2014年12月24日水曜日

”ワーキング・サバイバーズ・フォーラム2015〜がんと仕事〜”告知

来年もまたがん患者さんの就労問題について考える”ワーキング・サバイバーズ・フォーラム〜がんと仕事〜”が開催されます。

日時は、2015.2.11(水)(祝日) 14:00-16:00(受付開始13:00)で、会場は京王プラザホテル地下1階プラザホールです。詳細ピンクリボン in SAPPOROのHP(http://pinkribbonsapporo.web.fc2.com/)をご覧下さい。

私は昨年、一昨年と参加しています。昨年は私一人だったので今回はスタッフを引き連れて参加したいと思っています。けっこう勉強になりますし、演者の皆さんのお話もなかなか面白いですので興味がある方は是非HPの申し込みフォームに記入してご参加下さい。

今日の札幌は朝からずっと雪です。今はまるで舞台の紙吹雪のような大量の雪が降り注いでいます。明日は絶対雪かきが必要です。除雪が入らないと車を出せないかもしれません…。出勤できるか不安です(泣)。

2014年12月17日水曜日

インフルエンザ発症…病気になりやすい人となりにくい人

息子が先週の木曜日にインフルエンザになり、まずいなあと思っていたら土曜日から鼻水、頭痛、筋肉痛が始まり、日曜日からは腰痛の悪化と咳、そして夜に発熱してしまいました。

月曜日の朝に出勤したその足で救急外来に行って検査すると”インフルエンザA陽性”…。やはり息子のが移ってしまったようです。

今年のワクチンははずれなのでしょうか?でもなぜか私はワクチンを接種しても毎年のようにインフルエンザになります。息子も比較的かかりやすいです。一方、妻と娘は同居しているにも関わらず、めったにインフルエンザにはかかりません(記憶にある限り、1回くらい?)。今年はワクチンを接種した2人がインフルエンザになってしまい、ワクチンを接種していない2人が今のところ無事です。不思議ですね(苦笑)。

がん化のメカニズムのすべてがわかっているわけではありませんし、それも1つや2つではなく、たくさんの要因があると考えられています。たとえばヘビースモーカーでも肺がんにならずに100才まで生きる人もいますし、ノンスモーカーなのに肺がんで命を落とす人もいます。未婚、未出産でも乳がんにならない人はたくさんいますし、子だくさんでも乳がんになってしまう人もいます。

今回インフルエンザにかかって感じたのは、病気の要因があったとしてもそれに弱い人も強い人もいるということです。病気になりやすい人の研究は今でも盛んにされていますが、その病気になりにくい人の抵抗性のメカニズムを研究することも病気の発症の予防につながるのではないかと思いました。たとえばBRCA1、2の変異があると高率に乳がんを発症しますが、変異があっても発症しない人もいます。そういう人はなんらかのがん化を抑制する免疫機能を有しているのかもしれません。単なる確率の問題かもしれませんがそういう観点から研究するのももしかしたら意義があるのかもしれませんね。

まだだるさと腰痛は残っていますが私のインフルエンザは昨日の午後の発熱を最後に収束に向かっています。解熱後48時間は出勤停止なので金曜日から出勤予定です。今回の騒動でG先生とN先生には大変迷惑をかけてしまいました。特に今日はN先生も休暇を取っているのでG先生1人で頑張ってくれています。そして火曜日の関連病院の外来と明日の乳腺外来もお休みしなければならず、患者さんたちにも連絡をしてくれた看護師さんたち、そして代診のH先生にもご迷惑をおかけしてしまいました。申し訳ない気持ちでいっぱいです。どうしたらインフルエンザにならない体質を作ることができるのでしょうか…(泣)。やっぱり体力作りからですかね。最近運動不足なので雪かきがんばります!

2014年12月12日金曜日

新病院移転後の乳腺外来

昨年5月に新病院に移転してから1年半が経過しました。乳腺センターでは、かかりやすい外来を目指してそれまでの週3単位(2日)の乳腺外来から週6単位(5日)に外来枠を増やしました。

当初は日によってばらつきが目立ち、少ない予約日もありましたが、時間とともに安定した患者数になってきました。特に最近目立つのは、新患の有症状患者さんや他院からの紹介の患者さんが多くなったことです。私の外来にもここのところ毎週のように乳がんを疑う新患の患者さんが受診しています。検診精査の患者さんも増えていますのでけっこう忙しい外来になっています。

こんなのは私の外来だけかと思っていたらG先生もN先生も同じような状況のようです。おかげさまでここのところ安定した手術件数を確保できています。今年の手術件数は、途中落ち込みがあったので心配しましたがなんとか昨年と同じくらいまでには回復しそうです。来年はこのペースでもっと患者さんに来ていただけるような病院にしたいと思っています。

2014年12月11日木曜日

例年より早いインフルエンザ流行期

最近外来でインフルエンザワクチンを希望する患者さんが増えています。いつも年明けくらいから本格的な流行を迎えるインフルエンザですが今年は少し例年とは違うようです。

私の勤める病院ではすでに11月後半からインフルエンザの患者さんが出始め、市内の学校でも学級閉鎖になるようなところも出てきているようです。どうして今年のインフルエンザの流行が早いのかはよくわかりませんが、ワクチン接種から免疫獲得までは2週間ほどかかり、持続期間は3-6か月程度と言われています。ワクチンを接種しても間に合わない方が今年は多いかもしれません。

実は今日、私の息子もA型のインフルエンザを発症してしまいました。ワクチンを接種したのはちょうど1週間前で残念ながら間に合わなかったようです。ただ今のところ熱は38℃くらいまででおさまっており、タミフル内服後は落ち着いています。私はもう1ヶ月くらい前に接種しています。今年のワクチンが有効かどうかは私が発症するどうかでわかるかもしれません(汗)。

基礎疾患のある方(慢性肺疾患や心疾患、糖尿病など)や高齢の方、乳幼児は重篤になりやすいので注意が必要です。もし疑わしければ早めに受診するようにして下さい。ただ発熱後24時間は検査が陽性に出ないこともありますので、発熱後すぐの検査が陰性でも高熱が続くようでしたら再検査を受けるようにして下さい。

2014年12月10日水曜日

アルコール過敏症と発がん

先日、外来に来た患者さんに、”私はアルコール過敏症なんですが、アルコール過敏症の人がお酒を飲むとがんになりやすいと聞きましたが本当でしょうか?”と質問されました。

以前ここでも書いたことがありますが(http://hidechin-breastlifecare.blogspot.jp/2010/01/blog-post_06.html)乳がんはアルコール過剰摂取が1つのリスクとされていますし、他に食道がんなどもかなり前から飲酒がリスク因子と言われているのは知っていました。しかしアルコール過敏症の方はすぐに赤くなって酔ってしまうため、飲めない方がほとんどだという認識でしたし、実際そういう質問をされたことはありませんでしたので、そのことについての十分な知識は持ち合わせていませんでした。

しかしその方は、”アルコール過敏症だけど、どうしても毎日の晩酌はしたい”ということでしたので、調べてみることにしました。

アルコールで発がんする原因の1つは、アルコールの代謝産物であるアルデヒドにあると考えられています。乳がんに関してもこれが原因かもしれないと以前に書きましたが、アルコール自体の女性ホルモンに対する影響が原因ではないかと今は考えられているようです。他に肝臓がんもアルコール自体の影響が強いようです。

一方、有害なアルデヒドを分解する酵素活性が生まれつき欠如または低下している人(日本人に約40%いると言われているのでアルコール過敏症の多くはこの可能性があります)の割合を調べた疫学研究では、食道がん(オッズ比 12.50)、頭頸部がん(同 11.14)、胃がん(同 3.49) 、大腸がん(同 3.35)、肺がん(同 8.20)においてこの遺伝子型を持つ人の割合が高かったという報告がされています(Yokoyamaら 1998)。それぞれのがん患者さん全体におけるこの酵素活性の低下がある人の割合は、非がん患者さんにおける割合よりもこれだけ高かったということですので、アルコール代謝産物のアルデヒドを代謝できないことがこれらの発がんに関与していた可能性が高いと推測されるということのようです。

これらの酵素活性が欠如または低下しているかどうかを判断するのは、もちろん血液検査をすることでも調べることはできますが(SRLで「アルデヒドデヒドロゲナーゼ2(ALDH2) 遺伝子多型解析」という検査ができるようです)、
「現在、ビールコップ1杯程度の少量の飲酒ですぐ顔が赤くなる体質がありますか。」
「飲み始めた頃の1-2年間はそういう体質がありましたか。」
の2問のいずれかに「はい」と答えれば2型アルデヒド脱水素酵素が弱いタイプと判定する”フラッシング質問紙法”で約90%の精度で推測することができます。

患者さんに質問されたことでとても勉強になりました!

2014年12月7日日曜日

D病院の忘年会

昨日はD病院の忘年会にご招待を受けたので参加させていただいてきました。D病院はいつも乳房再建でお世話になっている(プライベートの飲み友でもあります)E先生のいらっしゃる病院です。昨年もご招待を受けたのですが、私の病院の忘年会と重なり欠席してしまったので、今年も実は同じ日だったのですが、今回は自分の病院の忘年会を欠席してD病院の忘年会に参加したのです。

私は医師になってから東京のG病院にいた1年間以外はずっと同じ系列の病院にいましたので、他の病院の忘年会がどんな感じなのかは知らなかったのですが、やはり病院によってかなり違うものなんだということがわかりました。

私の病院は、セクションで出し物(仮装して歌ったり踊ったり、寸劇をしたり、面白いビデオを作ったりなど)を出して賞を競う大演芸大会が恒例イベントとなっており、ほとんどこれに追われてしまいます。参加すると楽しいのですが、ゆっくり飲んだり食べたり話したりということができません。またこんな感じなのでけっこうラフな格好で参加することが多いのです。

一方D病院の忘年会は、男性はほとんど全員スーツ着用(私もスーツにしておいて良かったです…汗)で出し物はなく、豪華な抽選会だけでした。その分、参加者はゆっくり飲食ができますし、テーブルを回って挨拶したり歓談したりという時間が十分に確保できていました。こういうのがきっと普通の病院の忘年会なのかもしれませんね。おかげでいつもお世話になっているH理事長や来賓でいらしていた先生方、D病院の外科の先生方、そして職員のみなさんと楽しくお話しすることができました。

一次会終了後はそのまま同じホテルの別室で立食のPartyがあり、ここではE先生と一緒に形成外科を支えているI先生とゆっくりお話しすることができました。そしてその後は、E先生とI先生、N病院のO先生はじめ7人ですすきのに移動してワインを飲みながら遅くまで楽しい時間を過ごしてきました(やっぱり今朝は二日酔いでふらふらでした…汗)。来賓という立場上、写真を撮ることができなかったのは残念でしたが、とても楽しい、そして普段なかなかお会いできない方々と交流することができた貴重な機会でもあった忘年会でした。

今日の札幌はすっかり雪景色…。もう師走ですね。年賀状書かなきゃ…(汗)。

2014年12月4日木曜日

中間期乳がんをなくすことは可能か?

現行の乳がん検診は2年に1回の視触診とマンモグラフィということになっていますが、きちんと定期的に検診を受けていたのにその間でしこりを自覚して受診されることが稀にあります。このようにして発見された乳がんを”中間期乳がん”と言います。どうしてこのようなことが起きるのかについては以前ここでも書きました(http://hidechin-breastlifecare.blogspot.jp/2010/04/100.html)。

明らかな見落としは別として、やむを得ないケースというのは時にあります。中間期乳がんに遭遇すると、非常に心が痛み、すぐに前回の検査所見を確認します。最近経験したケースでも前回のマンモグラフィを確認しましたが、やはりその目で見てもまったく病変を指摘することはできませんでした。この方は40才台で、乳腺濃度も高めの方でしたので、超音波検査を併用していたらもしかしたら病変を指摘できたかもしれません。そういう意味では、現在行なわれているJ-STARTの臨床試験結果が待たれるところです。

また数年前に、やはり検診マンモグラフィで異常がなかった(厳密に言うと石灰化はわずかにありましたが異常と取るだけの所見がありませんでした)方が、1年も経たないうちに無料クーポンが届いたので検診を受けたケースがありました。普通なら、こんな短期間で検診を受けるのはあまり意味がないと考えるところですが、この方はその短期間のうちに石灰化が明らかに増加していて、結果的に乳がん(浸潤がん)と診断されたのです。たまたま来たクーポンで救われたケースでした。もしクーポンが来なかったらおそらく中間期乳がんとして診断されていたのではないかと思います。

こう考えると検診で全ての乳がんを早期発見するのは簡単ではないことがわかると思います。それをカバーするために自分でできることは、定期的な自己検診くらいしかありません。あとはエビデンスはありませんが、自己負担で超音波検査の併用、マンモグラフィを間の年にも受ける、などでしょうか。MRや乳腺専用のPET(PEM)なども有用かもしれませんが、費用や所要時間などの点で一般用の検診としては問題がありそうです。

今以上に精度の高い検診システムが開発されて、中間期乳がんがなくなるような時代が来ることを願っています。

2014年11月26日水曜日

乳腺術後症例検討会 36 ”乳腺疾患のMRI診断”

今日は定例の症例検討会でした。院内外の医師、放射線技師、超音波技師が集まって行なわれているこの会ですが、最近では製薬会社のMRさんや医療機器メーカーの業者さんや販売業者さんまで参加してくれるようになりました。MRさんはけっこう前からC社の方が参加してくれていましたが、今日新たにK社の方も参加してくれました。せっかくですので少しでも勉強になってくれたらうれしいです(笑)。

今日はまずG先生による”乳腺疾患のMRI検査”に関する講演がありました。MRの基礎的な話から撮影体位、画像の種類、私たちがMRを行なっている目的、そして診断に至るまで、医師以外の方にもわかりやすいような内容の話をしてくれました。

その後はいつものように症例検討を2例。1例目は画像的には線維腺腫でも良いような感じでしたが、結果的には充実腺管がんでかなり広範囲な乳管内進展を伴っていた症例、2例目は検診で精査となり、超音波検査とMRIでは非浸潤がんを疑った多発末梢性乳管内乳頭腫に乳腺症が加わっていた症例でした。

今回で年内の症例検討会は終了です。来年は道外から演者を招いて製薬会社と共催で講演会を行なう計画を立てています。単なる画像診断に留まらず、乳腺疾患の診断、治療に関する勉強の場になればと考えています。

2014年11月25日火曜日

ついにジーラスタ®発売!

既報(http://hidechin-breastlifecare.blogspot.jp/2014/11/blog-post_7.html)の通り、本日付けで持続型G-CSF製剤のジーラスタ®が薬価収載されました。11/28発売とのことです。

気になる薬価は、1筒(3.6mg)で106,660円!非常に高額です(汗)前回懸念していたDPC病院における持ち出しの問題に関しては、当面DPC包括外(出来高算定)ということになりましたので入院で行なっても病院の持ち出しにはならないようです(その分当然患者さんの負担にはなってしまいますが高額医療費でカットされる場合もあります)。

いま進行乳がんでFEC100投与中の患者さんも初回の投与で発熱性好中球減少症を発症してしまい、扁桃炎も併発したためけっこう通院を要してしまいました。2回目は2次予防として通常のG-CSFを外来で連日のように投与してなんとか乗り切っているところです。ジーラスタが使用できるようになれば1回外来で投与すればこんなに通院しなくてすむようになります。発熱した患者さんにとっては恩恵が大きいと思います。問題は全例に一次予防としてジーラスタを投与するかどうかですが、費用のこともありますので患者さんとの相談も必要かもしれません(個人的には全例使用してあげたいのですが…)。

副作用がないわけではありませんが、欧米ではいままでかなり実績のある薬剤ですので有用性は確立しています。今まで一次予防が保険適用外だったためになかなか使えなかったレジメン(TACやDose dense ACなど)が使えることにもつながるかもしれません。

まずは副作用に注意しながら来月から使用してみたいと思います。

2014年11月16日日曜日

患者会温泉1泊旅行 2014 in 小金湯温泉

毎年恒例の患者会温泉旅行から帰ってきました。今年は定山渓温泉の手前にある小さな温泉郷の小金湯温泉で行なわれました。1泊での温泉旅行は今回で5回目です(定山渓温泉→朝里温泉→ニセコ昆布温泉→定山渓温泉→小金湯温泉)。今回は日程がなかなか決まらず、いつもより遅い時期になってしまったこともあって参加人数が少なくなりそうでしたが、それでも患者さんと職員、25人で行くことができました。

一昨日から雪に見舞われた札幌でしたが、比較的順調に到着することができました。いつもは宿に行く途中や到着してから観光をするのですが、ここの温泉の周囲には歩いて行けるような場所はあまりなく、そして外はとても寒かったので温泉宿でのんびり過ごすことになりました。

温泉に浸かってからは、いつものように楽しい宴会が始まりました(写真)。

ビンゴゲームの後はカラオケ大会になりましたが、宴会時間は2時間だったため、あっという間に終わってしまいました。写真は、G先生とデュエットする患者会のUさん、そして松田聖子の「夏の扉」を熱唱する化学療法室のO主任と横で踊る関連病院のベテラン看護師のMさん…みんな楽しそうでした(笑)。


宴会終了後は、これも恒例の私たちの部屋に集まっての二次会。飲みながら楽しく会話したあとは、G先生ご持参のカードゲームで1:30くらいまで盛り上がりました(汗)。写真は、ゲームに負けた人が罰ゲームのカードを引いて、そのカードに書いてある通りの変なポーズをしているところです(患者会会長のHさんと医事課課長のNさん)。


今朝は朝風呂に入って美味しい朝食を食べてからバスで病院まで帰ってきました。今回は体調を崩す人もいなく、とても楽しい時間を過ごすことができました。来年はどこになるのかまだ決まっていませんが、できればもう少し早い紅葉の時期に行きたいと思っています!

2014年11月11日火曜日

男性乳がんの特徴と遺伝性乳がん

最近、当院2例目の男性乳がんを経験しました。一般的には全乳がんの1%が男性と言われていますが、実際はもっと少ない印象です。日本乳癌学会による2011年度の年次報告では、男性の比率は0.5%でした。

以前は男性乳がんは予後不良と言われていましたが、実際は病期や年齢をそろえると女性とそれほど変わらないとする報告が多いようです。男性の場合は、そもそも乳がんになると思っていないことやすぐに皮膚や胸壁に浸潤しやすいなどの特徴によって進行してから診断されるケースが多いことが予後不良と言われることにつながったようです。

治療は女性と同様にまずは手術です。乳輪から離れた部位に発生した場合は乳頭・乳輪を残すこともありますが、ほとんどは乳房全摘術が必要になります。腋窩リンパ節に関しては、男性を対象としたセンチネルリンパ節生検のデータはありませんが、実際は男性に対しても行なわれているようで、今のところその成績はあまり問題なさそうです。今回の症例もセンチネルリンパ節生検を行なって転移がなかったため腋窩を温存することができました。15年くらい前に経験した患者さんは腋窩リンパ節転移がありましたので郭清しましたが、今もお元気に通院されています。

術後の補助療法も女性と同様に判断します。ただアロマターゼ阻害剤は、精巣からの男性ホルモンを抑制しなければ効果が期待できないと言われているためホルモン療法はタモキシフェンを使用します。化学療法のレジメンは女性と同様です。

最近、遺伝性乳がんが話題になっていましたが、男性乳がんの方が家系にいる場合は遺伝性乳がんの遺伝子変異を持っている可能性があります。もし家系内に男性乳がんの方がいて自分が乳がんと診断された場合は、遺伝性乳がんのカウンセリングを考慮する必要があります。

2014年11月7日金曜日

もうすぐ”ジーラスタ®”が発売?

