乳がん術後の放射線治療でもっともよく見られる有害事象は皮膚障害です。
放射線治療は抗がん剤と同様に細胞周期の速い細胞に影響が出やすいため、骨髄細胞や消化管粘膜、そして皮膚の基底細胞などが障害を受けます。その症状は、軽度(第1度皮膚炎)では皮膚の発赤、乾燥、かゆみ、脱毛が出現します。そして徐々に発赤の悪化、腫れ、痛みが出現し(第2度皮膚炎)、第3度皮膚炎になると水泡、びらん、出血、そして第4度皮膚炎では、潰瘍、壊死が起きる場合もあります。第4度皮膚炎を起こすことは非常にまれで、私はまだ経験がありません。
ブースト照射を追加しない場合の皮膚障害の場合の多くは第1-2度の一時的な皮膚炎です。ただ第2度皮膚炎では、色素沈着や皮膚の乾燥状態はは1年くらい続くことが多いような印象です。ブースト照射を追加した場合の線量は60Gyくらいになるため、時に第3度の皮膚炎を起こします。この場合はしばらく痂皮化したような状態(ひどい日焼けのあとで皮が剥ける前のような状態)が続き、血管拡張や皮膚の萎縮をきたすこともあります。
対処法は、施設によって様々なようですが代表的な対処法は以下の通りです。
・軽度のほてり、かゆみ、ひりひり感→まずは冷庵法を試します。氷嚢、アイスノン、濡れタオルなどを使用します。
・皮膚乾燥→ワセリンの塗布。
・かゆみや発赤などの炎症が強い場合→症状に応じてアズノール、またはアズノール+ステロイドの軟膏を使用。
・皮膚剥離やびらん→アズノール+抗生物質の併用。
・皮膚潰瘍、壊死→皮膚被覆剤の使用や植皮などの形成外科的治療を検討。
軟膏については、医師の指示に従うこと、放射線治療前には洗い流しておくことが大切です。軟膏を塗ったまま放射線照射を受けると皮膚障害がかえって強く出る場合があるようです。
このようなことを書くと放射線治療が怖くなる方もいらっしゃるかもしれませんが、ほとんどの場合の皮膚炎は時間とともに軽快し、色調の左右差も目立たなくなってきます。また、それでも気になる方にはスキンカモフラージュという方法もありますのでご興味のある方は検索してみて下さい。
4 件のコメント:
先生、初めての投稿にて、失礼します。前日平たいしこりを左胸に見つけて検査を受けたものです。超音波後に生検を受けたのですがやはりがんの可能性があるのでしょうか?
>匿名さん
はじめまして。
検査所見を見ていない私がお答えできることには限界があります。通常、生検までするということは、がんの可能性が否定できない、または可能性があるから(可能性が高いか低いかはわかりません)なのだと思います。それ以上のことはお答えしようがありません。
一度トップページ(http://hidechin-breastlifecare.blogspot.jp/)の注意事項とhttp://hidechin-breastlifecare.blogspot.jp/2013/10/blog-post.htmlの記載内容をご参照願います。
悪いものでなければ良いですね。それではお大事に。
いつも、最新の情報ありがとうございます。
私は、2月に放射線治療を受けた時は、一般的に言われているより早く症状が出てきて、初日からピリピリした痛みが出て、1週間後には真っ赤に腫れ、半泣きになりながら、放射線治療の帰り乳腺外科によって、アズノールを処方してもらったりしました。
結局わきの下はびらんが広範囲に起こって、とても痛かったのを覚えています。こんなに詳細に放射線の影響で起こることを、放射線治療科でも乳腺外科でも言ってもらえなくてとても不安でした。
手当についても、乳腺外科でしてもらってました。もう、痛くて気が狂いそうでした。あと少しで治療が終わるころ、あまりの痛みで我慢できず1日休みを入れてほしいと泣きを入れました。
こんな風に、もう少し、詳しく教えていただけたら不安も少なかったかなと、今だから思えます。
寒さ厳しくなってきました。
どうぞご自愛ください。
>まったりーなさん
こんばんは。
ついこの前までは私の施設では放射線治療をしていませんでしたので放射線治療中の有害事象の対応は紹介先の放射線科におまかせでした。
今年から私の施設でも治療が始まり、放射線治療科の先生は大学からの派遣のため、日常の対応は私たちがしなければならないということもあって初めて本格的に勉強を始めたような状態です。もちろん基本的な知識はありましたが、実際に対応するのは初めてなので勉強しながら、放射線治療科の先生にご相談しながらという感じです。
これからも勉強した内容をここでご紹介していきたいと思います。
本当に急に寒くなってきましたね。これからはインフルエンザも流行る季節です。まったりーなさんも体調に気をつけて下さいね!
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