乳腺に病変が見つかった場合、明らかな良性と判断できなければ細胞診、または組織診(針生検など)が行なわれます。
細胞診の判定は、長くClass判定(パパニコロウ分類)が用いられていました。ClassⅠ(正常細胞)からⅤ(悪性)までに分類され、細胞が標本上にない場合にはClass0と表記されていました。この分類はいくつかの不都合があったため、乳癌取扱い規約第15版から、以下のように分類が変わりました。
a)検体不適正
b)検体適正
・正常あるいは良性
・鑑別困難
・悪性の疑い
・悪性
この中で、”検体不適正”と判定される原因について以下にお示しします。
①目標の病変に当たっていない…これは本来論外なのですが、以前超音波ガイド下で穿刺していなかった時代にはありました。超音波ガイドで行えばほとんど可能性はないのですが、非常に穿刺しにくい場合(薄い乳腺や硬い乳腺内の小病変など)には起こりえます。穿刺した際に、ターゲットにきちんと命中したか、針先は十分に追うことができたかを記載しておくと万が一細胞がなかった場合に再検査が必要であるかどうかの判断の助けになります。
②標本が乾燥して変性をきたした…針からプレパラートに検体を吹き付ける際にアルコールに漬けるまでに時間がかかるとすぐに乾燥してしまいます。できるだけ迅速にアルコールに漬けることが重要です。
③細胞の挫滅・破壊…プレパラートを強くこすりあわせることによって起きます。私の施設では大量に細胞が取れすぎた場合以外はプレパラートを合わせずにアルコール固定します(リンパ節や甲状腺腫瘍の穿刺でギムザ染色をする場合は合わせます)。
④末梢血の混入、細胞が取れすぎて厚くなった…観察がしづらくなり、判定が難しくなります。
⑤ターゲットが腫瘍ではなく、乳腺内の脂肪組織であった…脂肪はアルコールに溶けるため顕微鏡で見る時には何も残っていないことがあります。
⑥非常に強い線維化が起きている組織…例えば糖尿病性乳腺症などの病変ではしつこく引いても細胞が採取できないことがよくあります。
①-③はある意味、検査者側の問題によるものと考えられます。
④はアクシデント的な要因です。複数回穿刺することで避けることができます。
⑤⑥は病変自体の性質によるものですのである意味当然というかやむを得ない結果と言えます。⑤の場合には、アルコールに溶けたことを所見用紙に記載しておくと脂肪であったことが推測できますが、何も書いていないと命中していない可能性が否定できず、検査を繰り返したり、無用な針生検をしてしまうことにつながります。⑥については、あらかじめそういう病変の可能性が高い場合には最初から針生検をする方が確実に診断できます。
以上のように、”検体不適正”であっても必ずしも”検査の失敗”とは限らないのです。ただ、検査する側の適切な判断で無用な再検査を避けることができる場合もあります。そのあたりは経験と適切な判断力が必要になります。
2 件のコメント:
はじめまして。こんな以前の書き込みにコメント付けてすみません。
来週入院でマンモ生検をするものです。
初めて気でいた際、左胸がガチッと固まり、赤い感じで熱感もありました。
二度目の通院で、触診、エコー、CTともに所見ありで炎症性乳ガンの可能性が大きいと言われました。
そのうえで、細胞診をしたのですが、良性反応でした。
針を刺した部分が化膿してしまい、抗生物質を飲んで膿を絞り出してやっと組織診なんですが、あったはずの大きいしこりがやわらかくなっていて笑
でもエコーでは不明瞭な黒い画像が毎回映り…。
結局のところ、生検の怖さと結果どうでるかが不安でコメントしちゃいました。
>匿名さん
はじめまして。
炎症性乳がんは細胞診では診断がつきにくい場合があります。ただ排膿して自然に軽快したなら何らかの炎症(感染)だった可能性も十分にあると思います。良性だと良いですね。それではお大事に。
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