先日書きましたように(http://hidechin-breastlifecare.blogspot.jp/2014/10/g-csf.html)発熱性好中球減少症(FN)を予防する持続型G-CSF製剤の”ジーラスタ®”が近日中に発売になります。おそらく今月末くらいには使えるようになるのではないかと思いますが、まだ薬価収載されていませんので値段は不明です。

がん種やレジメンのしばりはありませんが、ガイドラインに基づくとFNの発生率が20%以上、または10-20%で高リスクの患者さんということになりそうです。乳がん領域においては、私の施設ではFEC100がFN 34%、TCが80%でしたのでジーラスタの適応と考えています。

問題になるのはジーラスタが高価であること、DPC病院では入院で化学療法を行なうとコスト請求できないので病院の持ち出し(病院が薬剤費を全額負担すること)が増えることです。大きな病院ではFEC100やTCは初回から外来で行なう場合が多いと思いますが、私たちの施設では今まで患者さんの不安軽減のために初回導入は入院で行なうことが多かったのです。この間、乳腺センター会議などで検討してきて、最終的にこれらの化学療法を外来で導入し、一次予防としてジーラスタを併用することにしました。

強力な制吐剤を併用しますので実際に嘔吐する率は非常に低くなっていますから、自宅での対処法をきちんと説明しておけば初回からの外来導入は問題はないと思います。抗がん剤でもっとも問題になる骨髄抑制(好中球減少など)は抗がん剤投与後10-14日くらい(FECの場合)に起きますので、これをジーラスタで予防してあげれば患者さんの負担を軽減できることが期待されます。

先日FEC100を初回投与した患者さんも好中球が100以下になって発熱してしまいました。扁桃の発赤もあって心配だったため連日来ていただきましたが、ようやく無事軽快しました。ジーラスタを使えれば、こんな心配も少なくなくなるのでしょうか?2回目は今月中なので3回目からはおそらくジーラスタを併用できそうです。発売されたらすぐに使用できるように、今日、薬剤部に新規採用の申請書を提出しておきました。

副作用はもちろんありますが(反応による発熱、関節痛、発疹など)、FNによって抗がん剤を減量せざるを得ないというリスクも少なくなりますし、入院や頻回の通院の負担も減りますのでジーラスタの効果に期待したいと思います。

2014年11月3日月曜日

なかなか減らない進行乳がん…

今朝から強風が吹き荒れています。日中はみぞれや所によっては雪も降っていた札幌ですが、明日の朝にかけては積雪するとの予報でしたので慌てて冬タイヤに交換してきました。もし積雪してしまったら車では出勤できないので田舎暮らしの私にとっては大変なことなのです(汗)。

今年ももう11月ですね。あっという間に1年が終わってしまいます。年々増加傾向にある乳がんですが、これだけ乳がん啓発活動を盛んに行なってきても、今年も進行乳がんで受診された患者さんがかなり多かったような気がします。

受診が遅れた理由はさまざまですが、「もっと正しい知識があれば…」「金銭的な不安がなければ…」「家族に対する心配がなければ…」もっと早く治療に取りかかることができたのに、という患者さんを見るととても切なくなります。乳がんに対する正しい知識の普及、経済的弱者や子育て世代・介護者への社会的サポートがあればこれらの方々はきっと早く受診することができたのではないかと思うからです。

一方、どれだけこちらが努力しても医療自体に対して拒否的な患者さんもいらっしゃいます。こういう方に対しては私たち医療従事者は無力です。もし将来、切らずに髪の毛も抜けずに放射線も浴びずに乳がんを治せる時代が来ればこのような方はなくなるのかもしれませんが…。まだまだしばらくは難しそうです…。

今月半ば締め切りのピンクリボン関連の冊子の原稿がようやく書き終わりました。と言っても内容に悩んで2つ書いてしまったので、どちらにするかもう少し考えてから送ろうかと思います。

そろそろインフルエンザも出てくる季節です。皆さん、体調管理には十分に気をつけましょう(と言いつつ私も風邪気味です…汗)。

2014年10月25日土曜日

”乳腺を語る会1”

昨日の夕方、以前超音波研修に来てくれていたKT病院の先生たちからお誘いを受けた”乳腺を語る会”という症例検討会にN先生と初めて参加してきました。

この会は、H大第2外科出身の先生方が中心になって開催されている会ということでした。第2外科は卒業前に最後まで入局を迷っていた医局だったこともあり(結局奨学金の関係もあって今の病院に就職しました)、また同期の乳腺外科医のS先生やKT病院の先生方もいらっしゃるので参加できるのを楽しみにしていました。

症例検討会は、論文にできそうな非常に珍しい症例や、やっかいな併存症があるために化学療法ができず病状のコントロールに悩む症例などが提示され、とても勉強になる会でした。大先輩の先生方もいらっしゃったので最初は大変緊張していましたが、アットホームな雰囲気だったのと、あまりに興味深い症例だったので何度か発言させていただきました。

1時間半くらいで症例検討は終了し、お誘いを受けたのでそのまま懇親会にも参加してきました。ここでもこの会の中心になっているTK病院のN先生やK先生たちと楽しい時間を過ごすことができました。いろいろな先生方の考え方を聞くことは自分自身にとってとても勉強になります。また機会があれば参加させていただきたいと思っています。

2014年10月20日月曜日

J.M.S終了! ファイターズも…(泣)

昨日は、J.POSHの呼びかけで毎年10月に行なわれているジャパン・マンモグラフィ・サンデーでした。

G先生が本院、N先生は釧路の系列病院、私は市内の関連病院でそれぞれ検診を行ないました。一番盛況だったのは釧路で、女性のみで行なわれる検診という評判もあってすぐに定員に達してしまうほどだったようです。本院も無料クーポンの影響か定員をオーバーしていたようです。

私が担当した関連施設はと言うと、平日の検診はこれでもかというほどの多さで(本院よりも検診数は多いのです)、毎週の読影が大変なのですが、この日曜検診に関してはまったく事前のアピールをしておらず、定員に達しないままで終わりました。私としては非常に楽だったのですが、あれだけ平日に無理やり検診を組み込んでいるのにどうして?という感じでした。せっかく日曜日に体制を取るのですから病院としてきちんとアピールするべきではないかと検診課の責任者には言っておきました。この関連施設は以前から本当に経営を改善する気があるのかと思わせるような疑問を抱いていたのですが、今回もその通りの結果でした。来年はきちんと事前の準備をしてもらいたいものです。

で、今日はクライマックスシリーズの最終戦。残念ながらファイターズは負けてしまいました…泣。でもレギュラーシーズン3位から最終戦まで持ち込んだことは、きっと選手たちの財産になったことでしょう。稲葉、金子選手(2人とも大ファンでした)の勇姿が見れなくなるのは寂しいですが、来年はヤングファイターズが今年以上の活躍をしてくれることを期待しています。そしてファイターズは負けはしましたが、どこのチームのファンであったとしても今年のパリーグのクライマックスシリーズはとても面白かったと思います。クライマックスシリーズに関しては賛否両論あるかと思いますが、少なくとも今年は最高に盛り上がったのではないかと私は思います。日本シリーズはファイターズは出ませんが、プロ野球ファンとして楽しみたいと思います!

2014年10月19日日曜日

持続型G-CSF製剤”ジーラスタ”の講演会

昨日、病院薬剤師のSさんと協和発酵キリンの講演会に参加してきました。

抗がん剤治療の副作用のうち、比較的高頻度に発生し、重篤化する可能性のあるものの代表が発熱性好中球減少症です(好中球は白血球の中で細菌と直接闘う代表的な血球です)。好中球の減少に対しては、かなり以前からG-CSF(顆粒球コロニー刺激因子)製剤(グラン、ノイトロジンなど)が使用されてきましたが、日本での適応は好中球が減少してからということになっていました。しかし実際には好中球数が下がってしまってからG-CSFを使用してもあまり効果的ではないことが以前から海外では報告されており、下がる前から投与する予防投与が有効とされています。しかし日本では予防投与は保険適用外でしたのでなかなか有効的にG-CSFを使用することができていませんでした。また、従来型のG-CSFは効果時間が非常に短いため、連日投与が必要でした。ですから外来化学療法を行なうことの多い乳がん領域では患者さんの負担が大きいという問題もありました。

そこで開発されたのが、Ⅰクール毎に1回投与(抗がん剤投与後24-72時間以内に1回皮下注)するだけで連日投与とほぼ同じ好中球減少予防効果のある持続型のG-CSF製剤”ジーラスタ(協和発酵キリン)”で、先日製造販売認可が下りました。発売はもう少しかかりますが年内には使用できそうです。昨日はその関連の講演会でした。

保険適用にはがん種やレジメンの細かい制限はないようですが、最新のガイドラインを参照するように書いてあります。日本でも久しぶりに”G-CSF適正使用診療ガイドライン”が改訂されましたが(http://www.jsco-cpg.jp/guideline/30.html#g03)、発熱性好中球減少症(FN)の発生率が20%以上のレジメンに対しての予防投与が推奨グレードA、10-20%のレジメンが推奨グレードBとなっています。前者はTAC、dose-dense AC-Tだけですが、ともにあまりに副作用が強いために特にG-CSFの予防投与ができない日本ではほとんど使われてこなかったレジメンです。後者にはTC、ACなどが含まれます。FEC100は日本人では20%というデータがありますが、海外では10%未満という低い数値になっています。なお、国内の臨床試験のデータではTCのFN発生率は60%以上でしたので前者に変更になる可能性があります(FNの発生率は臨床試験によっては抗生剤を予防投与しているケースもあるため、判断には注意が必要です)。私たちの施設でもFEC100とTCのFN発生率は20%を大きく越えています。

問題点の1つは、ジーラスタはかなり高額であること(10万以上?)です。入院で投与する場合、DPC病院ではこれらの薬剤費を算定できませんのですべて病院の負担になってしまいます。また、関節痛や背部痛、発熱、間質性肺炎などの副作用も一定みられます。

今後発売までにジーラスタの適応について乳腺センター内で検討する予定でいますが、FNで緊急受診、入院するリスクが減ることは患者さんにとってはもちろん、私たちにとってもうれしいことです。

2014年10月17日金曜日

新たなHER2陽性乳がん治療薬が開発中!

トラスツズマブ(ハーセプチン®)の登場以降、飛躍的に予後の改善が見られたHER2陽性乳がんですが、その後もラパチニブ(タイケルブ®)、ペルツズマブ(パージェタ®)やT-DM1(カドサイラ®)などの薬剤が登場しています。

そして先日の日本癌治療学会の招待講演を行なったスタンフォード大学のMark D.Pegram氏によると、さらに新しい機序によるHER2陽性乳がんの治療薬が開発中とのことです。

①Fc最適化抗体(Fc engineered antibody): MGAH22(Margetuximab)
詳しい作用機序は難しすぎるので省きますが、抗体のFc領域を修飾しADCC(Antibody-Dependent-Cellular-Cytotoxicity:抗体依存性細胞傷害)活性を強めることによって抗がん作用を呈するようです。これはHER2が低発現(1+や2+)でも効果がみられるということで今までにない抗HER2薬として期待できそうです。
第I相試験の結果はASCO 2014で発表されましたが、MGAH22は乳がんをはじめ大腸がん、胃・食道がんなど多くのがんで効果(PR)を示しているそうです。有害事象は、インフュージョンリアクションが最も多かったようですが、いずれの副作用も軽度から中等度でした。現在MGAH22はすでに第II相試験も進行中とのことです。

②抗CD137作動性抗体
CD137はヒトのNK細胞(腫瘍細胞などを直接攻撃するリンパ球の一種)に存在し、HER2陽性乳がん細胞にトラスツズマブが結合することで高発現します。抗CD137作動性抗体は、CD137を刺激することによってNK細胞のがん細胞に対する攻撃を促しADCCを増強します。
この薬剤はまだ実験段階ですが、有意にHER2陽性細胞の増殖を抑制したため、来年あたり臨床試験が開始されそうな見通しです。

③抗CD47抗体:Hu5F9-G4
これも作用機序の説明は難しいので割愛しますが、マクロファージ(白血球の一種で死んだ細胞やその破片、体内に生じた変性物質や侵入した細菌などの 異物を捕食する大型の細胞)のがん細胞貪食を促し抗腫瘍効果を発揮するそうです。Hu5F9-G4については第I相用量決定試験がごく最近始まったとのことです。

HER2やそのファミリーであるHER1、HER3などに直接作用するだけではなく、他の機序を利用した治療法の開発が世界では行なわれているのですね。研究者のみなさん、製薬企業の先読みした地道な努力には頭が下がる思いです。患者さんの治療に少しでも貢献するような安全な新薬の登場を期待したいものです。

2014年10月9日木曜日

今年のJ.M.Sは10/19です!

ここ数年、10月の第3日曜日にJ.POSHの呼びかけで行なっているジャパン・マンモグラフィ・サンデー(J.M.S)ですが、今年は来週の10/19です。

この活動は、平日にはなかなか乳がん検診を受けることができない女性のために、ピンクリボン月間である10月の日曜日に検診を受けることができるようにしようというJ.POSHの呼びかけに賛同した医療機関が行なっている検診イベントです。

私たちの病院と関連施設でも2009年の初めてのJ.M.Sから参加してきました。今年も本院がG先生、市内の関連病院が私、釧路の関連病院がN先生で担当します。

J.M.Sの賛同施設は、J.POSHのHP(http://jms-pinkribbon.com/)で確認することができます。ご希望の方は期日が迫っていますので早めにお問い合わせ願います。

2014年10月7日火曜日

10月…寒いです!

ついこの前まで夏だったはずなのに10月に入って急に寒くなってきました。おかげで風邪を引いてしまいました(泣)。

先月の乳癌学会地方会が終わってようやく一段落ついたと思いましたが、今月はまた予定外の仕事が入ってしまいました。

昨日はまず第1弾のローカルラジオの収録がありました。ピンクリボン in SAPPOROの事務局も兼ねているラジオ局ですので快く協力させていただきました。10分もないくらいの乳がんの基本と乳がん検診についてのお話でしたが、録り直しもなく1回で終了しました(本当にあれで大丈夫かなあ…汗)。

あとは2つ原稿を頼まれていますが、まだなにもしていません(汗)。そして本業では外来と病棟の患者さんの病態の変化があってあれこれ対応したりでちょっとだけばたばたしていました。幸い手術が少なかったので良かったです。

来年の乳癌学会学術総会の演題の準備にもそろそろ取りかからなければなりません。まだ何を発表するか決めていませんが、いくつか候補は考えています。日常診療のささいなことの中に気づいた疑問や課題をすぐにメモするようにしているので今まで学会発表のテーマ選びに困ったことはありません(笑)。

今晩も部屋は寒いです…。早く患者会の温泉旅行に行きたいです。今年は11/15-16に小金湯温泉で1泊、今から楽しみにしています!

2014年9月30日火曜日

スカートサイズの増加と乳がん発症率

肥満と乳がん罹患率の関係は以前から指摘されていましたが、今回 英国University College LondonのEvangelia-Ourania Fourkala氏らはBMJ Open(2014年9月24日オンライン版)でスカートサイズの増加と乳がん発症率の関係について興味深い研究結果を発表しました。

概要は以下の通りです。

対象:英国内で実施された大規模前向きコホート試験UKCTOCSの参加者のうち、51歳以上で乳がんの既往がなく,試験登録時の質問票への回答を完了した9万2,834人(年齢中央値64.0歳 追跡期間の中央値は3.19年)。

方法:参加者は,2001~05年の研究参加への募集時と3~4年後(試験登録時)に質問票に回答。募集時の質問表は、BMI,貧困度の指標となるIMD(Index of Multiple Deprivation),初潮・閉経年齢,妊娠回数,子宮摘出術,不妊手術,不妊,乳がん・卵巣がんの家族歴,ピル使用歴,ホルモン補充療法(HRT)の使用状況など、試験登録時の質問票は、教育,スカートのサイズ,HRT,喫煙,飲酒,健康状態,研究登録後のがんなどで、これらの回答結果を元に乳がん発症リスクを解析。

結果: 追跡期間中に1.2%(1,090人)が乳がんを発症。スカートのサイズ(中央値,英国サイズ)は25歳時に12号(IQR 12~14,およそ73cm),研究登録時には14号(IQR 12~16,およそ78cm)で,10年当たりのサイズ変化は0.287(IQR 0.191~0.533)となり,これはほぼ35年間で1単位アップ(例:10号→12号,12号→14号)に相当した。スカートのサイズが10年当たり1単位アップすると,乳がんリスクが33%上昇した〔ハザード比(HR)1.330,95%CI 1.121~1.579〕。また,10年当たり2単位アップすると,同リスクは77%上昇した(同1.769,1.164~2.375)。

一方,募集時のBMI(5単位上昇ごとのHR 1.076,95%CI 1.012~1.136,P=0.009),登録時のスカートのサイズ(同1.051,1.014~1.089,P=0.006)も乳がんリスクに有意に関連していたが,最も明らかな乳がん発症の予測因子はスカートサイズの変化であった。なお,25歳時のスカートサイズは乳がんリスクに関連していなかった(同1.006,0.958~1.056,P=0.809)。


閉経後の肥満は乳がん発症率を上げることはわかっていますが、スカートサイズはそれとは別の因子のようです。こちらの方がより具体的ですので自己チェックしやすいかもしれませんね!


2014年9月24日水曜日

乳腺術後症例検討会 35 ”乳がんの放射線治療”

今日は定例の乳腺症例検討会でした。

最近の検討会では症例検討に加えてさまざまな分野のトピックの講演を行なっていますが、今日は放射線治療室の主任技師のIさんが乳腺分野の放射線治療の話をしてくれました。

私たちの施設では、昨年新病院に移動してから放射線治療を開始したばかりです。短い期間ではありますが、この1年間の症例のまとめと放射線治療の実際についてIさんがわかりやすく解説してくれました。一見画像診断とは直接関係はないお話ではありますが、画像診断領域の技師さんたちが検査・診断し、その結果に基づいて私たちが手術した標本に対して病理医が最終診断を行ない、その結果に基づいて行なう治療の一つが放射線治療ですので、その勉強をすることによって診断領域に携わるスタッフにも得るものがあったはずです。

そのあとで症例検討を行いましたが、今回も症例は3例でした。中でも1型糖尿病の既往がある患者さんに生じた境界不明瞭で後方エコーの減弱を伴っているものの、硬がんとしては内部エコーがあまり典型的ではなく、マンモグラフィでも腫瘤像を呈さなかったために糖尿病性乳腺症の可能性も考えた非浸潤がん主体の乳頭腺管がんの画像はなかなか興味深かったと思います。

来月は久しぶりに症例検討のみの予定です。来年には、画像診断の第1人者による講演会を開催できないか検討したいと思っています。今は存在価値が以前より低くなってしまった感のある細胞診の意義の再検討についてや、MRの診断についてなど、じっくり聞きたい話はたくさんあります。これからG先生やN先生とも相談したいと思っています。

2014年9月22日月曜日

”浸潤径”の真実と限界

病理結果の説明を受けた時に、”浸潤径”という言葉が出てくることがあると思います。術後標本のプレパラートを見て浸潤がんの大きさがどのくらいなのかは、予後や治療方針に関わることがありますので病理学的所見の1つの重要な要素です。

ただこの”浸潤径”の判断には注意すべき点があります。病理医が手術標本を検索する場合、通常は細かく切っても5㎜の幅です。ですからこの5㎜の幅の間にある部分は見ていないのです。つまり、たとえば”非浸潤がん”と病理診断されてもその5㎜の間に小さな(5㎜未満)の浸潤巣がある可能性は完全には否定できません。もし標本を作製する幅が1cmならさらにその可能性は高くなります。

実際、全国集計では非浸潤がんと診断されてもその再発率は0%ではありません。”非浸潤がん”と診断されて遠隔転移した患者さんは、おそらく”非浸潤がん”という診断が本当は正しくなかったということなのです(誤診という意味ではなく通常の検査の限界ということです)。ただこれは言い出すときりがないですので、私は非浸潤がんという診断を下す場合は、できるだけ5㎜以下で切り出して欲しいと病理医にはお願いしています。ちなみに当院で非浸潤がんと診断された患者さんで再発した方は今のところいません。

今日病理結果をご説明した患者さんも、術前の針生検では3本とも非浸潤がんでしたが、手術標本の病理検査では1㎜以下の微小浸潤を確認できました。全摘した標本を全割して病理医が見てくれたのでこの浸潤を確認できたのだと思います。このケースでは、少し割面がずれたら”非浸潤がん”と診断された可能性もありますし、もしかしたら浸潤径は1㎜以下ではなく、5㎜近くある可能性も0%ではないのです。このあたりが病理診断の難しいところであり、限界でもあります。

ですからもし”非浸潤がん”と病理診断された場合は、どのくらいの幅の切り出しで診断したのかは確認しておいた方が良いと思います。施設によっては最大割面のみ(1つの断面)で”非浸潤がん”と診断されているケースもあるようです。このような診断では、真の”非浸潤がん”なのかはもちろん、非浸潤がんと同等の予後なのかどうかも判断するのは難しくなります。

2014年9月14日日曜日

乳癌学会北海道地方会終了!

