乳がん発がんに関する肥満のリスクについては以前からいくつかのエビデンスもあり、広く認識されています。今回、フランスのDruesne-Pecollo N氏らがBreast Cancer Research and Treatment誌オンライン版に掲載した報告は、乳がん術後の他臓器の原発がん(乳がんの再発ではなくまったく別のがん)の発生率と肥満との関連について解析したもので非常に興味深いと思いましたので概要をご紹介します。
目的:乳がん患者における二次原発がん発生率とBMI(Body Mass Index)との関連の解析
方法:PubMedとEMBASEで検索を行ってヒットした2012年5月までの報告(前向き研究13報、コホート研究5報、ケースコントロール研究8報)の系統的レビューとメタ解析を行った。
結果:肥満により二次原発がんのリスクは有意に増加することが認められた。
*肥満による二次原発がん発生の相対リスク(RR)→対側乳房1.37、(同側)乳房1.40、子宮内膜1.96、大腸1.89
*用量反応メタ解析では、BMIが5kg/m2増加することにより、対側乳がんのRRは1.12、(同側)乳がんのRRは1.14、子宮内膜のRRは1.46と、それぞれ有意に二次原発がんのリスクが増加していた。
結語:今後、体重過多の乳がん患者において、正常体重への減量による二次原発がん発生率への効果を評価するための臨床試験が必要である。
これが乳がん術後の患者さんに特有の結果なのか、そもそも子宮内膜がんや大腸がんが肥満の人に多いことが関与していただけなのかはこの報告からはわかりません。しかし、少なくとも乳がんの手術を受けた患者さんにとっては、温存術後の同側乳房内異時多発がんや対側乳がんの発生は誰しも避けたいところですし、乳がんだけでも十分苦しみを味わっているのに他の臓器のがんの治療は受けたくないはずです。
もちろん肥満予防や肥満の治療を受けるだけで全てを避けられるわけではありませんが、少しでも発生率を下げられる可能性があるのでしたら、健康のためにも肥満の対策は考えておいた方が良さそうですね。肥満を避けることは、ある特定の食品を過剰に摂取したり、逆に一部の食品をまったく摂取しなかったりというのとは異なり、想定される有害事象はほとんどないと思いますので安心してチャレンジできるのではないでしょうか。
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