2016年9月25日日曜日

小林麻央さんのブログ「KOKORO」を読みました

はじめて小林麻央さんのブログを拝見しました。

もちろんYahoo!ニュースは毎日見ているので、麻央さんのブログの内容についてはだいたいは知っていました。ただ何となくブログ自体は見ていなかったのです。

乳がん患者さんのブログは数多くあり、私のこのブログやSNSを通して知った患者さんのブログを読ませていただくことは今までもありました。ただなぜか小林麻央さんのブログは今日まで見ることができませんでした。

自分でもどうしてなのか確かなことはわかりませんが…。思い当たる理由は2つあります。

1つ目の理由は麻央さんの診断経過で、人間ドックで乳がんが疑われたにもかかわらず、最初の精密検査で診断できず発見が遅れたことです。麻央さんにとって非常にショックなことだったと思いますし、セカンドオピニオンを受けていればというお気持ちはとても理解できます。でもこのようなニュースが流れると、私たちが明らかに精査で異常なしと診断した方々の中にも不安になってしまう方が増えてしまう可能性があります(芸能人の方の乳がんのニュースの影響はかなり大きいのです)。それらの方々がセカンドオピニオンや他の施設での再検査を希望してしまうとそれでなくても混雑している日本中の乳腺外来がパンクしてしまいます。それが少し憂鬱だったということが自分の中ではありました。

もう1つの理由は、私自身が小林麻央さんの隠れファンだったからです。海老蔵さんの会見からは、かなり深刻な状態ということが推測されましたので、見るのが少し辛かったのかもしれません。

そのような理由ですっかり遅れてしまいましたが、ようやく今日拝見することができました。

ブログには、辛かったであろう診断経過についての内容や、さりげない入院生活のこと、ご家族のことなどが書かれていますが、ご自身の辛いお気持ちはできるだけ抑えて明るく書かれているのが印象的でした。ここに至るまでには、相当辛い時間を過ごしたことと思います。いまも辛い治療の真っ最中であるにもかかわらずこのようなブログを書く気持ちになれたのは、主治医の先生からの声かけはもちろんあると思いますが、麻央さん自身の強さと聡明さ、そして周りの人への優しさがあってのことと思います。

最近、私の病院の患者さんたちを診ていて、がん患者さんは”どのような治療を受けたいか”ということももちろん大切ですが、”どう生きるか”ということはもっと大切なんだと感じています。ご自身で抗がん治療のやめ時やそれまでの間やその後の過ごし方をきちんと考えていている患者さん、これ以上の積極的な治療はかえって逆効果と考えられるため緩和治療へのシフトを勧めても、抗がん治療をやめることは生きる気力を奪うことだと考えて、1%でも延命効果があれば辛い治療を受けるとおっしゃる患者さん…。どちらが正しくてどちらが間違っているということではありません。ただ後者を選択された場合は、自分のいたらなさを感じてしまいます。説明の仕方が悪かったのではないか?患者さんが正しく理解していないことに気づかずにそれを訂正できなかったからではないか?と。でも十分に時間をかけてご説明して納得されていても最終的に後者を選ばれる患者さんは確かにいらっしゃるのもまた事実です。

私たちは、医療者としてベストと思われる治療選択を患者さんに提示することしかできません。患者さんにはそれぞれの思想信条や生き方があります。麻央さんにも大切なご家族がいらっしゃり、仕事に関してもやりたいことはたくさんあると思います。一日も早く病状が落ち着いて、麻央さんにとって充実した時間が過ごせるようになること、そして信頼されている主治医の先生とご相談しながら、ご家族と一緒に納得のできる治療、生き方を続けていかれることをお祈りしています。