豊胸術後に乳がんと診断された患者さんの予後に関する研究結果が報告されました(BMJ 2013; 346: f2399 http://press.psprings.co.uk/bmj/may/breastimplants.pdf)。
北米では,美容目的で行われる豊胸手術がこの10年間で増加の一途をたどっているそうです。その一方で,豊胸のために用いられたインプラントがマンモグラフィによる乳がん検診の妨げとなる可能性も指摘されています。日本における精中委の見解では、インプラントを挿入している患者さんへのマンモグラフィ検診は、圧迫による破損の可能性なども考慮して原則的に推奨できないとされています(http://www.mammography.jp/mammo/oshirase16.html)。
今回の報告は、1990年以降に発表された、豊胸手術が乳がんと診断されたときのステージと診断後の生存に影響するか否かに関する12の研究についての系統的レビューとメタアナリシスです。
結果は、
①豊胸手術を受けていない女性を基準とした場合,豊胸手術を受けた女性で乳がんの診断が遅れるオッズ比(OR)は1.26(95%CI 0.99~1.60)で,リスクは上昇傾向にあった。
②乳がんによる死亡のORは1.38(同1.08~1.75)で,豊胸手術を受けた女性で有意に高かった。
というものでした。
しかしこの研究の発表者は、この解析にはいくつかの問題もあるため、今回の結果はあくまで警告レベルにとどめるべきとしているようです。ただ実際に豊胸術後の患者さんには検診マンモグラフィは施行できない(または施行しても診断精度が落ちる)ため、この問題を解決する手段を考えなければなりません。先日参加した乳房再建の研修会でお聞きした話では、インプラント挿入後は少なくとも2年に1度のMRまたは超音波検査の実施が推奨されていました。これはインプラントの破損をチェックすることが主な目的ですが、豊胸術後の女性に対する乳がん早期発見のための基準作りも必要なのではないかと私は思います。
0 件のコメント:
コメントを投稿