昨日、札幌医大大講堂で第12回乳癌学会北海道地方会が行なわれました(写真)。



私は2番目のセッションの座長だったため、朝早くから会場に向かいました。ちょっと早く着いてしまったので札幌医大前にある”南蛮屋”といういつも行く喫茶店に寄って今月のコーヒーを飲んできました。ここのコーヒーも食事もなかなか美味しいです(笑)。

肝心の座長は時間がきつきつだったために用意してきた演者への質問を十分にすることはできませんでしたが(けっこうフロアからの質問やコメントが活発でした)、なんとかそれほど時間延長することなく終えることができました。

私たちの施設からはG先生とN先生が演題を出していましたが、2人ともつつがなく終了!その他の演題も活発な議論が行なわれ、教育セミナーやランチョンセミナーも勉強になりました。

これでここのところずっと続いていた週末のイベントは一段落です。なにもしないままいつの間にか夏が終わってしまいました(泣)。年々時間が経つのが早くなってきています。もたもたしているとまた雪の季節がやってきますね。嫌だなあ…。

2014年9月7日日曜日

「ピンクリボン in SAPPORO 2014」終了! 会場に謎のニワトリ出現!

今日、大通のホコテンで「ピンクリボン in SAPPORO 2014」のイベントが行われました。今朝起きると雨が少し降っていて心配されましたが、なんとか雨は降らずに無事イベントは行われました。

今年も私たちの病院で啓発活動のブースを出させてもらうことになったため、おそろいのピンクのTシャツを着て事務職員3人、看護師2人、技師2人(うち関連病院1人)、医師3人で参加してきました。

今回は、昨年も展示した触診モデルに加えて、ここで何度かご紹介したG先生お手製の超音波検査用の人工乳房を使ったエコー体験も行ないました(写真)。



けっこう多くの方がブースに立ち寄って下さり、触診モデルに触れてもらいながら自己検診方法を説明したり、N技師長が超音波検査について説明しながら超音波検査の画像を見てもらったり、来場者にも実際にプローブを握ってしこりを探してもらったりということをしてもらいました(写真)。



そして健診課の課長と看護師が頑張ってくれたおかげで100部作成した乳がん検診の啓発パンフレットを全て配布することができました。昨年はブースに来た人たちだけに渡していましたが、今回は歩道で積極的に配ったため、最後は足りなくなるほどでした。来年はもっとたくさん作っても良いのではないかと思います。

ステージでは、今年もグル―ヴィン・ハード・ジャズ・オーケストラによるライブ、創成高校太鼓部による和太鼓の演奏、札幌西ロータリークラブによる合唱などが行なわれ、たくさんの観衆が集まって下さいました。だいどんでんのイベントで人出が多かったためか、例年以上に盛り上がったのではないかと思います。

このステージを盛り上げるのに一役買ってくれたのは、関連病院の検査主任のEさんです。Eさんは、以前ママチャリレースでも大人気だったニワトリのかぶり物でずっと参加してくれました。開始前には創成高校の生徒たちに囲まれて記念写真を撮ったり(写真)、子供たちに愛想を振りまきながら握手をしたり、若い女性に写メをせがまれたり、勝手に(笑)ステージに上がって踊ったり(写真)、一番の大活躍でした!



あっという間に予定時間が終わってしまいましたが、とても楽しく充実した一日でした。今日、たまたま通りかかった方の中で1人でも多くの方が御自分の乳房に関心を持って検診を受けてもらうことにつながったらとてもうれしいです。

このイベントを企画、運営して下さった三角山放送局を中心としたピンクリボン in SAPPOROの皆さん、会場設営、事務局運営などに関わってくれたボランティアの皆さん、協賛企業の皆さん、ステージ発表&ブース出展の皆さん、そしてボランティアで参加してくれた病院職員のスタッフのみなさん、お疲れさまでした!

2014年9月6日土曜日

Sapporo Oncology Board〜乳がん肺転移切除症例のまとめ

昨日AZ社主催で不定期に行なわれている再発治療に関する小規模の研究会(Sapporo Oncology Board)が行なわれました。

今回の担当は私たちの施設だったので、G先生にかなり前から発表をお願いしていました。依頼があった時は、私は研究会の司会や症例提示が続いていたためにG先生にお願いしたのですが、ここ数週の間、仕事が重なってG先生は超ハードな状態となってしまいました。でも急に担当を変更することもできないのでG先生には寝不足の中、直前までスライドを手直しして頑張ってもらいました。

今回発表したのは、当院における乳がん術後肺転移の手術症例についてのまとめです。詳細は書きませんが、バイアスがかかっているにしてもなかなか良好な成績でした。肺転移術後の最長生存は18年で、現在もまったく再再発なくお元気に通院されています。他院で乳がんの肺転移と診断され、当院の緩和ケアに紹介された症例が、実は原発性肺がんだったというケースもありますので(結局当院呼吸器外科で手術をしました)、単発の肺腫瘤の場合は、確定診断の意味も含めて切除することも検討して良いのではないかと私たちは考えています。

参加者は10人前後の小さな会ですが、その分自由に発言できてとてもアットホームな雰囲気で行なわれています。エビデンスを踏まえた上で、エビデンスだけでは不十分な領域についてお互いの経験を共有しながら勉強するというところが普通の研究会にはない面白いところです。今度いつできるかわかりませんが、できるだけ参加したいと思っています。

明日は大通でピンクリボンイベントです。天気は良さそうですので多くの方が立ち寄ってくださることを期待しています。

2014年9月3日水曜日

9/7はピンクリボンイベントです!

先日ここでもご紹介しましたように(http://hidechin-breastlifecare.blogspot.jp/2014/08/in-sapporo-2014.html)今度の日曜日の13:30から札幌市中央区南3西4の大通のホコテンでピンクリボンイベントが行なわれます。

私たちの病院でも昨年と同様にブースを出店して啓発活動を行なう予定です。今日、院内でその打ち合わせが行なわれました。

今回の参加者は、医師3人、看護師2人、検査技師2人、事務2人の予定です。今年は昨年同様の触診モデルに加えて、G先生の力作のエコーでしこりを見る人工乳房を置く予定です。マンモグラフィで診断するのが難しい若年者などに対する超音波検査の有用性についてアピールするつもりです。

また、今回はブースで待つだけではなく、歩道に積極的に出て啓発パンフレットを配る予定です。私たち病院スタッフは昨年同様ピンクのTシャツを着て参加しますが、1人だけ変な着ぐるみを着てパンフを配ってくれる予定です。中に入るのは以前ママチャリレースでも着ぐるみを着てくれた(http://hidechin-breastlifecare.blogspot.jp/2010/06/10hokkaido.html)関連病院の検査技師のEさんです!今回は自ら協力を申し出てくれました(笑)もしホコテンで見かけたら声をかけてあげて下さいね!

2014年8月31日日曜日

乳がん検診は何才まで受けるべきか?

検診をしていると時々高齢の患者さんにこう聞かれます。

”もう年だから検診は受けなくても良いのではないですか?”

たしかに100才の方に対して超早期がんを見つける意義はないのかもしれません。では90才では?85才では?80才では?

非浸潤がんをその年齢で見つけなくてもあと10年は生きるとするとプラス10才なら何才になっているのか?というお話になります。たとえば80才の非浸潤がんを放置しても90才まで生きることができるかもしれません。でも乳がんを根治できれば100才まで生きることが出来るかもしれないのです。そして放置した場合には局所にがんが顔を出してしまい、痛みや出血、悪臭に悩まされることになるかもしれません。

そう考えると何才まで乳がんの早期発見は必要なのかという問いに対する答えを見つけることは簡単ではありません。ちなみにいま病棟には80才台の乳がん手術直後の患者さんが2人いらっしゃいます。乳がんの手術は比較的身体への侵襲が少ないのでよほど全身状態が悪くない限り高齢者でも手術可能な場合が多いのです。お二人とも経過は順調でとてもお元気です。

先日、Radiologyという雑誌に、75才以上でのマンモグラフィ検診の有効性に関する報告が掲載されました(http://pmc.carenet.com/?pmid=25093690)。この報告によると、「マンモグラフィで検出された75才以上の乳がん患者では、患者や医師により発見された患者より、早いステージで診断され、受ける治療が少なく、疾患特異的生存率が優れていた」という結果だったそうです。

こういう報告を見ると、そして放置したために露出したがんの処置に困っている高齢の乳がん患者さんたちを診てきた経験からもやはり病院に来れる間は検診を受けた方が良いのではないかと私は思うのです。

2014年8月27日水曜日

乳腺術後症例検討会 34 ”学会報告&超音波研修”

今日は定例の症例検討会がありました。

今週月曜からKT病院から後期研修医のO先生が乳腺超音波検査の研修に見えているため、指導医のK先生と一緒に参加してくれました。その他にも院外からの参加者がたくさん参加してくださり、いつも以上に盛会でした。

今日の症例は3例でした。MRの広がり診断が有用だった浸潤性小葉がんの症例、バコラ生検でも鑑別困難となった神経内分泌染色陽性の非浸潤がん症例、両側血性乳頭分泌で乳管腺葉区域切除術を行なって両側非浸潤がんの診断となった症例の3例でしたが、それぞれの画像診断に関して活発な意見が出されました。

症例検討のあとは先日の乳癌学会で発表した内容をG先生、N先生、私がそれぞれ簡単に報告しました。

O先生の研修は1週間だけですが、KT病院とはこれからもお互いに交流ができそうです。症例検討会には今後も時間があれば参加していただくようにお誘いしましたし、こちらからはN先生がKT病院の手術を見学しにいく予定です。金曜日にはO先生、K先生を交えて懇親会を企画しています。

こんな田舎まで他の施設の皆さんが来て下さるのは本当にうれしいです。これからもG先生中心に魅力ある症例検討会を企画していければと思います。

2014年8月24日日曜日

第11回 With You Hokkaido ”良く知ろう、乳がんの治療” 無事終了!

昨日は札幌医大で第11回のWith You Hokkaidoが開催されました。



幸い心配された天候は回復し、けっこうな数の方が参加して下さいました。ただJRのトラブルのために、道外から来て下さった先生方が2時間も列車内に缶詰となってしまいグループワークに間に合わないというアクシデントが起きてしまったのは残念でした(汗)

今回はまずはじめにグループワークが行なわれました。私は”再発後の不安・治療”のグループでした。参加者は患者さん6人とH病院の看護師さん、そして私の8人でした。今回は部屋の広さ、人数、テーブルをはさんだ距離感がちょうど良かったので活発な会話ができました。人数が多いとどうしても一部の参加者しか話せなかったりするのですが、今回は比較的まんべんなく会話に参加できていたように思います。参加者のみなさんのご協力のおかげでとても有意義な時間を過ごすことができたのではないかと思います。

そのあと大講堂に戻って代表の霞先生の開会のご挨拶(いつも心に響く深いお話をして下さいます)、そして初めての試みの患者さんの疑問にお答えする”パネルディスカッション”が行なわれました。これはあらかじめ一部の参加予定者に質問内容を送っていただいた上でその中のいくつかについて私たちパネリストがお答えするといった内容でした。どうしても時間が限られてしまうため、参加者の皆さんにとってどの程度お役に立てたのかはわかりませんが、寄せられた感想を元に来年はさらにバージョンアップできればと思います。個人的には、少し難しい回答内容になってしまったかなと反省しています。

後半は、特別講演が2題。札幌医大看護部の松田夕香先生による「医師には聞けない治療に伴う性機能障害」は、なかなか私たち医師が患者さんにお話ししづらい内容を看護師さんの視点からわかりやすくお話ししてくれてとても興味深い内容だったのではないかと思います。北大放射線治療科の木下留美子先生による「乳がんの放射線治療」のお話は、放射線治療の基礎から乳がん領域の標準治療のお話、そして最先端の陽子線治療のお話まで時間がもっと欲しいくらいの盛りだくさんの内容でした。参加者の中には放射線治療を受けた方も多かったと思いますが、木下先生のお話をお聞きして、ご自分の受けた治療について再認識できたのではないでしょうか?

そのあとは各地のWith Youの報告、そして札幌医大の平田教授による閉会の辞であっという間でしたが今年のWith Youは終了しました。全体的に見ると例年よりコンパクトにまとまっていて、良かったのではないかと思っていますが参加したみんさんにとってはいかがだったでしょうか?

2014年8月22日金曜日

明日はWith You Hokkaidoです!

札幌はいま雷を伴った雨が降っています。スカパーがつながりにくくなるほどの不安定な状況のようです。明日はWith You Hokkaidoなのですが大丈夫でしょうか…。

以前ここでも書きましたように、今回は初めて最初にグループワークがあります(http://hidechin-breastlifecare.blogspot.jp/2014/06/11with-you-hokkaido.html)。なんとなく予想していましたが、今回もまたもや同じテーマのグループになってしまいました。なんだか最近ずっとこのグループのような気がします(汗)。たまにはなんでもコーナーに参加したいです(笑)。

そう言えば、今回は新聞にずいぶんWith Youの広告が出ていましたがご覧になりましたか?私は何度か道新と朝日新聞で見かけました。今年は例年にも増して多くの参加者がいらしてくれることを期待しています。今回はD病院形成外科のE先生も一緒にグループワークとパネルディスカッションに参加してくれるので楽しみです!

明日は晴れるといいですね!

2014年8月18日月曜日

「ピンクリボン in SAPPORO 2014」 人工乳房作成中!

今年も2014.9.7 13:30-16:00に大通で恒例の”ピンクリボン in SAPPORO 2014”が開催されます。今年は”だいどんでん”というイベントに便乗する形で行なわれますが、場所が少し変わる(南3西4)以外は例年同様の内容です(写真)。




今年も私たちの病院でブースを出すのですが、今回は触診モデルだけではなく、来場者に実際にプローブを当てていただきながらエコー検査がどんな検査かを知っていただくための手作りの人工乳房の作成に取りかかっています。これがなかなか大変なのですが私とG先生はすっかりはまってしまいました(笑)

まずは素材として今回はこんにゃくいもの粉を選びました(以前穿刺用キットを作成した時は寒天を使用しましたが柔らかかったので今回はこんにゃくが良いかなと考えました)。ネットで調べてみるとけっこう手軽に手作りこんにゃくが作れるような粉が売っていましたのでネットでゲットしました。

試作品①
先々週の土曜日に私が1人で自宅で作ってみました。脂肪層をこんにゃく粉に水とカロリーメート(ココア味)を4:1に混ぜて固めたもの(皮膚の色に近くなるかと思ったのですが…汗)、乳腺組織を同じものに胡椒を混ぜて固めたものにしました。ところが初めてこんにゃくいもの粉を扱ったので固まり具合いの予測が立たず、乳腺部分を先にゆでてから脂肪層のこんにゃくで包む予定だったのですが形が思うように作れませんでした。しかも色がかなりグロくなってしまいました。また思いのほか茹でても硬くならず(大きすぎたせいかもしれません)結局茹でているうちに乳腺部分が顔を出してしまい失敗…(汗)あまりにグロくて写真は省略します(泣)
でもエコーで見てみるとまさに乳房そのもの(皮下脂肪がわずかに内部エコーがある低エコーで乳腺が高エコー、しこりとして入れたグミが低エコー腫瘤)で材質的には良い印象でした(エコー写真は②参照)。

試作品②
G先生が息子さんと一緒に作成。私の失敗レシピを参考に工夫をして作り直しました。形はとてもきれいにできましたが(写真)、G先生的には柔らかすぎて手間もかかり、臭いも強いのでこんにゃくはダメとのこと。私は臭いは気になりますが、触感は乳房に近い柔らかさでエコーの見え方も良いと思うのですが…(写真)



試作品③
これもG先生と息子さんの作品。脂肪層はゼラチンにカツゲンを混ぜて固めたもの、乳腺部分はゼラチンにワラビ粉を混ぜたものだそうです。触感はシリコンみたいな感じで弾力性はありますがけっこう硬めでした(写真)。エコーで見てみると脂肪層は無エコーの真っ黒になってしまいましたが、乳腺部分はなかなか良い感じに見えました(写真)。脂肪層に少し混ぜ物をした方が良さそうですがさらに硬くならないか心配です。ただこちらの方がはるかに作りやすいようでG先生はお気に入りです。



試作品②③の前にも牛乳を混ぜたりしてG先生は頑張ってくれていました。N先生は大イベントが控えていたため今回は男の手料理で頑張っています。明日からはN先生が戻るので女性ならではのアドバイスをもらいながら残り2週間でバージョンアップさせて完成予定です!

2014年8月17日日曜日

Wedding Party!

今日はこの夏の大きなイベントの1つ、N先生の結婚式とWedding Partyがありました(写真)。



場所は市内某所の小高い山の斜面にある教会と素敵なレストラン(というより披露宴のためのParty会場)。私は回診当番だったため11:30からのPartyのみの参加でしたが、とても良い天気に恵まれて、多くの人々が集まりました。

最近札幌では、ホテルではなくこのようなおしゃれな結婚式場で式や披露宴を行うケースが増えているようです。ちょっと交通の便が悪いという点はありますが、それぞれ工夫をこらした企画があったりしてなかなか好評なようです。

N先生のPartyも待ち時間に外国人のマジシャンがマジックを見せてくれたり、新郎新婦が待ち合いスペースに階段から降りてきてそのまま新郎からの挨拶とともに乾杯したり、専属(?)の外国人のピアニストやDJ(?)の方が楽しく盛り上げてくれたり、食事が終わった後で場所を移動して立食形式でスイーツを味わいながら、この日のために特別に仲間でバンドを結成したN先生が新郎に向けた歌を歌ったり(写真)、来賓全員でこっそりとバラを隠しておいて一斉にN先生を取り囲んで渡すサプライズがあったり、ここに書ききれないほど盛りだくさんの楽しいPartyでした(笑)。



さて、実はこのPartyで私はN先生からスピーチを頼まれていました。あまりこのような会で話をするのは得意ではないのですが、N先生からのせっかくのご指名でしたのでお受けしました。ただ近づくにつれてどんどん気持ちが落ち着かなくなり、スピーチ原稿も何度も書き直して(今朝も最後の修正をしました…汗)、あっという間に今日を迎えてしまいました。

会場についてからもそわそわしまくり、新郎新婦登場前にすでにカクテル4杯を飲んでしまいました。Partyが始まってからも原稿を見ながらシャンパン1杯とワインを2杯…。まったく酔ってはいなかったのですが、ちょっと赤くなってしまった時にスピーチとなりました(昨日見たスピーチの心得のサイトには、自分のスピーチまではシャンパンだけにするように書いてあったのですが…汗)。

肝心のスピーチは、幸いつつがなく終わり、ようやく落ち着くことができました(笑)。学会発表の方がずっと気楽です!

最近、身辺で悪いことばかりが続いていましたので、今日は幸せそうなN先生の顔が見れて良かったです。旦那さんもさわやかで優しそうな好青年でしたのできっと幸せな家庭を築いてくれることと思います。

Happy Wedding!

