2014年9月30日火曜日

スカートサイズの増加と乳がん発症率

肥満と乳がん罹患率の関係は以前から指摘されていましたが、今回 英国University College LondonのEvangelia-Ourania Fourkala氏らはBMJ Open(2014年9月24日オンライン版)でスカートサイズの増加と乳がん発症率の関係について興味深い研究結果を発表しました。

概要は以下の通りです。

対象:英国内で実施された大規模前向きコホート試験UKCTOCSの参加者のうち、51歳以上で乳がんの既往がなく,試験登録時の質問票への回答を完了した9万2,834人(年齢中央値64.0歳 追跡期間の中央値は3.19年)。

方法:参加者は,2001~05年の研究参加への募集時と3~4年後(試験登録時)に質問票に回答。募集時の質問表は、BMI,貧困度の指標となるIMD(Index of Multiple Deprivation),初潮・閉経年齢,妊娠回数,子宮摘出術,不妊手術,不妊,乳がん・卵巣がんの家族歴,ピル使用歴,ホルモン補充療法(HRT)の使用状況など、試験登録時の質問票は、教育,スカートのサイズ,HRT,喫煙,飲酒,健康状態,研究登録後のがんなどで、これらの回答結果を元に乳がん発症リスクを解析。

結果: 追跡期間中に1.2%(1,090人)が乳がんを発症。スカートのサイズ(中央値,英国サイズ)は25歳時に12号(IQR 12~14,およそ73cm),研究登録時には14号(IQR 12~16,およそ78cm)で,10年当たりのサイズ変化は0.287(IQR 0.191~0.533)となり,これはほぼ35年間で1単位アップ(例:10号→12号,12号→14号)に相当した。スカートのサイズが10年当たり1単位アップすると,乳がんリスクが33%上昇した〔ハザード比(HR)1.330,95%CI 1.121~1.579〕。また,10年当たり2単位アップすると,同リスクは77%上昇した(同1.769,1.164~2.375)。

一方,募集時のBMI(5単位上昇ごとのHR 1.076,95%CI 1.012~1.136,P=0.009),登録時のスカートのサイズ(同1.051,1.014~1.089,P=0.006)も乳がんリスクに有意に関連していたが,最も明らかな乳がん発症の予測因子はスカートサイズの変化であった。なお,25歳時のスカートサイズは乳がんリスクに関連していなかった(同1.006,0.958~1.056,P=0.809)。


閉経後の肥満は乳がん発症率を上げることはわかっていますが、スカートサイズはそれとは別の因子のようです。こちらの方がより具体的ですので自己チェックしやすいかもしれませんね!


2014年9月24日水曜日

乳腺術後症例検討会 35 ”乳がんの放射線治療”

今日は定例の乳腺症例検討会でした。

最近の検討会では症例検討に加えてさまざまな分野のトピックの講演を行なっていますが、今日は放射線治療室の主任技師のIさんが乳腺分野の放射線治療の話をしてくれました。

私たちの施設では、昨年新病院に移動してから放射線治療を開始したばかりです。短い期間ではありますが、この1年間の症例のまとめと放射線治療の実際についてIさんがわかりやすく解説してくれました。一見画像診断とは直接関係はないお話ではありますが、画像診断領域の技師さんたちが検査・診断し、その結果に基づいて私たちが手術した標本に対して病理医が最終診断を行ない、その結果に基づいて行なう治療の一つが放射線治療ですので、その勉強をすることによって診断領域に携わるスタッフにも得るものがあったはずです。

そのあとで症例検討を行いましたが、今回も症例は3例でした。中でも1型糖尿病の既往がある患者さんに生じた境界不明瞭で後方エコーの減弱を伴っているものの、硬がんとしては内部エコーがあまり典型的ではなく、マンモグラフィでも腫瘤像を呈さなかったために糖尿病性乳腺症の可能性も考えた非浸潤がん主体の乳頭腺管がんの画像はなかなか興味深かったと思います。

来月は久しぶりに症例検討のみの予定です。来年には、画像診断の第1人者による講演会を開催できないか検討したいと思っています。今は存在価値が以前より低くなってしまった感のある細胞診の意義の再検討についてや、MRの診断についてなど、じっくり聞きたい話はたくさんあります。これからG先生やN先生とも相談したいと思っています。

2014年9月22日月曜日

”浸潤径”の真実と限界

病理結果の説明を受けた時に、”浸潤径”という言葉が出てくることがあると思います。術後標本のプレパラートを見て浸潤がんの大きさがどのくらいなのかは、予後や治療方針に関わることがありますので病理学的所見の1つの重要な要素です。

