2010年12月27日月曜日

乳がん転移巣に対する手術療法の適応について

乳がんの再発、特に遠隔転移は全身療法(抗がん剤、ホルモン療法、分子標的薬)が治療の主体となります。これは乳がん自体が最初から全身病であるという考え方が広まっていること、遠隔転移がある場合はたとえ一つの臓器であっても画像に写らないような微小な転移が他の臓器にある場合がほとんどであること、実際に再発巣に手術を行なっても予後が改善したという報告はほとんどないこと、などによります。

しかし、実際は再発巣に対して手術を行なう場合があります。その理由のいくつかを以下に示します。

①根治を目指すため

特にリンパ節の単独再発(腋窩や鎖骨下、胸筋間、胸骨傍、時に鎖骨上、対側腋窩)の場合は、リンパ節郭清(摘出)で根治できる可能性があります。これは、乳がんがまだ局所に留まっていることがまれにあるからです。全身療法を併用することによってその可能性は高まります。
問題は遠隔臓器(肺、肝臓、骨、脳など)の場合です。通常は根治は困難と考えられ、手術はすべきではないと言われています。これは前にも書いたように、手術療法が予後を改善するというエビデンスがないからです。しかし、このエビデンスのもとになった臨床試験は相当古いものです。アロマターゼ阻害剤もハーセプチンもなかった時代のものです。
また、遠隔転移は治らないと主張する人がいますが、本当でしょうか?術後補助療法の進歩で予後が劇的に改善したのは、原発巣を切除した上で微小な遠隔転移を画像に写るような大きさになる前に根絶したことによると考えられます。つまり、微小な転移は全身療法で治癒可能なのです。ただ、再発の場合は、術後補助療法を行なった上で再発したという点で異なりますのでまったく条件が同じわけではありません。しかし、完全切除可能な少数(単臓器、できれば単発)の粗大な転移巣を除去した上で、新しい薬剤を効果的に組み合わせることができれば、再発も根治できる可能性を示している一つの証明だと私は思っています。

②情報を得るため

前にもここで書きましたが、再発巣では原発巣とがんの性質(ホルモンレセプター、HER2)が変化していることがあります。特にホルモンレセプターの陰性化はよく経験します。治療方針を立てる上で、その情報を得ることは有益だと考えられます。

③QOL向上、症状緩和のため

骨転移は手術で根治するのはなかなか難しいのですが、骨折治療や疼痛軽減、麻痺の予防、治療のために手術を行なうことはあります。今年も骨転移による麻痺で初診、緊急入院となったStageⅣの患者さんに対して化学療法後に脊椎固定術を行ない、その後ホルモン療法で劇的に症状が改善したため、退院可能になったというケースを経験しました。また、症状を伴った脳転移に対しても単発(〜少数個)であれば手術を行なう場合があります。特に脳浮腫を伴っていて急を要する場合には放射線治療の前に手術で症状緩和をはかります。まれではありますが肺転移で喀血や閉塞性肺炎の原因になっている場合も手術の適応になる場合があります。

大雑把に書くとこのような感じです。手術なんて必要なくなればそれに越したことはありません。実際に再発のほとんどは全身療法のみで行なわれます。それが著効することもあります。しかし、大きな再発巣を化学内分泌療法だけで根治するのはいまだに力不足です。状況によっては局所療法(手術、放射線治療)を組み合わせることも必要になるのです。

24 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

はじめまして
先生にご質問させていただきたいのですが、母が7年前に左乳癌の全摘出をし、その後抗がん剤治療とホルモン治療をしました。しかし今年9月に病理検査で左鎖骨上リンパに再発が確認されて、その後10月のマンモと頚部&胸部のCTと骨シンチを行い再発は鎖骨上リンパのみだと判明し現在ホルモン治療(アロマターゼ阻害剤)を行っているのですが、完治する方法はもうないのでしょうか?
少しでも完治の可能性があるのであれば、どのような方法がありますか?
現在、9月くらいに風邪をひいていたのですが、病巣が左なのに両手にむくみがあるのが気になるのですが何か悪い兆候なのですか?質問にお答えいただければ幸いです、よろしくお願いいたします。

匿名 さんのコメント...

先ほどコメントさせていただいた者ですが、リンパにがん細胞を置いたままでホルモン治療のみの場合に、現在リンパしか確認されていないがん細胞がこのままだとリンパからどんどん飛んでしまうということはないのでしょうか?

hidechin さんのコメント...

