2011年2月2日水曜日

乳癌の治療最新情報24 PARP1阻害剤2(iniparib)

2009年のASCOで中間報告が発表されたPARP1阻害剤のBSI-201ですが、iniparibという一般名で第2相試験の結果が正式に報告されました(米国Baylor Charles A. SammonsがんセンターのJoyce O’Shaughnessyら NEJM誌2011年1月20日号)。

BSI-201については以前、「乳癌の治療最新情報16 PARP1阻害薬1(ASCO2009から)」で書いたように、第2相試験の中間報告において治療抵抗性のTN再発症例に対して、ジェムザール+カルボプラチンの併用療法における上乗せ効果が確認されています(病勢進行するまでの期間が6.9カ月vs3.3カ月、全生存期間は9.2カ月vs5.7カ月)。

今回正式に報告された概要は以下の通りです。

対象:トリプルネガティブ(ER/PgR/HER2いずれも陰性)の進行再発乳がん123例。

方法:全例に1、8日目にゲムシタビン(1,000mg/m2体表面積)+カルボプラチン(血中濃度曲線下面積2線量当量)を投与し、1、4、8、11日目にiniparib(5.6mg/kg)を投与する群としない群(いずれも21日サイクル)に無作為に割り付けた。

評価項目:主要エンドポイント→臨床的ベネフィット[客観的奏効(完全あるいは部分寛解)+6ヵ月以上の病状安定を認める患者の割合]の割合と安全性。追加エンドポイント→客観的奏功率、無増悪生存期間、全生存期間。

結果: 対象群:iniparib追加群
・臨床的ベネフィットの割合→34%:56%(P=0.01)
・全奏功率→32%:52%(P=0.02)
・平均無増悪生存期間→3.6ヵ月:5.9ヵ月(増悪に対するハザード比:0.59、P=0.01)
・平均全生存期間→7.7ヵ月:12.3ヵ月(死亡に対するハザード比:0.57、P=0.01)。
・両群で発生したグレード3、4の有害事象→両群で有意差は認められなかった(発生が高頻度であったのは、好中球減少症、血小板減少症、貧血、疲労、無力症、白血球減少症、アラニンアミノトランスフェラーゼ値上昇など)


今回の報告をみてもトリプルネガティブ乳がんに対するPARP1阻害剤の有効性がうかがえますが、全生存期間が4.6ヶ月伸びたということをどう評価するかということが問題になるかもしれません。高額な薬剤でたったこれだけ?と言う人はいるかもしれませんが、私にはとても貴重な期間だと思います。そしてこれはあくまでも平均ですので、著効すれば長期の生存も可能かもしれませんし、術後補助療法への道筋ができることにもつながります。

今回の報告が、難治性と言われているトリプルネガティブ乳がん治療の大きな一歩になることを願っています。

2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

はじめまして。乳癌の危険因子のラベルの中の乳管内乳頭腫と乳癌についてという記事に
コメントというか相談を書かせて頂きました。以前に書いた記事でしたのでコメントに気づかないことがあるかもしれないと思い失礼ながらこちらにもコメントさせて頂きました。
読んで頂ければ幸いです。

hidechin さんのコメント...

>匿名さん
「乳管内乳頭腫と乳癌について」のほうに御返事をお書きしましたのでご参照下さい。