2015年1月28日水曜日

乳腺術後症例検討会 37 ”2015年初”

今日は2015年、初めての症例検討会がありました。

体調不良者が多く、参加人数はいつもより少なかったのですが、初参加の院外からの技師さんたちも来ていただきました。

症例は3例。

1例目は肺がん術後に腫瘍マーカーが増加したために行なっていた精査中に見つかった乳がんの症例。画像と経過からは肺がんの乳房転移も考えましたが、MR画像から術前に原発性乳がんであることが推測できた症例でした。

2例目は父親も乳がんだったという男性乳がんの症例でした。男性乳がんはLuminal typeが多いと言われていますが、この症例はERは陽性でしたがHER2も陽性(Luminal B(HER+))でした。男性乳がんでHER2陽性の症例はあまり聞いたことがありませんでしたのでC製薬のMRさんに情報をいただくことにしています。

3例目は関連病院の症例で、乳腺のはずれにあってマンモグラフィでわかりにくかった上に、かなり乳腺症の変化が強かったことと撮影時の月経周期の関係でMRが非常にわかりにくかった硬がんの症例でした。このような症例でも超音波検査はとてもわかりやすいと関連病院のT技師さんは自信満々に強調していました(笑)。

そのあと昨年技師さんたちが学会発表した内容を報告して今回の症例検討会は終了しました。

今年は以前から考えていた招待演者の講演を乳腺症例検討会の特別企画として行なう予定です。5月末に行なう方向で調整中ですが、招待演者の先生にもご快諾いただき、今から楽しみにしています。

2015年1月18日日曜日

2015年 患者会新年会

昨日午後から市内某ホテルで患者会の新年会が行なわれました。

毎年行なわれる新年会ですが、いつも参加者は30人ほどになります。今回の会場となったホテルは一昨年も利用しました(http://hidechin-breastlifecare.blogspot.jp/2013/02/2013.html)。そのとき利用した眺望の素晴らしい19階の和食処の個室はリニューアルで椅子席になったために30人は入れないとのこと。結局交渉の末、3階の宴会場を借り切って行なわれました。

患者さんの中で今回初参加は2名でした。それに久しぶりに参加したベテラン会員さんや初参加だった職員も多かったため、乾杯のあと自己紹介をしてから宴会が始まりました。

2時間という時間はあっという間に過ぎましたが、楽しいひとときを過ごすことができました。食事中、”このフライの魚はなんだろう?”ということが話題になりました。ワカサギにしては大きく、身も厚くて硬めでした。お店の女性に聞いてみると”ふぐ”とのこと。こんな小さいふぐも食べるんですね〜とか話していたのですが、一昨年のブログを見直してみてびっくり。なんとその時も同じふぐのことが話題になっているではありませんか(笑)。この時は骨を食べるか残すかで議論になったのですが、今回は骨は気にならなかったので私はまたまるごと食べてしまいました(笑)。

なお、今回は携帯で写真を撮るのをすっかり忘れてしまいました。写真自体は、会長さんのデジカメでたくさん撮っているたのですが…(汗)。この患者会ももうかなり長く活動しています。今まで撮りためていた写真を一度整理してアルバムにしてみては?と提案しておきました。

昨日の札幌は日中からかなりの雪と風でした。暖かくなったと思ったらまた寒くなったり、インフルエンザも流行っていますので体調管理には気をつけたいものです。
今年もみなさん、元気に楽しい1年を過ごせることをお祈りしています!

2015年1月15日木曜日

異型過形成の乳がん発症リスク

異型乳管上皮過形成(ADH)は、しばしば良悪の診断で病理医を悩ませる病態です。一応、良性ではあるのですが、ADHから非浸潤がん(DCIS)に移行している像が見られたり、ADHなのかDCISなのか病理医でも判断が分かれる場合もあります。

これまでもADHは、前がん病変、もしくは周囲に浸潤がんを将来発生させるリスク因子として捉えられていました。昨年、生検で異型過形成(ADH+ALH(異型小葉過形成))と診断された場合、そのまま経過を見るとどのくらいのがんが発生するのか、という研究結果がメイヨー・クリニック腫瘍学教授のLynn Hartmann 氏によって報告されました(http://www.ascopost.com/issues/november-1,-2014/what-is-the-real-risk-of-breast-cancer-associated-with-atypical-hyperplasia.aspx)。