>匿名さん
はじめまして。

まず一般的なお話をします。鎖骨上リンパ節再発は遠隔転移とかなり近い意味合いを持つと考えられています。つまり、鎖骨上リンパ節に転移があれば、すでに他の臓器にも微小な転移がある可能性が極めて高いので完治はかなり難しく、局所だけ切除しても意味がない、ということです。ですから基本は全身療法になります。2回目のご質問は、ですから考え方が逆なのです。局所に放射線治療を加える場合もあります。その上で他の臓器に転移が現れず、鎖骨上のみ残存する場合は切除に踏み切ることもあります。

個人的には、QOLを損なわないのであれば、先に切除を行なって、がん細胞の性質(ホルモンレセプターやHER2など)を調べるとともに腫瘍量を減らして治癒を目指す全身療法を行なうことも考慮して良いのではないかと考えています。
特に今までの経験では、胸骨傍リンパ節再発の場合は外科的切除後に全身療法を行なうことが有効な印象を受けています。鎖骨上リンパ節再発を切除したことが非常に有効だったという経験は今のところあまりありませんが、全身療法も進歩していますので治癒を目指せる可能性はあると思っています。切除と放射線治療と全身療法をどううまく組み合わせるかは、まだ不明な部分も多いのですが、情報を得るための摘出は考慮する価値がありますし、手術や放射線治療は少なくとも局所コントロールの意味合いはありますので検討しても良いと思います。
後半はあくまでも個人的な、将来的な希望も含めた意見であることをご了解下さい。少なくとも匿名さんの主治医の先生は標準的な考え方できちんと治療されていると思いますし、私でも最初の治療としては同じ方法を選択すると思います。ただ、ホルモンレセプターが陰性に変わっていることも考慮しなければなりませんので(組織検査で確認したのなら良いのですが)、今の治療の効果が見られなければ、組織を採取(リンパ節の摘出や生検)することを考えた方が良いかもしれません。

両手のむくみは本当の「浮腫」ですか? 本当に浮腫が両手にあるのであれば内科的な病気も含めていろいろな病態が考えられますのできちんと主治医の先生に伝えて診断してもらって下さい。ただ、もし「むくんだ感じ」だけで実際に浮腫がなく、朝に症状が強いのであればアロマターゼ阻害剤の副作用である、「こわばり」の可能性もあるのではないかと思いますが…。やはり診ていない私には診断することはできません。

以上です。
それではお大事に。

匿名 さんのコメント...

質問にお答えいただき、
本当にありがとうございます。

主治医の先生に"手術をすることはがんを散らす危険性がある"とは言われていたのですが、先生のようながん細胞の性質を調べることや、腫瘍の量を減らすという意味合いもあるのですね。

むくみのことですが言葉が少なくて申しわけありませんでした。明らかにもとの腕の太さと違うので浮腫だと思うので、主治医の先生に伝えてみます。

治癒は無理だと言われて治療に対する意力や希望がもてなくて絶望的な気持ちに絶望的な気持ちになっていました、治癒が難しいことは分かっていますが、先生に治癒を目指せる可能性あるとコメントしていただいて今後の治療に対してがんばって支えようという気力が沸いてきました、まずは主治医の先生に今回先生に教えていただいたことなどを質問して見たいと思います。

また質問させていただくかも知れませんが、よろしくお願いいたします。

hidechin さんのコメント...

>匿名さん
本当に両上肢に浮腫があるのでしたら、反対側の鎖骨上などにリンパ節転移がないかどうか確かめる必要があります。他には甲状腺機能低下症や心不全、低タンパク血症などの内科疾患の有無もチェックしておいたほうが良いかもしれません。私は実際に診ていませんのでやはり主治医の先生に判断していただくのが一番だと思います。
ご心配のことと思いますが、お母さんが前向きに治療を受けられるようにサポートしてあげるのと同時に、治療ばかりにすべてを費やさないように生きる楽しみが持てるような援助(気分転換も含めて)をしてあげること大切だと私は思います。
治療が順調に進むことをお祈りしています。

匿名 さんのコメント...

ありがとうございます

まずは、主治医の先生に治療のことや浮腫のことを含めていろいろ相談してみます。

毎回、
コメント本当にありがとうございます。

匿名 さんのコメント...

前回母の左鎖骨上リンパ節再発について質問させていただいた者ですが。

主治医の先生に前回の生検でホルモンレセプターの確認等はされていたかどうか質問させていただいたところ、腫瘍が2センチだったため生検に細い針を使ったのでしませんでしたといわれました。2センチでは太い針を使ってまで検査しないほうがいいのでしょうか。大きくなるまでしなくてもいいものなのでしょうか?

