があるのでしょう)。
なお、朝日新聞の記事に対する日本ホメオパシー医学協会HPでの由井寅子会長の反論の中では、「標準治療は否定していないし、検査などを受けることも拒否しないように指導している」というような記述があります。しかし、会長の講演では、予防接種がアレルギーや癌の増加の原因だから受けるべきではない、とか、自閉症はワクチンに含まれている水銀化合物が原因だ、などと話すなど、現代医学の常識からはかけはなれた考え方を持っているのは事実です(ワクチン中の水銀と自閉症の関係は米連邦請求裁判所で否定されていますhttp://transact.seesaa.net/article/115960715.html)。しかもこの治療に理論的根拠はないと言って過言ではありません(Wikipediaを見るだけで理解できるはずですが…。しかし、ホメオパシー関係者はLancetに掲載されたホメオパシーは効果がないというメタアナリシスの結果を否定し、エビデンスレベルの低い論文を根拠に有用性を強調しています)。今回提起された運動をきっかけにして、この治療の正当性vs違法性をきちんと評価し、正しい知識の普及に役立つことを期待しています。
Wikipedia(http://ja.wikipedia.org/wiki/ホメオパシー)によると、海外ではけっこう前から行なわれていたようです。その後、日本の団体でも財団法人日本ホメオパシー財団、下部組織の日本ホメオパシー医学協会などが活動をしているようです。
詳細はWikipediaに書いてありますが、そもそもこの治療法(と言えるか疑問ですが)は、ドイツ人医師Samuel Christian Friedrich Hahnemann,(1755年 - 1843年)によって始められ、さまざまな病原になりうるような物質(鉱物、植物、動物などの成分)を極端に希釈したものを砂糖粒にしみ込ませて(レメディ)服用させるという治療法です。体にとっての毒物を非常に少量体内に入れ、この毒物に対する体の抵抗力を意図的に引き出すことにより、自己治癒力を含む生命力を高め、肉体的、心理的、精神的な方向が本来あるべき方向へ修正するというのがこの治療の基礎となる理論です。
当初はイギリスなどの欧米で保険適応になるほど浸透した代替医療でしたが、次第にその根拠が理論的ではないこと、この治療を信じたために手遅れになったなどの事例が続出し、ほとんどの国で正当な治療法とはみなされなくなってきています(一見、アレルギーに対する減感作療法に似ていますが、病態がまったく異なりますのでアレルギーに対する治療と同じ効果は理論的に期待できません)。
何度も書いていますが、私は代替補完療法のすべてを否定するつもりはありません。標準治療を受けながら、または標準治療が無効と判断された場合に、有害ではなく、著しく高価ではなく(この判断は難しいですが…)、患者さんが望むのであれば試みるのはダメだとは思いません。しかし、この件における一番の問題点は、標準治療を拒否することによって本来きちんと治療できるはずのチャンスを逃してしまう危険性があることです(最終的にはその患者さんの自己責任なのかもしれませんが、標準治療を受けてはいけないと思わせるような雰囲気があるのでしょう)。
