2011年1月1日土曜日

抗癌剤の副作用12 骨髄抑制〜総論

抗がん剤の副作用の中で、もっとも頻繁に起こりうるものの一つが、骨髄抑制(白血球、血小板、赤血球の減少)です。

骨髄抑制はほとんどの抗がん剤で共通にみられ、時に命に関わるほど重篤な状況を引き起こす可能性があります。この中でも白血球は免疫に大きく関係しているため、抗がん剤を悪者にしている人たちは、
「抗がん剤は免疫力を落とすため、かえって有害である」
「免疫力が落ちるため、その後の生活に悪影響を及ぼし、死期を早める」
などと主張しています。しかし、抗がん剤は確かに免疫力を低下させるため一定のリスクはありますが、適切に使用すれば、ほとんどが安全に投与を終了でき、免疫力の低下も一時的なもので、その後の生活にずっと悪影響を与えるということはありません。いたずらに不安になるのではなく、正しい認識を持つことが大切です。

①機序:
がん細胞は、細胞の分裂(cell cycleと呼びます→http://ja.wikipedia.org/wiki/細胞周期)が速いのが特徴です。一方、正常の細胞のほとんどは分裂がゆっくりで、その大部分は間期にあります。ですから、細胞分裂を頻回に繰り返すがん細胞の合成期と分裂期を狙って作用する薬剤は、がん細胞のみに影響を及ぼしやすいと考えて、抗がん剤の開発が行なわれてきました。しかし、正常な細胞の中には細胞周期が速いものもあります。それが骨髄細胞や消化管粘膜細胞などなのです。ですから、合成期・分裂期に作用する薬剤であっても、これらの正常細胞にも影響を及ぼしてしまい、それが副作用として現れるのです。

②原因薬剤:
ほとんどの抗がん剤で起こりえます。

③症状:
白血球減少…白血球の中の好中球が500/μl以下になると非常に細菌感染を起こしやすくなります。細菌感染を起こすと容易に敗血症を引き起こしやすく、多臓器不全から死に至る場合もまれにあります。発熱しない限りは無症状ですので、白血球の減少を自覚症状で判断することはできません。発熱した場合は、早めの適切な対処が必要です(発熱性好中球減少症については後日また書きます)。 
赤血球減少…貧血症状(息切れ、疲労感、めまいなど)。 
血小板減少…出血しない限りは無症状。

④治療:
白血球(好中球)減少に対しては詳細は後述。赤血球減少に対しては程度が強い場合には輸血を考慮します。鉄剤は通常無効です。血小板減少に対しては、3万以下では血小板輸血を考慮します。

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