又、腫瘍がこりこりしていたのが、やわらかくなっていると言われました、どういうことなのでしょうか?今のホルモン治療のみでいいものなのでしょうか(分子標的薬は使えないといわれました)、今は3ヶ月目ですが一般的にどのくらいで変化があるものなのでしょうか。

hidechin さんのコメント...

>匿名さん
柔らかくなってきているのでしたら今の治療の効果が現れているのかもしれません。明らかな悪化がなければもう少しこのまま経過を見た方が良いと思います。ホルモン療法は化学療法に比べると効き始めるのに少し時間がかかります。明らかな増悪がなければ半年くらいは使用して反応を見ることが多いと思います。

今のところ悪化がなければ摘出や針生検はしなくて良いと思います。もうすでに治療を始めていてホルモン療法で効果があったということはホルモンレセプターが陽性だということです。ですから性質を調べる目的での生検は不要なのです。

今後もし治療に反応しなくなった場合に生検を考慮するということで良いと思います。なお、鎖骨上リンパ節の針生検はリスクを伴いますので場所と大きさによっては摘出生検の方が安全な場合もあります。
取り急ぎ以上です。それではお大事に!

匿名 さんのコメント...

針生検はリスクがあるのですね、わかりませんでした。

やわらかくなっているのは効果があったかも知れないのですね。

いろいろ質問をしようと思っていたのですがなかなか主治医の先生に面と向かって話そうとしてみると何から質問をしていいのか頭の中が真っ白になってしまって何を質問しているのかわからなくなってしまったりで、
先生のご意見でホルモン療法の反応を見る期間や腫瘍の状態のこと、生検のことなどいろいろ教えていただきとても安心しました。

毎回本当にありがとうございます。

hidechin さんのコメント...

>匿名さん
お役に立てたならうれしいです。
質問や疑問があればメモを書いておいて診察前に看護師さんにあらかじめ渡しておくと話がスムーズに進むと思いますよ。それでは!

匿名 さんのコメント...

次回質問する時にはメモをして行ってみようと思います、アドバイスありがとうございました。

匿名 さんのコメント...

先程、別のリンクで投稿させて頂いたものです。
妻は腰椎に骨転移して、がんが発見され、原発巣は右胸に1cm弱の物(組織を調べるため既に取り除きました)が1つあっただけでしたが、血液の流れに沿って転移してしまったようです。CT、MRI、骨シンチしても原発巣が解らず、PET-CTでやっと見つかったため2週間以上もかかりました。
あまり詳しくわからないですが、主治医の先生の話では、ER100% PR50% Her2(-)miv170% リンパ転移なしと言われました。

先程も書きましたが、腰の放射線治療は終了し、現在化学療法中+ゾメタしてます。
この「①根治を目指すため」の中で、うちでいえばどのような状況なのでしょうか?大きな転移は腰椎以外ありませんでした。PET-CTで微小な反応は骨盤などにも何箇所かあるとは言われましたが…。肝臓や肺は大丈夫なようです。転移で見つかっているので、今回初めての化学療法です。術後補助療法されて再発してしまわれた方より効果は高いのでしょうか?うちの場合でも治癒できる可能性はあるのでしょうか?
ネガティブなことばかり書いてあるサイトが多い中、先生のブログは本当に心強いです。

ご意見を頂けると嬉しいです。
下手な文章ですみません。

hidechin さんのコメント...

>匿名さん
個々のケースについてお話することは、無責任な対応になってしまう場合もありますし、このブログを読んでいる他の方に正しく伝わらない場合もありますので非常にお答えしにくいのですが…。

一般論としては、一度再発したら(StageⅣも含めて)完全治癒させることは困難だと言われています。その理由は、確かに数多くの再発患者さんの中には治癒することができた症例もありますが、それは現状ではまだごく一部の患者さんにすぎないからです。ただ新薬の開発もさかんに行なわれていますから、将来的にはもっと治癒に持っていける症例が増えるのではないかと期待しているということ、そしてそう願って日常診療をしていかなければおそらく再発医療は進歩はしないのではないかということが私がこのブログで主張してきた基本的な考え方です。

で、奥様の場合は骨転移ですよね…。骨転移は、ただちに生命に危険を及ぼす再発部位ではありませんし、再発後の経過も長いことが多いです。しかし、骨転移はなかなか完全治癒させにくい部位なのです(治癒の判断も画像では困難です)。1カ所骨転移があればそこだけでとどまっていることはほとんどありません。いくつもの骨にがん細胞が隠れている可能性があります。ですから放射線治療を行なっても他の部位に出てくることが多いのです。これを繰り返すと骨髄機能が低下し、抗がん剤治療は徐々に困難になります。そして同じ部位の再発には放射線治療はできませんので徐々に治療が難しくなっていくのです。これが骨転移の治療の困難さです。

