2014年2月26日水曜日

乳腺術後症例検討会 30 ”今回の会場は職員食堂!”

今日は定例の症例検討会でした。今回は会議室を確保できなかったため、職員食堂で行なわれました。初めての場所でしたが、テーブルも給茶器もあって、案外好評でした(笑)

症例はいつもの4例。

1例目は、境界明瞭な腫瘤内に微細石灰化を多数認め、乳頭腺管がんか充実腺管がんかで画像診断の意見が分かれた症例でした。病理学的にも少し変わった所見を呈していました。

2例目は、フィルムのはずれに近いところにある淡い微細石灰化の集簇で見つかった検診発見乳がんでした。幸い超音波検査で病変を指摘してくれたため、ステレオガイド下生検はせずに診断可能でした。病理結果はほとんどが非浸潤がんからなる乳頭腺管がんでしたが、これも超音波画像診断が非浸潤がんと乳頭腺管がんで意見が分かれました。

3例目は、良性乳腺疾患にてフォロー中のマンモグラフィで変化が出現し、MRなどの精査にて両側の非浸潤がんと診断された症例でした。この症例は最初の超音波検査では指摘されず、MR後のSecond lookの超音波検査が有効でした。針生検の病理診断が難しかったため坂元乳腺クリニックにコンサルテーションをお願いしましたが、やはりこのような症例を診ていただける第1人者の乳腺病理の先生の存在は大きいです。

4例目は、関連病院から。乳房温存術後10年以上たってからの乳房内再発の症例で、術後の組織変化との区別が難しかったため、診断に時間を要してしまったケースでした。乳房温存術後の乳房内再発は私たちの施設では非常に少ないのですが、久しぶりに経験しました(今回の症例は非照射だった時代の症例でした)。

来月で2013年度は終了です。どうやら親睦会をすることになりそうです(笑)

2014年2月25日火曜日

遺伝性乳がん〜遺伝子検査前のリスク判定ツール

乳がんで治療を受けた方がご家族の中にいると自分は乳がんの家系ではないかと心配になる方もいらっしゃるかと思います。もちろんそのすべてが遺伝性乳がんというわけではありませんが、全乳がんの5-10%は遺伝子の変異が関与した遺伝性乳がんであると言われています。

遺伝性乳がんの代表は、BRCA1やBRCA2などのがん抑制遺伝子の変異によるもので、この遺伝子は1/2の確率で子供に遺伝します。同一家系内に乳がんや卵巣がんが多発していたり、男性乳がんや両側乳がん、若年乳がんの方などがいらっしゃるとその可能性は高くなると言われています。

BRCA遺伝子の検査は保険外ですが、特定の施設で検査可能です。しかし、この検査はだれでも受けることができるわけではありません。乳がんと診断された方が遺伝性乳がんの可能性が高いと考えられる場合に、まず最初にこの遺伝子検査を行ないます。そして遺伝子変異があることが証明されて初めてそのご家族が検査の対象になるのです。ただそのご家族が遺伝子カウンセリングや遺伝子検査を受けるか受けないかは最終的には個々の判断に任されています(遺伝子変異が証明された患者さんがカウンセリングを受けた上でご家族に知らせるか、検査を勧めるかを判断、そして知らされたご家族自身がその検査を受けるかどうかを判断することになります)。

今回、米国予防医療サービス対策委員会(USPSTF)は女BRCA関連腫瘍のリスク評価,遺伝カウンセリングおよび遺伝子検査に関する勧告を改訂しました(Ann Intern Med 2014; 160: 271-281)。「BRCA1またはBRCA2の変異に関連するがんの家族歴を有する未発症女性」に対し,遺伝カウンセリングまたは遺伝子検査を受ける必要性を判断するためのリスク判定ツール(層別化ツール)を用いた評価を推奨することが追加されたのです(推奨グレードB…中等度のベネフィットが確認されている)。繰り返しますが、これは遺伝性乳がん(BRCA関連)と診断された家族が身内にいる人に関するツールですので、ただ単に母親が乳がんというだけでは対象になりません。