なお、朝日新聞の記事に対する日本ホメオパシー医学協会HPでの由井寅子会長の反論の中では、「標準治療は否定していないし、検査などを受けることも拒否しないように指導している」というような記述があります。しかし、会長の講演では、予防接種がアレルギーや癌の増加の原因だから受けるべきではない、とか、自閉症はワクチンに含まれている水銀化合物が原因だ、などと話すなど、現代医学の常識からはかけはなれた考え方を持っているのは事実です(ワクチン中の水銀と自閉症の関係は米連邦請求裁判所で否定されていますhttp://transact.seesaa.net/article/115960715.html)。しかもこの治療に理論的根拠はないと言って過言ではありません(Wikipediaを見るだけで理解できるはずですが…。しかし、ホメオパシー関係者はLancetに掲載されたホメオパシーは効果がないというメタアナリシスの結果を否定し、エビデンスレベルの低い論文を根拠に有用性を強調しています)。今回提起された運動をきっかけにして、この治療の正当性vs違法性をきちんと評価し、正しい知識の普及に役立つことを期待しています。
高齢者の乳がん治療
乳腺外科がある私の病棟は、胸部外科と内科(腎臓、リウマチ)の混合病棟です。最近は夏枯れで外科患者数は少なめで経過しています。
今朝の回診で、妙に高齢者が多いなと感じたので調べてみました。
結果は、全体の「平均」年齢は、71.1才!この中には90才代3人を含めて、80才以上が37.5%を占めていました。なんと3人に1人以上が超高齢者なんです。ちなみに外科だけでみてみると、平均年齢は68.5才とやや若めですが、それにしても一般の病院に比べると高齢です。
もともとうちの病院は市内の他の総合病院より高齢者は多いと思います。以前調べたときには、乳がん患者さんの3人に1人は70才以上でした。一般的には40-50歳代にピークがあることを考えるとやはり乳がんに限ってみても平均年齢は高いと思います。
高齢者が多いといろいろ気をつけなければならないことがあります。認知症の方も多いのでコールが頻回だったり、転倒事故が起きやすかったり、看護師さんの労働にはかなり負担がかかります。手術にしても、合併症を持っている患者さんが多いのでなるべく負担をかけないようにしなくてはなりませんし、術後の補助療法の適応も若い患者さんと同じには考えることはできません。
ただ、乳がんの手術は比較的侵襲が少ないので、高齢者の方でも根治手術が可能な場合が多いのです。ちなみに当院での最高齢は94才です。早期に発見できれば、全身状態があまり良くなくても場合によっては局所麻酔での部分切除で治癒させることも可能です。何歳になっても乳がんの早期発見は重要だと思います。
今朝の回診で、妙に高齢者が多いなと感じたので調べてみました。
結果は、全体の「平均」年齢は、71.1才!この中には90才代3人を含めて、80才以上が37.5%を占めていました。なんと3人に1人以上が超高齢者なんです。ちなみに外科だけでみてみると、平均年齢は68.5才とやや若めですが、それにしても一般の病院に比べると高齢です。
もともとうちの病院は市内の他の総合病院より高齢者は多いと思います。以前調べたときには、乳がん患者さんの3人に1人は70才以上でした。一般的には40-50歳代にピークがあることを考えるとやはり乳がんに限ってみても平均年齢は高いと思います。
高齢者が多いといろいろ気をつけなければならないことがあります。認知症の方も多いのでコールが頻回だったり、転倒事故が起きやすかったり、看護師さんの労働にはかなり負担がかかります。手術にしても、合併症を持っている患者さんが多いのでなるべく負担をかけないようにしなくてはなりませんし、術後の補助療法の適応も若い患者さんと同じには考えることはできません。
ただ、乳がんの手術は比較的侵襲が少ないので、高齢者の方でも根治手術が可能な場合が多いのです。ちなみに当院での最高齢は94才です。早期に発見できれば、全身状態があまり良くなくても場合によっては局所麻酔での部分切除で治癒させることも可能です。何歳になっても乳がんの早期発見は重要だと思います。
2010年8月6日金曜日
ピンクリボンin SAPPORO 夏休みフェスティバル!
