2017年3月11日土曜日

”乳がん・子宮がん検診普及啓発講演会”と乳がん検診の問題点と今後

今日、札幌市医師会主催の乳がん・子宮がん検診普及啓発講演会に行ってきました。

数年前にも一度依頼を受けて医療相談の担当をしたことがあるので今回は2回目でした。講演は、乳がん、子宮がんそれぞれのがん検診の現状と今後の話を中心にわかりやすくお話しされていました。乳がん罹患者数は2017年の予測が9万人に達する見込みのようです。その一方で検診受診者の増加は頭打ちで、これでは乳がん死亡を減らすことは難しい状況です。

最近、乳がん検診は無意味であるとの報道を目にした方もいらっしゃるかと思います。実際スイスでは、死亡率の低下が明らかではないとして対策型のマンモグラフィ検診を取りやめることになったようです。

確かに今の乳がん検診にはいくつかの問題があります。これにはマンモグラフィ検診が導入された時から私は危惧していたことも含まれています。いま問題になっているのは主に以下の点です。

①高濃度乳腺に対してはマンモグラフィの有益性は低い。

②乳腺濃度が高く、マンモグラフィの信頼性が低い症例に対しても読影者は異常なしか要精検かのどちらかの判定をしなければならず、なおかつ乳腺濃度が高いことを被検者に知らせるすべがない。従って被験者には信頼性の低い検診結果であることが伝わらない。

③マンモグラフィ検診を導入することによって、もしかしたら一生命に関わらないかもしれないようなおとなしい非浸潤がんを多く診断し切除している可能性がある。また、そのようなおとなしいがんを発見しようとするあまり、多くのがんではない被検者に侵襲のある検査を受けさせてしまっている。

このような状況になってしまった要因はいくつかあると思いますが、私見を述べるのは差し控えます。ただ乳がん検診を推進する方法にも少し問題があったのではないかと思っています。

それでは今後、乳がん検診はどうなっていけば良いのでしょうか?

①②に関しては、日本で行われた40歳代に対する超音波検査の上乗せ効果を検証する臨床試験(J-START)の結果が一つのきっかけになるかもしれません。ただ、エビデンスに縛られる今の医療システムではおそらく本当に有効な乳がん検診が普及するのはまだまだ先ではないかと思っています。

なぜならこの臨床試験でがん発見率の増加が確認されたのは40歳代という年齢による対象のみだからです。これは40歳代では”乳腺濃度が高い人が多い”ということが影響しているのは明らかだと思われるのですが(高濃度乳腺のためにマンモグラフィで見落とされた腫瘤を超音波検査で拾うことができたということ)、おそらく検診に超音波検査が導入されるとしたら、”乳腺濃度”ではなく”40歳代という年齢”で線引きされと思われるのです。

何を言いたいかと言いますと、マンモグラフィに超音波検査を併用する方が良い人たちというのは、年齢のみで決まるわけではなく、乳腺濃度が高いか低いかで決めるべきではないかということなのです。つまり、50歳以上でも高濃度乳腺であれば超音波検査を併用すべきで、40歳代でも脂肪の比率が高ければマンモグラフィのみで良いというようにすべきなのではないかと個人的には考えているということです。ただエビデンスに縛られるときっとこのような方針にはならないだろうなと思っています。

③に関しては、学会でもhotな話題になっていてなかなか難しい問題ではあります。なぜなら、一生悪さをしない非浸潤がんなのか、近い将来に浸潤がんになって生命を脅かすがんなのかを100%診断することは現在の医療レベルでも困難だからです。ですから生検でがんと診断されれば乳がんとして根治術を行わざるを得ないのです。

一部の報道では、検診で見つかったがんのほとんどが過剰診断だから検診なんて受ける必要はないというような論調のものもありますが、これは正しくないと思っています。例えば壊死型の石灰化(comedo型)で発見された非浸潤がんは、おそらく近い将来浸潤がんになって生命を脅かす可能性が高いと考えられるものです。このタイプは増殖が速いために乳管内のがん細胞が栄誉不足で死んでしまった部分にカルシウムが沈着したものですから浸潤がんになる危険性は非常に高いと考えられます(実際非浸潤がんだと思って手術をしたら何箇所も浸潤していたケースは稀ではありません)。ですから壊死型の石灰化で発見された早期乳がん患者さんは検診を受けたことによって命を救われた可能性が高いと推測できるのです。

