今回の学会テーマはHumanity Based Medicine。
初日のワークショップ”Humanityに基づく乳癌実地診療”では、患者さんの立場に立った診療の工夫(プライバシーの保護、待ち時間の短縮、不安な時間をなくすための短時間での診断、満足度調査の実施、クリニカルパスの導入、チーム医療の実践など)、緊密な病診連携の構築、DPC導入病院の改善点(医療の標準化と効率化)と問題点(再発患者さんへの入院での検査・治療の制限)などについて発表されました。個々については異論もありましたが、全体的には患者さんの立場に立った乳腺診療を考えていこうとする雰囲気が伝わってきました。
ランチョンセミナーは乳房再建の話を聞いてきました。私の病院では形成外科がないこともあり、今は同時再建も二期的再建もしていません。最近の患者さんのサイトをみると、やはり乳房再建の要求が強くなってきたように感じています。ナグモクリニックの南雲先生のお話を聞き、写真を拝見すると、やはり同時再建で人工乳房を入れるのが一番きれいなような気がします。無理して温存手術をするより、はるかにきれいです。今の人工乳房は安全性の高いグミみたいな硬さのシリコンがメインになってきていて、生理食塩水よりずっと自然な触感が得られます。ただ一番の問題は、この人工乳房が国内で認可されていないため個人輸入しなければならないこと、そして人工乳房による再建手術は保険適応外のため、乳癌の手術と同時に行なうと、乳癌の手術を含めた入院費すべてが保険外診療になることです。これは日本の医療制度上、混合診療が禁止されているからです。混合診療は必ずしも良い点ばかりではなく、様々な問題点を含んでいますから、混合診療を認めるようにするというより、できるだけ早く人工乳房による乳房再建術を保険適応にしてもらいたいと思っています。
午後は、パネルディスカッション”局所再発に対する集学的治療”を聞きましたが、ちょっと期待はずれだったので省略。夕方はサテライトシンポジウム”第24回乳腺診断フォーラム”を聞きにいきました。3例くらいあるかと思いましたが、今回は1例のみでした。でもかなり診断が難しい症例で、濃厚なディスカッションが行なわれました。各方面の専門家の先生方の読み方の鋭さにはあらためて驚きました。
そのあと、小雨がぱらつく中、レストランの広いテラスでの屋外の懇親会に参加して帰ってきました。
あっ、書き忘れましたが、自分の発表もありました。でも貼りっぱなしのポスター発表なので特になにもなかったです。
2日目は、ポスター会場を見て回ったり、ランチョンセミナーで乳房再建後のリハビリの話を聞いたり、画像診断セミナー
に参加したりしましたが、特に報告するような目新しいことはありませんでした。
今回の学会参加者は5000人くらいだったようです。場所的にはアクセスはまあまあでした。ただ、最近は製薬会社主催のいろいろな研究会が多いせいか、乳癌学会で初めて聞くような目新しいことは少なくなってきたように感じます(全部を見れたわけではありませんが…)。
今回、一番うれしかったのは、懐かしい先生や、乳癌関連のサイトでお知り合いになった方などにお会いすることができたことです。学会の大きな魅力は、こうしたいろいろな人との交流があることと、それによって得られる刺激なんです。
私もこれでまた仕事を頑張る意欲が復活してきました!
7 件のコメント:
学会お疲れさまでした。充実した学会だったのですね。診療の工夫についての発表は興味をそそられます。乳房同時再建は患者さまにとっては、とても大きな関心事ですよね。保険適応になるといいです、、学会でいろいろな方々と交流でき良かった^^ですね。刺激を受けパワーアップですね^^kimikomew
初めてコメントさせていただきます。
学会、お疲れさまでした。
お目にかかれて、お話もさせていただき、とてもうれしかったです。
心温かい医療の提供を考えていく学会だったのですね。
患者としてうれしいです。
再建の話も興味があります。
いろんな情報や近況のアップを楽しみにしています。
kimikomew3824さんへ
診療の工夫については、自分たちの病院にとって足りないものを気づかせていただく良い機会になったと思います。人工乳房を用いた乳房再建の保険適応には、まだまだいくつものハードルがあると思います(長期の安全性、形成外科医ではない乳腺外科医が行なうことの是非&資格制度の導入など)。当面は、外科医はできるだけきれいな乳房切除を心がけること、形成外科医との連携を密にすることが必要だと思います。
陽さんへ
コメントありがとうございます。これも何かの縁ですよね。まさかあのような偶然があったとは驚きでした。これからも乳がん検診の啓蒙活動、頑張って下さいね。応援しています。
学会(^ー^)お疲れ様でした~
学会に参加して、学会を通してモチベーションがあがるってことは、とても素晴らしいことですね^^
もしかしたらこういうことが一番の目的かもしれませんね
知識も必要かもしれませんが、医師がその知識をうまく活用していこう!とういう気持ちがなければ、宝の持ち腐れになってしましますものね
懐かしい仲間たちとの出会いで刺激をうけ、そういった人との心の交流で、得るものって、自分自身を奮い立たせる意味で、とても大切なことですよね~
いつも患者さんのことを想ってくださるhidechin先生の心がもっともっと豊かになったんじゃないでしょうか?^^
患者にとって、医師に求めるものってそういうものじゃないのかなぁっていつも思いますよ^^
医師への信頼の気持ちが、患者も前向きに辛い治療を乗り越えていく一番の安心する要素なんですからね
乳房再建に関しては女性は、病気により乳房を失ったのであれば無条件ですべて保険適用を望みます・・
患者からしてみれば、当然のことでないでしょうか・・
でも、hidechin先生の上のコメントのように、その後のフォローがまだ完全に確立していないんですね。。
いくつものそういったハードルがあるんですねえ。。
なんだか残念な気持になってしまします。。
豊胸手術してるわけでなんだし。。
まだまだ道のりの長いのですね。。
kimity0115さんへ
学会は勉強にもなるし刺激にもなるし、モチベーションの維持にもつながるし、交流もできるし、私にとってはとても有意義な時間です。
乳房再建が長い間、保険適応にならなかったのは、乳房は生きていくのにはなくても大丈夫という厚生省の見解があったからなのだと思います。それが、筋皮弁を用いた再建には適応されるようになって一歩前進はしましたが、やはりシリコン製の人工乳房自体が未認可なので、これを用いた乳房再建は保険適応になっていないんだと思います。女性の身体的・精神的苦痛の軽減のために早く保険適応になって欲しいですよね。
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