久しぶりに化学療法後の嘔気・嘔吐のコントロールがつかなくて苦悩しています…。
吐き気が出てから制吐剤を使っていた時代にはCAFなどの治療では頻回に嘔吐が見られていましたが、予防的に制吐剤を使用するようになってからは、実際に嘔吐するのはまれになってきました(10%程度)。また、嘔吐したとしてもほんの数回で回復することが多かったのですが今回は投与後数時間で出現し(急性嘔吐)けっこう回数も多く長引いています。
この患者さんは出産するまでずっとつわりがひどかったとお聞きしていたので心配はしていましたが、予想以上に重症です。
急性嘔吐の予防として、FEC投与直前にグラニセトロン(5-HT3受容体阻害剤)とデキサメタゾン(ステロイド)の静注をいつも通り行ないました。翌日からはデキサメタゾンとドンペリドンの内服をしています。しかし、何度も嘔吐してしまい、食事をほとんど摂取できないため、ついに補液まで必要になってしまいました。
遅延性嘔吐に対しては、最近ではアプレピタント(NK1受容体拮抗剤)やパロノセトロン(5-HT3受容体阻害剤)などの制吐剤の出現によって進歩がみられてきました。しかし、急性嘔吐に関しては、ほとんどがデキサメタゾンとグラニセトロンでコントロール可能になっているためか、これらでコントロールできない場合には難渋します。
次回のクールは、グラニセトロンをパロノセトロンに変更し、アプレピタントを併用する予定です。制吐補助剤として、ベンゾジアゼピン系の抗不安薬(ワイパックスなど)や抗ヒスタミン薬(レスタミンなど)を併用するのも有効と言われていますので投与を検討するつもりです。
パロノセトロンやアプレピタントは非常に高価な薬剤ですので全例には初回から投与はしていません。経験上、FEC療法においては大部分の患者さんは上記の制吐剤の投与で対処可能だからです。
一番困るのは、患者さんが副作用を恐れて抗がん剤をやめたいと思ってしまうことです。できるだけ副作用を出さないようにしたい、と考えてはいるのですが、やはり副作用には個人差がありますので今回のようなケースは起きてしまいます。つわりがひどかった患者さんには最初から最大限の制吐剤を投与するという配慮も必要なのかもしれません。
2 件のコメント:
先生こんにちは。
私は去年若年性TN乳がんになり、FEC療法を受ける際、最初からイメンドを使いました。まだ出産経験も無いのでつわりがひどいかどうかも分からなかったのですが、なぜか最初から使う事になっていました。担当医や看護士さんが「最近使えるようになったこのお薬はとっても良く効くので吐かない人のほうが多いんですよ。だから大丈夫ですよ。」とイメンドの効能をしきりと褒めていて、私もそれで抗がん剤を受ける前からああ良かったと、とても安心したのを思い出します。結果、吐き気は出ましたが吐く事は一度もありませんでした。その患者さんの辛さを想像すると胸が痛みます。次回はイメンドが効果を最大限に発揮してくれますようお祈りしています。
PS 私は普段、患者側の思いしか分からないんですが、先生のブログを読むようになって患者が苦しいと先生も一緒に苦しんでくれているんだなぁと分かるようになりました。私の主治医もFECが効いてくれてしこりがみるみる小さくなっていった時、自分の事のように喜んでくれたのを思い出します。先生方のような親身になって患者の治療に励んで下さる医療従事者の皆さまには本当に頭が下がります。これからもどうぞ宜しくお願いいたします。
>匿名さん
はじめまして。コメントありがとうございます。
最近では最初からイメンドを併用する施設も増えてきているようです。ただ非常に高価な薬剤ですので、抗がん剤と制吐剤だけでかなりの額になってしまうことと、グラニセトロンとステロイドだけでも十分コントロールできる患者さんも多いことから、私たちの病院では今のところ1回目からはイメンドを併用していません。
この患者さんは2回目にイメンドを併用したところ、かなり楽だったそうで一度も嘔吐しませんでした。今後は患者さんの状況をみて、全例に併用するかどうか再度検討したいと思っています。
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