今日はピンクリボンin SAPPORO 夏休みフェスティバルに参加してきました。
午前が外来だったので、仕事を終えてから3時くらいに会場に着きました。ちょうど「家族大発表会」の真っ最中で、民謡やフラダンス、ストリートダンスなどを鑑賞しました。その後、Sapporo5リボンズという、全国で初めて5つのリボン(レッド→エイズ患者への差別排除、理解と支援、パープル→女性への性暴力防止と被害者救済、ゴールド→小児がんの子供と家族の支援、オレンジ→子供の虐待に対する予防と救済、養育者への支援、ピンク→乳がんの早期発見、診断、治療の啓蒙活動)が協力して活動を行なっていることのアピールと、一般公募して選ばれた最優秀賞のロゴマーク(写真左上)の発表がありました。これで昼の部は終了。
そして6時から、ゴスペルシンガーのkikiさんのライブが始まりました。「ゴスペル」というのは、聖書の「福音書」という意味で、語源は、アングロ・サクソン語の god-spell (良い話)から来ているそうです。
kikiさんは、2003年にデビューし、札幌中心に活動しているプロのシンガーです。2004年に乳がんを発症し、その後も仕事に復帰していましたが2009年に再発。闘病中であることをまったく感じさせない、力強い歌声と前向きな明るさを持った素晴らしい女性でした。
kikiさんの歌声を聞いた人たちはみな共感すると思うのですが、シンガーとしての素晴らしさも、札幌近郊だけで活動するのはもったいないくらいの実力だと思います。そして、自分だけではなく、周りの人々に幸せを振りまいてくれる、まさに「ゴスペル」そのものといった感じでした。
kikiさんのライブを堪能したあと、このステージのために練習してきた、乳がんの患者さん、Dr、一般市民からなるピンクリボンクワイアとの競演を数曲披露してくれました(写真右上)。これもまた素晴らしかった!会場にいたすべての人たちに元気と勇気を与えてくれました。ピンクリボンクワイアのメンバーもたった5回の練習とは思えないほどの出来映えでびっくりしました。歌っている人たちすべてが明るくはつらつとした様子で歌っていたのがとても印象的でした。
最後に会場のホワイトロックがピンクにライトアップ(写真左下…あまりピンクに見えませんが…)されて8時過ぎに終了しました。テレビ塔は今回もライトアップされましたが、ピンクというより青紫という感じでした(写真右下)昨年の映画上映も良かったですが、今回のライブも最高でした。今日は32℃を超える猛暑の中、会場には座りきれないほどの観客も集まって大盛況でした。これでまた来年も盛り上がりそうです!
2010年8月5日木曜日
経口避妊薬はER「陰性」乳がんを増加させる!?
女性ホルモンと乳がんの関連については広く知られていますが、今回は意外なニュースです。
一般的には更年期障害に対するホルモン補充療法などの女性ホルモンの暴露によって増加するのは、ER陽性乳がんと言われています。理論的にも納得がいきますし、当然と言えば当然です。
しかし、今回のボストン大学スローン疫学センターのLynn Rosenbergらの報告によると、経口避妊薬を投与されていた女性で増加する乳がんのタイプは、むしろER陰性に多かったということです。今までも、経口避妊薬で乳がんが増加する可能性については警告されていました。経口避妊薬も女性ホルモンの合剤ですので、乳がんが増えるのならば、そのタイプはER陽性ではないかと考えるのが普通だと思いますが…。
この疫学研究の対象者はBlack Women's Health Studyの5万9,027人の参加者(21~69歳)のうち、ベースラインでのがん罹患者や,プロゲスチン製剤使用者を除いた5万3,848人でした。12年間追跡し、1,392例が乳がんを発症しました。その解析結果は以下の通りです。
①病理学的情報が得られた789例の乳がん発症例についてのホルモン受容体ステータス
ER+PR+(386例),ER+PR-(109例),ER-PR+(15例),ER-PR-(279例)
①経口避妊薬の使用経験がない場合と比べて,使用経験ありの場合の罹患率比(IRR)
ER+PR+ 1.11 ER-PR- 1.65