ただ過剰診断、過剰診療を減らす努力はすべきだと思っています。例えば微小円形の石灰化の集簇(カテゴリー3)の場合には約10%程度がんが含まれていますが、このうちの一部は非常に進行が遅い可能性があります。実際、石灰化が指摘されてから5年くらいたって、わずかに数が増加したということで精査して悪性と診断されたのですが、手術をしたらまだ非浸潤がんのままだったという経験をしたことがあります。このようながんはもしかしたら一生命に関わらなかったのかもしれません。

一般的にこのようなタイプは超音波検査に写らない、MRをしても造影されないというタイプが多いように思います(もちろん診断する側の力量にもよりますが)。ですから私はカテゴリー3の石灰化で、超音波検査に写らない場合は、経過観察とするか、少し気になる(区域性に近い集簇や密度が高い場合など)時はMRを追加して、造影されたらステレオガイド下生検、造影されなければ経過観察というようにしています。もちろん経過観察をする場合は、患者さんには十分な説明をした上で必ず定期的に来院していただくようにしています。このようにすれば、過剰診断、過剰診療と非難されることは少なくなるのではないかと思います(欧米で過剰診療が問題になっているのは、超音波検査やMRではなく、ステレオガイド下生検のやりすぎが原因ではないかと思っています)。

乳がん検診が本当の意味でもっと質の高い有用なものになり、”乳がん検診なんて受けるな”ということを公言する人がいなくなる時代が早く来て欲しいと願っています。

2017年2月13日月曜日

ワーキング サバイバーズ フォーラム 2017

昨日京王プラザホテル札幌で「ワーキング サバイバーズ フォーラム 2017」が開催されました。



今回はピーコさんが講演してくださるということで100人くらいの参加者が集まり大盛況でした。

ピーコさんは私がまだ子供の頃からTVで見ていましたので、このような機会でお会いできるのはとても嬉しかったです。ピーコさんが目の悪性黒色腫で手術を受けられたのは私が医師になった年でした。まだ十分な知識も経験もなかった頃でしたが、そのような大病をして大丈夫なのかと心配したのをよく覚えています。幸いそれから28年再発なくお元気なご様子で安心しました。

ピーコさんのお話はとても興味深く、医師として考えさせられる内容でした。今まで自分が苦手だと思っていた人からも義眼の募金をもらったことで、自分は多くの人に支えられていることに気づくことができたというお話はとても感動的でした。少し間を置きながら言葉を選びつつユーモアを交えてお話されているお姿を拝見し、ご自身の経験を多くの人に伝えたいという真摯な姿勢を伺うことができました。写真と動画の撮影は禁じられていましたのでここでご紹介することができないのは残念ですが、会場の参加者は皆ピーコさんのお話に心を打たれたのではないかと思います。

ピーコさんのご講演の後はピーコさんとがんサバイバーのお二人、そしてハローワークを担当する厚生労働省北海道労働局の方、ピンクリボンin SAPPORO代表のO先生によるパネルディスカッションが行われました。サバイバーのお二人の経験談がすべてのがん患者さんに当てはまる訳ではありませんが、かなりシビアな治療を受けつつ工夫をしながら仕事を継続してきた経験が雇用者側、患者さん側に対して何かのヒントになればと思いました。

パネルディスカッションの後は懇親会がありました。今回、私の病院関連では、患者さんが5人、看護師さんが5人参加してくれました。一緒に軽食を食べながら、他の乳がん関連の団体の方々と交流を深めることができたと思います。

がんと就労の問題を取り上げるイベントが毎年このような形で行われるのはとても大切だと思います。徐々に企業側もがんに対する意識が変わってきていると感じています。例えば乳がん検診を積極的に推奨してくれる企業が増えてきているように思いますし、がんに罹患した後のフォローも積極的に支援してくれる職場も増えてきているとは思います。ただやはり中小企業では1人欠けることが死活問題になってきますので厳しい職場があるのも事実です。パネルディスカッションでも取り上げられていましたが、そのような職場に対する金銭的、または人的な支援をスムーズに行えるような社会の構築が急務なのではないかと感じました。

2017年1月29日日曜日

Advance Care Planning(ACP)学習会

昨日、E社主催のACP学習会に行ってきました。

ACPとは何か?
簡単に書きますと、病状が進んで万が一、自分の意思表示ができなくなる前に、自身の大切にしているもの、生き方、治療内容、そして最後のケアなどについて、医療従事者、ご家族と患者さんとの間で繰り返し話し合っていくことを言います。もしご興味がある方は、広島県協議会のHP(http://citaikyo.jp/other/20140303_acp/)をご覧ください。

