2014年11月26日水曜日

乳腺術後症例検討会 36 ”乳腺疾患のMRI診断”

今日は定例の症例検討会でした。院内外の医師、放射線技師、超音波技師が集まって行なわれているこの会ですが、最近では製薬会社のMRさんや医療機器メーカーの業者さんや販売業者さんまで参加してくれるようになりました。MRさんはけっこう前からC社の方が参加してくれていましたが、今日新たにK社の方も参加してくれました。せっかくですので少しでも勉強になってくれたらうれしいです(笑)。

今日はまずG先生による”乳腺疾患のMRI検査”に関する講演がありました。MRの基礎的な話から撮影体位、画像の種類、私たちがMRを行なっている目的、そして診断に至るまで、医師以外の方にもわかりやすいような内容の話をしてくれました。

その後はいつものように症例検討を2例。1例目は画像的には線維腺腫でも良いような感じでしたが、結果的には充実腺管がんでかなり広範囲な乳管内進展を伴っていた症例、2例目は検診で精査となり、超音波検査とMRIでは非浸潤がんを疑った多発末梢性乳管内乳頭腫に乳腺症が加わっていた症例でした。

今回で年内の症例検討会は終了です。来年は道外から演者を招いて製薬会社と共催で講演会を行なう計画を立てています。単なる画像診断に留まらず、乳腺疾患の診断、治療に関する勉強の場になればと考えています。

2014年11月25日火曜日

ついにジーラスタ®発売!

既報(http://hidechin-breastlifecare.blogspot.jp/2014/11/blog-post_7.html)の通り、本日付けで持続型G-CSF製剤のジーラスタ®が薬価収載されました。11/28発売とのことです。

気になる薬価は、1筒(3.6mg)で106,660円!非常に高額です(汗)前回懸念していたDPC病院における持ち出しの問題に関しては、当面DPC包括外(出来高算定)ということになりましたので入院で行なっても病院の持ち出しにはならないようです(その分当然患者さんの負担にはなってしまいますが高額医療費でカットされる場合もあります)。

いま進行乳がんでFEC100投与中の患者さんも初回の投与で発熱性好中球減少症を発症してしまい、扁桃炎も併発したためけっこう通院を要してしまいました。2回目は2次予防として通常のG-CSFを外来で連日のように投与してなんとか乗り切っているところです。ジーラスタが使用できるようになれば1回外来で投与すればこんなに通院しなくてすむようになります。発熱した患者さんにとっては恩恵が大きいと思います。問題は全例に一次予防としてジーラスタを投与するかどうかですが、費用のこともありますので患者さんとの相談も必要かもしれません(個人的には全例使用してあげたいのですが…)。

副作用がないわけではありませんが、欧米ではいままでかなり実績のある薬剤ですので有用性は確立しています。今まで一次予防が保険適用外だったためになかなか使えなかったレジメン(TACやDose dense ACなど)が使えることにもつながるかもしれません。

まずは副作用に注意しながら来月から使用してみたいと思います。

2014年11月16日日曜日

患者会温泉1泊旅行 2014 in 小金湯温泉

毎年恒例の患者会温泉旅行から帰ってきました。今年は定山渓温泉の手前にある小さな温泉郷の小金湯温泉で行なわれました。1泊での温泉旅行は今回で5回目です(定山渓温泉→朝里温泉→ニセコ昆布温泉→定山渓温泉→小金湯温泉)。今回は日程がなかなか決まらず、いつもより遅い時期になってしまったこともあって参加人数が少なくなりそうでしたが、それでも患者さんと職員、25人で行くことができました。

一昨日から雪に見舞われた札幌でしたが、比較的順調に到着することができました。いつもは宿に行く途中や到着してから観光をするのですが、ここの温泉の周囲には歩いて行けるような場所はあまりなく、そして外はとても寒かったので温泉宿でのんびり過ごすことになりました。

温泉に浸かってからは、いつものように楽しい宴会が始まりました(写真)。

ビンゴゲームの後はカラオケ大会になりましたが、宴会時間は2時間だったため、あっという間に終わってしまいました。写真は、G先生とデュエットする患者会のUさん、そして松田聖子の「夏の扉」を熱唱する化学療法室のO主任と横で踊る関連病院のベテラン看護師のMさん…みんな楽しそうでした(笑)。


宴会終了後は、これも恒例の私たちの部屋に集まっての二次会。飲みながら楽しく会話したあとは、G先生ご持参のカードゲームで1:30くらいまで盛り上がりました(汗)。写真は、ゲームに負けた人が罰ゲームのカードを引いて、そのカードに書いてある通りの変なポーズをしているところです(患者会会長のHさんと医事課課長のNさん)。


今朝は朝風呂に入って美味しい朝食を食べてからバスで病院まで帰ってきました。今回は体調を崩す人もいなく、とても楽しい時間を過ごすことができました。来年はどこになるのかまだ決まっていませんが、できればもう少し早い紅葉の時期に行きたいと思っています!

