2012年4月28日土曜日

今日からGW!

今日からのGW、皆さんはいかがおすごしですか?

連休と言っても病院には入院患者さんがいらっしゃいます。正月もそうですが休日の回診当番が必要です。昨年はN先生がいましたので3人で分担しました。今年はN先生が出向研修中なのでどうなることかと思いましたが、呼吸器外科のH先生が1年間、乳腺センターで手伝ってくれることになったので連休中の回診当番も3人で分担することになりました。

結局G先生が3日間、私とH先生が2日間で4/28-30と5/3-6の7日間を分担しました。私は4/29と30なので後半の連休はフリーです!でも今年は娘の部活の関係で結局どこにも行けそうにありませんのでだらだらしていることになりそうです。前半は病院関連の新聞の原稿を完成させて、後半は学会の準備でもしようかと思っています。でもこんなときに限って札幌はとても良い天気でずっと暖かくなりそうです(泣)やっぱりちょっとどこかに出かけてこようかな…。

2012年4月25日水曜日

乳腺術後症例検討会 18 ”炎症性偽腫瘍”

今日は月1回の乳腺症例検討会がありました。院内外の乳腺外科医、病理医、超音波技師、放射線技師などが集まって定例で行なっていますが、最近ちょっと参加者が少ないのが気になっています。特に院外からの参加者が少ないのです。今までは冬で交通の問題があったせいかと思っていましたが今日は晴天だったにもかかわらず院外からの参加者は0でした。なにか開催内容や方法に問題があるのではないかととても気になっています…。

今日も症例は4例。非浸潤がんを疑ったけど炎症性偽腫瘍だった症例、短期間の内分泌療法で病理学的に変化が現れた可能性のある症例、線維腺腫の石灰化のように見えた非浸潤がんの症例、扁平上皮がんの成分を有していて急速に増大した症例の4例でした。画像的に特にすごく問題になるような症例はありませんでしたが、3例目は石灰化がなければ超音波での描出は難しそうな症例でした。 ミニレクチャーは1例目の炎症性偽腫瘍についてで、担当の超音波技師のスライドを用いた説明と病理医の英文の文献を用いた解説がありました。今回の症例はどのような経過でできたのかは不明ですが、MRで拡張乳管が写っていたため、乳管拡張症をベースにして発症したのかもしれません。

もともとは病院内のごく一部で始めたこじんまりした検討会でしたが、技師さんたちの熱心な努力によって年月をかけて徐々に広めてここまできました。来年の春には新病院が完成し移動になります。私はこれまで乳腺センターの活動をもっと病院内(関連病院も含めて)や地域に認知してもらうためにもこの症例検討会を発展させたいと思ってきました。そのためには、この会の開催形式をきちんとすべきです。今までは”乳腺チーム”という、正式ではないぼんやりした集団としての活動でしたが、新病院ができるのに合わせて当院の乳腺センターとしての正式な活動に位置づけようと考えたのです。それは病院HPなどでの対外的な広報上の意味もあり、病院内の案内や時間外勤務の扱いなどのシステム上もその方がすっきりするからです。ただいろいろな問題もあって簡単ではないようです。今まで以上に発展させるためのシステム作りだと思っているのですが…。

2012年4月23日月曜日

保険外適応の抗がん剤が混合診療で使用可能に…

「抗がん剤に保険適用拡大 臨床研究も促す 」という見出しの記事が日本経済新聞に掲載されました。

これは誤解されやすい書き方ですが、「保険外適応の薬剤」に保険が適応されるようになるわけではありません。 今までは例えばシスプラチンやカルボプラチンという薬剤をトリプルネガティブの再発乳がんの治療に用いようとした場合、本来保険が利くはずの入院費や他の薬剤費などの全てが保険外となっていた(つまり全額自己負担)のを保険外適応の薬剤のみ自由診療(全額自己負担)としてその他の費用は保険でまかなえるようにするということです。これはつまり「混合診療」を認めるということです。

混合診療に関しては様々な意見がありますのでWikipedia(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B7%B7%E5%90%88%E8%A8%BA%E7%99%82)をご参照下さい。

実際の診療で「混合診療が認められていたらこの治療ができるのに…」と感じることはないわけではありません。しかし個人的には…やはり反対です。いろいろな理由がありますが、混合診療を許すと必ずそれをいいことにエビデンスはもちろん有効性と安全性を完全に無視して金儲けに走る医師が出てくること、これをきっかけに今まで保険で認可されてきたような薬剤が認可されにくくなる可能性があること、治療を受ける患者さんの経済状況によって医療格差が生じてしまうこと、などがあるからです。

