喫煙が乳がんのリスクファクターになるかどうかについては以前から様々な疫学研究が報告されており、その結論も”関係あり”とするものもあれば、”無関係”とするものもありました。これは、対照の”非喫煙者”をどのように定義するかが影響していたと言われています。つまり、”関係なし”とされた研究では、”非喫煙者”の中に、以前喫煙していた人や受動喫煙環境にあった人を多く含んでいたために差が出なかったのではないかということです。
最近、このことに関する報告が2つありました。
一つ目は、米国のウエスト・バージニア大学Mary Babb RandolphがんセンターのJuhua Luo氏らによる前向きコホート試験「Women's Health Initiative Observational Study」の報告です(BMJ誌2011年3月5日号、オンライン版2011年3月1日号)。
50~79歳の女性7万9,990例(1993~1998年)を対象にしたこの報告によると閉経後女性における喫煙と浸潤性乳がんリスクとの関連について、能動喫煙者では有意なリスク増大(ハザード比1.16)が認められました。中でも喫煙本数が多く、喫煙歴も長い能動喫煙者、また喫煙開始年齢が10代であった人における乳がんリスクが有意に高かったとのことです。
また非喫煙者の中の受動喫煙者においても、間接喫煙曝露が最も多かった人(子どもの時に10年以上、成人後家庭内で20年以上、成人後職場で10年以上)の乳がんリスクは、間接喫煙曝露がなかった人に比べて32%のリスク増加が認められました。
もう一つの報告は、米国のRoswell Parkがん研究所(ニューヨーク州バッファロー)健康行動部門による研究で、「Tobacco Control」オンライン版に3月12日掲載されました。
この研究は、家庭や職場での禁煙率と、州別の乳がんの発症および死亡率を比較したもので、受動喫煙の乳がん発症率に与える影響を疫学的に推測、検討したものです。その結果、特に閉経前の若年女性では、禁煙の家庭や職場の数が多い州ほど乳がんによる死亡が有意に少なかったとのことです。研究グループは、乳がんによる死亡率の変化の約20%が家庭や職場の禁煙よるものだと推定しているそうです。
いずれの報告も喫煙(能動、受動ともに)が乳がんを増加させる可能性を示唆しています。疫学研究ですので様々なバイアスもかかっているかもしれませんが、他にも肺がんや心血管障害などの健康被害を引き起こしますので喫煙は避けるに越したことはないようですね。
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