リスク層別化ツールとして,Ontario Family History Assessment Tool(表)やManchester Scoring Systemなど5つの選択肢が示されています。ただそれぞれ限界があり,特定のツールを推奨するためにはエビデンスが不足しているということと、日本人を対象としたツールではないことに注意する必要があります。



なお,BRCA変異に関連するがんの家族歴がない女性に対するルーチンな遺伝カウンセリングあるいは遺伝子検査については2005年と同様,「推奨しない(グレードD)」とされています。

2014年2月20日木曜日

形成外科&乳腺外科親睦会

昨日、いつもお世話になっているD病院の形成外科のE先生とI先生、そしてうちの病院の乳腺外科のN先生と私で親睦を深める親睦会を行いました。E先生に来ていただいた1例目の再建患者さんの経過もまずまずで先日無事退院されたということもあってそのお祝いも兼ねた会でした。G先生も参加予定だったのですが、土曜日ころから風邪をこじらせており残念ながら欠席しました。

場所はすすきののフレンチの老舗R。もともとかなり高級なお店だったようですが、経営者が替わってから比較的庶民的?になったという話を以前からE先生に聞いていたのでいつか一緒に行ってみたいと思っていたお店でした。

店内に入ったとたん、やはり高級な印象…。でもソムリエの方はとてもフレンドリーでしたし、E先生の注文で、かなり割安で美味しいワインも置いてくれるようになっていました。

料理はもちろん美味しかったのですが、ワインがあまりに美味しくて会話も弾んで飲み過ぎてしまいました(汗)。”平日なので今回は軽めに!”とE先生は言っていたのですが、結局男2人、女性2人の4人でシャンパン1本、白ワイン1本、赤ワイン3本(スペイン、イタリア、フランス)を空けてしまいました(笑)

会計のころには記憶はとぎれとぎれになり、お金も払ったのかどうかも覚えていませんし(N先生情報では一応払ったらしいですが…)、どこからタクシーに乗ったのかも覚えていません(汗)でもちゃんと家にはたどり着いていました(笑)

ほとんど熟睡できないまま(真央ちゃんの悲劇はTVで見てました…ずっと応援していたので最高の結果が出せなくて残念…でも彼女がずっとものすごい努力をしてきたのは事実ですから名無しの部外者がネット上で無責任に批判すべきではありません!)朝を迎えましたが、宇宙遊泳しているような状態だったのでタクシーで出勤しました。午前中はふらふらでしたが、なんとか午後の外来には復活できました。

ちょっと飲み過ぎましたが楽しい時間でした。またいつか形成外科+乳腺外科の親睦をはかりたいと思っています!

2014年2月16日日曜日

患者会新年会&定年お祝い会

昨日は、午後から市内のホテルMで患者会の新年会(いつもこの時期になってしまいますが…)が行なわれました。

患者会の皆さんと職員(看護師、事務、乳腺外科医)合わせて30人以上が集まりました。当初ホテルのレストランを貸し切りで行なうはずだったのですが、思いのほか人数が増えたため急きょ別室を借り切って行なうことになりました。



食事はかなりグレードが高く、お腹がいっぱいになりました。とても美味しかったです!ただG先生は風邪でほとんど食べれていないようで気の毒でした(泣)。N先生は当直明けだったのでかなりお疲れのようでしたが、元気に患者さんたちと歓談していたようです。

今回は入院中の患者さんも1人参加されていました。体調が心配されましたが、最後まで楽しそうに過ごされていましたので良かったです。また最近受診されていなかった患者さんも参加されており、近況を聞くことができて安心しました。2時間という短い時間でしたが、皆さん楽しんでもらえたようです。

この患者会が終わったのは15:30でしたが、昨日はその後18:00から別件の飲み会がありました。個人的には約18年くらいのお付き合いになる超音波技師のNさんがこのたび定年を迎えるということで、そのお祝い会があったのです。患者会ですっかりお腹がいっぱいになってしまっていたため、インターバルの時間を使って札幌駅からすすきのまでの地下歩行空間をウォーキングすることにしました。距離はだいたい往復で1.8kmくらいでしょうか。たいした距離ではありませんが、それなりに運動になりました!