ただこの”浸潤径”の判断には注意すべき点があります。病理医が手術標本を検索する場合、通常は細かく切っても5㎜の幅です。ですからこの5㎜の幅の間にある部分は見ていないのです。つまり、たとえば”非浸潤がん”と病理診断されてもその5㎜の間に小さな(5㎜未満)の浸潤巣がある可能性は完全には否定できません。もし標本を作製する幅が1cmならさらにその可能性は高くなります。

実際、全国集計では非浸潤がんと診断されてもその再発率は0%ではありません。”非浸潤がん”と診断されて遠隔転移した患者さんは、おそらく”非浸潤がん”という診断が本当は正しくなかったということなのです(誤診という意味ではなく通常の検査の限界ということです)。ただこれは言い出すときりがないですので、私は非浸潤がんという診断を下す場合は、できるだけ5㎜以下で切り出して欲しいと病理医にはお願いしています。ちなみに当院で非浸潤がんと診断された患者さんで再発した方は今のところいません。

今日病理結果をご説明した患者さんも、術前の針生検では3本とも非浸潤がんでしたが、手術標本の病理検査では1㎜以下の微小浸潤を確認できました。全摘した標本を全割して病理医が見てくれたのでこの浸潤を確認できたのだと思います。このケースでは、少し割面がずれたら”非浸潤がん”と診断された可能性もありますし、もしかしたら浸潤径は1㎜以下ではなく、5㎜近くある可能性も0%ではないのです。このあたりが病理診断の難しいところであり、限界でもあります。

ですからもし”非浸潤がん”と病理診断された場合は、どのくらいの幅の切り出しで診断したのかは確認しておいた方が良いと思います。施設によっては最大割面のみ(1つの断面)で”非浸潤がん”と診断されているケースもあるようです。このような診断では、真の”非浸潤がん”なのかはもちろん、非浸潤がんと同等の予後なのかどうかも判断するのは難しくなります。

2014年9月14日日曜日

乳癌学会北海道地方会終了!

昨日、札幌医大大講堂で第12回乳癌学会北海道地方会が行なわれました(写真)。



私は2番目のセッションの座長だったため、朝早くから会場に向かいました。ちょっと早く着いてしまったので札幌医大前にある”南蛮屋”といういつも行く喫茶店に寄って今月のコーヒーを飲んできました。ここのコーヒーも食事もなかなか美味しいです(笑)。

肝心の座長は時間がきつきつだったために用意してきた演者への質問を十分にすることはできませんでしたが(けっこうフロアからの質問やコメントが活発でした)、なんとかそれほど時間延長することなく終えることができました。

私たちの施設からはG先生とN先生が演題を出していましたが、2人ともつつがなく終了!その他の演題も活発な議論が行なわれ、教育セミナーやランチョンセミナーも勉強になりました。

これでここのところずっと続いていた週末のイベントは一段落です。なにもしないままいつの間にか夏が終わってしまいました(泣)。年々時間が経つのが早くなってきています。もたもたしているとまた雪の季節がやってきますね。嫌だなあ…。

2014年9月7日日曜日

「ピンクリボン in SAPPORO 2014」終了! 会場に謎のニワトリ出現!

今日、大通のホコテンで「ピンクリボン in SAPPORO 2014」のイベントが行われました。今朝起きると雨が少し降っていて心配されましたが、なんとか雨は降らずに無事イベントは行われました。

今年も私たちの病院で啓発活動のブースを出させてもらうことになったため、おそろいのピンクのTシャツを着て事務職員3人、看護師2人、技師2人(うち関連病院1人)、医師3人で参加してきました。

今回は、昨年も展示した触診モデルに加えて、ここで何度かご紹介したG先生お手製の超音波検査用の人工乳房を使ったエコー体験も行ないました(写真)。



けっこう多くの方がブースに立ち寄って下さり、触診モデルに触れてもらいながら自己検診方法を説明したり、N技師長が超音波検査について説明しながら超音波検査の画像を見てもらったり、来場者にも実際にプローブを握ってしこりを探してもらったりということをしてもらいました(写真)。



そして健診課の課長と看護師が頑張ってくれたおかげで100部作成した乳がん検診の啓発パンフレットを全て配布することができました。昨年はブースに来た人たちだけに渡していましたが、今回は歩道で積極的に配ったため、最後は足りなくなるほどでした。来年はもっとたくさん作っても良いのではないかと思います。