ACPには私たちの病院でも緩和ケア科の先生や化学療法室で取り組み始めたテーマでしたので、外来と化学療法室の看護師さんたちを誘って私とG先生とで参加してきました。

内容は、2題の講演とディスカッション。

まずはACPの国内の第1人者である広島市民病院のO先生の講演でした。O先生のお話は以前お聞きしたことがあって、私の患者さんにもACPを導入したきっかけになった先生でした。とても楽しい講演をされる先生で、多くの患者さんに慕われていることがうかがえるようなお話でした。

がん看護認定看護師のNさんの講演は、実際に経験した3人の患者さんの事例をもとに、O先生と患者さんの関わりやNさんへの繋ぎ方、そして個々の患者さんへの細やかな対応など、とても勉強になるお話でした。それとともにO先生とNさんが深く信頼し合っていることがよくわかるような内容だったと思います。やはりこのようなデリケートな内容に取り組むためにはお互いに信頼合えるチーム医療が必要であるということを再確認できました。幸い私たちの病院のスタッフはチーム医療の意識は高いですのでACPの導入によってより質の高いケアをできるようになれると信じています。今回この学習会に看護師さんたちを誘ってよかったと思いました。

講演終了後には2人の先生とのディスカッションが行われましたが、参加者の関心は高く、たくさんの質問がありました。私も質問したかったのですが、残念ながら時間切れとなってしまいました。

上でご紹介した広島県協議会のHPではACPのパンフレットがダウンロードできるようになっています。私たちの病院でも今はこのパンフレットを使用していますが、今年の前半くらいまでには私たちの病院用のパンフレットとポスターを作成しようと思っています。

2017年1月21日土曜日

患者会新年会 2017 in ”太美銘泉 万葉の湯”

今日、当別町の「太美銘泉 万葉の湯」で患者会の新年会が行われました。

例年は市内のホテルのレストランなどで行なっていたのですが、秋の一泊温泉旅行に行けない患者さんたちの要望も考慮して今回は日帰りの温泉旅行を兼ねての新年会になりました。

直前に体調を崩したり怪我をしたりで患者さん数人が来れなくなってしまい、職員もG先生が患者さんの対応で急遽参加できなくなり、N先生はお子さんの体調が悪くて欠席と予定より少なくなってしまいましたがそれでも24人が参加して楽しんできました。

ここの温泉は茶色の透明でナトリウムー塩化物・炭酸水素塩泉という泉質です。神経痛や筋肉痛、婦人病などへの効果や病後の健康回復、健康増進などの効能があります。入った印象としては炭酸水素ナトリウムが豊富に含まれているためか肌がツルツルになりましたので美肌効果もあるのではないかと思います。

食事はなかなか美味しかったです。特に天ぷらのサクサク感は最高で、久しぶりに美味しい天ぷらに出会ったような気がしました。



昼間からビールも飲んで、なんとカラオケも使い放題だったので患者さんも職員も自慢の歌を披露していました(笑)。写真は郷ひろみを熱唱する後期研修医のNA先生です。ほとんど知らない歌なのに頑張って盛り上げてくれました!



食事会終了後は、また温泉に入ったり、お土産を買ったり、休憩処でのんびりしたりして4時半すぎに温泉を出てバスで病院に帰りました。初めての日帰り温泉での新年会でしたがゆっくりできて良かったのではないかと思います。また来年に向けて患者会の幹事のみなさんと一緒に企画を練っていきたいと思います!

2017年1月15日日曜日

「ワーキング・サバイバーズ・フォーラム2017〜がんと仕事〜」

今年も「ワーキング・サバイバーズ・フォーラム2017〜がんと仕事〜」が2/12に京王プラザホテル札幌で行われます。

詳細は三角山放送局のHP(http://www.sankakuyama.co.jp/contents/2016/12/27/005282.php)をご覧ください。



このフォーラムは毎年この時期に行われている、がんと就労の問題を考えるフォーラムです。

生涯の間に2人に1人は罹ると言われているがん。このフォーラムは乳がん患者さんだけが対象ではありませんが、乳がんにおいては比較的若い年齢から発症するという点において就労の問題は深刻です。私の患者さんの中にもシングルマザーや共稼ぎでなんとか生活されている患者さんが結構いらっしゃいますのでこの問題に直面することがよくあります。

労働者ががんに罹っても安心して治療に専念できるような世の中のシステム作りが急務です。そういう意味でもこのようなフォーラムで一般の方にこの問題を知っていただくことはとても有意義なことだと思っています。

参加は上記URLのHPから、もしくは札幌市内の乳腺外来などに置いているチラシで申し込むことができます。がんで闘病中の方やご家族の方はもちろん、医療従事者、そして雇用する側の企業の管理職の方々、そしてこのような問題に関心を持ってくださる全ての方々にぜひ参加していただきたいと願っています。

2017年1月1日日曜日

新年あけましておめでとうございます!