この報告によると、1967-2001年に同クリニックで異型過形成と診断された女性698人を平均12.5年追跡した結果、143人が乳がんを発症したとのことです。さらに、バンダービルト大学でも別の集団を対象に検証したところ、異型過形成の女性の30%前後が乳がんを発症していたそうです。過形成の範囲が広いほどリスクも高かったようです。

異型過形成は米国で実施される乳房生検の良性所見のうち約10分の1に認められるそうですが(おそらく日本より高率)、今回の研究では、異型過形成のある女性の約30%が、診断から25年以内に乳がんになる(年率約1%)いうことで、今まで推測されていた率よりかなり高いことがわかりました。。

これを受けて、異型過形成と診断された女性は、予防的にタモキシフェンを服用したり、乳がんスクリーニングにMRを加えるなどのガイドラインの改正が必要かもしれないと述べています。

(この論文内における”breast biopsies ”は、切除生検ではなく、針生検、もしくは吸引組織生検を意味するのだと解釈していますが、以下はその前提で書いています)

私たちの施設でも針生検でADHと診断されることは、たまにあります。こういった場合、私たちは基本的に描出された病巣の切除生検をお勧めしています。こういう症例の中には、そのものが実はDCISだったり、DCISとADHが混在していることがあるからです。米国の今までの考え方からすると、やり過ぎだと言われたかもしれませんが、今回の結果を見るとやはり間違ってはいなかったのだと思いました。なぜならおそらく組織生検で異型過形成と診断されて、そののちに乳がんを発症した患者さんの中には、最初からDCISだった、またはDCISが併存していた症例が一定数含まれていると思われるからです(あくまでも推測ですが…)。

いずれにしても、ADHとDCISの診断は非常に難しい場合があります。私たちの施設ではこのようなケースでは、必ず坂元記念クリニックにコンサルテーションをお願いしています。まずは自分たちで診断し、さらに乳腺病理の第一人者の先生の診断を仰いで学ぶことから得られるものは、コンサルテーションにかかる費用よりはるかに大きいと私は思っています。私たちの施設の病理医も同じような意識で考えてくれているので乳腺外科医としては非常に助かっています。

「がんの2/3は”不運(ランダム変異)”が発生の原因」という研究結果

「Science」オンライン版(1/1号)に発がんに関する興味深い研究結果が掲載されました(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25554788)。

この研究は、ジョンズ・ホプキンズ大学医学部腫瘍学教授のBert Vogelstein氏らが行なったもので、不運と環境、遺伝の3つの因子ががんの発症にどの程度寄与しているのかを定量化するモデルを作製し、報告したものです。


その概要は、「遺伝や環境が発がんに関与しているのはおよそ1/3に過ぎず、2/3は幹細胞の分裂時に生じるランダムなDNA変異によって発生する」ということです。もしそうであれば、生活習慣などの環境要因の改善は特定のがんの予防には非常に有効ですが、その他のがんには効果がない可能性があるということになります。

今回の研究では、31の異なる身体組織での幹細胞の分裂数に関する過去の研究を検討し、その領域の生涯のがんリスクと比較しました。ただし、乳がんや前立腺がんなどの一部のがんについては、信頼できる研究がないため今回は対象としていないそうです。計算の結果、22種類のがんは主に細胞分裂時のランダム変異によって説明できることがわかりましたが、その他の9種類は、「不運」と環境や遺伝の組み合わせによる可能性が高いようであったということです。

もしこの報告が真実なら、食生活の改善などによるがんの予防には限界があるということになります。ただ繰り返しになりますが、この研究には乳がんは含まれていません。乳がんは、一部には遺伝が関与することも環境要因(食事やホルモン環境)が関与していることも今までの研究で報告されていますので、おそらく遺伝+環境+不運の組み合わせで発症するものと推測されます。不運は自分でコントロールできませんが、食生活を改めることはできます。それで全て予防できるわけではないという今回の結果ですが、自分でやれることはやっておいた方が良いのは言うまでもありません。