お祝い会はホテルPの部屋を貸し切りで行なわれました。この会のために職場の技師さんたちが一生懸命に準備してきた手作りの会でとても楽しい時間を過ごすことができました。Nさんは、私が超音波所見に対して何か言っても自分の意見をほとんど曲げないタイプの技師さんですが、自分が間違っていたときには素直に受け入れる柔軟さも持ち合わせています。難しい診断で意見が分かれる時にはよく衝突しましたが、Nさんとの診断対決は後腐れもなくその結果をお互いの糧にしてこれたのではないかと思っています。また、超音波技師さんなのに、術後症例検討会では積極的にマンモグラフィを読んだりして、他のメンバーのお手本になってくれています。そして一緒に飲むといつもみんなを大爆笑させてくれるようなとても楽しい女性です(笑)(写真はあいさつするNさん)



Nさんは今回で一応、定年ということにはなりますが、引き続き嘱託職員として働いてくれることになっています。できるだけ長く一緒に働けたらうれしいと思っています。午後からホテル2軒のはしごでしたが、楽しい時間を過ごすことができました。

2014年2月9日日曜日

”ワーキング・サバイバーズ・フォーラム2014〜がんと仕事〜”終了!

以前お知らせしましたように(http://hidechin-breastlifecare.blogspot.jp/2013/12/2014.html)、今日、京王プラザホテル札幌B1プラザホールにて”ワーキング・サバイバーズ・フォーラム2014〜がんと仕事〜”が開催されました。

このフォーラムに先立って行なわれた無料マンモグラフィ体験には、G先生とH病院のO先生とが読影医として参加していましたが、私はフォーラムだけ参加してきました。


会場は昨年と同様、満員状態でした。やはりがん患者さんの就労問題は切実な問題であるということをあらためて感じさせられました。


内容は、一般社団法人CSRプロジェクトの桜井なおみさんによる「ワークライフバランスを考えてみませんか?”、そして(株)ワイズスタッフの田澤由利さんによる「がんになっても柔軟に働きたい!〜テレワークという新しい働き方」という2つの基調講演と様々ながん関連の団体のアピールトーク、そして懇親会という流れでした。

桜井さんのお話では、日本の高齢化とがん患者さんの状況を踏まえた、がんと闘いながら仕事を継続することの重要性と問題点、そして特に非正規雇用者にとってはなかなか困難であるという現状をアンケート調査などを交えながらわかりやすく解説して下さいました。”ワーク・ライフ・バランス”というのは、「国民一人一人がやりがいや充実感を持ちながら働き、仕事上の責任を果たすとともに、家庭や地域生活においても、子育て期、中高年期といった人生の各段階に応じて多様な生き方が選択・実現できる」ことを指すそうです。がん患者さんにおいても、仕事や家庭に要する時間や自分の自由時間の上にさらに治療にかかる時間が加わった場合、その人その人によって時間配分に対する考え方や必要性は様々なので、それぞれの状況に合わせた生き方が選択できるような社会にしていくべきであるということかなと私なりに理解しました。

田澤さんのお話のメインテーマである”テレワーク”という言葉は馴染みはありませんでしたが、お話を聞いているうちにこの言葉に関連する内容を新聞かテレビで見たことがあることに気づきました。どうやらその活動(企業に働きかけて、テレワークを労働形態の一つとして取り入れる政策)の影には田澤さんらの積極的な働きかけがあったようです。テレワークというのは簡単に言うと”テレ”(離れた)”ワーク(仕事)”、つまり自宅など職場から離れた場所で働く労働形態のことを意味します。企業に所属しながら一定時間(週に何日など)自宅で勤務するような場合と企業にはまったく所属しないで完全に独立した形でテレワークを行なう場合があるそうで、大企業では少しずつ前者の勤務形態を取り入れるようになってきているそうです。ただしそのほとんどは、子育て支援の方法の1つとして行なわれているということで、がん患者さんの働き方の手段としての普及はまだまだのようです。今後田澤さんたちの活動がきっかけでそのような企業が増えてくれば、がん患者さんが自分の体調に合わせながら自宅で仕事を行なえるような時代が来るかもしれませんね。

懇親会では、私のブログを読んで下さっているCSRプロジェクトの方が声をかけて下さいました。このブログを始めてから、何人かの方とこのような形で直接お会いすることがありました。人と人との縁は本当に不思議なものです(笑)
そういえばO先生が、雪まつりで雪像を造ったそうで写真を見せて下さいました(”マンモ”というタイトルです! O先生が写真を送ってくれました!)。大通12丁目の会場にあるそうですので、雪まつりにお越しの際は是非ご覧になって下さい(笑)

2014年2月8日土曜日

初の乳房再建(ティッシューエキスパンダーによる一次再建)!