2014年11月11日火曜日

男性乳がんの特徴と遺伝性乳がん

最近、当院2例目の男性乳がんを経験しました。一般的には全乳がんの1%が男性と言われていますが、実際はもっと少ない印象です。日本乳癌学会による2011年度の年次報告では、男性の比率は0.5%でした。

以前は男性乳がんは予後不良と言われていましたが、実際は病期や年齢をそろえると女性とそれほど変わらないとする報告が多いようです。男性の場合は、そもそも乳がんになると思っていないことやすぐに皮膚や胸壁に浸潤しやすいなどの特徴によって進行してから診断されるケースが多いことが予後不良と言われることにつながったようです。

治療は女性と同様にまずは手術です。乳輪から離れた部位に発生した場合は乳頭・乳輪を残すこともありますが、ほとんどは乳房全摘術が必要になります。腋窩リンパ節に関しては、男性を対象としたセンチネルリンパ節生検のデータはありませんが、実際は男性に対しても行なわれているようで、今のところその成績はあまり問題なさそうです。今回の症例もセンチネルリンパ節生検を行なって転移がなかったため腋窩を温存することができました。15年くらい前に経験した患者さんは腋窩リンパ節転移がありましたので郭清しましたが、今もお元気に通院されています。

術後の補助療法も女性と同様に判断します。ただアロマターゼ阻害剤は、精巣からの男性ホルモンを抑制しなければ効果が期待できないと言われているためホルモン療法はタモキシフェンを使用します。化学療法のレジメンは女性と同様です。

最近、遺伝性乳がんが話題になっていましたが、男性乳がんの方が家系にいる場合は遺伝性乳がんの遺伝子変異を持っている可能性があります。もし家系内に男性乳がんの方がいて自分が乳がんと診断された場合は、遺伝性乳がんのカウンセリングを考慮する必要があります。

2014年11月7日金曜日

もうすぐ”ジーラスタ®”が発売?

先日書きましたように(http://hidechin-breastlifecare.blogspot.jp/2014/10/g-csf.html)発熱性好中球減少症(FN)を予防する持続型G-CSF製剤の”ジーラスタ®”が近日中に発売になります。おそらく今月末くらいには使えるようになるのではないかと思いますが、まだ薬価収載されていませんので値段は不明です。

がん種やレジメンのしばりはありませんが、ガイドラインに基づくとFNの発生率が20%以上、または10-20%で高リスクの患者さんということになりそうです。乳がん領域においては、私の施設ではFEC100がFN 34%、TCが80%でしたのでジーラスタの適応と考えています。

問題になるのはジーラスタが高価であること、DPC病院では入院で化学療法を行なうとコスト請求できないので病院の持ち出し(病院が薬剤費を全額負担すること)が増えることです。大きな病院ではFEC100やTCは初回から外来で行なう場合が多いと思いますが、私たちの施設では今まで患者さんの不安軽減のために初回導入は入院で行なうことが多かったのです。この間、乳腺センター会議などで検討してきて、最終的にこれらの化学療法を外来で導入し、一次予防としてジーラスタを併用することにしました。

強力な制吐剤を併用しますので実際に嘔吐する率は非常に低くなっていますから、自宅での対処法をきちんと説明しておけば初回からの外来導入は問題はないと思います。抗がん剤でもっとも問題になる骨髄抑制(好中球減少など)は抗がん剤投与後10-14日くらい(FECの場合)に起きますので、これをジーラスタで予防してあげれば患者さんの負担を軽減できることが期待されます。

先日FEC100を初回投与した患者さんも好中球が100以下になって発熱してしまいました。扁桃の発赤もあって心配だったため連日来ていただきましたが、ようやく無事軽快しました。ジーラスタを使えれば、こんな心配も少なくなくなるのでしょうか?2回目は今月中なので3回目からはおそらくジーラスタを併用できそうです。発売されたらすぐに使用できるように、今日、薬剤部に新規採用の申請書を提出しておきました。

副作用はもちろんありますが(反応による発熱、関節痛、発疹など)、FNによって抗がん剤を減量せざるを得ないというリスクも少なくなりますし、入院や頻回の通院の負担も減りますのでジーラスタの効果に期待したいと思います。

2014年11月3日月曜日

なかなか減らない進行乳がん…

今朝から強風が吹き荒れています。日中はみぞれや所によっては雪も降っていた札幌ですが、明日の朝にかけては積雪するとの予報でしたので慌てて冬タイヤに交換してきました。もし積雪してしまったら車では出勤できないので田舎暮らしの私にとっては大変なことなのです(汗)。

今年ももう11月ですね。あっという間に1年が終わってしまいます。年々増加傾向にある乳がんですが、これだけ乳がん啓発活動を盛んに行なってきても、今年も進行乳がんで受診された患者さんがかなり多かったような気がします。

受診が遅れた理由はさまざまですが、「もっと正しい知識があれば…」「金銭的な不安がなければ…」「家族に対する心配がなければ…」もっと早く治療に取りかかることができたのに、という患者さんを見るととても切なくなります。乳がんに対する正しい知識の普及、経済的弱者や子育て世代・介護者への社会的サポートがあればこれらの方々はきっと早く受診することができたのではないかと思うからです。

一方、どれだけこちらが努力しても医療自体に対して拒否的な患者さんもいらっしゃいます。こういう方に対しては私たち医療従事者は無力です。もし将来、切らずに髪の毛も抜けずに放射線も浴びずに乳がんを治せる時代が来ればこのような方はなくなるのかもしれませんが…。まだまだしばらくは難しそうです…。

今月半ば締め切りのピンクリボン関連の冊子の原稿がようやく書き終わりました。と言っても内容に悩んで2つ書いてしまったので、どちらにするかもう少し考えてから送ろうかと思います。

そろそろインフルエンザも出てくる季節です。皆さん、体調管理には十分に気をつけましょう(と言いつつ私も風邪気味です…汗)。