2015年1月9日金曜日

NSABP B36 ”リンパ節転移陰性乳がんに対するFEC100×6とAC×4の予後は同等”

昨年12月に行なわれたサンアントニオ乳がんシンポジウム2014で、リンパ節転移陰性乳がんに対するFEC100×6とAC×4の無作為化弟Ⅲ相試験(NSABP B36)の結果が報告されました。

観察期間中央値は82.8ヵ月(7年)、50歳未満が約40%、ホルモン受容体陰性が約35%、腫瘍径2cm未満が50.0%、グレード3が43-44%。人種は白人が約85%、術式は乳房部分切除術が68%で施行され、トラスツズマブは10-11%で投与されました。グレード3-4の毒性発現率は倦怠感、好中球減少性発熱、感染、口腔粘膜炎、血小板減少、血栓塞栓のイベントはいずれもFEC100で高かったとのことです。化学療法中の死亡はACで2例、FEC100で5例に認められました。

そして予後に関しては、DFS、OSともに両者でまったく差を認めなかったとのことです。もしこの結果が正しいのでしたら、毒性が少なく、短期間で終了し、治療費も安いACの方がより望ましいということになります。ただ、抗がん剤の臨床試験結果は、しばしば追試すると異なる結果が出ることがあります。ACが多く使用されている米国からの今回の報告を見て、FECを主に使用している欧州ではどう反応するのでしょうか?

論文を読んだわけではないので詳細は不明ですが、全例でG-CSFの予防投与は行なっているのでしょうか?FEC100は毒性が強かったということですが、そのために治療強度が下がっていたということはないのでしょうか?論文化されたらよく読んでみたいと思います。またリンパ節転移陽性の場合についても同じことが言えるかどうかもわかりませんので、私の施設では当面はFEC100を継続すると思います。

2015年1月5日月曜日

2015年 仕事始め!

今日から2015年の仕事が始まりました。

病棟、外来は落ち着いていました。年末にFEC100、そしてジーラスタを初投与した患者さん2人も副作用もなく、好中球の低下も抑制されていました。今まで3人に投与していますが、Nadir(好中球の最低値を呈する時期)の採血ではみな好中球減少が抑えられているようです(笑)。

午後からは学会準備の統計処理(有意差検定)をして、いまようやく抄録が完成したところです。N先生も私の注文に迅速に応えてくれて、なんとか抄録は間に合いそうです。G先生はまだ抄録を見せてくれません(汗)。締め切りは明後日なんですが…。

明日は気温が上がって雨→雪、明後日からは吹雪の予想です。憂鬱です(泣)。

2015年1月3日土曜日

!謹賀新年!

新年あけましておめでとうございます!(ちょっと遅くなりました 汗)

今年の年末年始は、雪かきに追われていました(泣)札幌市内ですが私の居住地は札幌の天気予報は当てになりません。どちらかと言うと石狩や当別、小樽に近い天候です。おかげで治りかけた腰痛がなかなか良くなりません(泣)。今朝はせっかく遊歩道に作っていた除雪用のスロープが除雪車の運んだ硬い雪で完全に潰されていました。しかたなくまた新しいスロープを作りましたが、今度潰されたら雪を捨てるのが難しくなりそうです(泣)。

この休みはG先生とN先生が回診をしてくれたので結局一度も出勤せずに過ごすことができました。おかげで箱根駅伝で感動することもできましたし、雪かきで運動不足の解消もできました(笑)。でも食べ過ぎ、飲み過ぎで体重は増加傾向かも…(汗)。

そして今年の日本乳癌学会学術総会(7/2-4 東京国際フォーラム)の演題締め切りが迫っています(1/7)。なんだか今回はまったく意欲が出なくてテーマも頭に浮かばず、結局別の機会にと思っていた内容をまとめることにしました。でも内容は今ひとつなので今度こそ採択されないかもしれません(汗)。月曜日に統計処理したら抄録は一応完成です!