2013年7月29日月曜日

「ピンクリボン in SAPPORO 2013 ピンクリボンロード」

先日ようやく「ピンクリボン in SAPPORO 2013 ピンクリボンロード」のチラシ(写真 携帯ではうまく撮影できないので三角山放送局HPより転載させていただきました)が届きました。さっそく院内の各所に置いてもらうことにしました。



日程は、2013.8.25(日)13:30-16:00で場所は「さっぽろホコテン(南1西3)」です。詳細は三角山放送局のHP(http://www.sankakuyama.co.jp/contents/2013/07/04/003753.php)をご覧下さい。

昨年はゴスペルライブで盛り上がりましたが今年はジャズコンサートです!他にもドラムサークル、合唱団やチェアーフラなど盛りだくさんです。楽しみながらピンクリボン運動を広めるのがこのイベントの主旨ですので多くの人々が足を止めてくれるようなにぎやかなイベントになればいいなと思っています。

今年から私たちの病院もピンクリボン in SAPPOROの活動に協賛させていただくことになりましたので、もしかしたら会場にブースを出すことになるかもしれません。今日の乳腺センターの会議では結論は出ませんでしたが、アイデアを募集してできれば多くのスタッフで参加したいと思っています(最近はほとんどが私とG先生くらいしか参加できていませんでした)。

みなさん、8/25(日)はさっぽろホコテンに遊びに来てくださいね!

2013年7月22日月曜日

来月から放射線治療開始!

新病院に移転して2ヶ月あまりたちました。8月から待ちに待った放射線治療施設が稼働になります!

当院には今まで放射線治療施設がなかったため、術後の乳房照射や胸壁照射をはじめ、リンパ節再発や骨転移、脳転移など、放射線治療が必要な患者さんはすべて大学病院やがんセンターなどの放射線治療科にご紹介していました。病院の近くに住んでいる方にバスなどで遠くの病院に毎日照射に通ってもらわなければならないことはとても申し訳ないとずっと思っていましたが、ようやくそれも解消します。

もうすでに乳腺の術後患者さんだけで4人ほど当院での照射が予定されて待っています。放射線治療医が当院にはいないため、大学から週3回診察とカンファレンスのために来ていただいて診療を行なう予定になっています。いま急ピッチで大学との打ち合わせを行なって治療の流れなどを確認しているところです。

初めてのことなので最初は戸惑うことも多いと思いのですが、軌道に乗っていけば患者さんの負担はかなり軽減されると思います。当院での放射線治療が順調に発展することを期待しています。

2013年7月16日火曜日

ハーセプチン+タイケルブ(+ゼローダ)は保険適用?

いまHER2陽性乳がんの再発患者さんの治療で悩んでいます。

この患者さんは合併症をたくさん抱えているためにかなり全身状態が悪く、使用できる薬剤に制限があります。ですから今までは他院でホルモン療法を中心に治療を行なってきました。しかし骨転移と胸膜転移が徐々に悪化して来たために総合病院である当院に紹介となったのです。

合併症の中で特に問題となるのは糖尿病とそれによる重度の腎機能障害です。吐き気止めやアレルギー予防として用いるステロイドは糖尿病を悪化させますのでできるだけ避けたいと考え、まずはハーセプチンにアブラキサン(パクリタキセルと成分は同じですがステロイドは不要)を併用してみました。しかし、今回のCT検査では効果は見られておらず、治療方針の変更を迫られています。骨転移に対して広範囲に放射線治療を行なっているために骨髄抑制の強い抗がん剤の併用を避けたいということも選択肢を狭める要因となっています。

当初次の手段として、タイケルブ+ゼローダを予定していたのですが、よく調べてみると”重度の腎機能障害には禁忌”となっていました。タイケルブは国内ではゼローダとの併用しか認められていません。海外での臨床試験では、ハーセプチン+タイケルブの有効性が報告されているのですが(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20124187、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22257673など)、国内では使用している施設はほとんどないようです(保険診療として認められずに査定される可能性があるためと思われます)。