穿った考え方かもしれませんが、本来は混合診療を押し進めるよりエビデンスに基づいてすみやかな保険適応拡大を進めるべきなのに、あたかも患者さんのためであるかのような心地良い言葉を並べて世論を誘導し、医療費削減と経済界活性化のために患者さんの安全性を犠牲にして格差を増大させようとしているような気がしてならないのです。

この問題について詳細に書いているサイトを見つけました。ここに書いていることは私が感じていることに近いと思いますが、全て正しいと押し付けるつもりはありませんし、表現に多少疑問を感じる部分もあります。あくまでも参考までに掲載します。 「患者本位の混合診療を考える会」(http://kongoshinryo.jpn.org/static/) なお、私の考えとは少し違う考え方もあります。 少し古いですが「NPO法人 がんと共に生きる会」のHPにはこのような見解が掲載されています。 http://www.cancer-jp.com/report/data/archive/545.html

どちらが正しいとはなかなか言えない部分もありますし、この内容に共感できる部分もあります。またその患者さんの状況によっても受け取り方は違うのかもしれません。 厚生労働省は来年4月にもこの抗がん剤に対する混合診療を認める方針のようです。一見良いことのように見える今回の改正には、いずれにしても冷静な国民の監視の目が必要です。

2012年4月20日金曜日

アバスチン初使用と独特な副作用

先日遅ればせながらようやく初めて乳がんの胸膜再発の患者さんにアバスチン+パクリタキセルを投与しました。

アバスチンは使い慣れない副作用があるのと高額であることなどから、比較的若くて元気な患者さんを1例目に選びました。投与後数日たちましたが今のところパクリタキセルによると思われる倦怠感があるくらいでお元気です。

アバスチン(一般名 ベバシズマブ)は、がん細胞が分泌するVEGFという血管新生を促すタンパクに結合して腫瘍に栄養を送る血管の新生を阻害する分子標的薬です。つまりがんを兵糧攻めにして増殖を抑えるということです。さらに異常な構造になった腫瘍血管を正常化する働きもあるため抗がん剤が腫瘍に到達しやすくなるとも言われています。単独では効果が不十分なため、抗がん剤(乳がんではパクリタキセルのみ適応)を併用します。

一般的な抗がん剤の副作用(白血球減少、嘔気、脱毛など)はほとんどありませんが、出血、血栓症、消化管穿孔、創傷治療の遅延、血圧上昇、蛋白尿などの副作用があるため、いつもとは違った注意が必要です。出血しやすいため、腫瘍が露出している場合や、抗血小板剤、抗凝固剤などを内服している患者さんには原則お勧めできません。

アバスチンは、米国においてFDAの判断で認可取り消しになった経過などがあり、国内での承認はどうなることかと思いましたが、思いのほかスムーズに認可されました。このあたりの経過はhttp://hidechin-breastlifecare.blogspot.jp/2011/09/blog-post_30.htmlをご参照下さい。その後、徐々に使用症例も増えているようです。今後市販後の調査でどのような成績が出るのか注目していますが、とりあえず今使い始めた患者さんには重篤な副作用なく、劇的な効果がみられることを願っています。

2012年4月16日月曜日

「乳がん〜再発してもうまく付き合う〜」 4/21にEテレで放送

今日面談した製薬会社の方が上記放送の案内を持ってきて下さいましたのでご紹介します。

放送日時:
2012.4.21(土) PM2:00-2:59
放送チャンネル:
NHK教育(Eテレ)
番組内容:
女性のがんフォーラム第1回「乳がん〜再発してもうまく付き合う〜」
2012.3.20に東京で開催された上記フォーラムの内容です。
出演者:
中村清吾氏(昭和大学教授 乳腺専門医)
向山雄人氏(がん研有明病院 緩和ケア科部長)
内富庸介氏(岡山大学院教授 精神腫瘍専門医)
金井久子氏(聖路加国際病院 乳がん看護認定看護師)

ご興味のある方はご覧になって下さい。私は録画しておこうと思います。

2012年4月13日金曜日

製薬会社での「再発治療」の学習会

今日、C社からの依頼で社員教育のための学習会に行ってきました。

話の内容は乳がん診療についてであれば何でも良いということでしたので、「再発治療が目指すもの〜再発したら治癒しないと諦めるのか?〜」という演題名でお話ししてきました。これは私の究極のライフワークですので、エビデンスとは少し離れた内容になりましたが、再発治療に対する思いを自分の経験をもとにスライド50数枚にまとめてお話ししました。

