乳がんで治療を受けた方がご家族の中にいると自分は乳がんの家系ではないかと心配になる方もいらっしゃるかと思います。もちろんそのすべてが遺伝性乳がんというわけではありませんが、全乳がんの5-10%は遺伝子の変異が関与した遺伝性乳がんであると言われています。
遺伝性乳がんの代表は、BRCA1やBRCA2などのがん抑制遺伝子の変異によるもので、この遺伝子は1/2の確率で子供に遺伝します。同一家系内に乳がんや卵巣がんが多発していたり、男性乳がんや両側乳がん、若年乳がんの方などがいらっしゃるとその可能性は高くなると言われています。
BRCA遺伝子の検査は保険外ですが、特定の施設で検査可能です。しかし、この検査はだれでも受けることができるわけではありません。乳がんと診断された方が遺伝性乳がんの可能性が高いと考えられる場合に、まず最初にこの遺伝子検査を行ないます。そして遺伝子変異があることが証明されて初めてそのご家族が検査の対象になるのです。ただそのご家族が遺伝子カウンセリングや遺伝子検査を受けるか受けないかは最終的には個々の判断に任されています(遺伝子変異が証明された患者さんがカウンセリングを受けた上でご家族に知らせるか、検査を勧めるかを判断、そして知らされたご家族自身がその検査を受けるかどうかを判断することになります)。
今回、米国予防医療サービス対策委員会(USPSTF)は女BRCA関連腫瘍のリスク評価,遺伝カウンセリングおよび遺伝子検査に関する勧告を改訂しました(Ann Intern Med 2014; 160: 271-281)。「BRCA1またはBRCA2の変異に関連するがんの家族歴を有する未発症女性」に対し,遺伝カウンセリングまたは遺伝子検査を受ける必要性を判断するためのリスク判定ツール(層別化ツール)を用いた評価を推奨することが追加されたのです(推奨グレードB…中等度のベネフィットが確認されている)。繰り返しますが、これは遺伝性乳がん(BRCA関連)と診断された家族が身内にいる人に関するツールですので、ただ単に母親が乳がんというだけでは対象になりません。
リスク層別化ツールとして,Ontario Family History Assessment Tool(表)やManchester Scoring Systemなど5つの選択肢が示されています。ただそれぞれ限界があり,特定のツールを推奨するためにはエビデンスが不足しているということと、日本人を対象としたツールではないことに注意する必要があります。
なお,BRCA変異に関連するがんの家族歴がない女性に対するルーチンな遺伝カウンセリングあるいは遺伝子検査については2005年と同様,「推奨しない(グレードD)」とされています。
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