②ER-PR-における,経口避妊薬の使用時期、期間との関連
IRRが最も高かったのは,現在の使用(最後の使用から5年未満)で,IRRは1.97
使用期間については,15年以上でIRR 2.25となり, ER-PR-のリスク上昇と有意に関連
④ER+PR+における、経口避妊薬の使用時期、期間との関連
現在の使用で10年以上使用の場合(IRR 1.66)と,最後の使用が5~9年前で5年未満の使用(IRR 2.13)で増加
10~14年の使用でIRR 1.45,15年以上の使用ではIRR 1.24
⑤経口避妊薬の使用経験がない場合と比べて最もリスクが高いカテゴリー
ER-PR-乳がんで,経口避妊薬の現在の使用かつ過去に10年以上使用経験がある場合→IRRは2.52
⑥全乳がん発症例(1,392例)について,経口避妊薬の使用経験がある場合をない場合と比べると,多変量IRRは1.09
以上から,経口避妊薬の使用はER+乳がんよりER-乳がんの発症により強く関連していて,現在の使用や長期の使用がリスクを高めるこという結果でした。
なぜ経口避妊薬の使用がER-乳がんの発症に、より影響するのかは解明されていません。
ER+PR+乳がんについても、最近および長期の使用で増加していたため、経口避妊薬と乳がん発生の因果関係については、異なる二つ以上の機序が関係しているのかもしれません。
一般的には更年期障害に対するホルモン補充療法などの女性ホルモンの暴露によって増加するのは、ER陽性乳がんと言われています。理論的にも納得がいきますし、当然と言えば当然です。
しかし、今回のボストン大学スローン疫学センターのLynn Rosenbergらの報告によると、経口避妊薬を投与されていた女性で増加する乳がんのタイプは、むしろER陰性に多かったということです。今までも、経口避妊薬で乳がんが増加する可能性については警告されていました。経口避妊薬も女性ホルモンの合剤ですので、乳がんが増えるのならば、そのタイプはER陽性ではないかと考えるのが普通だと思いますが…。
この疫学研究の対象者はBlack Women's Health Studyの5万9,027人の参加者(21~69歳)のうち、ベースラインでのがん罹患者や,プロゲスチン製剤使用者を除いた5万3,848人でした。12年間追跡し、1,392例が乳がんを発症しました。その解析結果は以下の通りです。
①病理学的情報が得られた789例の乳がん発症例についてのホルモン受容体ステータス
ER+PR+(386例),ER+PR-(109例),ER-PR+(15例),ER-PR-(279例)
①経口避妊薬の使用経験がない場合と比べて,使用経験ありの場合の罹患率比(IRR)
ER+PR+ 1.11 ER-PR- 1.65
②ER-PR-における,経口避妊薬の使用時期、期間との関連
IRRが最も高かったのは,現在の使用(最後の使用から5年未満)で,IRRは1.97
使用期間については,15年以上でIRR 2.25となり, ER-PR-のリスク上昇と有意に関連
④ER+PR+における、経口避妊薬の使用時期、期間との関連
現在の使用で10年以上使用の場合(IRR 1.66)と,最後の使用が5~9年前で5年未満の使用(IRR 2.13)で増加
10~14年の使用でIRR 1.45,15年以上の使用ではIRR 1.24
⑤経口避妊薬の使用経験がない場合と比べて最もリスクが高いカテゴリー
ER-PR-乳がんで,経口避妊薬の現在の使用かつ過去に10年以上使用経験がある場合→IRRは2.52
⑥全乳がん発症例(1,392例)について,経口避妊薬の使用経験がある場合をない場合と比べると,多変量IRRは1.09
以上から,経口避妊薬の使用はER+乳がんよりER-乳がんの発症により強く関連していて,現在の使用や長期の使用がリスクを高めるこという結果でした。
なぜ経口避妊薬の使用がER-乳がんの発症に、より影響するのかは解明されていません。
ER+PR+乳がんについても、最近および長期の使用で増加していたため、経口避妊薬と乳がん発生の因果関係については、異なる二つ以上の機序が関係しているのかもしれません。