お話しした内容の概略は、以下の通りです。

①再発の早期発見は無意味なのか?
②再発したら本当に治癒しないのか?
③再発治療と緩和治療の関係
④再発巣の外科的治療/組織採取の意義
⑤再発が治癒したと考えられる症例(Luminal A、Luminal B(HER2+)、HER2 enriched、triple negative各1例)
⑥CR(完全寛解)後の再発治療の継続期間
⑦長期CR症例の特徴
⑧医療の進歩と目指すべき再発治療
⑨製薬企業に期待すること

再発治療は簡単ではありませんが、新薬の開発で闘える武器は増えました。今は乳がんの再発を完全に治癒させることができるケースは非常に少ないかもしれません。しかし、最初から再発したら治らないと決めつけることは治療の進歩を妨げます。もちろん、患者さんにとって無益な治療を医師の自己満足でやり続けることは避けなければなりませんし、常に緩和ケアを取り入れながらQOLを重視した治療を考えていかなければなりません。患者さんの状態を見ながら抗がん治療の中止時期も適切に判断しなければなりません。しかしそういう状況の中でも再発を治癒させたいという意識だけは持ち続けていくことが必要だと私は思っています。

最後から2枚目のスライドであの名言を入れてみました。

「あきらめたらそこで試合終了ですよ(by 安西先生)」(ご存知ない方は是非「SLAM DUNK」を読んでみて下さい)

ちなみにこれは患者さん1人の抗がん治療に最後まで固執するということではありません。常に「再発を治癒させたい」という気持ちを持ち続けること、それが再発治療の進歩につながるという意味です。そして同時に根治を目指す抗がん治療から延命を目指す抗がん治療、そして緩和的抗がん治療への切り替えの適切な判断と早期からの緩和治療の導入が重要であるということを再度強調して約1時間の講演を終えました。

学会での発表は慣れていますが、製薬会社での講演は初めてなので少し緊張しました。なんとか役目を果たせたようでほっとしています。

2012年4月11日水曜日

乳癌の治療最新情報29 デノスマブ(骨転移治療薬)②

ついに新しい骨転移に対する分子標的薬(ヒト型抗RANKLモノクローナル抗体製剤)「ランマーク(一般名 デノスマブ)皮下注120mg」が本日薬価収載されました(発売は来週?)。

注目の薬価は、45155円。分子標的薬でもあり、噂で聞いた米国での薬価が10数万ドルでしたので、思いのほか安くなったようです(それでも高いですが…)。ゾメタ4mgが32254円ですので微妙な差ではあります(自己負担3割で13547円 vs 9677円)が、高価な抗がん剤やホルモン剤も併用していることを考えると少しでも安くと思う方も多いのではないかと思います。

ランマークは以前もここで書きましたが(http://hidechin-breastlifecare.blogspot.jp/2010/08/21.html)、「骨転移を有する進行性乳癌患者を対象としたデノスマブのゾレドロン酸(ゾメタ)対照ランダム化二重盲検多施設共同比較試験」において、有効性(骨関連事象抑制効果)がゾメタを上回ったと報告されています(臨床試験中において骨関連事象が最初に見られた中央値は、ランマーク治療患者27.7カ月に対しゾメタ治療患者においては19.5カ月)。またランマークはゾメタほど腎機能低下に対して神経質にならなくて良いという利点もあります。ただ、下額骨壊死が臨床試験で1.8%(ゾメタは1.3%、有意差はなし)と高いことには注意が必要だと思われます。なお、全生存率およびがん進行までの期間はゾメタによる治療患者、デノスマブ治療患者とも同等でした。

ゾメタは非常に良い薬剤です。今まで骨転移の患者さんたちにとても多くの恩恵を与えてくれたと思います。また、術後補助療法としての生存率向上への寄与も期待されています。ランマークが発売されたからといって、全て切り替えるつもりはありません。とりあえず当面はゾメタ使用中に骨転移が悪化した患者さんに使用してみようかと思っています。

いずれにしても、今までゾメタ使用中に悪化した場合の対応には苦慮してきましたがランマークの出現によって新たな武器が増えたのは確かです。ゾメタで悪化した患者さんにも是非有効性を発揮して欲しいと願っています。

2012年4月8日日曜日

International Breast Cancer Conference(IBCC) in Kyoto



昨日京都でS社主催のInternational Breast Cancer Conference(IBCC) が行なわれました(写真)。
8:30千歳発の便で向かいましたが、羽田乗り継ぎだったのと京都市内の渋滞にはまってしまったため、13:00の開始時間には間に合わず1時間も遅れての参加になってしまいました。

カナダ、フランス、韓国、中国から演者を招いてのフォーラムでしたが、残念ながら中国から来る予定だったDr.Huは他の予定と重なって来日できませんでした。内容的にはちょっと一般の方には難しいものでしたので詳細は割愛します。ただ結局Luminal B(HER2-)とLuminal Aを分けるKi-67のcut off値は未だに結論は出ていないということと、国によって、また医師によって、サブタイプや年齢、進行度別の治療方針(化学療法を加えるかどうか、どのレジメンにするか)はかなり幅があるということがわかりました。