2014年8月5日火曜日

初期治療を拒否した乳がん患者さんたちは…

様々な理由で乳がんの治療を受けずに長い間経過を見てしまうことがあります。これには大きく分けて3つのパターンがあります。

①しこりに気づいて”がんではないか?”と思いながら、診断されることや治療が怖くて進行するまで受診しないケース
②一度医療機関で乳がんと診断されながら、治療を拒否して数年後にどうにもこうにもならなくなって受診するケース
③受診して乳がんと診断されながら、代替治療を試したいという強い意志で経過観察のみ行なうケース

ちまたでは”がんは早期発見の必要はない””がんを治療するとかえって命を縮める”などという内容の本が新聞やマスコミで紹介されています。たしかにごく一部の乳がんは一生命に関わらないのかもしれません。しかしそれは一部に過ぎません。経過観察した患者さんのほとんどはその判断を後悔しているのです。

放っておいて良いケースなどきわめてまれな場合しかありません。ホルモン陽性の乳がんは、一般的に進行がゆっくりのために、何もしなくても、または代替医療に頼っても一見進行していないように見えることがあります。私の経験でも③のケースでしばらくあまり変化がないように見えた症例もありました。しかし、それらの症例も経過を見るうちに必ず大きくなってきます。それが悪さをしないという保障は誰にもできません。①でとてつもなく進行していて手の施しようのない状況になってから受診した患者さんはたくさんいます。②のケースは少ないですが、やはり根治的な治療はすでに不可能になっています。

③のケースは私の経験では、3人いらっしゃいます。2人は代替医療を行なったようですが、結局進行してしまい、手術を受けました。もう1人は、食生活の改善、性格の改善を試したいと言って治療を拒否しましたが、やはり9ヶ月の経過で皮膚浸潤をきたしてきたため、ようやくホルモン療法のみ治療を受けることを承諾して下さいました。今のところ奏効し腫瘍の縮小が見られていますが、ここ2ヶ月は縮小の程度が止まってきましたのでそろそろ手術を考えなければなりません。本当はできるだけ早く手術をしたいところですが、あとは彼女の気持ちが固まるのを待つしかありません。ホルモン療法が効いている間に決意してくれることを祈っています。

細胞診/針生検による播種

術後の病理標本で術前に行なった針生検や細胞診の針穴にがん細胞が引きずられて残っている所見が確認できることがあります。おそらく細胞診よりも針生検、特に口径の大きいマンモトームやバコラ生検ではその率は高くなると推測されます。ですから手術する際はできるだけそのルートも一緒に切除するようにしています(乳房温存術で放射線治療を行なう場合は残しても良いのかもしれませんが、可能な限り切除できるように切開線を置いています)。

以前、ある症例検討会で奇妙な症例の発表がありました。術前検査で良悪の判定が微妙だったために患者さんの同意を得て乳腺部分切除術+センチネルリンパ節生検を行なったところ、切除した主病巣は良性だったのにリンパ節に腫瘍細胞が発見されたという症例です。通常リンパ節内の細胞はリンパ球がほとんどを占め、上皮細胞はありません。ですからリンパ節内に上皮細胞があれば転移と考えるのが普通です。このケースの場合、考えられるのは①切除した乳腺以外の場所にがんがあった②良性腫瘍の細胞がなんらかの理由でリンパ管を通じてリンパ節に到達した(転移のように)という2つです。

病理所見について解説して下さったG病院のA先生は、後者の可能性について言及していらっしゃいました。この症例はマンモトーム生検をしていたため、腫瘍細胞(良性)が太い生検針によって損傷を受けたリンパ管内に迷入してしまい、リンパ節に到達したのではないかということです。もしそうであればいわゆる転移とは異なりますので生命予後には影響しません。

当院でもこれと似たような症例を経験しました。細胞診をした際に腫瘍周囲の針穴に播種した腫瘍細胞(良性)が偶然針生検で採取されてしまったために、あたかも浸潤がんの細胞のように見えてしまったという症例です。私は以前、G病院で研修中にA先生に針穴に播種した症例を見せていただいたことがありましたので、その可能性について頭に浮かんだのですが、まさか細胞診のルートに偶然針生検で当たるとは…。A先生にconsultationをお願いしたところ、やはりその可能性が高いのではないかとのこと。念のため主病巣周囲の部分切除を行なって本当に浸潤がんが隠れていないか確認しましたが、標本内にはがんは確認できませんでした。非常に珍しいケースだと思いましたので今年の乳癌学会で報告しました。がんだけではなく良性腫瘍でも針穴に播種することがあるということには病理診断の上では注意が必要です。

2014年7月27日日曜日

ピンクリボン チャリティゴルフコンペ

今日、スウェーデンヒルズゴルフ倶楽部で”ピンクリボン チャリティゴルフコンペ”が行なわれました。

私自身はまったくゴルフはできませんが、チャリティで集まった寄付金を受け取りにピンクリボン in SAPPOROの代表(O先生)の代理として表彰式に参加してきました(写真は玄関にあったパネルと左は触診モデルです)。



今日は午後から雨と風が強くなり、こんな天気で開催されるのだろうかと心配しましたが、ゴルフコンペは予定通りに行なわれ、33人ほどが参加しました。ただ悪天候によって予定より終了が遅くなったため、しばらく事務局のWさんと一緒にレストハウスのレストランで待っていました(写真はレストランから見た風景です)。



表彰式に先立って私が挨拶をしましたが、まったく知らない方たちばかりだったのでとても緊張しました(汗)。乳がん検診についての話もして欲しいということでしたが、参加者の中に女性は2人だけ…。ただパートナーの方たちにも乳がん検診の重要性を訴えることは重要ですので今後のピンクリボン運動への支援の訴えも含めてお話ししました。

それからチャリティ金を受け取って、こちらからは感謝状をお渡しし、表彰式となりました。ゴルフコンペ自体初めての参加でしたので、あんなにいろいろな賞があるとは思いませんでした(笑)。1位の方には私から目録をお渡しし、無事表彰式が終了しました。

帰りがけには支配人さんからお土産までいただきました(笑)天候が悪かったのは残念でしたが、このような活動がこれからも継続できればと思っています。このゴルフクラブは支配人さんを始め、とても理解のある方々のようでしたので来年も開催していただけるのではないかと期待しています!

2014年7月26日土曜日

第1回 Hokkaido Breast Cancer Board

昨日第1回のHokkaido Breast Cancer Board(HBCB)が市内某ホテルで行なわれました。NK社とG社の主催で昨年までは画像診断フォーラムとして行なわれていた会ですが、今回からは主に治療に関する研究会として行なわれることになったのです。

その第1回の司会と症例提示(運営委員で持ち回りで担当します)をSクリニックのO先生と私が担当することになりました。今までの会とはまったく形式が異なるのでどうなることか心配でしたがなんとか無事終了することができました。

O先生の症例は、比較的広範なDCISで、術式を温存にするか全摘再建にするか(乳頭・乳輪は温存するか切除するか)、という判断が議論になる症例で、D病院形成外科のE先生からもスライドを用いながらコメントしていただきました。フロアに質問しても手を上げる人が少なかったのが残念でしたが、今後の乳がん治療の変化を考えさせる症例だったと思います。

私の症例は、リンパ節再発を繰り返し、サブタイプが変化していったケースでした。それぞれの段階でどのような治療や診断方法を選択するかということを何人かの先生に答えていただきました。特にS医大のS先生には若手の代表として3回も質問してしまったので、あとの懇親会で怒られてしまいました(笑)。

症例検討のあとは、G病院のI先生によるリンパ節転移に関するご講演がありました。症例の豊富なG病院でしかわからないような研究結果をお聞きすることができてとても勉強になりました。特に温存乳房に放射線治療やリンパ節郭清を行なった症例において、第2癌が発生した時にリンフォシンチグラフィを行なうと対側腋窩にけっこうな頻度で流れるというお話は、私がG病院で行なった対側腋窩リンパ節再発の研究の内容とも関連しているような気がしてとても興味深かったです。

研究会終了後は懇親会が行なわれましたが、私は途中で抜けさせていただいてO先生とE先生と一緒にワインバーに飲みに行きました。O先生からは乳がん診療に関するさまざまなお話やスウェーデン留学のお話、E先生との昔話(お二人は柔道部の先輩後輩の関係です)などを伺うことができてとても楽しい時間を過ごすことができました。
支払いは全部O先生がして下さいました(汗)。いつもお世話になってばかりなのに大変恐縮しました(笑)。

この会に準備に数ヶ月かけてきましたが、無事終了しましたのでこれで一安心です!

2014年7月23日水曜日

第11回 With You Hokkaido 実行委員会

昨日、第11回 With You Hokkaidoの実行委員会が行なわれました。

先日ここでもご紹介しましたように、今回は今までと少しやり方を変えて行ないます(http://hidechin-breastlifecare.blogspot.jp/2014/06/11with-you-hokkaido.html)。特にパネルディスカッションは初めての試みですのでどのようにやるのかについて討議しました。時間が限られていますので多くの疑問についてディスカッションすることはできませんが、集まって下さった皆さんに少しでもプラスになればと思っています。

毎回行なわれているグループワークですが、実は私は苦手です(汗)。私たちの役割は患者さんたちの質問に答えることではなく、患者さん同士の会話をスムーズに進めるための援助を行なうことです。しかし、実際は私たち医療従事者への質問コーナーになってしまったり、一部の方ばかりお話しすることになってしまい、話したいことを全然話せないまま終わってしまう方も出てきてしまうことがあります。そうならないように一生懸命修正するのですが、なかなかうまくいかないこともあります。特に再発治療のグループでは、けっこうシビアな話の内容になるので進行役はけっこう難しいです。私はなぜか再発治療のグループになることが多く、いつも終わってからこれで良かったのかなと自問自答してばかりです。今回はどこのグループになるのでしょうか…。

まだ申し込みをしていない方がいらっしゃるかもしれませんが、当日参加も可能です(できれば事前申し込みをお願いします)。できるだけ多くの方に参加していただけるとうれしいです。今回は形成外科のE先生も参加してくれますし、放射線治療の先生のお話や乳がん薬物療法中の性機能障害についての看護師さんのお話も聞けます。きっと有意義な1日になると思います!

今週の金曜日は病院機能評価の模擬サーベイと夜は研究会の症例提示&司会、日曜日はピンクリボン関連のイベント、8/1は院内のキャンサーボードの症例提示、8/23がWith You Hokkaido、8月最終週はT病院から乳腺超音波研修医の受け入れ、9/5は製薬会社主催の再発治療の研究会、9/8がピンクリボンロード、9/13が乳癌学会地方会とイベントが続きます。外科学会専門医の更新手続きもまだ手つかずです(汗)。もっと忙しい先生は世の中にたくさんいますが、みなさんどうこなしているのでしょうか。もともと”ながら勉強”は得意だったのですが、最近では2つのことを同時にこなすのも難しくなってきました(泣)。忘れないようにメモしていないとすぐに忘れてしまいます(汗)。それぞれのイベントは楽しみでもありますので、なんとかこの夏を楽しみながら乗り切りたいと思っています。

2014年7月14日月曜日

乳癌の治療最新情報38 卵巣機能抑制+エキセメスタンの成績

閉経前乳がん患者さんに使用できるホルモン療法は、タモキシフェン、LH-RH agonist(ゾラデックス、リュープリン)、MPA(ヒスロンH)しかありません。このうち術後補助療法として認められているのはタモキシフェン±LH-RH agonistです。もしこの補助療法を行なった上で再発した場合は、ヒスロンHしか使用できないという制限がありました。

卵巣機能抑制を行なった状態というのは閉経時のホルモン環境とほぼ同じですので、理論的にはこの状況下でアロマターゼ阻害剤を使用することは有用ではないかと考えられるのですが、今まではLH-RH agonist+アロマターゼ阻害剤の有効性を証明した臨床試験はほとんどありませんでした。

今回NEJM誌オンライン版(2014年6月1日号)に、「閉経前ホルモン受容体陽性早期乳がん患者に対して、補助療法としてアロマターゼ阻害薬のエキセメスタン(商品名:アロマシン)+卵巣機能抑制のほうが、タモキシフェン(+卵巣機能抑制よりも5年再発を有意に抑制した」という論文が掲載されました(http://pmc.carenet.com/?pmid=24881463&keiro=journal)。概要は以下の通りです。

報告者:国際乳がん研究グループ(IBCSG)(南スイスがん研究所 Olivia Pagani氏ら)

対象・方法:2003年に開始した2件の第III相無作為化試験(TEXT試験とSOFT試験)の参加者(閉経前ホルモン受容体陽性早期乳がん患者)4,690例のデータを解析。
 *卵巣機能抑制方法:性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)作動薬トリプトレリン(国内未承認)、卵巣摘出または卵巣への放射線照射。

結果:
①5年無病生存率:エキセメスタン+卵巣機能抑制群 91.1%、タモキシフェン+卵巣機能抑制群 87.3%(追跡期間中央値68ヵ月 再発・二次性浸潤がん・死亡のハザード比[HR]:0.72、95%信頼区間[CI]:0.60~0.85、p<0.001)。

②5年無再発率:エキセメスタン+卵巣機能抑制群 92.8%、タモキシフェン+卵巣機能抑制群 88.8%(再発HR:0.66、95%CI:0.55~0.80、p<0.001)。

③死亡:194例(4.1%)。全生存については両群間に有意差はみられなかった(エキセメスタン+卵巣機能抑制群の死亡HR:1.14、95%CI:0.86~1.51、p=0.37)。

④グレード3または4の選択的有害事象:エキセメスタン+卵巣機能抑制群30.6%、タモキシフェン+卵巣機能抑制群29.4%(閉経後女性で報告された内容と類似)。


今回の報告は、閉経後の乳がん患者と同様に閉経前でも卵巣機能抑制を行なえば、タモキシフェンよりアロマターゼ阻害剤の方が再発予防効果は高いという結果です。非常に興味深い報告ですが、国内で使用可能なゾラデックスやリュープリンが使われていない点が保険適用となるためには問題になるかもしれません。

また個人的にはむしろ閉経前の再発患者さんたちにLH-RH agonist+アロマターゼ阻害剤を使えるような臨床試験の結果が早く欲しいと思っています。

2014年7月11日金曜日

一足先に乳癌学会から帰ってきました!

一昨日の夕方に大阪に向かいましたが、着いたのは夜だったにもかかわらず、むっとする暑さと湿気で汗だくになりました(汗)しかもホテルまでたどり着くのに散々迷ってしまい、夜食はコンビニで買って済ませました(泣)

昨日の1日目の午前はOncoplastic surgeryのシンポジウムに参加しましたが、なかなか興味深い話を聞くことができました。特に乳頭の偏位を防ぐための工夫(乳輪周囲の皮膚を切除するなど)や脂肪性乳線に対しては腫瘍直上の皮膚を切除した方が良いなどの話には自分の経験も踏まえて参考になりました。

午後は放射線治療のシンポジウムを聞きました。センチネルリンパ節転移陽性の場合に温存乳房にどのような照射をするのが良いかというお話は非常に参考になりました。また以前話題になったACOSOG Z0011試験において、プロトコールを遵守しない照射が行なわれていたこと(特に非郭清症例)など、そのセンセーショナルな結果の信頼性を疑わざるを得ない内容が再検討によって判明したというお話は、個人的には”やっぱりね”という印象でした。

そのあとN先生と夜に到着するG先生と合流して飲む予定でしたが、N先生は体調不良、G先生は到着が遅くなったということでお流れになってしまい、結局また一人寂しくホテルでコンビニ弁当を食べながら野球観戦していました(泣)

諸事情で今日の19時の帰りの便を早めようと思ったのですが空席がなかったため14時半の関西空港発の便になってしまいました。途中で抜けなければならないため、結局2日目はまったく参加せずに帰ってきました。

幸い台風の影響は受けずに往復できましたが、蒸し暑さがかなり堪えました(汗)おまけになぜかひどい腰痛でぐったりです(泣)明日は回診なので早めに休みます!

2014年7月8日火曜日

第22回 日本乳癌学会学術総会 in Osaka

明後日から大阪で乳癌学会学術総会が開催されます。私は明日の夕方出発して、一日早い金曜日に帰ってきます。G先生は一日遅れの明後日に出発して最終日までいる予定です(N先生はフル参加)。

今回の発表もe-POSTERという形式です。あらかじめデータは送ってありますので直前の準備などはありません。当日の発表もないので緊張感もなく、なんだか学会発表という感じではないです。とりあえず参加しなければ発表と見なされないので参加しますが、今回は例年のような学会に参加するわくわく感はまったくありません。

学会発表も今回が最後かもしれません。今回乳腺専門医を更新したらもう5年後は更新しないつもりですので発表の点数は必要なくなります。気楽なような寂しいような感覚です。

猛烈な台風が近づいていますので帰って来れるかどうかだけが心配です。それでは明日行ってきます!
(しばらくコメントにはお返事できません)

2014年7月6日日曜日

生活保護を打ち切られて受診を中断してしまった患者さん宅への訪問

私が外来で診ている乳がん術後の患者さんの中には、障がい者のお子さんをお持ちの方が数人いらっしゃいます。それぞれ入院の際にはそのお子さんを誰がみるか、どこに預けるかでけっこう大変でした。でも幸い皆さん再発なくお元気に経過されています。

ただ最近、とても心配なことが起きました。その中の1人の患者さんが急に受診を中断されたのです。いつも半年に1回きちんと通院されていた方だったのですぐにお電話をしたのですが現在使われていない状態でした。その方は生活保護を受けていたため、居住地である札幌近郊のE市の保護課に問い合わせたのですが、春に生活保護を打ち切ったとのことでした(理由は教えてもらえませんでした…)。

その患者さんはずっと母子家庭で重度の心身障害者の娘さんの世話をしながら2人で生活しており、その患者さん自身も重い慢性疾患で時々入院をしているような状況でした。ですから普通に就労できるような状態ではありません。生活保護を打ち切られて生活するのはかなり困難であることが予想される状況でしたので連絡がつかないのは大変心配なことでした。

最近、生活保護を打ち切られた方の悲しいニュースをときどき目にしていましたので、胸騒ぎがしていてもたってもいられなくなり、昨日の土曜日、仕事が終わってからその患者さんの自宅のあるE市まで車で行ってきました。ナビで検索して行きましたが、その周辺を探して見てもその患者さんの表札が見つかりませんでした。ただ表札がない家が2軒あったのでそのうちの1軒の隣の家の方にお聞きしたところ、その隣の家が患者さんの家でしたが春に転居されたとのことでした。転居先はわからないとのことでしたのでこれ以上の追求は残念ながら不可能となってしまいました。

予想された中の最悪の結果ではなかったのでとりあえず安堵しましたが、いったいどこに転居されたのかやはり心配です。世話をしてくれるような親戚などに身を寄せていれば良いのですが…。一日も早く患者さんから連絡が来ることを願っています。

2014年6月27日金曜日

昨日見た夢のお話…

昨日の朝、右腕が猛烈に痛くてたまらない夢を見ました。

夢の中で私はがん患者であり、腕の骨への転移による痛みということになっていました。痛くて痛くてたまらないのでG先生に痛み止めの注射を右腕に何回も打ってもらったのですがいっこうに痛みは改善せず、あまりの痛さに泣きながらのたうち回るという夢でした(汗)

朝3時半に目覚めてみると、私の右腕はうつ伏せになった身体の下敷きになってしびれてまったく動かない状態になっていました…。そして枕には痛みに耐えかねて流した涙でびっしょり濡れた跡が…(泣)

がん患者さんの痛みをあらためて実感した夢でした。あの痛みは辛いですね…。がん患者さんの痛みに対して今以上に親身になって考えてあげたいと思わされたリアルな夢のお話でした…(汗)
(ちなみにしびれて動かなくなった腕は無事復活しました!)

2014年6月26日木曜日

第11回 With You Hokkaido ”良く知ろう、乳がんの治療”

今年もWith You Hokkaidoが近づいてきました。今年は例年より早くチラシとポスターが届きました(写真)。さっそく病棟、外来、化学療法室、関連病院の外来に置くことにしました。



開催日は、2014年8月23日(土)の12:30-15:50で、場所はいつもの札幌医大研究棟1階大講堂です。今回は実行委員会での協議の結果、例年とはいくつか異なる形で行なうことになりました。

まず第1に、グループワークが一番最初に行なわれることになりました。会場についたらすぐにグループワークの部屋に移動になります。

第2に、今回は患者さんからの質問に答える形のパネルディスカッションを行なうことになりました。どんな質問が来るのかちょっとどきどきです。

特別講演は2題。”性機能障害”のお話と”放射線治療”のお話です。患者さんにとってはとても興味深いお話が聞けると思いますので楽しみにしていて下さい!

申し込みは、実行委員のいる病院の外来に置いてあるチラシの郵送、もしくは下記の連絡先にご相談下さい。

「東札幌病院内 With You Hokkaido事務局」
TEL : 011-812-2311(代表)
FAX : 011-823-9552
受付時間 月曜〜金曜 9:00-17:00



2014年6月25日水曜日

乳腺術後症例検討会 33 ”新体制”

今日は定例の症例検討会でした。

今までは私が症例の選定やスライドのチェック、進行の補助などを行なってきましたが、前回の検討会でその役目を終え、今回からはG先生が中心になってこの会を運営していくことになりました。

その第1回は、症例検討が2例、そして検査技師のTさんによる”乳腺超音波検査の学び方”に関する講演でした。

症例はやや丸みを帯びた多形性微細石灰化の集簇に変化がみられ、DCISの合併を疑いましたが結果的にはMucocele-like tumor(MLT)だった一例と一見境界明瞭に見えて充実腺管がんを疑った硬がんの一例でした。

T技師による講演は、超音波技師向けというより放射線技師や病理医など他の職種に対する乳腺超音波検査に関する基礎知識の講義とグループ分けをして10例の症例の超音波診断を行なう(超音波技師が助言しながら他の職種の参加者に読ませる)クイズという内容でした。新たな試みでしたので参加したメンバーは楽しめたのではないでしょうか?ちょっと時間が押していて駆け足になってしまったのは残念ですが…。

新体制、そして新しい試み(前回もG先生のマンモグラフィの読み方の講演があったので2回目ですが)は、順調なようです。これで心置きなく彼らに任せて私はいつでも引退することができそうです!

