2011年3月1日火曜日

乳房再建〜講演会後の変化と再発治療中の再建

昨年D病院から形成外科のE先生をお招きして講演していただいて以来、私たちの病院の乳がん術後患者さんのうちすでに4人、E先生の外来に受診されました。

内訳はもともと乳房再建を予定していた患者さんが2人、今回の講演をお聞きして決意した患者さんも2人です。さらに手術直後の患者さんで乳房再建を念頭に入れている方もいらっしゃいますので今後さらに増えそうな勢いです。

北海道は東京に比べてもともと乳房再建の希望は少なかったように感じます。それは北海道人の気質なのか、経済的に厳しい人が多い上に乳房再建に保険が適応されていなかったからなのか、乳房再建に取り組んでいる病院が少なかったからなのかはわかりません。私自身、患者さんに乳房再建のお話はしてきましたが、経済的負担を強いることになることを考えると、あまり積極的にはお勧めはできませんでした。

自家組織を用いた乳房再建が保険で可能になっても、なかなかご紹介する乳房再建専門の病院がなかったため今までは乳房再建症例はほとんどありせんでした。しかし、E先生がD病院で乳房再建に取り組まれていることをお聞きし、講演をしていただいたおかげで、安心して患者さんに乳房再建をお勧めすることができるようになったのです。こちらが自信を持ってお話ししなければ、患者さんも積極的には考えられないものなんだということが今回あらためて実感しました。

突然紹介が増えるとE先生も大変だと思います。自家組織を使った再建はけっこう時間のかかる手術です。特にE先生が得意としている血管吻合を用いる遊離深下腹壁動脈穿通枝皮弁は大変です。好きなワインも飲めないくらい忙しくされているのではないかと心配しています(笑)。

今日は他院で手術後、胸骨に再発し、放射線治療と抗がん剤+ホルモン治療で寛解して10年たった患者さんにも乳房再建の希望があるかお聞きしてみました。胸骨周囲に放射線治療をしていることから人工物は困難ですし、内胸動静脈に血管吻合する遊離深下腹壁動脈穿通枝皮弁も難しいかもしれませんので、広背筋皮弁か有茎腹直筋皮弁になるのではないかと思いますとお話ししました。

その患者さんも再発して以来ずっと乳房再建は考えてもみなかったようですが、10年も再発が消えた状態を継続できているので少し気持ちに余裕ができてきたようです。
「そう言えば温泉に入りたいのを無意識に我慢していたのかもしれません。」
とお話ししていました。

再発していても状態が落ち着いていて、再建をすることで精神的な安定が得られるなら、積極的に乳房再建を考えても良いのではないかとその患者さんとお話ししていて感じました。

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