また、韓国のDr.Hanのお話はなかなか興味深いものでした。Dr.Hanは若年乳がんに関しての研究をされている方で、そのデータからは、35才未満の乳がんはタモキシフェンに耐性をもつものが多く、HER2の陽性率が高いわけではないのにERが陽性でも予後が悪い、アジアでは欧米に比べて若年発症の乳がん患者の比率が高い(9.5-12.0% vs 1-2%)などの結果が得られているということです。私の病院のデータではそんなに若年乳がんは多くないのですが…日本の全国集計のデータではどのくらいだったでしょうか…?最近のデータを今度調べてみます。

京都は桜が五分から七分咲きでしたが、土日ということもあってものすごい人出で、道路も渋滞していたため市内のタクシーでの移動は大変でした。でも街中に桜があふれているのはさすが京都、趣がありました(写真は南禅寺の湯豆腐屋さんから写した庭の桜です)。今度は満開の時期に京都を訪れたいです!

2012年4月4日水曜日

第20回乳癌学会学術総会 いつの間にか…


気がつけばもう4月。乳癌学会学術総会に演題を出したのが12月でしたが、作業はそのままの状態で止まっています。先日採用通知が来ましたが、今週末は京都でInternational Breast Cancer Conference、来週はC社での教育講演、そして5月初めまでに頼まれた病院発行の患者さん向けの新聞の原稿依頼、10月に司会を頼まれてしまったA社の症例カンファレンスなどの業務外の仕事に加えて、N先生がいなくなった状況もあったりして、まったく学会準備に目が向きませんでした。

でもあと2ヶ月半…。そろそろ本格的に取りかからなければなりません。でも演題名すら忘れてしまっていますのでかなりまずい状況です(笑)。

今回の学会は熊本。宿を取ることすら忘れていたので今日慌てて医局に書類を提出しました。噂では熊本市内の宿はけっこう埋まっていて確保するのはなかなか困難とか…(汗)。ちょっと不安です。

そして昨年、初めて病棟看護師が乳癌学会に参加しましたが、今回も一人参加してくれることになりました。今はちょっと複雑な病棟構成になっており、乳腺センターは実質2つの病棟(3東、3西)に別れた形になっています。今回参加してくれるのは、新病院で乳腺センターと一緒のフロアになることになった消化器外科(3西)の病棟看護師です。彼女は以前、もともと呼吸器外科と一緒だった今の主たる乳腺センターがある病棟(3東)で勤務していたことがあり、その当時から乳腺に興味を持っていてくれました。最近では3西に患者さんがお世話になっていることもあり、学習会などもしてくれているようです。乳がん治療に興味を持ってくれている看護師が一緒に学会に参加してくれるのはとてもうれしいことです。せっかくの機会なので、学会の雰囲気を感じてもらい、来年こそは研究発表に結びつけてもらいたいと願っています。

(写真は第20回乳癌学会学術総会HPのトップページを撮影したものです)

2012年4月1日日曜日

無料クーポンラッシュ終了!

3月は乳がん検診の無料クーポンの期限なので乳がん検診が非常に多かったです。ようやくそのラッシュが終わりました。

一昨年もそんな状態で検診を断られる方がけっこういらっしゃいましたが、昨年はその影響もあったのか比較的3月ぎりぎりに来院する方は少なかったような印象でした。ところがのど元過ぎると熱さ忘れるとよく言いますが、今年はまたもや駆け込みラッシュが増えたようです。

関連病院の外来へは週2回行っています。毎回朝早くに外来に行って、その間に撮影され、一時読影が終わったマンモグラフィの二次読影と精密検査のオーダーをしています。カルテ診(腫瘍マーカーなどの採血結果や細胞診の結果の確認、紹介状や診断書などの書類書き)が終わってから読み始めますので、通常7時40分くらいに外来に行っています。ところが3月中はそれでも9時の外来開始までに終わらせることができず、外来の合間や外来終了後、本来の出勤日以外の土曜日などを使って読影しなければなりませんでした。

自分としてはもう限界状態だったのですが、病院の管理部はもっと検診を増やしたいようです。今までも検診希望者は断らずになんとかやりくりして受けてきましたし、これからもできるだけ地域住民の要求に応えるだけではなく、さらに乳がん検診受診者を増やすような活動をしていきたいと思っています。ですから病院の方針に異を唱えるつもりはありません。しかし、個人でできることには限界があります…。いつもこのジレンマに悩まされています。