少し書くのが遅くなりましたが、先週の水曜日に月例の症例検討会がありました。
今回は4例中2例が異時対側の乳がんでした。2例とも似たような症例で、初回が進行がんで対側は定期フォローの超音波検査で見つかった非浸潤がんでした。
注目すべき点は、2例とも病理学的には壊死を伴ったcomedo型の非浸潤がんだったのですがともにマンモグラフィでは写っていなかったことです。通常、comedo型のがんはマンモグラフィによく写る(多形性や微細分枝状の石灰化で)からです。
一般的に微細石灰化で発見される乳がんは、非comedo型のものは超音波検査で写らないことが多いのですが、comedo型は超音波検査でも病変の指摘が可能であることが多いのはわかっていました。しかし、石灰化が主体ですのでやはり病変の描出はマンモグラフィのほうが早いものだと思っていました。
しかし少なくとも今回の2例は、マンモグラフィで微細石灰化を指摘する前に超音波検査で病変を指摘し得たことになります。
もしこれが他の症例にも当てはまるのであれば、超音波検査の乳がん検診への併用をさらに後押ししてくれるような気がしています。極端な話、超音波検査に写らないような非comedo型微細石灰化の非浸潤がんは非常に進行が遅いおとなしいがん(これをがんもどきと呼ぶべきかどうかは意見が分かれると思いますが…)のことが多いですので、超音波検査で発見できなくてもすぐに大事に至ることはあまりありません。ですからcomedo型のがんさえ超音波検査で描出可能であれば、もともと浸潤がんの描出に優れ、被爆のリスクもない超音波検査のみの乳がん検診も(特に若年者の)オプションとして非常に期待できると思います。
なお、この2症例は半年ごとの検査で早期発見されました。半年前には超音波検査で写るような病変はなかったのです。悪性度の高いがんですので、定期検査していなければ、あと半年か1年後にはたちの悪い進行がんになっていた可能性は十分にあります。こういう症例を数多く診ていると、「乳がんには早期発見も早期治療も必要ない」という考え方がまったく的外れであることがよくわかります。
4 件のコメント:
投稿記事が違いますが、先日の返信有難うございました。
これからも宜しくお願い致します。
異時対側乳がんの記事を読み、まるで自分の事例を検討されたのではないかと思ってしまいました。
私の初発は日本で3ヶ月間、肺疾患の入院治療を終え退院の翌日(こちらに戻る前日)に自分で発見、その日のうちに受診しました。
発見の4か月前に受けた検診で何もなかったので、主治医も超音波をみるまでは「4か月前何もなかったよね」と半信半疑でしたが、画像を見た瞬間の表情の変化は「本当だ、これは癌だねぇ~~」と言っているようでした。 とても正直な??主治医でした。
手術、術後治療とも日本で受けました。
その後、3カ月、6カ月ごとのフォローアップ。
昨年、超音波を受ける2か月前に受けたマンモグラフィでは異常なしが、一転、問題あり、その後、細胞針、生検で異時対側乳がんのと確定、日本で手術、術後治療はこちらで受けました。
今回は殆どが非浸潤がんの早期発見でした。
私が診てもらっている日本の病院では診察室に超音波が有る為、触診と同じように手軽に受けることが出来ます。
私が住んでいる国はホームドクターでも診察室に超音波が有るのが普通なので、日本の乳腺外科では私のようにその場で超音波検査を受けれるのが当たり前と思っていましたが、以前、友人に診察室に超音波有る方が珍しいと言われびっくりし事が有ります。
どこの病院でも診察室に超音波1台が実現できれば、早期発見率も上がると思いますが、そう簡単ではないのでしょうか。先生の病院では超音波設置されていますか。
今、福島原発の被爆の問題が取り上げられ、再発防止とはいえ2度の放射線治療を受け大量の被ばくをしていることの重大さを考えると、被爆のリスクもない超音波検査のみの乳がん検診はとても大事と思います。
>タイクーさん
そうだったんですか。でも早期発見で良かったですね!
私の病院では診察室には超音波検査装置は置いていません。理由は、超音波検査技師を信頼していることと、もし超音波検査技師と同じような精度の検査を診察室で行なった場合は時間が非常にかかるからです(観察だけではなくレポートも書かなければなりません)。
日本の多くの病院の乳腺外来は非常に混んでいます。もし診察室で精度の高い超音波検査をしたとしたら外来は夜中までかかってしまうかもしれません。ただ、タイクーさんがかかった施設のように触診の補助的に超音波検査を行なっている施設もあるようです。きっと相当超音波検査に慣れているDrなのだと思います。私には難しいですね…。
早速、コメントを頂き有難うございます。
細胞針→ 細胞診 生検→開放生検 でした。
私の主治医が超音波になれているかどうかはわかりませんが、1年に1度は検査技師さんがしっかり調べてくれ、主治医の場合は先生のおっしゃる通り触診プラス補助的に超音波です。
たまたま、私の場合、それが早期発見につながったということだと思います。
主治医の転勤で今の病院に転院しましたが、以前、K大学病院の時は予約であっても触診のみの診察でしたが3時間以上待たされていました。
きっと、今では乳がん患者が増えているので、もっと待たされるのでしょうね。
単純な疑問でしたが、患者サイドではわからない側面があることがわかりました。
有難うございます。
これからも宜しくお願い致します。
>タイクーさん
そうでしたか。日本は患者さんの数に比べて医師の数が少なすぎですよね。お待たせしないでゆっくり診てあげられる環境作りが必要ですね!
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