2014年6月19日木曜日

ワールドカップ真っ最中!

気がつけばもう6月も後半になっていたのですね…。この間、体調不良と7月に行なわれる症例検討会の準備などに追われていて、ブログのコメントに返事をするのがやっとの状態でした(汗)。ようやく体調も上向きになってきましたが、これからの生き方の答えが見つからず、なかなかブログをアップする気力も湧いてきません。今までのようなペースでは書けないことをどうかご了承願います。

そういえば今はワールドカップ真っ最中ですね。入院中の患者さんの中にも朝早くからサッカーを楽しみに見ている方がいらっしゃいます。明日のギリシャ戦はなんとか勝って決勝トーナメント進出に望みを残して欲しいものです。

日本代表の初戦(コートジボワール戦)は日曜日でしたが、私は関連病院の乳がん検診でした。幸い、検診の合間にホールのTVで本田選手の素晴らしいゴールシーンを見ることができましたし、検診終了後に逆転のゴールも見ることができました(泣)。

監督や選手たちが思っていたようなサッカーができなかったこと、そして見ている日本国民が期待しているような結果ではなかったことはたしかに残念なことでした。そしてネット上では、選手たちへの個人批判が行なわれているのを何度も見かけました。

でもよく考えてみて下さい。日本がワールドカップに出場できるようになったのはつい最近のことです。1998年の初出場まではそのピッチに立つことすらできなかったのです。選手たちが優勝を目標に掲げるのは良いことだと思いますし、ある意味当然だと思います。最初から負けることを目標にすることはおかしいですし、参加するからにはどのチームにもチャンスはあるからです。でも選手たちが優勝を目指すということを口に出したからと言って、そのとおりにいかないと批判するのはこれもおかしなことです。前回優勝のスペインだって、毎回優勝候補と言われながら何十年もかかってようやく優勝できたのですから、ワールドカップで優勝することは簡単なことではないと思います。そのスペインでさえ、今回は連敗で真っ先に決勝トーナメント進出の夢を断たれたのです。

選手たちは、結果はともかく勝ちたいと思って一生懸命頑張ってきたはずです。なんの努力もしていない外野が無責任に彼らを批判することはやめるべきだと私は思います。世界からも評価されている日本のパスサッカーを明日は存分に見せて、結果を恐れずに良い試合をしてくれることを私は願っています。

今回は全然関係ない話でした(笑)

明日はみんなで日本代表を応援しましょう!

2014年6月5日木曜日

タモキシフェンは10年投与を推奨(ASCO 2014)

タモキシフェンの投与期間に関しては以前から様々な見解が報告されてきましたが、最近の報告では5年より10年を推奨するものが多いようです。今回米臨床腫瘍学会(ASCO)が発表した乳癌の診がんガイドラインにおいても、ステージI-IIIでホルモン受容体陽性の患者に対する術後ホルモン療法の項目を更新し、ホルモン受容体陽性患者に対する最長10年までのタモキシフェン投与が推奨されました。

ASCOの専門委員会が2010年から行なってきた関連する医学文献を対象に系統的レビューによるとタモキシフェンを5年間使用した乳がん患者に比べ10年間使用した患者には生存利益が見られること、10年使用群では再発リスクと対側乳癌リスクも低いことを示しました。一方で、前回のガイドライン更新以降の文献に、アロマターゼ阻害薬の投与期間の延長に関する新たなエビデンスは見られませんでした。

ガイドラインに示された勧告の要点は以下の通りです。

・ホルモン受容体陽性の乳がんと診断された、閉経前または閉経期の女性には、術後ホルモン療法としてタモキシフェンを5年間投与し、その時点で引き続き閉経前であればタモキシフェンをさらに5年間投与し、閉経後であればタモキシフェンをさらに5年間投与するか、アロマターゼ阻害薬を5年間投与する。

・ホルモン受容体陽性の乳がんと診断された、閉経後の女性に対する術後ホルモン療法の選択肢は以下のとおり。
①タモキシフェンを10年間投与
②アロマターゼ阻害薬を5年間投与
③タモキシフェンを5年間投与し、その後アロマターゼ阻害薬を最長5年間投与
④タモキシフェンを2-3年投与し、アロマターゼ阻害薬を最長5年間投与

・閉経後の女性でタモキシフェンまたはアロマターゼ阻害薬に対して不忍容を示した患者には、代替となる術後ホルモン療法を提供する。
①アロマターゼ阻害薬を使用していたが5年未満で使用を中止した患者には、その時点から当初予定されていた5年後までタモキシフェンを投与
②タモキシフェンを2-3年使用していた女性には、その時点から最長5年間アロマターゼ阻害薬を投与

ホルモン療法を最長10年間受けることのリスクや、想定される有害事象について患者さんと医師がきちんと話し合うことは大切です。タモキシフェンを使用した患者さんの多くが有害事象を経験しますが、今回ASCOが検討対象にした臨床試験では、使用期間を延長しても新たな、または想定外の有害事象は発生しなかったということです。

まだ国内ではタモキシフェンの投与期間について十分な合意はできていません。しかし今回のASCOのガイドラインによって今後は再発リスクによって10年投与が標準になっていくのかもしれませんね。

2014年5月27日火曜日

認知症が悪化した乳がん患者さんの幸せとは?

異時両側乳がんの術後で私の外来に15年ほどかかっている現在94才の患者さんがいらっしゃいます。2人の息子さんはともに独身で病気を抱えていたため、その高齢の患者さんが食事の世話などをずっとしてきました。

乳がんに関しては治療はしておらず、本来定期的な検査も必要ない状態です(両側乳房全摘後)。内服している薬は高血圧などの内科疾患の薬剤のみですので、以前から内科管理にすることをご相談してきましたが、”ずっとかかっているから先生に診てもらいたい”ということで私の外来に1−2ヶ月に1回通院されていました。

しかし、数ヶ月前に圧迫骨折や大腸がん(進行がん)が見つかって入院をしてから徐々に元気がなくなり、心不全で内科に入院した先月には病室にお見舞いにいくと私が誰なのかわからなくなってしまっていました。ずっと私を慕ってくれていた患者さんだったので少なからずショックを受けました…。その後状態が安定したため一次退院となり、今日外科外来に久しぶりに受診されたのです。

見た目はお元気になっていたので、再度”私が誰かわかりますか?”とお聞きしたのですが、やはり首を傾げて”わかりません”というお返事でした。息子さんも一緒にいらしていたので、外科的にはもう必ずしも定期的な通院は必要ないこと、現在の患者さんの状態からは外科外来フォローを希望されているようには見えないこと、今後また内科に入退院を繰り返すことが予測されることをお話しし、今後は内科で診てもらうことになりました。

認知症は、ご本人もそうなのかもしれませんが(確認することは困難な場合が多いので本当のところはわかりませんが)周りにいるご家族がかなり辛いと思います。今回の患者さんの変化を目の当たりにして、そのことがよくわかりました。

認知症が悪化したことが、その患者さんの残りの人生にとって良かったのか悪かったのかは私にはわかりません。意識がクリアだと大腸がんの悪化に伴う死への恐怖などに悩まされたのかもしれませんし、もしかしたら認知症が悪化したことがその患者さんにとっては幸せなことだったのかもしれません。少なくとも乳がんでは命を奪われずに天寿を全うできそうなことが私にとっては救いですが、いろいろ考えさせる経験でした。

2014年5月25日日曜日

”第37回 北海道を歩こう”のピンクリボンイベント終了!

http://hidechin-breastlifecare.blogspot.jp/2014/04/37.htmlで告知しましたが、今日”第37回 北海道を歩こう”にコラボしたピンクリボンのイベントが行われました。ちょっと風が肌寒かったのですが、天気は快晴で絶好のウォーキング日和でした。

会場は10kmのゴール地点である真駒内カントリークラブ。9:00までに着かなければならないので余裕をみて7:30前に自宅を出ましたが、かなり早く着いてしまったので会場の準備(風船を膨らませただけですが…笑)を手伝いました。9:30からイベント開始予定でしたが、最初はゴールする人もまばらで(写真)、会場の椅子に座る方も少なかったためどうなることかと思いました(汗)。



しかし徐々に人数が増えてH病院のO先生がピンクリボントークとクイズを始める頃にはけっこうな人数が集まってくれました(写真)。



チェアーフラのステージでは集まった方々も一緒に振り付けを覚えて踊ってくれたり(写真)、私が担当したクイズでも若い方々が積極的に答えてくれたりなど、なかなかの盛り上がりだったと思います。



会場に設置したピンクリボン in Sapporoのブースには、私の病院から持って来た検診の模型(しこりがかくれている乳房の触診モデル)を置いておいたのですが(写真)、思いのほか多くの方々が立ち寄って下さいました。特に印象的だったのは、触ってみたいとおっしゃった方の多くが若い方だったことです。若いうちから自分の乳房に関心を持つことはとても大切なことですので、自己検診のコツなどを詳しくご説明しました。また、会場のボランティアとして参加していた北翔大学の男子学生さんたちがこの模型に興味を示してくれて触ってくれたのは今後の彼らのパートナーや奥さんに乳がん検診の大切さを伝える上でもとても重要なことですし、とてもうれしく感じました。



ピンクリボン in Sapporoとしては初めての”北海道を歩こう”への参加でしたが、予想以上の成功だったのではないかと思います。紫外線にはかなりやられてしまいましたが、もし来年も参加できるのであれば是非協力したいと思っています。

2014年5月24日土曜日

札幌乳癌カンファレンス 2014

今年第4回を迎えるAZ社主催の「札幌乳癌カンファレンス」が、市内某ホテルで昨夜行なわれました。

Session1はG病院病理部のA先生による特別講演でした。今回のテーマは「乳癌の不均質性」。かなり専門的になりますので詳細な内容は割愛しますが、G病院の膨大な病理標本から得られた様々な所見を提示されながらお話しされた内容は目から鱗が落ちるようなお話でした。たとえばホルモンレセプターの陽性率が60%だとしても残りの40%は陰性です。本来がん細胞は1個の細胞から分裂して増殖するので同じような性質の細胞の塊になるはずなのに性質が違って見える細胞が混在している、これを不均質性と言います。HER2もKi-67も核異型度も組織型もがんの組織の中には不均質性がみられます。これはどうしてなのか?というお話でした。もちろん、よくわかっていないことも多いのですが、数多くの標本を見てきたA先生の推論や示唆は大変勉強になりました。

そのあとのSession2「診断に難渋した症例」の症例検討は私が司会をしました。いつもはA先生が病理の解説と司会を兼ねるのですが、今回初めて別に司会を置いたため、ちょっと戸惑いながらもなんとか無事終了することができました(汗)。症例は3施設から提示されました。嚢胞内腫瘍なのか?腫瘍に嚢胞様成分が伴ったのか?という画像的にも病理診断的にも非常に興味深かった症例、非浸潤がんに乳管内乳頭腫のような組織が混在し、どのように病理診断すべきか、どのように形成された腫瘍なのかが問題になった症例、乳腺のはずれに発生し、画像的には典型的な乳がんのように見えた顆粒細胞種の症例の3例でしたが、A先生の切れ味鋭いコメントに、司会をしながら感動していました。

終了後は懇親会で親睦を深めました。今回は以前私たちの病院の担当MRをされていて現在G病院の担当をしているKさんがA先生に同行されていて久しぶりにお会いすることができました。大変仕事ができるMRさんでしたが、お元気にご活躍されているようで安心しました。A先生は先日腰を痛めてしまったようで辛そうでしたが無事東京に戻られたでしょうか?機内で座っているのはけっこう腰に来ますのでちょっと心配です…(汗)

この会は、また来年も開催できそうです。乳腺病理の第1人者のA先生に直接1対1でお話をうかがうことができる機会はそう多くありません。また来年も勉強させていただけるのを楽しみにしています。

乳腺嚢胞の穿刺から難治性の膿瘍をきたした若年女性のお話

先日の外来にニセコ方面に住んでいるSさんという患者さんが1年ぶりに来院されました。

Sさんと私の初めての出会いは今から15年以上前です。まだ20才ちょっとくらいだったSさんは、近くの外科で乳腺の嚢胞に対して繰り返し穿刺排液を受けていたところ乳腺膿瘍を併発してしまい、なかなか改善しないということで私たちの施設に入院となりました。

局所麻酔で膿瘍を切開しドレーンという管を入れる処置をしましたが、すでにかなりこじれてしまっていたために次から次へと他の場所から排膿し出し、右乳房の内側・外側のそれぞれ上下に合計4カ所の切開を要しました。最終的には全身麻酔下で乳腺の裏側から広範囲に洗浄しドレーンを留置したところ、ようやく治癒傾向となって退院となりました。まだ未婚、未出産の若年女性でしたので、美容的にも、その後の授乳に関しても当時は非常に心配しました。

しかしその後無事に結婚し、現在12才と2才の子供の母親になっています。心配した乳腺炎も起こさず、授乳も良好だったようですし、美容的にも今はほとんど傷跡がわからなくなりました。あれだけ激しい侵襲を加えてしまったのにこのような順調な経過を取ることができるとは当時は思いもしませんでした。人体、特に女性の身体って不思議なものです(故 渡辺淳一先生も小説の中でよく書かれていました)。

毎年その患者さんに会うたびに当時のことが思い出されます。でも大変だったという思いより、こんなに立派な母親になってくれて良かったという思いの方が強いですね。来年またお会いできるのを楽しみにしています。

2014年5月19日月曜日

”乳腺外科医”ではなくなった理由

平成になって初めての国家試験で医師になってから25年あまり、そして本格的に乳腺外科を始めてからいつの間にか19年がたちました。

がん専門病院に1年間研修に行った以外は札幌市内の関連病院でほとんど乳腺患者さんばかり診療してきました。がん専門病院と私たちの病院のような一般病院では役割もできることも異なります。それぞれの良さ、欠点があります。

今の病院では、外来患者を診ること、検診をすること、手術をこなすこと、病棟患者を受け持つこと、日当直や救急患者に対応すること、他の地域の内科の手伝いに中期的に行ったり、道内の関連病院へのローテーションをこなすことなどが求められます。研究は自主的に行なって学会にも参加していますが、したくないならしなくても評価は下がりません。もちろん、他の職種への指導は別に求められてはいません。

実は私には持病があります。正常眼圧緑内障という眼圧は正常でも視野が狭くなっていく病気です。診断されたときにはすでに両眼ともかなり進行していて手術は危険な状態だと言われました。そして10年前には、いつ失明してもおかしくない、合併症のリスクも高いけど手術をするかどうか考えるように関連病院の眼科主治医に言われました。その主治医は、自分にはこのようなリスクの高い手術の経験はないから、と緑内障専門病院を2カ所紹介されました。札幌の有名病院では「すぐに手術しないと失明する、それ以外の選択肢はない」と言われましたが、東京のT病院では「手術はまだ勧められない。失明はあと2年は大丈夫、でも5年はわからない。」と言われたため、それならまだこのままでいようと考えて手術を受けるのをやめました。

結果的には今もなんとか見えていますのでこの時の判断は正解でした。なぜなら手術で眼圧を今以上に下げてしまったら視力が著しく低下して外来診療もできなくなっていたからです。がん患者さんの予後告知と同様、あくまでも統計的な数字ですので患者個々にとっては必ずしもこのような医師の予測が当たるわけではありません。このような経験も踏まえて、私は差し迫った必要性がある場合以外は基本的に予後告知はしません。

ただ視野狭窄が高度であることは確かでしたので、患者さんにリスクを負わせてはいけないと考え手術の執刀からは徐々に手を引いていきました。そしてその後は悪化のスピードは落ちたもののやはり少しずつ進行して現在に至っています。ですから緑内障が悪化した時点で、私はすでに”乳腺外科医”ではなくなっていたのです。乳腺センターができてからは管理業務が新たに加わったため、一応センター長という立場を与えられ現在に至っています。

給料をもらっている以上、なんらかの形で病院に貢献しなければなりません。自分の病気によってさまざまな業務への支障をきたすことが入院患者さんに誤解や迷惑を与えてしまうことを避けるために、やむを得ず病棟を離れ主な仕事を化学療法と検診を含めた外来に移行していきました。そしてもう一つ、私の使命と感じていたことがあります。それは、乳腺外科医と乳腺外科医を支えてくれる技術職の職員を育てることです。これはもともと力をいれていたことではありますが、病気が悪化してからは、彼女たちの成長が自分の遺産のように感じていました。もっともっと彼女たちに成長できる機会を与えてあげたいと考えて、学会にも演題を出しながら一緒に行くようにしてきました。

ただここ数年で技術職の職員たちの自主性が育っていることや、N先生が加わってG先生の負担が軽減してきたことで私が果たしてきた役割もそろそろ終わりを告げる時期が来たのではないかと感じています。

いま自分ができることの中でいままでやりたくてもできなかったことってなんだろうか?とか最近よく考えています。そもそもこのブログを始めたのは、こういうことが自分がやりたかったことだからです。診察だけでは不十分な情報をわかりやすく説明してあげたい、嘘や間違った情報から患者さんを救ってあげたい、などがきっかけでした。このような活動を自分の主たる生業にできないかということをここ数年ずっと考えてきました。しかし実際は簡単なことではありません。

生活を維持しながら自分に適したやりがいのある生き方を見つけること、それが当面の私の課題だと思っています。”乳腺外科医”はとっくに卒業しています。できれば”乳腺科医”は最後まで続けたいものです。

数年前の悲しい出来事…

このようなブログを書いているとき、いつも気を使うのは守秘義務に関してです。私が誰なのかご存知の方もいらっしゃいますのでうかつに書いてしまうとその患者さんが特定されてしまう可能性があります。ですからそのような時は書くだけ書いて下書きの状態で保存したままにしておきます。一定時間が経ってからであれば個人情報が漏れるリスクは低くなりますので差し支えないと判断したものを公開していきたいと思っています。以下は数年前に書いた内容です。

私は乳がんの術後は10年は通院するように患者さんにお話ししています。再発が多いのは一応10年間と言われているからです(時にそれ以上たってからの再発もありますが…)。

そして10年が無事経過すると私もとてもうれしくなります。
「良かったですね!おめでとうございます!」
とお話しすると患者さんも長かった闘病を思い出すのかほっとした笑みを浮かべて一緒に喜んでくれるのです。


Aさんも昨年の春に無事10年を迎えました。術後に抗がん剤を投与し、ホルモン療法を5年行ない、ようやく迎えた10年目だったのです。

このとき私の記憶ではAさんも無事10年を迎えて喜んでいたはずです。そして半年後の乳腺検査の予約をして元気に帰られたのです。

しかし、その1ヶ月後に予約日を変更したいとご本人から連絡が入ったのがAさんとの関わりの最後でした…。

理由はわかりません。病院に入ったのはAさんが自ら命を絶ったという連絡だけでした。

乳がんはようやく克服できたのに何が彼女を絶望させてしまったのか…。10年もAさんを診てきて、わかっていたようで実は何も彼女のことをわかっていなかったのです。乳がんが治ったことも彼女にとってはそれほど大きなことではなくて、きっともっとつらいことを抱えていたのだと思います。どうして気づいてあげれなかったのか…悔やんでも悔やみきれません。

患者さんに向き合う時は、「病気」を診るのではなく、「病気を持った一人の人間」を診るのだということをわかっていたつもりでわかっていなかったのかもしれません。今はただただAさんのご冥福をお祈りするしかありません…。

この出来事から数年、私は患者さんに対して「病気を持った一人の人間」として診ることができているのか…もしかしたらまだまだ不十分なのかもしれません。

2014年5月15日木曜日

ピンクリボン in Sapporo理事会

昨日市内某ホテルの中華レストランの一室でピンクリボン in Sapporoの理事会が行なわれました。

参加者は三角山放送局を中心とした事務局の方々と市内の乳腺外科医6人、そして市中病院の看護師長さん1人でした。昨年度の活動報告と今年度の活動方針の報告があり、今年度の体制の確認が行なわれました。資金面では事務局の方々がかなり苦労されているようですが、企業や自治体の方々のご賛同もいただきながらなんとか今年も活動できそうです。

まずは5/25の「北海道を歩こう」のイベントへの参加、そして今年は9/7に札幌市内で行なわれるイベントに便乗させていただく形で行なわれる「ピンクリボンロード」、そして来年の2月の「サバイバーズフォーラム」をはじめ、イベントがたくさん企画されています。また近づいたらここで告知したいと思っています。

会議が終わってからは美味しい中華料理とお酒を味わいながら、楽しい時間を過ごしました。今年もピンクリボン運動に少しでも参加できるように頑張ります!