2010年8月3日火曜日
インフォームド・コンセント
患者さんに病状や検査の内容、治療方針などを十分にご説明をし、検査や治療方針の同意を得ることを”インフォームド・コンセント(IC)”と言います。以前はドイツ語でムンテラ(Mundtherapie)と言っていましたが、Mund(=口)Therapie(=治療)という語源から、医師が一方的に患者さん(や家族)を口で言いくるめるかのような印象を与えるということで最近ではICと呼ぶことが多くなってきました。
医師の説明次第で患者さんが癒され、治療や病状にプラスになることもあるので、そういう意味で私は個人的には、ムンテラという言葉は嫌いではありません。同じ事実でも伝え方によっては、冷酷にも励みにもなるからです。医師の説明は患者さんの精神的な面も含めた治療の一つであるという(おそらくドイツ医学においてもそういう価値観でこの言葉ができたのでしょう)意味で私はこの言葉をよく用います。
しかし、ネットを通じて、または他院からの転院患者さんからのお話をお聞きすると、残念ながら悪い意味でのムンテラ(一方的に言いくるめる)がなされているケースが残念ながらけっこうあるようです。
最近、知人からお聞きしたケースをご紹介します。
この方のお父さんがかなり悪性度の高い肝臓の腫瘍と診断されました。最初の病院で肝動脈からのカテーテル治療(おそらく肝動脈塞栓術+抗がん剤注入)を行ないましたが、相当辛かったようです。体力的にもかなりダメージを受けていたときに、偶然今の病院を紹介され転院しました。そこでは手術を前提に検査を組まれ、造影CT(おそらく静脈ではなく肝動脈から造影剤を流して撮影)の検査の直前に家族に”今後もこの病院に治療をすべてまかせてもらえるか?”という確認が口頭でされたそうです。もちろん、患者さんの家族としてはそのつもりですので、同意したそうです。
しかし、その検査から帰った患者さんの様子は明らかに意識朦朧とした異常な状態で、翌日には激しい苦痛を訴えたそうです。この症状は前医でカテーテル治療を受けたときと同じでした。看護師に問いただしたところ、CTで手術不能と判断したために抗がん剤の注入(おそらくカテーテルから塞栓術と併用で)をしたとそのとき初めて知らされたのです。その後、医師にどういうことなのか抗議すると、”すべてうちにまかせるかどうか確認したじゃないか””本人には、CTを撮ったときに説明して同意を得た”と言われたそうです。しかし前投薬で患者さんは朦朧としている状態だったため、ご本人にはその記憶はまったくありません。
これはインフォームド・コンセントとは言えません。あらかじめ、CTで手術適応ではないと判断した場合には、そういう治療を直ちに行なうという説明はまったくなかったからです。緊急性がある場合には、ご本人の承諾のみで行なう場合もあり得ますが、意識が朦朧とした状態では正しい判断はできません。そもそもそういう治療が苦痛だったから転院したはずですので同意するわけはありませんし、そのことは担当医にも伝えていたそうです。
”この病院に治療をすべてまかせる”ということは、十分な説明なしに何でもやっていいということに同意したことにはなりません。
このケースは、真の意味でのICとは言えません。ましてや良い意味でのムンテラにはまったくなり得ません。残念ながらいまだにこのようなケースが多いようです。ICという言葉が一人歩きして、結局医師の勝手な判断でことがなされるなら、ICという言葉に言い換えても同じなのです。
私自身が経験したことではありませんし、治療内容や方針自体が間違っているわけではないと思いますので、私がその医師を評価するのは正しくはないと思いますが、実際患者さんとご家族がそう感じたのであれば、なにかその説明方法に間違いがあったのだと思います。ちょっとした言葉のあや、説明不足が、患者さんに誤解を招いたり、不安にさせてしまったり、憤りまで感じさせてしまうということを、私たち医療従事者は十分に認識して診療に当たらなくてはならないということを、あらためて感じさせられたケースでした。