昨年春から、乳房再建(一次再建)の準備を続けてきましたが、適応の問題やご本人の希望でなかなか症例が現れませんでした。そしてついに昨日、ようやく1例目の一次再建を行ないました。

執刀はN先生で、乳房切除後にD病院からE先生が来て下さってティッシューエキスパンダーの挿入をしていただきました(私はもっぱらE先生との連絡係 笑)。手術は順調に終了し、今朝の患者さんの状態も問題ありませんでした。E先生は午前中にT病院で手術をしてからD病院に戻って、私たちの病院で手術してから今度はSクリニックに乳房再建の手術に行かれました。相変わらず非常に多忙なようですが、まったく疲れを見せないパワフルな先生です(笑)

これからはおそらく同時再建(一次再建)の症例が増加すると思います。徐々に再建にも慣れて、E先生から私たちだけでやってもいいよという許可が得られるように勉強していきたいと思います。

今度D病院の形成外科の先生方(E先生とI先生)と私たちの病院の乳腺外科医3人で懇親会(もちろんワイン!)を行なう予定です。平日なのであまり深酒はできませんが今から楽しみです(笑)

2014年2月2日日曜日

CSPOR-BC年会 in 木更津

昨日、今日と千葉県木更津市で行われたCSPORの年会に参加してきました。

CSPORは日本を代表する臨床試験のサポート組織です。N-SAS BCなどの臨床試験を行なってきた実績があります。私の施設はまだCSPORの臨床試験には参加していないのですが、GセンターのT先生のお誘いでオブザーバーとして今回初めて参加させていただいたのです。

1日目の昨日は、昨年行われた主な乳がん関連学会のトピックスの報告と8人のパネリストによるSt.Gallen 2013の指針をもとにした今後の臨床試験の方向性を探すディスカッションが行われました。会場からはHOセンターのW先生からの鋭い指摘などでやけどしそうな熱い時間となりました(笑)

夕方からは懇親会がありました。W先生と少しですが直接お話することができてとても勉強になりました。またいつもお世話になっているG病院のI先生ともいろいろお話することができて良かったです。またG病院のT先生とは初対面でしたが、ご出身の沖縄の話で盛り上がりました(でもやはり泡盛にはまだ慣れません…汗)。

懇親会後にはGセンターのB先生の部屋に北海道関係者が10人くらい集まって親睦を深めました。なかなか興味深いローカルな話も聞けて楽しかったです。


今朝起きてみると外は薄い霧に包まれてとても幻想的でした(写真)。会場のホテル&会議場は、まわりにゴルフ場しかないような山の中にあります。とても静かで勉強するには最適ですが(周囲に遊ぶ場所はまったくありません)、ちょっと寂しいところです。でもホテル自体は最高でした。

2日目は、いま症例登録中の臨床試験の状況報告と計画中の臨床試験についてのプレゼンテーションがありました。”日本発のエビデンス”へのメンバーの熱い思いがあふれていたと思います。また、この会で共通しているのは、患者さんのQOLを非常に重視していること、臨床試験に参加することによって明らかな患者さんへの不利益が生じないかということに対する監視がしっかりしていることです。そのあたりの視点が曖昧だと鋭い指摘が入ります。

今回の参加でますます自分の勉強不足を知りました。これからは臨床試験への参加を考えていますので、その前にもっと勉強しなければと感じた年会でした。前泊の金曜日は新千歳空港で2時間出発が遅れ、今日は滑走路が1本閉鎖したために津軽海峡上空で1時間待たされ、かなり疲れましたが明日からまた頑張ります!