手術や化学療法、放射線治療を”がんの3大治療”と呼び、これを悪者扱いする人たちが未だにいらっしゃいます。彼らはこんなふうに主張し、3大治療を否定します。
”局所治療である手術では、全身病であるがんを治すことはできず、逆に後遺症で苦しむことになる”
”放射線治療は放射能を使う治療だから新たながんを発生させるので害にしかならない”
”抗がん剤は毒だから、副作用は苦しいし、免疫力を下げるのでかえって死期を早める”
もしこのような考え方が正しいのであれば、ここ数十年で飛躍的に進歩したこれらの治療によって、予後はかえって悪くなっているはずです(もちろん私たち現代医学を信じる医療従事者はそのようには考えていませんが…)。
その答えの一つが第33回サンアントニオ乳がんシンポジウムで発表されます。
米国のテキサス大学MDアンダーソンセンターで治療を受けた過去60年間の乳がん患者さんの治療成績が報告されるということですが、シンポジウムに先立って、その内容が発表されました。
結論から言うと、「乳がんの治療成績は過去60年間で飛躍的に改善している」ということです!!
(まあ当然と言えば当然ですが…)
10年単位の患者さんをステージ別に分類し、その初回診察時からの生存率を解析してみると、5年生存率、10年生存率ともに、全ステージにおいて年代を経るごとに改善していたということです。
例としてステージ4(初診時に転移を有する乳がん)の10年生存率をみてみると…
1944-1954年 3.3%
1985-1994年 22.2%
と、約7倍に改善していたということです。
これは明らかに化学療法、内分泌療法、放射線治療、手術などの治療の進歩による成果だと考えられます(ステージ4に関しては放射線治療、手術療法の効果は限定的)。この進歩というのは、新規薬剤の開発だけではなく、志のある多くの医師と研究者が、これらの治療の適切な使い方を真摯に追求してきた結果なのだと思います。
もちろん、手術には後遺症(痛みやむくみなど)、放射線治療には副作用(間質性肺炎や皮膚炎など)、そして化学療法にも苦痛な副作用があるのは否定できない事実です。しかし、患者さんたちは、この治療を受けることによってがんを克服できる可能性が高くなると信じて頑張っているのです。今回はそれを証明した一つのデータだと思います。
こういう事実を見て、3大治療を否定しようとする人たちはどう反論するのでしょうか?
10 件のコメント:
hidechin先生
こんにちは。
いろいろ考えた末にどうしても3大治療を受けたくないという結論に達したのならそれもひとつの選択肢でが、仮に自分がそうであっても人にそれを押し付けるのは間違いだと思っています。
3大治療効果の有効なデータが次々に出てきていずれがんが治る病気になっても3大治療を否定する人は一定数存在するような気がします。
私自身は、医療関係者の方々と、先輩患者の方々の不断の努力と勇気に感謝しつつ、自分が納得した3大治療を受けています。
はじめまして、こんにちは。
いつも拝見させて頂いております。
私は発見時、肝臓転移のステージ4でした。3大治療の結果、幸い治療後10カ月間再発もなく生活してます。安心できないのは承知していますが、予後の悪いとされている肝臓転移で今現在元気にしていられるのも、医療関係者と先輩患者の方々の努力があったからこそだと、深く感謝しております。
今回、ある雑誌の見出しに「抗がん剤は効かない」とありました。中身を見ていないので何ともいえませんが、がんになり不安な時にその見出しを見たらどう思うでしょうか…。
確かに抗がん剤が効かない方もいらっしゃるでしょう、でも私のように効く人間もいるのも事実です。ですが、もし私が今後再発したら抗がん剤に否定的な人は、「やはり効かなかった」と思うのでしょうか…。
複雑な気持ちでいる時に、あまりにもタイムリーな内容でしたので、ついコメントしてしまいました。
ますます寒くなると思いますので、先生もご自愛ください。
乱文で失礼いたします。
>nunuさん
そうですね。どうしても3大治療を否定する人はなくならないですよね。十分理解した上で個人の判断で民間療法を頼ったり、併用するのはかまいませんが、一番の問題は、患者さんのつらい治療はできれば受けたくないという弱い部分につけこんで金儲けをたくらんでいる人たちがいることです。
私はこのような人たちは絶対に許せません。
>うみいぬさん
はじめまして。治療、大変だと思いますが効いて良かったですね!このままずっと落ち着いてくれることをお祈りいたします。
不安をあおるようなTV番組や雑誌記事は時々目にします。偏った情報を流す、一部マスコミの姿勢には問題があると思っています。
化学療法の問題点を取り上げるなら、その立証された効果も同時に取り上げて、今後どういう方向に向かって研究がされているのかを論じなければ片手落ちになりますよね。