2014年5月11日日曜日

乳癌の治療最新情報37 エベロリムス3〜BOLERO3の結果

エベロリムス(アフィニトール®)は、BOLERO2という臨床試験などの結果を受けて、つい先日ER陽性再発乳がんに対しての効能が追加となりました。今回は、トラスツズマブ(ハーセプチン®)抵抗性の乳がんに対するエベロリムスの上乗せ効果についての臨床試験(BOLERO3)の結果がLancet Oncology誌オンライン版に掲載されました(http://www.thelancet.com/journals/lanonc/article/PIIS1470-2045(14)70138-X/abstract)。

難しい話になりますが、トラスツズマブ抵抗性の乳がんにおいては細胞内のPI3K/Akt/mTOR経路という部分のシグナル活性化の関与が示唆されています。エベロリムスはmTORに対して阻害作用を持つ分子標的薬ですので、トラスツズマブ耐性のHER2陽性乳がんに対する効果が期待されていました。

今回の臨床試験の概要は以下の通りです。

対象: 対象はタキサン治療歴のあるHER2陽性、トラスツズマブ抵抗性、進行乳がん患者。

方法: プラセボ対照無作為化二重盲検第III相試験で、weeklyトラスツズマブ(2mg/kg)+ビノレルビン(ナベルビン®)(25mg/m2)にdailyエベロリムス(5mg/日)を追加した群(以下エベロリムス群)、またはプラセボを追加した群(以下プラセボ群)に無作為に割り付けられた。
 
主要エンドポイント: 無増悪生存期間(PFS)…intention to treat解析で評価。

結果:
・2009年10月26日から2012年5月23日に569例が登録され、エベロリムス群(n=284)とプラセボ群(n=285)に無作為に割り付けられた。
・PFS中央値はエベロリムス群、プラセボ群でそれぞれ7.00ヵ月(95%CI:6.74~8.18)、5.78ヵ月(95%CI:5.49~6.90)であり、ハザード比は0.78(95%CI:0.65~0.95、p=0.0067)であった。
・主なグレード3/4の有害事象として、好中球減少症[エベロリムス群204例(73%)対 プラセボ群175例(62%)]、白血球減少症[106例(38%)対 82例(29%)]、発熱性好中球減少症[44例(16%)対 10例(4%)]、疲労感[34例(12%)対 11例(4%)]などであった。
・重篤な有害事象は、エベロリムス群117例(42%)、プラセボ群55例(20%)であった。

以上の結果から、エベロリムスの追加投与は、タキサン治療歴のあるHER2陽性、トラスツズマブ抵抗性、進行乳がん患者のPFSを有意に延長しましたが、有害事象の頻度も高くなるため注意が必要なようです。HER2陽性再発乳がんの治療としては、すでにペルツズマブ(パージェタ®)、T-DMI(カドサイラ®)が使用可能になっています。今後エベロリムスがHER2陽性再発乳がん治療においてどのような順位付けになるかはまだ不明です。

なおアフィニトール®の添付文書には、

⑶ 手術不能又は再発乳癌の場合
1)非ステロイド性アロマターゼ阻害剤による治療歴のない患
者に対する本剤の有効性及び安全性は確立していない。
2)臨床試験に組み入れられた患者のホルモン受容体及び
HER2の発現状況等について、【臨床成績】の項の内容を
熟知し、本剤の有効性及び安全性を十分に理解した上で、
適応患者の選択を行うこと。


と書いており、現時点でHER2陽性乳がんに対して保険適用となるかどうかは微妙です。

2014年4月27日日曜日

乳腺術後症例検討会 32 ”2014年度初!”

先週の水曜日はいつもより1週早い症例検討会でした。本当はG先生にマンモグラフィ診断の基礎についての話もしてもらう予定だったのですが、1週早まったためにG先生の予定と重なってしまい今回は3症例の検討だけになってしまいました。

そんなこんなで今回は参加人数は少ないかと思っていたのですが、関連病院の技師さんたちの参加人数もいつもより多く、他施設の技師さんたちも多く参加してくれたので結構な人数が集まりました。

今回の症例は、皮膚肥厚を伴った硬がん症例、非浸潤がんのような超音波画像を呈した高齢者の陳旧性線維腺腫の症例、淡い微細石灰化の出現で検診発見され、当初非浸潤がんも疑われた硬がん症例の3例でした。特に珍しい組織型ではなかったのですが、活発な意見交換で盛り上がりました。

今回初めて参加してくれたK病院の放射線技師さんたちは、とてもよく勉強しているようで積極的に的確な意見を述べてくれました。K病院と言えばH大同期のH先生が乳腺外科医をしている病院です。次回は是非H先生もご一緒に参加して下さいとお伝えしました。ちなみにH先生はE先生のいるD病院の院長のH先生の弟さんです(笑)。

来月はG先生のマンモグラフィ診断の話と症例検討です。また今回のように多くの参加者が集まることを期待しています。

2014年4月18日金曜日

乳癌の治療最新情報36 T-DM1(カドサイラ®)ついに発売!

以前から何度かご紹介してきましたが(http://hidechin-breastlifecare.blogspot.jp/2010/07/18adc.html、http://hidechin-breastlifecare.blogspot.jp/2010/10/adc.html、http://hidechin-breastlifecare.blogspot.jp/2013/04/t-dm1-vs-trastuzumabdocetaxelphase.html)、HER2陽性乳がんの新規治療薬T-DM1(カドサイラ®)がようやく4/17に薬価収載され4/18に発売になりました。

カドサイラはハーセプチンにDM1(エムタンシン)というチューブリン阻害剤(抗がん剤の1種)を結合させて、HER2が発現している細胞(主にがん細胞)に集中的に効果を発揮する薬剤です。

効能・効果は、HER2陽性の手術不能又は再発乳がんとなっていますが、添付文書には2次治療以降での有効性しか臨床試験で証明されていないと記載されており、実質的に2次治療以降で使用されることになります。投与方法は、1回3.6mg/kgを3週間間隔の点滴静注です。薬価は100mgバイアル製剤が23万5108円、160mgバイアル製剤が37万3945円と非常に高価ですのでほとんどの方が高額医療の対象となります。

HER2陽性乳がんの新規治療薬、特に分子標的薬の開発は目覚ましいものがあります。高額なのが難点ですが、それでもそれに見合う効果が期待できるのであれば新薬の発売は患者さんにとっては朗報です。今、私たちの施設にもこの薬剤の発売を待っていた患者さんたちがいます。ただ血小板減少などの副作用もありますので、十分に注意しながら投与していきたいと考えています。

2014年4月15日火曜日

”第37回 北海道を歩こう”でピンクリボンイベント!

先日、ピンクリボン in SAPPOROの担当者から、”北海道を歩こう”というイベントで乳がんの啓発活動をするので手伝ってもらえないか?という依頼が来ました。特に予定もなかったのでお手伝いさせていただくことになりました。

日程は5/25(日)。”北海道を歩こう”の大会概要はHP(http://www.shsf.jp/walk/about/)、ピンクリボンイベントに関しては、ピンクリボン in SAPPOROのHP(http://pinkribbonsapporo.web.fc2.com/)をご覧下さい。

まだ打ち合わせはしていませんが、私は10kmコースのゴール地点のブースで自己検診の模型を使って自己検診の方法などをご説明したり、ご質問にお答えする予定です。自己検診の模型は私の病院のを持っていく予定でしたのでさっそく今日探してみましたが、3つのうち古い1つしか見つかりませんでした(汗)明日にでもまた探してみるつもりです(乳腺センターの予算で買ったものですのでなくなるとまずいです…泣)。

札幌近郊で最近運動不足だなと感じている方は是非このイベントに参加してみて下さい(参加申し込み締め切りは4/25)。そしてピンクリボンのブースを見かけたらお気軽にお立ち寄り下さい!

乳房切除術+腋窩リンパ節郭清後の放射線治療〜”リンパ節転移1-3個でも有効!?”

乳房切除+腋窩リンパ節郭清後に胸壁および所属リンパ節(鎖骨上、胸骨傍)に照射を加えるべきかどうかについては、長い乳がん治療の歴史の中でさまざまな変遷がありました。

かなり昔(私が医師になる前)には、乳がん術後にはかなりの症例に対して放射線治療を行なっていた時代もあったようです。しかし徐々に全例に対して照射をすることに対して疑問を呈する報告が出されるようになり、EBCTCG(Early Breast Cancer Trialist's Group)が発表した1995年のメタアナリシスにおいて、全ての乳がん患者に対して乳房切除+腋窩リンパ節郭清後に放射線治療を加えても局所再発率は低下させても全生存率は改善しないという報告が出されてからは、腋窩郭清後に放射線治療をするケースは稀になってきました。その後の2000年のメタアナリシスにおいても20年生存率には差がないという結果でした。

しかし、これらは”(リンパ節転移がない症例を多く含む)全ての乳がん患者さん”に対して予防的に照射する有益性はないということです。その後リスク別の解析が行なわれ、2001年のASCOにおいて、リンパ節転移4個以上の再発リスクの高い患者さんにおいては放射線治療が推奨され、リンパ節転移が陽性かつ腫瘍径が大きい(5cm以上)患者さんにおいては放射線治療が考慮されるというガイドラインが発表されてからは、これが多くの施設の標準的な考え方になっていました。

さて、ではリンパ節転移が1-3個(腫瘍径を問わず)の場合についてはどうでしょう?やはり照射した方が良いのではないかという意見が最近では多いような印象ですが(乳癌診療ガイドライン2013年度版でも推奨グレードBになっています)、実はまだ完全なコンセンサスが得られていません。今回EBCTCGがこのことに関する新たなメタアナリシスの結果を報告しました(http://pmc.carenet.com/?pmid=24656685&keiro=journal)。

概要は以下の通りです。

目的:リンパ節転移が1~3個と少ない患者における放射線治療の効果について評価する。

対象・方法:オックスフォード大学のEBCTCGによる1964-1986年に行なわれた無作為比較試験22試験に参加した8135例の患者データのメタアナリシス。乳房切除術+腋窩リンパ節郭清後に放射線治療を受けた、または受けなかった患者さんにおける再発または死亡について10年間(または2009年1月1日時点まで)追跡し、参加試験、個々の追跡年、試験開始時年齢、リンパ節の病理所見で層別化して分析。

結果:
①リンパ節転移0個(700例)→放射線療法は局所再発(両者の有意水準[2p]>0.1)、全再発(放射線療法群vs. 非療法群のリスク比[RR]:1.06、95%信頼区間[CI]:0.76~1.48、2p>0.1)、乳がん死亡(同:1.18、0.89~1.55、2p>0.1)に有意な影響を及ぼさなかった。
②リンパ節転移1-3個(1314例)→放射線療法は局所再発(2p<0.00001)、全再発(RR:0.68、95%CI:0.57~0.82、2p=0.00006)、乳がん死亡(同:0.80、0.67~0.95、2p=0.01)を抑制。1314例中1133例が全身治療(シクロホスファミド、メトトレキサート、フルオロウラシルまたはタモキシフェン)を試験中に受けており、これらの症例では局所再発(2p<0.00001)、全再発(RR:0.67、95%CI:0.55~0.82、2p=0.00009)、乳がん死亡(同:0.78、0.64~0.94、2p=0.01)を抑制する効果がより高かった。
③リンパ節転移4個以上(1772例)→放射線療法は局所再発(2p<0.00001)、全再発(RR:0.79、95%CI:0.69~0.90、2p=0.0003)、乳がん死亡(同:0.87、0.77~0.99、2p=0.04)の抑制がみられた。

以上の報告からは、”リンパ節転移が少なくても放射線治療をした方が良い”という結論のように受け取れます。しかし、よく見てみると、今回示された死亡率は、”全死亡率”ではなく”乳がん死亡率”となっています。最初に述べたように、昔よく行なわれていた放射線治療が行なわれなくなった理由は、局所再発率は下げても”全生存率”は変わらなかったからです。2000年のEBCTCGの解析においても20年局所再発率(照射なし30% vs 照射あり10%)とともに乳がん死亡率も低下させてはいましたが、他病死が増加したためにその効果が相殺され全生存率(同36% vs 37%)の改善は見られなかったと報告されています。今回の論文すべてにはまだ目を通してはいませんが(インターネット版のみなので)、乳がん死亡率の低下のみで有益性を判断するのは不十分だと思います。少なくとも今回の検討の対象になっているのはかなり古い時代の患者さんですので他病死の影響は無視できないのではないかと思います。ただ現在の放射線治療は以前に比べると心臓など他臓器への影響は著しく低減しているため、現在の治療とこの報告は同列には考えられません。仮に全生存率で有意差がなかったとしてもあまり参考にならないかもしれません。エビデンスを考える際に、いつの時代の症例を対象にしているのかをよく考えないと謝った判断をしてしまうことがあるので注意が必要です。

結局リンパ節転移が1-3個の場合に放射線治療を行なうかどうかは私はまだ判断を保留にしておきます。

2014年4月10日木曜日

STAP細胞、本当にあるといいですね!

今月に入ってなかなかブログを更新できませんでした。緩和病棟の患者さんの状態が悪くて落ち着かなかったのと乳腺センターの総括会議や乳腺指導医の書類を作っていたりなど雑務が多かったこともありますが、なんとなく気力がわきませんでした(汗)男の更年期でしょうか?(泣)

巷ではSTAP細胞があるのかないのかなどが話題になっていますが、個人的には割烹着とか小保方さんが理研の懲罰対象になるかどうかよりも将来の医療の役に立つSTAP細胞が本当に誰でも簡単に作ることができるのかどうかに興味があります。科学者としてその論文作成作業に問題があったことは確かですのでそれはきちんと反省する必要がありますが、科学的な立証がいま一番必要なのだと私は思います。万能細胞が実臨床に応用できる日を待ちこがれている人が世界中にたくさんいますので、STAP細胞が実在することを私は願っています(乳がん領域への応用は難しいかもしれませんが…)。

さてそろそろ7月の乳癌学会の準備をしなければなりません。でもまったくやる気が起きません(泣)
今回は症例報告(e-POSTER)ですので事前に登録してしまえば終了です。週末から重い腰を上げて頑張ります!

2014年3月30日日曜日

「17th Breast Cancer UP-TO-DATE Meeting」in Tokyo

昨日、NK社主催の「17th Breast Cancer UP-TO-DATE Meeting」に参加してきました。昨年は猛吹雪で参加を断念しましたが、今年は行くときの天候は良好でした。

11:30発の便で羽田に向かったのですが、羽田から天王洲アイル経由で有明の東京ビッグサイトまで行くと思いのほか時間がかかってしまい、14:00の開始時間には間に合いませんでした(汗)。会場に着いて受付をしてから席に座ると、隣にはG病院時代に大変お世話になったT先生がいらっしゃったので一緒に講演を聴いていました。T先生はG病院退職後、岩手と静岡を行き来していましたが、今は岩手に戻られているようです。お元気そうで安心しました(笑)。

今回の内容と感想は、以下の通りでした。

SessionⅠ 「乳がん分子診断の臨床応用」
途中から聴いたのですが、3題目の”血中循環腫瘍ゲノム(CTG)の検出と乳癌腫瘍マーカーへの応用”の話は非常に興味深い内容でした。今後悪性度の診断、術前化学療法の効果判定と予後予測、術後の再発診断などにおいて現在用いられている腫瘍マーカーより有用な情報を提供してくれる検査法になるかもしれません。

SessionⅡ 「再発ホルモンの治療戦略」
1題目は以前聴いたことがある、ホルモン療法耐性機序のお話でしたが、その後の新たな知見も加えてわかりやすく説明して下さったので、知識の整理になりました。これからさらにこの研究が進むことによって、どのタイプの耐性が起きているのか、どの治療が有効なのか、ということが薬剤投与前に判断できることになるのではないかと期待しています。
2題目は最近のホルモン治療に関する臨床試験結果と現在行なわれている臨床試験の動向の解説でした。ここでも取り上げた内容もありましたし、だいたいは知っている臨床試験結果ではありましたが、このように整理されているととても勉強になります。できればこのスライドをT先生からいただきたいくらいです(笑)。

SessionⅢ 「胸骨傍リンパ節への対応」
今回参加する前にMRの方からモデルケースの治療方針のアンケートを書かされたのですが、その結果を踏まえたパネルディスカッションでした。「術前に胸骨傍リンパ節転移が疑われた場合に細胞診を行なうか?」「術前のリンフォシンチグラフィで胸骨傍リンパ節が染まった場合、どのような術式を選択するか?(胸骨傍リンパ節を切除するか?腋窩はどうするか?)」「細胞診で胸骨傍リンパ節転移が診断された場合の術式はどうするか?」などについてディスカッションを行ないましたが、なかなか結論が出るものではなく、アンケート結果とパネリストの意見が一致しなかったりパネリスト間でも意見が異なるなど、まだまだ統一された見解にはなっていないようです。それにしてもT先生もおっしゃっていましたが、最近の若いDrは胸骨傍リンパ節の細胞診も生検もしたことがないというのを知って少し驚きました。

今日は10:00発の便で帰ってきましたが、その後の東京は大荒れだったようですね。AKBのイベントが中止になったとか…。早めに帰ってきて良かったです(笑)。


2014年3月27日木曜日

乳腺術後症例検討会 31 ”2013年度最後!”

昨夜、今年度最後の症例検討会がありました。昨日は外科の送別会などが重なって少し参加者が少なく、なんとなく寂しかったのですが、院外からも2人参加してくれました。

今回も症例は4例。すごく珍しい症例はありませんでしたが、活発なディスカッションが行なわれました。

1例目は、広範囲の乳管内進展を伴う多発病巣で当院初の一次再建となった症例、2例目は、多発線維腺腫フォロー中に石灰化の集簇が出現し、ステレオガイド下バコラ生検を行なった症例、3例目は超音波検査で乳頭側と末梢側に乳管内進展が疑われた充実腺管がんの症例、そして4例目は非浸潤がんが疑われた濃縮嚢胞の症例でした。

終了後に、今後の症例検討会の方向について、技師さんたちから提案が出されました。以前、私も感じていたことではありますが、マンネリ化を防ぎ、より魅力的な症例検討会にするために、来月から新たな試みが始まります。彼女たちが自発的に考えてくれたことが私にはとてもうれしく感じました。これからも工夫しながらより良い症例検討会を行なっていきたいと考えています。

2014年3月24日月曜日

第22回日本乳癌学会学術総会 演題採択結果

今年の7/10-12に大阪で日本乳癌学会学術総会が行なわれます。昨年末に応募した演題の採用通知が先日届きました。症例報告だったので今回はもしかしたらと思いましたがなんとか採択されたようです。G先生、N先生の演題も採択されたので3人で発表してきます。

乳癌学会学術総会には乳腺外科医になることを決意してからは、家庭の事情で演題を出さなかった1回以外は毎回発表しています。どのようなことを発表するかは毎年悩むところですが、私は日常診療の中で感じたことや珍しいと思った症例をピックアップしておいたり、手術患者台帳の入力やカルテの予後調査をしているときに興味深いと感じたことをメモしておいています。その中から学会で発表する価値がありそうなことを選んで発表しています。

最近では、FEC100療法やTC療法で以前報告されていた率に比べてあまりに発熱性好中球減少症(FN)が多いことと、長時間作用型のG-CSF(白血球を増加させる注射薬)(ペグフィルグラスチム 協和発酵キリン)が年内くらいに発売になりそうだということもあって、将来的な1次予防投与の是非を判断するために当院のデータをまとめてみることにしました。

今のところFEC100が約50例、TCが10例ほどの解析ですがなかなか興味深いデータが出ています。やはり、両者ともFNの率は1次予防が推奨される20%を大きく越えていました。一日も早くペグフィルグラスチムが国内でも使用できるようになることを期待しています。

2014年3月18日火曜日

”第11回 With You Hokkaido” 第1回運営委員会

今日は19:00から札幌医大でWith You Hokkaidoの運営委員会がありました。

今日は人数が少なかったのですが、昨年の反省と他の地域のWith Youの状況を踏まえて、今年のWith You Hokkaidoのテーマや内容について意見を出し合いました。

まだ詳細は決まっていませんが昨年までと流れが少し違う感じになるかもしれません。でも内容はきっと興味深いものになると思いますので楽しみにしていて下さい(笑)なお、日程は2014.8.23(土)の12:30からの予定です(終了時間は検討中)。

それにしても昨今の様々な状況の影響で、この会を支援してくれるスポンサーが減ってきているようです。この会を開催するためにはやはり資金は必要です。スポンサーになってくれる企業のMRさんは是非私にご連絡下さい!