ステージでは、今年もグル―ヴィン・ハード・ジャズ・オーケストラによるライブ、創成高校太鼓部による和太鼓の演奏、札幌西ロータリークラブによる合唱などが行なわれ、たくさんの観衆が集まって下さいました。だいどんでんのイベントで人出が多かったためか、例年以上に盛り上がったのではないかと思います。

このステージを盛り上げるのに一役買ってくれたのは、関連病院の検査主任のEさんです。Eさんは、以前ママチャリレースでも大人気だったニワトリのかぶり物でずっと参加してくれました。開始前には創成高校の生徒たちに囲まれて記念写真を撮ったり(写真)、子供たちに愛想を振りまきながら握手をしたり、若い女性に写メをせがまれたり、勝手に(笑)ステージに上がって踊ったり(写真)、一番の大活躍でした!



あっという間に予定時間が終わってしまいましたが、とても楽しく充実した一日でした。今日、たまたま通りかかった方の中で1人でも多くの方が御自分の乳房に関心を持って検診を受けてもらうことにつながったらとてもうれしいです。

このイベントを企画、運営して下さった三角山放送局を中心としたピンクリボン in SAPPOROの皆さん、会場設営、事務局運営などに関わってくれたボランティアの皆さん、協賛企業の皆さん、ステージ発表&ブース出展の皆さん、そしてボランティアで参加してくれた病院職員のスタッフのみなさん、お疲れさまでした!

2014年9月6日土曜日

Sapporo Oncology Board〜乳がん肺転移切除症例のまとめ

昨日AZ社主催で不定期に行なわれている再発治療に関する小規模の研究会(Sapporo Oncology Board)が行なわれました。

今回の担当は私たちの施設だったので、G先生にかなり前から発表をお願いしていました。依頼があった時は、私は研究会の司会や症例提示が続いていたためにG先生にお願いしたのですが、ここ数週の間、仕事が重なってG先生は超ハードな状態となってしまいました。でも急に担当を変更することもできないのでG先生には寝不足の中、直前までスライドを手直しして頑張ってもらいました。

今回発表したのは、当院における乳がん術後肺転移の手術症例についてのまとめです。詳細は書きませんが、バイアスがかかっているにしてもなかなか良好な成績でした。肺転移術後の最長生存は18年で、現在もまったく再再発なくお元気に通院されています。他院で乳がんの肺転移と診断され、当院の緩和ケアに紹介された症例が、実は原発性肺がんだったというケースもありますので(結局当院呼吸器外科で手術をしました)、単発の肺腫瘤の場合は、確定診断の意味も含めて切除することも検討して良いのではないかと私たちは考えています。

参加者は10人前後の小さな会ですが、その分自由に発言できてとてもアットホームな雰囲気で行なわれています。エビデンスを踏まえた上で、エビデンスだけでは不十分な領域についてお互いの経験を共有しながら勉強するというところが普通の研究会にはない面白いところです。今度いつできるかわかりませんが、できるだけ参加したいと思っています。

明日は大通でピンクリボンイベントです。天気は良さそうですので多くの方が立ち寄ってくださることを期待しています。

2014年9月3日水曜日

9/7はピンクリボンイベントです!

先日ここでもご紹介しましたように(http://hidechin-breastlifecare.blogspot.jp/2014/08/in-sapporo-2014.html)今度の日曜日の13:30から札幌市中央区南3西4の大通のホコテンでピンクリボンイベントが行なわれます。

私たちの病院でも昨年と同様にブースを出店して啓発活動を行なう予定です。今日、院内でその打ち合わせが行なわれました。

今回の参加者は、医師3人、看護師2人、検査技師2人、事務2人の予定です。今年は昨年同様の触診モデルに加えて、G先生の力作のエコーでしこりを見る人工乳房を置く予定です。マンモグラフィで診断するのが難しい若年者などに対する超音波検査の有用性についてアピールするつもりです。

また、今回はブースで待つだけではなく、歩道に積極的に出て啓発パンフレットを配る予定です。私たち病院スタッフは昨年同様ピンクのTシャツを着て参加しますが、1人だけ変な着ぐるみを着てパンフを配ってくれる予定です。中に入るのは以前ママチャリレースでも着ぐるみを着てくれた(http://hidechin-breastlifecare.blogspot.jp/2010/06/10hokkaido.html)関連病院の検査技師のEさんです!今回は自ら協力を申し出てくれました(笑)もしホコテンで見かけたら声をかけてあげて下さいね!