ポジティブなお話を期待されている中でこのようなお話をしなければならないのは申し訳ありません。すべての再発(遠隔転移)を治すというのは不可能であり、圧倒的多数は根治が無理なのが現状です。ただ根治しなくても再発から(またはStageⅣと診断されてから)長くお元気に過ごされている方もいらっしゃいます。ですから私は自分の再発患者さんたちには、”根治できるのがベストですが、最初から根治を目指すと気持ち的につらくなる場合もありますので、まずはがんが暴れないようにしながら仲良くつきあっていくようにしましょう”とお話ししています。できるだけ長くがんをおとなしくさせておければ、また新しい治療ができるようになるかもしれませんし、その方が再発しながらでも人生を楽しむことができると私は信じています。私の患者さんの中に、StageⅣで手術を受けてから15年、完全治癒しないままずっと治療をしながら家事と仕事と趣味をエンジョイし続けている方がいらっしゃいます。もし彼女が完全治癒を第1目標に治療して来たとしたら、きっともっとつらい人生を送ってきたのではないかと思います。

闘病はもちろん大切ですが、そればかりが頭から離れないと治療以外の時間を楽しめなくなってしまいます。人生を楽しみながらがんとうまく付き合えるように治療していく、ということを匿名さんがサポートしてあげるのがとても大切なのではないかと私は思います。もちろん、その先に完全治癒があれば、それは一番望ましいことですので、私もそうなることをお祈りしています。
お答えになったかどうかわかりませんが、以上です。

匿名 さんのコメント...

無理な質問をしてすみませんでした。

骨転移の治療の難しさなど丁寧にお教え下さいましてありがとうございました。

私自身、毎日、なんでこんなことになってしまったのか、今後妻はどうなってしまうんだろう、これから子供たちは・・・等とネガティブなことばかり考えてしまっています。
妻は前向きに頑張っているのに、一番サポートをしてあげなければいけない私が、こんなことばかり考えていては病気もよくなりませんよね。わかっているつもりですが、どうしても、悪い方の事を考えてしまう自分がいます…。

先生のおっしやられるように、人生を楽しみながら治療をしていけれるように、気持ちの整理をしていきます。

最後に、先生が今まで診てこられた再発を遅らせることができた患者さんに共通する、治療以外でやっていたことや、家族がしてきたサポートのなどあれば、教えて頂けると幸いです。

hidechin さんのコメント...

>匿名さん
匿名さんがご心配になるお気持ちはよくわかります。なかなか気持ちの整理もつかないかもしれませんが、時間が解決してくれることもあります。この先奥様がつらくなる時が来るかもしれませんので、その時にこそ匿名さんの力が必要になります。今は奥様に不安がわからないようにしながら時を待ちましょう。
最後のご質問ですが、特別なことはしていませんし、患者さん側もしていません。ただ、状態が安定していたからかもしれませんが、そのような方々は、何か他に趣味など気晴らしになるものを持っていられるような気がします。こちらが心配しているのに、当の本人はわりと深刻に考えていなかったり、ということが多いかもしれません。ネガティブな思考や引きこもり、うつ傾向などは、免疫力の面からもマイナスになる可能性があります。体調が許すのであれば、笑顔になれるように積極的に活動することを個人的にはお勧めしています(笑顔は免疫力を上げるという基礎的なデータもあるようです)。あまり科学的ではありませんが、もしかしたら限られている時間かもしれませんので、できる限り楽しい時間を過ごすということは、仮に予後を延長しないとしてもとても大切なことだと私は思うからです。以上です。それではお大事に!

匿名 さんのコメント...

ありがとうございました。
笑顔を絶やさぬよう、サポートしていきます。
早急に返信、ご回答くださいまして、本当にありがとうございました。

匿名 さんのコメント...

はじめまして。できればお答えいただきたくメールいたします。術後9年でリンパ節転移再発となり手術しました。
CT-PETで遠隔転移はありませんでした。
手術の結果ホルモン陽性でher2マイナスki67は50%リンパ節
8個の内5個に転移という結果でした。
手術前はTC療法と言われていましたがこの結果によりタキソール毎週12回のあとFECと言われました。
FECは副作用も強いとの認識です。私の場合はやはりTCではだめなのか?強力でないとだめなのでしょうか?
初発でなく再発なのにマイルドでなく強力にたたくべきなのでしょうか?それから米国国立癌研究所によればアントラサイクリンはHER2陽性は生存を改善するもののHER2陰性の生存は改善しないとありますが私のようにHER2陰性でもアントラサイクリンのエピルビシンを使用するべきなのでしょうか?
あとタキソールとFECの
投与の順番もどちらが先でも特に問題はないのでしょうか?
是非教えて頂ければと思います。
どうぞよろしくお願い致します。

hidechin さんのコメント...