2014年3月16日日曜日

”北海道HBOCネットワーク” 発足!

昨日、市内某所にて”北海道HBOCネットワーク 第1回ミーティング”が開催されました。

何度かここでも書いていますが、HBOCというのは昨年アンジェリーナ・ジョリーさんの件で世界中にその存在が知れ渡ることになった”遺伝性乳がん卵巣がん症候群”のことです。米国ではNCCN(全米総合がんネットワーク)がガイドラインを作成し、その拾い上げから検査、カウンセリング、予防治療、フォローアップなどのシステムが確立しつつありますが、日本ではまだかなり遅れています。ようやくHBOCコンソーシアムという組織が中心となって日本のHBOCの状況の把握、カウンセリングの講習会などが開催されるようになり、一部の病院では予防手術も行なわれつつあるようですが、多くの地域ではカウンセリングや遺伝学的検査の実施を行なえる環境がまだまだ不十分です。

北海道ではがんセンターと3大学などでカウンセリングと遺伝子検査の体制が整いつつありますが、私たち一般の乳腺外科医や婦人科医にとってはまだ十分な知識が不足しており、対応のノウハウがよくわかっていないのが現状です。

そこで北海道内のHBOC関連医療の普及、発展のためにこのネットワークを発足させ、昨日その第1回のミーティングが行なわれたというのが今回の経過です。私たちの施設からもG先生、N先生と私の3人が参加しましたが、全道から会議室いっぱい(40人くらい?)の乳腺外科医、婦人科医が集まり、その関心の大きさがわかりました。

会議の内容は、以下の通りです。

①開会あいさつ・HBOCネットワーク設立について(札幌医大 遺伝医学 櫻井晃洋先生)
②HBOCへの取り組み・症例報告(北海道がんセンター 乳腺外科 高橋將人先生)
③BRCA1/2遺伝子検査について(㈱ファルコバイオシステムズ 和泉美希子さん)
④全体討論

詳細な内容は割愛しますが、現在行なわれている一般的なHBOCの1次拾い上げを行なうとその対象者は莫大な数になり(トリプルネガティブだけでも全体の15-20%になります)、その患者さんたち全員にHBOCについての詳細な説明を行なってカウンセリングにまわせる環境(特に説明の時間の確保)がなかなかないこと、得られた遺伝情報をどう管理するか(カルテに記載すべきか、別に管理すべきか、特に未発症者の情報はカルテには残さないのが原則だが、その後のフォローを誰がどうやって行なうかなど)、その患者さんがHBOCと判明した場合に、どの程度積極的に血縁者の人たちに知らせることを勧めるべきか(実際はほとんど十分には伝えられていないのが現状)など、遺伝性疾患特有の難しい問題があることがあらためて理解できました。

今回は初めての会合でしたが、これをきっかけにメーリングリストが作成されて情報交換が可能になるようですし、相談もしやすくなります。まだまだ道のりは長いですが、北海道におけるHBOC診療発展の第1歩になりそうです。

2014年3月9日日曜日

無料クーポン券の有効期限は今月いっぱいです!

昨日は関連病院の土曜日検診でした。関連病院では年数回の日曜検診の他に、ほぼ毎月第3土曜日に乳がん検診をしていますが、3月は毎年無料クーポンの駆け込みが多いため、今年は特別に第2土曜日も乳がん検診を行ないました。

この日、G先生は本院の方の乳がん検診、N先生は釧路の系列病院の乳がん検診(女性のみのスタッフで年数回行っています)ということで10月のJ.M.Sの時以来の3カ所の乳がん検診が同一日に行なわれました。

私が担当した関連病院では、予想通り受診した方のほとんどが無料クーポン対象者でした。ただいつもは繰り返し受診者が多いのですが、今回は初回検診の方が多かった印象でした。”無料クーポンが届いたから検診を受けてみようと思った”という方は今までも非常に多かったのは確かです。検診を受けるきっかけを作ったという意味では、この無料クーポン券の果たした役割は非常に大きかったのではないかと考えています。

新聞報道などでは、来年度(今年の4月以降)からは、無料クーポン券の配布は40才の方のみになるようです。せっかく検診受診率が徐々に増加してきたのにその傾向が止まってしまうのではないかと少し心配です。

昨年の4/1時点で満40、45、50、55、60才の方には夏頃に無料クーポン券が配布されているはずです(自治体によって中止したところもあるようですが)。まだ利用していない方は今月いっぱいが期限ですので、是非無料クーポン券を探して検診を受けましょう!

2014年3月7日金曜日

アンスラサイクリン系抗がん剤の血管外漏出治療薬

抗がん剤投与時の注意すべき合併症の1つが血管外に抗がん剤が漏れることによって起きる組織の障害です。このことに関しては以前ここでも書きました(http://hidechin-breastlifecare.blogspot.jp/2011/01/13_23.html)。また2011.9.7には抗がん剤血管外漏出の治療薬の開発・販売権をキッセイが取得して臨床試験にとりかかるということをニュースとして書きましたが(http://hidechin-breastlifecare.blogspot.jp/2011/09/blog-post_07.html)、ようやく今年になってこの薬剤が承認されたということです。なお、この薬剤はすでに世界32カ国で承認されており、厚生労働省に早期承認の申請が出されたことによってようやく承認されたという経過のようです。

今回製造承認されたこの薬剤は抗悪性腫瘍薬の血管外漏出治療薬、デクスラゾキサン(商品名サビーン点滴静注用500mg)という薬です。適応は「アンスラサイクリン系抗悪性腫瘍薬の血管外漏出」に限定されており、血管外漏出後6時間以内に可能な限り速やかに1~2時間かけて点滴静注するという薬剤です。アンスラサイクリン系抗悪性腫瘍治療薬で乳がんにおいてよく使用されるのはドキソルビシン(商品名 アドリアマイシン)やエピルビシン(商品名 ファルモルビシン)などです。

デクスラゾキサンは、トポイソメラーゼIIの作用を阻害することにより、アンスラサイクリン系抗悪性腫瘍薬が血管外漏出した際の細胞障害を抑制するものと推測されています。

ただ海外での臨床試験において、何らかの副作用(臨床検査値異常を含む)が71.3%に認められているとのことですので、十分な注意が必要です。主な副作用は、悪心(27.5%)、発熱・注射部位疼痛(各13.8%)、嘔吐(12.5%)であり、重大な副作用としては骨髄抑制(白血球減少、好中球減少、血小板減少、ヘモグロビン減少)に注意が必要とのことです。

今のところこの製剤の紹介は製薬会社からはありません。キッセイのMRさんとはお会いしたことがないです…。

2014年2月26日水曜日

乳腺術後症例検討会 30 ”今回の会場は職員食堂!”

今日は定例の症例検討会でした。今回は会議室を確保できなかったため、職員食堂で行なわれました。初めての場所でしたが、テーブルも給茶器もあって、案外好評でした(笑)

症例はいつもの4例。

1例目は、境界明瞭な腫瘤内に微細石灰化を多数認め、乳頭腺管がんか充実腺管がんかで画像診断の意見が分かれた症例でした。病理学的にも少し変わった所見を呈していました。

2例目は、フィルムのはずれに近いところにある淡い微細石灰化の集簇で見つかった検診発見乳がんでした。幸い超音波検査で病変を指摘してくれたため、ステレオガイド下生検はせずに診断可能でした。病理結果はほとんどが非浸潤がんからなる乳頭腺管がんでしたが、これも超音波画像診断が非浸潤がんと乳頭腺管がんで意見が分かれました。

3例目は、良性乳腺疾患にてフォロー中のマンモグラフィで変化が出現し、MRなどの精査にて両側の非浸潤がんと診断された症例でした。この症例は最初の超音波検査では指摘されず、MR後のSecond lookの超音波検査が有効でした。針生検の病理診断が難しかったため坂元乳腺クリニックにコンサルテーションをお願いしましたが、やはりこのような症例を診ていただける第1人者の乳腺病理の先生の存在は大きいです。

4例目は、関連病院から。乳房温存術後10年以上たってからの乳房内再発の症例で、術後の組織変化との区別が難しかったため、診断に時間を要してしまったケースでした。乳房温存術後の乳房内再発は私たちの施設では非常に少ないのですが、久しぶりに経験しました(今回の症例は非照射だった時代の症例でした)。

来月で2013年度は終了です。どうやら親睦会をすることになりそうです(笑)

2014年2月25日火曜日

遺伝性乳がん〜遺伝子検査前のリスク判定ツール

乳がんで治療を受けた方がご家族の中にいると自分は乳がんの家系ではないかと心配になる方もいらっしゃるかと思います。もちろんそのすべてが遺伝性乳がんというわけではありませんが、全乳がんの5-10%は遺伝子の変異が関与した遺伝性乳がんであると言われています。

遺伝性乳がんの代表は、BRCA1やBRCA2などのがん抑制遺伝子の変異によるもので、この遺伝子は1/2の確率で子供に遺伝します。同一家系内に乳がんや卵巣がんが多発していたり、男性乳がんや両側乳がん、若年乳がんの方などがいらっしゃるとその可能性は高くなると言われています。

BRCA遺伝子の検査は保険外ですが、特定の施設で検査可能です。しかし、この検査はだれでも受けることができるわけではありません。乳がんと診断された方が遺伝性乳がんの可能性が高いと考えられる場合に、まず最初にこの遺伝子検査を行ないます。そして遺伝子変異があることが証明されて初めてそのご家族が検査の対象になるのです。ただそのご家族が遺伝子カウンセリングや遺伝子検査を受けるか受けないかは最終的には個々の判断に任されています(遺伝子変異が証明された患者さんがカウンセリングを受けた上でご家族に知らせるか、検査を勧めるかを判断、そして知らされたご家族自身がその検査を受けるかどうかを判断することになります)。

今回、米国予防医療サービス対策委員会(USPSTF)は女BRCA関連腫瘍のリスク評価,遺伝カウンセリングおよび遺伝子検査に関する勧告を改訂しました(Ann Intern Med 2014; 160: 271-281)。「BRCA1またはBRCA2の変異に関連するがんの家族歴を有する未発症女性」に対し,遺伝カウンセリングまたは遺伝子検査を受ける必要性を判断するためのリスク判定ツール(層別化ツール)を用いた評価を推奨することが追加されたのです(推奨グレードB…中等度のベネフィットが確認されている)。繰り返しますが、これは遺伝性乳がん(BRCA関連)と診断された家族が身内にいる人に関するツールですので、ただ単に母親が乳がんというだけでは対象になりません。

リスク層別化ツールとして,Ontario Family History Assessment Tool(表)やManchester Scoring Systemなど5つの選択肢が示されています。ただそれぞれ限界があり,特定のツールを推奨するためにはエビデンスが不足しているということと、日本人を対象としたツールではないことに注意する必要があります。



なお,BRCA変異に関連するがんの家族歴がない女性に対するルーチンな遺伝カウンセリングあるいは遺伝子検査については2005年と同様,「推奨しない(グレードD)」とされています。

2014年2月20日木曜日

形成外科&乳腺外科親睦会

昨日、いつもお世話になっているD病院の形成外科のE先生とI先生、そしてうちの病院の乳腺外科のN先生と私で親睦を深める親睦会を行いました。E先生に来ていただいた1例目の再建患者さんの経過もまずまずで先日無事退院されたということもあってそのお祝いも兼ねた会でした。G先生も参加予定だったのですが、土曜日ころから風邪をこじらせており残念ながら欠席しました。

場所はすすきののフレンチの老舗R。もともとかなり高級なお店だったようですが、経営者が替わってから比較的庶民的?になったという話を以前からE先生に聞いていたのでいつか一緒に行ってみたいと思っていたお店でした。

店内に入ったとたん、やはり高級な印象…。でもソムリエの方はとてもフレンドリーでしたし、E先生の注文で、かなり割安で美味しいワインも置いてくれるようになっていました。

料理はもちろん美味しかったのですが、ワインがあまりに美味しくて会話も弾んで飲み過ぎてしまいました(汗)。”平日なので今回は軽めに!”とE先生は言っていたのですが、結局男2人、女性2人の4人でシャンパン1本、白ワイン1本、赤ワイン3本(スペイン、イタリア、フランス)を空けてしまいました(笑)

会計のころには記憶はとぎれとぎれになり、お金も払ったのかどうかも覚えていませんし(N先生情報では一応払ったらしいですが…)、どこからタクシーに乗ったのかも覚えていません(汗)でもちゃんと家にはたどり着いていました(笑)

ほとんど熟睡できないまま(真央ちゃんの悲劇はTVで見てました…ずっと応援していたので最高の結果が出せなくて残念…でも彼女がずっとものすごい努力をしてきたのは事実ですから名無しの部外者がネット上で無責任に批判すべきではありません!)朝を迎えましたが、宇宙遊泳しているような状態だったのでタクシーで出勤しました。午前中はふらふらでしたが、なんとか午後の外来には復活できました。

ちょっと飲み過ぎましたが楽しい時間でした。またいつか形成外科+乳腺外科の親睦をはかりたいと思っています!

2014年2月16日日曜日

患者会新年会&定年お祝い会

昨日は、午後から市内のホテルMで患者会の新年会(いつもこの時期になってしまいますが…)が行なわれました。

患者会の皆さんと職員(看護師、事務、乳腺外科医)合わせて30人以上が集まりました。当初ホテルのレストランを貸し切りで行なうはずだったのですが、思いのほか人数が増えたため急きょ別室を借り切って行なうことになりました。



食事はかなりグレードが高く、お腹がいっぱいになりました。とても美味しかったです!ただG先生は風邪でほとんど食べれていないようで気の毒でした(泣)。N先生は当直明けだったのでかなりお疲れのようでしたが、元気に患者さんたちと歓談していたようです。

今回は入院中の患者さんも1人参加されていました。体調が心配されましたが、最後まで楽しそうに過ごされていましたので良かったです。また最近受診されていなかった患者さんも参加されており、近況を聞くことができて安心しました。2時間という短い時間でしたが、皆さん楽しんでもらえたようです。

この患者会が終わったのは15:30でしたが、昨日はその後18:00から別件の飲み会がありました。個人的には約18年くらいのお付き合いになる超音波技師のNさんがこのたび定年を迎えるということで、そのお祝い会があったのです。患者会ですっかりお腹がいっぱいになってしまっていたため、インターバルの時間を使って札幌駅からすすきのまでの地下歩行空間をウォーキングすることにしました。距離はだいたい往復で1.8kmくらいでしょうか。たいした距離ではありませんが、それなりに運動になりました!

お祝い会はホテルPの部屋を貸し切りで行なわれました。この会のために職場の技師さんたちが一生懸命に準備してきた手作りの会でとても楽しい時間を過ごすことができました。Nさんは、私が超音波所見に対して何か言っても自分の意見をほとんど曲げないタイプの技師さんですが、自分が間違っていたときには素直に受け入れる柔軟さも持ち合わせています。難しい診断で意見が分かれる時にはよく衝突しましたが、Nさんとの診断対決は後腐れもなくその結果をお互いの糧にしてこれたのではないかと思っています。また、超音波技師さんなのに、術後症例検討会では積極的にマンモグラフィを読んだりして、他のメンバーのお手本になってくれています。そして一緒に飲むといつもみんなを大爆笑させてくれるようなとても楽しい女性です(笑)(写真はあいさつするNさん)



Nさんは今回で一応、定年ということにはなりますが、引き続き嘱託職員として働いてくれることになっています。できるだけ長く一緒に働けたらうれしいと思っています。午後からホテル2軒のはしごでしたが、楽しい時間を過ごすことができました。

2014年2月9日日曜日

”ワーキング・サバイバーズ・フォーラム2014〜がんと仕事〜”終了!

以前お知らせしましたように(http://hidechin-breastlifecare.blogspot.jp/2013/12/2014.html)、今日、京王プラザホテル札幌B1プラザホールにて”ワーキング・サバイバーズ・フォーラム2014〜がんと仕事〜”が開催されました。

このフォーラムに先立って行なわれた無料マンモグラフィ体験には、G先生とH病院のO先生とが読影医として参加していましたが、私はフォーラムだけ参加してきました。


会場は昨年と同様、満員状態でした。やはりがん患者さんの就労問題は切実な問題であるということをあらためて感じさせられました。


内容は、一般社団法人CSRプロジェクトの桜井なおみさんによる「ワークライフバランスを考えてみませんか?”、そして(株)ワイズスタッフの田澤由利さんによる「がんになっても柔軟に働きたい!〜テレワークという新しい働き方」という2つの基調講演と様々ながん関連の団体のアピールトーク、そして懇親会という流れでした。

桜井さんのお話では、日本の高齢化とがん患者さんの状況を踏まえた、がんと闘いながら仕事を継続することの重要性と問題点、そして特に非正規雇用者にとってはなかなか困難であるという現状をアンケート調査などを交えながらわかりやすく解説して下さいました。”ワーク・ライフ・バランス”というのは、「国民一人一人がやりがいや充実感を持ちながら働き、仕事上の責任を果たすとともに、家庭や地域生活においても、子育て期、中高年期といった人生の各段階に応じて多様な生き方が選択・実現できる」ことを指すそうです。がん患者さんにおいても、仕事や家庭に要する時間や自分の自由時間の上にさらに治療にかかる時間が加わった場合、その人その人によって時間配分に対する考え方や必要性は様々なので、それぞれの状況に合わせた生き方が選択できるような社会にしていくべきであるということかなと私なりに理解しました。

田澤さんのお話のメインテーマである”テレワーク”という言葉は馴染みはありませんでしたが、お話を聞いているうちにこの言葉に関連する内容を新聞かテレビで見たことがあることに気づきました。どうやらその活動(企業に働きかけて、テレワークを労働形態の一つとして取り入れる政策)の影には田澤さんらの積極的な働きかけがあったようです。テレワークというのは簡単に言うと”テレ”(離れた)”ワーク(仕事)”、つまり自宅など職場から離れた場所で働く労働形態のことを意味します。企業に所属しながら一定時間(週に何日など)自宅で勤務するような場合と企業にはまったく所属しないで完全に独立した形でテレワークを行なう場合があるそうで、大企業では少しずつ前者の勤務形態を取り入れるようになってきているそうです。ただしそのほとんどは、子育て支援の方法の1つとして行なわれているということで、がん患者さんの働き方の手段としての普及はまだまだのようです。今後田澤さんたちの活動がきっかけでそのような企業が増えてくれば、がん患者さんが自分の体調に合わせながら自宅で仕事を行なえるような時代が来るかもしれませんね。

懇親会では、私のブログを読んで下さっているCSRプロジェクトの方が声をかけて下さいました。このブログを始めてから、何人かの方とこのような形で直接お会いすることがありました。人と人との縁は本当に不思議なものです(笑)
そういえばO先生が、雪まつりで雪像を造ったそうで写真を見せて下さいました(”マンモ”というタイトルです! O先生が写真を送ってくれました!)。大通12丁目の会場にあるそうですので、雪まつりにお越しの際は是非ご覧になって下さい(笑)

2014年2月8日土曜日

初の乳房再建(ティッシューエキスパンダーによる一次再建)!