2017年がスタートしました。

昨年は色々あって結構忙しい1年でした。全体的に見ると悪い年ではなかったと思うのですが、良い年でもなかったような気がします。

仕事納めは12/29でしたが、12/30は回診当番でしたので昨日から本格的なお休みでした。いつものように買い出しに行って大掃除をしてTVを見て年越しをしました。今朝は少し遅めに起きてご飯を食べて愛犬のもなちゃんの散歩に行ってきました(写真 雪の中で遊んだので髪の毛がボサボサ…)。



昨年の春に我が家に来たもなちゃんは、今生後10ヶ月ですが、いたずら好きで元気な女の子です。なんでも食べようとするので目が離せませんが昨年は私の疲れを癒してくれました(笑)。先日初潮を迎えたので(犬の初潮は早いんですね…)、かわいそうですがそろそろ去勢をしなければなりません。出産を考えていない場合は去勢する方が良いらしいですね。子宮の感染を起こしたり、乳がんのリスクが高くなるかららしいです。犬の一生は人間よりはるかに短いのに、その間に発がんしてしまうというのは細胞が持っている寿命というか老化のスピードが違うからなのでしょうか。不思議ですよね。

新年早々、一般人を惑わすような抗がん剤に関するネットのニュースが流されているのを見て不愉快な気分になりました。医師でありながら、論文ではなく著書や週刊誌、ネットなどを利用して持論を主張するのは如何なものかといつも思います。このようなニュースで患者さんに正しい情報が伝わらなくなるのではないかととても心配です。


皆様にとって2017年が良い年になりますようにお祈りしています。今年もよろしくお願い申し上げます。

2016年12月9日金曜日

不思議な夢と恩師との別れ

先日、おそらく私がもっとも影響を受けたであろう外科の恩師、A先生が亡くなりました。まだ60才台後半という若さでした。

A先生とは、私が診療所から戻って本格的な外科の研修を始めた病院の外科のトップでした。その後もその病院には計3回お世話になりました。A先生はオールラウンドな外科医であり、神業の手術手技をお持ちでした(決してそのことを自慢されることはありませんでしたが)。そして患者さんとの関わりがとてもお上手で、患者さんのすべてを包み込んで診て下さるような先生でしたので患者さんからの信頼も絶大でした。その後A先生が移動されても先生を慕う患者さんは病院を変えてでもついて行ったほどです。

そんなA先生の姿勢に惹かれ、強く影響を受けた私ですが、未だにA先生のようにはなれません。口数は多い先生ではありませんでしたが本当に心の広い、素敵な先生でした。

A先生が約1年前に非常に厳しい病気を発症し、S病院で手術を受けられたのは知っていました。お見舞いに行こうと思った矢先、併発症で重篤な障害を負ってしまったため、面会に制限が加わり、会いに行く機会を逸してしまいました。その後ご家族のご希望もあってリハビリと化学療法目的で私たちの病院に移られました。病状は楽観できる状態ではなく、失語や感情失禁もありましたので、面会に行きたい気持ちは強かったのですが、なかなか訪室することができませんでした。

その後徐々に病状は悪化し、10月末からはホスピスに移られたようです。そのことに気づいた先週末、朝方A先生が夢に出てきたのです。

ビルの屋上の駐車場の出入り口に立っていたA先生が、

「K君!(私のことをこう呼びます)」

と呼びかけたので、びっくりして駆け寄った私が

「先生、大丈夫ですか?お見舞いに行けなくてすみません!」

と謝罪すると、

「だから会いにきたんだよ」

とおっしゃったのです。そして

「これからA(A先生が住んでいる、以前私も住んでいた札幌の北のはずれ)に帰るんだ」

と笑っておっしゃって車で帰って行かれました。

優しいA先生は、礼を失した私を怒りもせず、笑って会いにきて下さったのです。夢の話ではありますが、A先生なら死の間際にこのような心遣いをして下さっても不思議ではありませんでしたので私には事実にしか思えませんでした。そしてその数日後に息を引き取られたのです。

昨夜はA先生を送る会が行なわれました。会場は多くの関係者でびっしりでした。A先生のお人柄がよくわかるような心温まるお別れ会でした。

私の医師人生もそう長くはありません。少しでもA先生に近づけるように日々努力しなければとあらためて思いました。