>匿名さん
はじめまして。
再発治療のエビデンスは細かい部分まで十分にあるわけではありません。ですから匿名さんの場合にFECを先にするか後にするかについての答えはありません。アンスラサイクリンによるER陽性HER2陰性乳がんに対しての予後改善効果は少ないというデータはありますが、おそらく術後補助療法の場合の話だと思います。この場合もER陽性、HER2陰性全体のデータであって、再発リスクが高い場合など、個々の細かいケースについてのデータではないのではないでしょうか?(私の勉強不足ならすみません)ちなみに乳癌診療ガイドラインでも、HER2陰性転移・再発乳癌に対する一次化学療法としてアンスラサイクリンまたはタキサンを含む治療が推奨グレードA、二次治療としてアンスラサイクリンまたはタキサンのうち、一次治療として使用されなかったどちらかの薬剤の使用が推奨グレードBとなっています。
アンスラサイクリン使用の是非や使用法については、米国と欧州などでもちがいますし、施設によっても異なります。ちなみに私の施設ではER陽性、HER2陰性であっても再発リスクの高い場合(リンパ節転移数が多い場合など)の補助療法ではアンスラサイクリン+タキサンを選択しています。
再発治療に関する考え方も様々ですが、主治医の先生はおそらく匿名さんの再発は根治できる可能性があると考えて、通常の術後化学療法と同じ最大限の治療を行なうという考え方でプランを立てているのだと思います。もしリンパ節再発を骨転移や肺転移と同じように考える医師であれば、おそらく抗がん剤を行なわずにホルモン療法を選択したはずだからです。匿名さんの細かい検査所見や病理所見は見ていませんが、根治できる可能性があると考えた場合、最大限の化学療法を行なった後でホルモン療法で維持するという主治医の先生の考え方に私は同意できます。以上です。
それではお大事に。

匿名 さんのコメント...

先生お忙しい中詳しくご回答いただき本当にありがとうございます。
私自身、先生がおっしゃって下さった根治できる可能性があるとの言葉が本当にうれしかったです。
初発の時にリュープリンとフェアストンのホルモン療法のみで抗がん剤をやらなかったので抗がん剤がこわくてずっと落ち込んでいましたが先生のお言葉を聞き前向きに頑張っていこうと思えました。
本当にありがとうございました。
また何かの時にはよろしくお願いいたします

hidechin さんのコメント...

>匿名さん
治療が順調に進み、良い結果が得られることをお祈りいたします。
それではお大事に!

匿名 さんのコメント...

2014年5月28日に投稿しすぐに先生からお返事を頂いたものです。
fecの投与量のことで教えて頂きたいと思い
再度メールさせて頂きます。
今週火曜日よりfecからweeklyタキソールの
順番で投与することにしました。
通常5-fuとエンドキサンは500mgエピルビシンは100mgが基本で体表積で計算すると思うのですが私は身長151cm体重47kgと小柄なのですが外来指示票によれば5-fuとエンドキサンが700mgずつエピルビシンが140mgとなっていたので通常量より多いのではと不安になったためメールさせて頂きました。
お忙しいことと思いますが教えて頂けたらと思います。どうぞよろしくお願いいたします

hidechin さんのコメント...

>匿名さん
151cm、47kgの場合、DuBois式で計算した体表面積は1.402㎡になります(http://www.jcog.jp/doctor/tool/calc.html)。ですからFEC100の場合、エピルビシンは140mg、5FUとエンドキサンは700mgが適量となります。このような疑問は私にお聞きになるより主治医にお聞きになる方が早いと思いますよ。
それではお大事に。

匿名 さんのコメント...

先生早速お返事いただき本当にありがとうございました。帰宅してから気づきまして
主治医とは3週間後の2回目投与の予約で会うことになっており完全予約制でなかなか予約が取れず主治医のアドレスも知らず一人で普通より多く投与したのではととても心配になり先生に助けを求めてしまいました。
申し訳ありませんでした。
でもおかげさまで安心できました。
本当にありがとうございました。

hidechin さんのコメント...

>匿名さん
そのような場合はメールなどではなく、直接病院にお問い合わせされるほうが良いと思います。副作用などで心配なことがあれば病院に電話をすれば対応をしてくれるはずです。
それではお大事に。