この知人は、実は深い付き合いがある方ではなく、ちょっとした趣味を通してお知り合いになった方です。でも少ないおつきあいの中でも、とても知的で誠実な方だといつも思っていました。お父さんの状態は楽観できる状況ではありませんが、どうか治療がうまくいきますように心から願っています。
医師の説明次第で患者さんが癒され、治療や病状にプラスになることもあるので、そういう意味で私は個人的には、ムンテラという言葉は嫌いではありません。同じ事実でも伝え方によっては、冷酷にも励みにもなるからです。医師の説明は患者さんの精神的な面も含めた治療の一つであるという(おそらくドイツ医学においてもそういう価値観でこの言葉ができたのでしょう)意味で私はこの言葉をよく用います。
しかし、ネットを通じて、または他院からの転院患者さんからのお話をお聞きすると、残念ながら悪い意味でのムンテラ(一方的に言いくるめる)がなされているケースが残念ながらけっこうあるようです。
最近、知人からお聞きしたケースをご紹介します。
この方のお父さんがかなり悪性度の高い肝臓の腫瘍と診断されました。最初の病院で肝動脈からのカテーテル治療(おそらく肝動脈塞栓術+抗がん剤注入)を行ないましたが、相当辛かったようです。体力的にもかなりダメージを受けていたときに、偶然今の病院を紹介され転院しました。そこでは手術を前提に検査を組まれ、造影CT(おそらく静脈ではなく肝動脈から造影剤を流して撮影)の検査の直前に家族に”今後もこの病院に治療をすべてまかせてもらえるか?”という確認が口頭でされたそうです。もちろん、患者さんの家族としてはそのつもりですので、同意したそうです。
しかし、その検査から帰った患者さんの様子は明らかに意識朦朧とした異常な状態で、翌日には激しい苦痛を訴えたそうです。この症状は前医でカテーテル治療を受けたときと同じでした。看護師に問いただしたところ、CTで手術不能と判断したために抗がん剤の注入(おそらくカテーテルから塞栓術と併用で)をしたとそのとき初めて知らされたのです。その後、医師にどういうことなのか抗議すると、”すべてうちにまかせるかどうか確認したじゃないか””本人には、CTを撮ったときに説明して同意を得た”と言われたそうです。しかし前投薬で患者さんは朦朧としている状態だったため、ご本人にはその記憶はまったくありません。
これはインフォームド・コンセントとは言えません。あらかじめ、CTで手術適応ではないと判断した場合には、そういう治療を直ちに行なうという説明はまったくなかったからです。緊急性がある場合には、ご本人の承諾のみで行なう場合もあり得ますが、意識が朦朧とした状態では正しい判断はできません。そもそもそういう治療が苦痛だったから転院したはずですので同意するわけはありませんし、そのことは担当医にも伝えていたそうです。
”この病院に治療をすべてまかせる”ということは、十分な説明なしに何でもやっていいということに同意したことにはなりません。
このケースは、真の意味でのICとは言えません。ましてや良い意味でのムンテラにはまったくなり得ません。残念ながらいまだにこのようなケースが多いようです。ICという言葉が一人歩きして、結局医師の勝手な判断でことがなされるなら、ICという言葉に言い換えても同じなのです。
私自身が経験したことではありませんし、治療内容や方針自体が間違っているわけではないと思いますので、私がその医師を評価するのは正しくはないと思いますが、実際患者さんとご家族がそう感じたのであれば、なにかその説明方法に間違いがあったのだと思います。ちょっとした言葉のあや、説明不足が、患者さんに誤解を招いたり、不安にさせてしまったり、憤りまで感じさせてしまうということを、私たち医療従事者は十分に認識して診療に当たらなくてはならないということを、あらためて感じさせられたケースでした。
この知人は、実は深い付き合いがある方ではなく、ちょっとした趣味を通してお知り合いになった方です。でも少ないおつきあいの中でも、とても知的で誠実な方だといつも思っていました。お父さんの状態は楽観できる状況ではありませんが、どうか治療がうまくいきますように心から願っています。
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