私はこのブログでできるだけ公平な立場で情報を取り上げようと思っています。
またうみいぬさんのコメントをお待ちしています。
初めまして。乳がん3期の家族を持つ者です。
>シンポジウムに先立って、その内容が発表
>されました。
サンアントニオ2010のサイトを見ましたが、先生が紹介されておいでの発表が分かりません。
先生の読まれたプレリリースはネットでも見ることができるのでしょうか。
もしURLがあるようでしたらお教えください。もちろん原文サイトでも構いません。
よろしくお願いいたします。
>本間さん
この記事は11/25号のMedical Tribuneという医学情報ジャーナルに掲載されたものです。インターネット版でも見れますが会員登録制なのでIDがなければ見れないかもしれません(http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtnews/2010/M43470071/)。
ご覧になったサンアントニオ2010のサイトは速報ですか?速報ではすべての報告が見れるわけではありません。ですから英文のサイトにアクセスするしかないと思いますが、英文のタイトルがわかりませんので検索するのはなかなか難しいかと思います。。
レス、ありがとうございました。
教えて頂いたサイトから単語検索して、↓のサイトで本件の翻訳記事を見つけることができました。
http://www.beluga-cl.com/columns/detail.php?id=435&page=0
>本間さん
この内容は私が内容を要約した元になったMedical Tribuneに掲載されていた文章の完全なコピーです。サンアントニオが開催される前のリリース内容ですので当日の発表がどうだったのかはやはりわかりませんでした。
こんにちは。
以前に抗がん剤の手足のしびれやむくみのことでご相談申し上げた者です。
今回のこの記事は私が一番知りたかったこと、というか、専門家の先生の口から聞きたかったことでした。できればその当時に読みたかったです。
今は抗がん剤も終わって数ヶ月たちますのでからだも楽になり、そんなに悲観的になることもないのですが、抗がん剤治療中は肉体的に本当に辛く、そんな時に「抗がん剤は毒だから副作用は苦しいし、免疫力を下げるのでかえって死期を早める」とか「抗がん剤の効果はない」だとか、そういうことを聞くと、自分が今何の為にこの治療と闘っているのかわからなくなり、不安や迷いが生じ、とても悩み、辛くなりました。主治医の先生に伺いたかったですが、こんなことをどうやって聞いていいのか、また、そんなことを聞ける先生でもなかったので、ただただ一人で悩んで辛くなり、抗がん剤点滴の日、泣きながら帰ったこともありました。
がんという病気になりそれだけでも不安な時に副作用のことまで考えるとどうしていいのかわからなくなります。
また、今月からは「放射線治療」も始まるので、新たな不安や心配もあります。
私の場合は手術、化学療法、放射線治療の3大治療に加えて、ホルモン治療もしていますので、その副作用の内容を見ていると「本当にこんなことをして、私は健康でいられるの?!」と思うぐらい、怖くなる事もあります。
もちろん治療のため、とわかっているのですが、でもやはりどうしても副作用のことを考えてしまいます。
でも、先生の記事を読んでいて「もしこのような考え方(3大治療は悪い)が正しいのであれば、これらの治療によって予後はかえって悪くなるはず」という言葉に勇気づけられましたし、その通りだと思いました。
当然と言えば当然ですし、とても単純なことなのですが、やはりそれを周りの身内や友達からではなく専門家の先生から聞きたかったのです。
(悪い事も周りから耳に入るのですが、そういう時だけ信じてしまうのは変ですよね。)
ですから、hidechin先生のような専門家の方の言葉が聞けるというのは、患者にとってはとても貴重なことですし大変勇気づけられるものです。これからも私たちのような患者の為にもどうかこのブログを続けてくださるようお願いいたします。
>ミチさん
コメントありがとうございます。
私のブログを読んでミチさんが前向きに治療していける力になれたならとてもうれしいです。それが私がこのブログを始めた一つの理由だからです。
放射線治療についても昨日少し書いてみましたので読んでいただけたらと思います。
まだまだ治療は続きますが、頑張って下さいね。治療に疑問を感じながら行なうと副作用も強く出やすいものです。まずは、この治療が自分にとって必要なものであるということをきちんと理解することが大切ですよ。
それではお大事に!
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