昨年春から、乳房再建(一次再建)の準備を続けてきましたが、適応の問題やご本人の希望でなかなか症例が現れませんでした。そしてついに昨日、ようやく1例目の一次再建を行ないました。

執刀はN先生で、乳房切除後にD病院からE先生が来て下さってティッシューエキスパンダーの挿入をしていただきました(私はもっぱらE先生との連絡係 笑)。手術は順調に終了し、今朝の患者さんの状態も問題ありませんでした。E先生は午前中にT病院で手術をしてからD病院に戻って、私たちの病院で手術してから今度はSクリニックに乳房再建の手術に行かれました。相変わらず非常に多忙なようですが、まったく疲れを見せないパワフルな先生です(笑)

これからはおそらく同時再建(一次再建)の症例が増加すると思います。徐々に再建にも慣れて、E先生から私たちだけでやってもいいよという許可が得られるように勉強していきたいと思います。

今度D病院の形成外科の先生方(E先生とI先生)と私たちの病院の乳腺外科医3人で懇親会(もちろんワイン!)を行なう予定です。平日なのであまり深酒はできませんが今から楽しみです(笑)

2014年2月2日日曜日

CSPOR-BC年会 in 木更津

昨日、今日と千葉県木更津市で行われたCSPORの年会に参加してきました。

CSPORは日本を代表する臨床試験のサポート組織です。N-SAS BCなどの臨床試験を行なってきた実績があります。私の施設はまだCSPORの臨床試験には参加していないのですが、GセンターのT先生のお誘いでオブザーバーとして今回初めて参加させていただいたのです。

1日目の昨日は、昨年行われた主な乳がん関連学会のトピックスの報告と8人のパネリストによるSt.Gallen 2013の指針をもとにした今後の臨床試験の方向性を探すディスカッションが行われました。会場からはHOセンターのW先生からの鋭い指摘などでやけどしそうな熱い時間となりました(笑)

夕方からは懇親会がありました。W先生と少しですが直接お話することができてとても勉強になりました。またいつもお世話になっているG病院のI先生ともいろいろお話することができて良かったです。またG病院のT先生とは初対面でしたが、ご出身の沖縄の話で盛り上がりました(でもやはり泡盛にはまだ慣れません…汗)。

懇親会後にはGセンターのB先生の部屋に北海道関係者が10人くらい集まって親睦を深めました。なかなか興味深いローカルな話も聞けて楽しかったです。


今朝起きてみると外は薄い霧に包まれてとても幻想的でした(写真)。会場のホテル&会議場は、まわりにゴルフ場しかないような山の中にあります。とても静かで勉強するには最適ですが(周囲に遊ぶ場所はまったくありません)、ちょっと寂しいところです。でもホテル自体は最高でした。

2日目は、いま症例登録中の臨床試験の状況報告と計画中の臨床試験についてのプレゼンテーションがありました。”日本発のエビデンス”へのメンバーの熱い思いがあふれていたと思います。また、この会で共通しているのは、患者さんのQOLを非常に重視していること、臨床試験に参加することによって明らかな患者さんへの不利益が生じないかということに対する監視がしっかりしていることです。そのあたりの視点が曖昧だと鋭い指摘が入ります。

今回の参加でますます自分の勉強不足を知りました。これからは臨床試験への参加を考えていますので、その前にもっと勉強しなければと感じた年会でした。前泊の金曜日は新千歳空港で2時間出発が遅れ、今日は滑走路が1本閉鎖したために津軽海峡上空で1時間待たされ、かなり疲れましたが明日からまた頑張ります!

2014年1月30日木曜日

"チュチュ・プロジェクト(The Tutu Project)"

今日、なにげなく「アンビリバボー」を見ていたら、上半身裸でバレリーナのコスプレをした変なおじさんのことをやっていました。

ご存知の方も多いかもしれませんが、私は初めてこの番組で知りました。この男性は、ボブさんという写真家です。このボブさんはもともとかなり突拍子もないことを言ったり行動したりする人だったようです。ある時、バレエの魅力を紹介する写真を依頼されたものの、ボブさんはバレエをまったく知らないために困った末に自分のバレリーナ姿を写真に撮影して奥さんに見せたそうです。

その後奥さんは乳がんになって手術、そして残念ながら肝臓に再発してしまいました。落ち込んでいた奥さんをなんとか元気づけたいと考えていたボブさんは、以前のことを思い出し、再び半裸のバレリーナ姿を写真に撮って見せたところ、奥さんに笑顔が戻ったそうです。そしてその後も様々な場所でバレリーナ姿の写真を撮っては見せていたところ、奥さんはすっかり元気を取り戻し、再発から8年たった今も比較的お元気に暮らしているそうです。

もしかしたら笑顔が免疫力を上げて、このような結果につながったのかもしれないと主治医はTVで言っていました。以前にここでも書きましたが(http://hidechin-breastlifecare.blogspot.jp/2009/08/with-you-hokkaido.html)、実際、笑いは免疫力を上げるというデータはあるようです。もちろんそれが全てではありませんが、限りのある貴重な時間(これはがん患者さんに限らず全ての人に言えることですが)をできるだけ笑顔で過ごすというのは私も大賛成です。

ボブさんはこの経験を活かして、バレリーナ姿の写真集の売り上げを乳がん患者さんの治療に役立てるプロジェクトを立ち上げました。これが表題の”チュチュプロジェクト(The Tutu Project)”です。

興味のある方は、HP(http://www.thetutuproject.com/)をご覧になって下さい。

2014年1月29日水曜日

突出痛に対する新しい癌性疼痛治療薬

ちょっと遅くなりましたが、先週の土曜日に協和発酵キリンで昨年発売された「アブストラル」という薬剤の講演会に行ってきました。

ご存知の通り、乳がんに限らず、がんの再発は時に堪え難い疼痛を伴います。このような痛みに対しては、通常の鎮痛剤ではコントロールできないことも多く、医療用麻薬が使われます。以前は我が国では麻薬に対するアレルギーが強く(患者さんも医療者側も)、十分な医療用麻薬が使われてこなかった歴史がありますが、ここ10年くらいの間にかなりその有益性に関する知識が浸透してきたのではないかと思います。

昔からある医療用麻薬の代表はモルヒネですが、その後モルヒネ徐放錠(MSコンチンなど)、オキシコドン(オキシコンチン)、フェンタニル(フェントステープやデュロテップなど)が次々に発売され、患者さんの状況に合わせて様々な製剤が使用できるようになってきました。

麻薬系鎮痛剤の基本は、長時間作用型の徐放剤が基本ですが、体動時などに出現する突出痛(急激な痛み)に対しては即効性の麻薬が使われます。モルヒネ製剤の場合はオプソ、オキシコドンの場合はオキノームという薬剤が処方されることが多いと思いますが、以前はフェンタニル製剤の短時間作用型の製剤がなかったため、オキノームなどで代用せざるを得ませんでした。

今回協和発酵キリンから発売された「アブストラル」はフェンタニルの短時間作用型の製剤で、突出痛に有用とされています。この製剤の特徴は以下の通りです。

・消化器症状が少ない(特に便秘)
・モルヒネやオキシコドン内服中の突出痛にも有効
・1日量の多寡に関わらず(ただし経口モルヒネ換算30mg/日以上内服している患者さん)100μgから段階的に増量し(100、200、400μgの製剤があり、100、200、300、400、600、800μgの順で増量)、至適用量を決定する(今までは麻薬の1日量の約1/6程度が目安とされていました)(最高800μg/日)
・舌下錠で溶けやすい
・効き目が早く、効果持続時間があまり長くないので突出痛の経過に合っている(オキシコンチンやオプソは効果発現まで少し時間がかかり、必要以上に効果が長引く)。
・服用は1日4回まで(1日1回まで効果が不十分なら30分後に1回分までの量の追加可能)。

問題点としては、
①異なる用量の製剤を同時には処方できない(誤薬を防ぐため)
②外来で至適用量まで調整するのは難しい(入院の方が調整しやすいかもしれません)
③5回目の突出痛に対しては他の即効性製剤の服用が必要(あまり頻度は高くないと思いますが)
④薬価が高い(1錠あたり、100μg 573.60円、200μg 800.40、400μg 1116.80円)…1日4回100μgを舌下すると、3割負担なら1ヶ月で573.6×4×30×0.3=20649.6円、800μgなら1116.8×2×4×30×0.3=80409.6円!…かなり高いですね(泣)

2014年1月19日日曜日

HBOCコンソーシアム

HBOCコンソーシアムに参加して、今日の夜にようやく札幌に帰ってきました。

HBOCというのは、”遺伝性乳がん・卵巣がん症候群”と呼ばれる遺伝疾患のことです。昨年、アンジェリーナ・ジョリーさんが予防的乳房切除を行なったことで大きなニュースになったのでご記憶の方も多いと思います。

日本ではいまだに遺伝子検査も予防的治療も保険適用になっていないため、医療従事者の意識も低く、一般市民の関心もあまり高くはありませんでした。しかし、アンジェリーナ・ジョリーさんの件以降、マスコミに取り上げられることも多くなってきており、私たち乳腺外科医も遺伝性乳がんの関する十分な知識が必要となってきていますし、患者さんへの説明の責務も生じてきています。

ただ今までは、”遺伝性乳がんとわかったとしても対処法が整備されていないのであれば、結局その事実を知らせることはかえって患者さんや家族の心理的不安や社会的問題(子供の結婚問題など)を生じさせるだけではないか?”と思っていました。でも今回の講演を聴いて、その判断をするのは医療従事者ではなく患者さん側であるということがよく理解できました。

これからは今まで以上に遺伝性乳がんに対して勉強していきたいと感じた学会でした。

2014年1月12日日曜日

女性化乳房症

男性が乳房にしこりを自覚して受診した場合、そのほとんどは女性化乳房症です。特に痛みを伴ったしこりの場合は、症状を聞いただけで第1に女性化乳房症を疑います(逆に痛みを伴わないしこりの場合は乳がんも考慮します)。珍しい病気ではなく、内科のDrからよく紹介を受けます。両側に見られる場合もありますが片側のみのこともけっこう多いですので、患者さんも内科医も乳がんを心配して受診されることが多いです。

女性化乳房症は、なんらかの原因でエストロゲンが有意な状態になり、乳腺が刺激されて乳輪直下の乳腺が腫大し、板状の硬結になったものです。痛みを伴う場合がほとんどです。思春期と高齢者に多いと言われています。乳癌取扱い規約では「腫瘍様病変」の1つに分類されており、腫瘍ではありません。

原因としてよく経験するのは、薬剤性(利尿薬、抗潰瘍薬、抗精神病薬、高尿酸血症治療薬、前立腺治療薬など)と特発性(原因がはっきりしないもの)、そして思春期のホルモンバランスの乱れによるものです。他に肝硬変や腎臓病、甲状腺機能障害、慢性肺疾患などの慢性病や、まれに染色体異常の1つであるクラインフェルター症候群、精巣腫瘍、ホルモン産生腫瘍(下垂体腫瘍、肺がんなど)などが原因のこともあります。

検査としては、まずは乳がんの否定が必要と判断されたら超音波検査を行ないます。マンモグラフィや細胞診は超音波検査で悪性が否定できない場合に私は行なっています。女性化乳房症と診断された場合は、まず既往歴と内服薬のチェック、不妊の有無、精巣腫瘍の有無を確認します。さらに必要に応じて肝機能や甲状腺機能の検査を行ないます。ホルモン産生腫瘍の可能性が否定できない場合には血中のhCGやエストロゲン、LHなどの検査を行なう場合もあります。

治療は、原因薬剤があれば減量、休薬、変更を考慮します。ホルモン産生腫瘍と診断された場合はその疾患の治療を優先します。慢性疾患が原因であれば、その治療を行ないますが、すでに治療中の場合は経過観察もしくは切除を考慮します。特発性の場合も同様です。ただ経過観察中に自然軽快することも多いですので手術はあわてる必要はありませんし、困っていなければ必ずしも切除する必要はありません。

最近、遺伝性女性化乳房(アロマターゼ過剰症)という疾患に関する研究が行われています。遺伝性女性化乳房症は、乳房の高度発育、低身長・性欲の低下などをきたすことが特徴です。さらに、症状の発現時期が早い(思春期より前)、父親または男の兄弟に同様の症状がある場合には本症が疑われます。乳房の増大の程度は、軽いこともありますが強い場合が多く、進行性に悪化(増大)してくる場合もあります。治療はアロマターゼ阻害剤が有効と言われています。

まだ私が乳腺外科医になったばかりのころに2人続けて若者(10代後半と20代前半)が女性化乳房で受診されたことがありました。2人ともよく見かける乳輪直下の硬結を呈する女性化乳房というより、本当の女性の乳房のような大きさと形状をしていましたので、恥ずかしくてTシャツになれないということで手術を希望されました。彼らの発症原因は、原因薬剤の内服や基礎疾患もありませんでしたので、思春期のホルモンバランスの乱れか特発性に分類されるのですが、進行性に増大していたことを考えるともしかしたら遺伝性女性化乳房症だったのかもしれません。

*最近、なぜか何年も前に書いたこの記事に対してのコメントが多いようです(ネット検索で引っかかるのでしょうか?)。PC版のトップページの注意事項にも書いていますが、基本的に個人的な病状のご質問やセカンドオピニオンを目的としたコメントは控えていただくようにお願いしています。それでも書き込まれてしまうとお返事はできるだけ書くようにはしていますが、ほとんどの場合、主治医に確認したり、以前のコメントのやり取りを見ていただければお分かりになる内容かと思います。ご理解いただければ幸いです。

2014年1月6日月曜日

アロマターゼ阻害剤の乳がん発生予防効果

ハイリスク女性に対する薬剤による乳がん発生予防に関しては、タモキシフェンの有用性が以前から報告されていますが(
過去の研究の統合解析では乳がん発生率を38%減少)、アロマターゼ阻害剤(AI)に関する研究は不十分です。今までに報告されているのはエキセメスタンとプラセボの二重盲検ランダム化比較試験のみで(National Cancer Institute of Canada(NCIC)MAP.3 trial)、エキセメスタン群で有意な浸潤性乳がん発症リスクの軽減効果が認められています〔ハザード比:0.35(95%CI:0.18-0.7)〕。

今回、乳がんのリスクが高いと判定された閉経後の女性に対して、代表的なAI剤のアナストロゾール(商品名:アリミデックスほか)の予防投与が乳がんの発症を大幅に抑制し、有害事象も許容範囲内であることが、ロンドン大学クイーンメアリー校のJack Cuzick氏らが実施したIBIS-II試験で示されました(Lancet誌オンライン版2013年12月12日号)。

概要は以下の通りです。

目的・試験デザイン:乳がん高リスクの閉経後女性に対するアナストロゾールの乳がん予防効果およびその安全性の評価を目的とする国際的な二重盲検プラセボ対照無作為化試験。

対象:年齢40~70歳の閉経後女性。45~60歳の場合は相対的な乳がんリスクが一般人口の2倍以上、60~70歳は1.5倍以上、40~44歳は4倍以上。

方法:被験者は、アナストロゾール1mg/日またはプラセボを5年間投与する群に無作為に割り付けた。主要評価項目は組織学的に確証された乳がん(浸潤性乳がんまたは非浸潤性乳管がん)の発症とし、intention to treat解析が行われた。

結果:登録期間は2003年2月2日~2012年1月31日で、アナストロゾール群に1,920例(年齢中央値59.5歳、閉経時年齢中央値50.0歳、経産婦83%)、プラセボ群には1,944例(59.4歳、49.0歳、84%)が割り付けられた。
①乳がん発症数…アナストロゾール群が40例(2%)、プラセボ群は85例(4%)であり、アナストロゾールによる有意な予防効果が確認された(ハザード比[HR]:0.47、95%信頼区間[CI]:0.32~0.68、p<0.0001)(フォローアップ期間中央値5.0年)。
②死亡数…アナストロゾール群で18例(1%)、プラセボ群で17例(1%)認められた。乳がん死はアナストロゾール群の2例(<1%)のみで、他がん死がそれぞれ7例(<1%)、10例(1%)であり、いずれかの群に特異的に多い死因はみられなかった(p=0.836)。
③有害事象…アナストロゾール群が1,709例(89%)、プラセボ群は1,723例(89%)に認められた。総骨折数や特定部位の骨折数には、両群間に差はみられなかったが、関節の痛みやこわばり、手足の疼痛などの筋骨格系の有害事象[1,226例(64%)vs. 1,124例(58%)、RR:1.10、95%CI:1.05~1.16]およびホットフラッシュや寝汗[1,090例(57%)vs. 961例(49%)、RR:1.15、95%CI:1.08~1.22]は、アナストロゾール群で多かった。

以上の結果から、「アナストロゾールは、乳がんのリスクが高いと判定された閉経後女性において乳がんの発症を抑制した」と結論づけています。

ただ確かに乳がん発生率は低下させていますが平均フォローアップ期間はまだ5年と短く、総死亡率の低下は証明されていません。健常者に対してこのような薬剤を予防投与する場合、目的のがんの発生を抑えることは大切ですが、予防投与に伴う有害事象によって総死亡率が増加してしまえば意味がありません。AI剤による予防効投与の真の有益性を証明するためにはもう少し時間がかかりそうです。

なお、日本人女性に対する乳がん発生リスクの予測モデルは存在しないことと、ホルモン剤の予防投与は保険適用ではないこともあり、日本国内での実用はまだまだ先になります。

2014年1月4日土曜日

仕事始め&大雪

今日は仕事始めでした。と言っても土曜日なので回診をしてから関連病院に行ってマンモグラフィを読んで仕事は終わったのですが、帰る頃には市内は大雪になっていました。

白石区にある関連病院から北区のはずれの自宅まで約15kmあるのですが、後半は畑の中にある吹きさらしの3車線道路です。幸い風はなかったのですがあまりの大雪で視界が悪く、途中2回ほどコンビニに避難しながらようやく無事に自宅にたどり着くことができました(汗)。

そして午後からは自宅前と2台分の駐車スペースの大量の除雪…。毎年毎年札幌のはずれにあるこの地域は降雪量が非常に多いため雪に悩まされます。連日の雪かきでどうしても憂鬱になってしまうので、今年の冬はスノーダンプで運んだ回数を数えることにしました。なんとなく回数を数えると”今日は○○回も運んだぞ〜!”という感じで頑張れそうな気がしたからです(笑)。

年末から何度か雪が積もって除雪しましたが、今までの最高は64回でした。で、今日の午後からのスノーダンプ運搬回数は、108回!正月ということで除夜の鐘の数(煩悩の数)に合わせて終了しました(笑)。終わる頃には雪もやんでやれやれという感じでシャワーを浴びて気持ちよくビールを飲んでくつろいでいました。

ところが…。夕方からまた雪が激しくなってきて、あっという間に元通りになってしまいました(泣)。明日は回診当番なので朝は時間がありません。仕方なくまた玄関前と通勤用の車の周りだけ除雪してきました。今度は75回…。1日に183回、スノーダンプで雪山の上まで雪を運ぶのはかなりきついです…。明日までもう降らなければ良いのですが…(泣)。

2014年1月1日水曜日

謹賀新年!! 風邪引いていませんか?

新年あけましておめでとうございます!

昨年は景気が回復傾向になったこと(実感はありませんが…)、東京オリンピックが決まったこと、そして私たちの病院が新築移転したことくらいしか良いことはなかったような気がします。今年こそは良い1年になることを期待しています。

北海道は今日から明日にかけて大荒れの予報です。札幌は今のところ風はなく、しんしんと雪が降っています。昨年のような悲しい出来事が起きないように、天候が悪いときは外出を控えましょう。

これからますます寒くなってきますので風邪やインフルエンザには注意が必要ですね。私も年末から鼻風邪が悪化してかなりつらいです(泣)。頻回に鼻をかんでいるので普通のティッシュだと鼻の周りの皮がむけてぼろぼろになります(泣)。やっぱり鼻風邪の時はネピアの「鼻セレブ」がいいですね!「鼻セレブ」には、保湿成分の「ソルビット」と「天然グリセリン」が配合されているそうです。でも今回はエリエールの「+Water」を使っています。「+Water」もグリセリンを配合しているようです。ただ個人的には「鼻セレブ」の方がよりしっとりするような気がします(あくまでも個人的な感想です…笑)。

正月は初詣や新年会など、人が多く集まる場所に行くことが多いと思います。私のような風邪ひきは周りの人を考えてマスクの着用を(外出しないのが一番ですが)元気な人は手洗い、うがい、マスクで予防を心がけて下さい。私も4日までには治さなきゃ…。