製薬会社の方に聞いてみたのですが、返答は微妙でした。ハーセプチンは併用する薬剤のしばりはありません。抗がん剤は何でもOKですし、今までホルモン剤との併用でも査定されたことはありません。ですから、ハーセプチンの保険適用が認められないことはないと思います。問題はタイケルブです。タイケルブは、ゼローダとの併用が保険適用上は必須です。ただし、途中で副作用が現れた場合は、ゼローダを中止しても問題はないと聞いたことがあります。

では、タイケルブ+ゼローダにハーセプチンを併用した場合はどうなるのでしょうか?ハーセプチンはまず大丈夫でしょう。タイケルブもゼローダを併用していれば問題ないはずですが…。添付文書に”ハーセプチンとの併用は認めない”と書いているわけではありませんから(ゼローダ以外の薬剤との併用の安全性と有効性は確立していないというよくある微妙な表現)、併用したっていいのではないかと考えてしまいますが、ハーセプチンもタイケルブも高価な薬剤ですので目を付けられて査定される可能性は完全には否定できません。

患者さんの状態を考えると、ゼローダは避けてハーセプチン+タイケルブで治療したいところです。しかしタイケルブにゼローダ併用のしばりがあるためにとても悩んでいます。ごく少量のゼローダを併用して3剤での治療を今のところ第1候補に考えていますが、「ハーセプチン+タイケルブ」もしくは「ハーセプチン+タイケルブ+ゼローダ」の治療を受けた患者さん、もしくは治療を行なったDrがいらっしゃったら情報をお待ちしています。

2013年7月14日日曜日

遺伝性乳がんに関する知見〜第21回乳癌学会学術総会から

先日の乳癌学会では、遺伝性乳がんに関するセッションが2つありました。世間一般的にもアンジェリーナ・ジョリーさんの件もあって非常に関心が持たれているテーマですので私も注目していました。
(遺伝性乳がんの一般的な内容に関しては、以前書いたhttp://hidechin-breastlifecare.blogspot.jp/2009/08/blog-post_2165.htmlをご参照下さい)

ランチョンセミナーの方は、チケットをもらい損ねてしまったために聞けませんでしたが、「検診診断プレナリーセッション5 遺伝性乳がんをめぐる諸問題」の方はしっかり聞いてきました。この中でメモすることができたいくつかの点について取り上げておきます。

①米国では、遺伝性乳がんに関する検査、治療(予防的乳房切除術、予防的ホルモン療法など)はすべて保険適応になっている。これは、がんになってからの治療だけではなく、がんを予防するということの重要性を認識しているからである。米国では年間約10万件の遺伝子検査を行なっている(遺伝性乳がんが疑われる対象者に関する遺伝子検査は”推奨される”となっており、予防的切除を行なうことは”選択”として提示されている)。
→いま国内でも国会などで少しずつ取り上げられて来ているようですが。米国に比べると15年ほど遅れをとっているのが現状です。いくつかの施設で予防的乳房切除術が倫理委員会を通ったというような報道がされていますが、今のところ検査、治療にかかるすべての費用は全額自己負担です。

②遺伝性乳がんのカウンセリングを行なうためには、専門の教育を受けた遺伝カウンセラーの存在が重要(日本遺伝カウンセリング学会http://plaza.umin.ac.jp/~GC/index.htmlが認定)。しかし実際はカウンセラーの資格を取得しても、働き場がなかなかないのが現状。
→遺伝カウンセラーが必要な場合は、日本認定遺伝カウンセラー協会(http://plaza.umin.ac.jp/~cgc/index.html)にアクセスするのが良いようです。今後は遺伝性乳がんの相談は避けて通れない業務になっていくことが予想されます。現在、遺伝性乳がんのカウンセリングを行なえる施設は非常に少なく、札幌でも2施設程度です。私たちが遺伝性乳がんに対してより積極的に関心を持つことと、カウンセラーの確保が重要と考えられます。遺伝性乳がんの遺伝子検査は、気軽に受けるべきものではありません。検査を受けることによる利益と不利益をきちんと知り、陽性だった場合の対応も考えた上で検査を行なわなければなりませんので専門の遺伝カウンセラーの存在はとても大切です。

③BRCA1変異はトリプルネガティブ、充実腺管がんが多く、非浸潤がんは少ない、BRCA2変異は、Luminal typeが多い。
→BRCA1/2はがん抑制遺伝子と呼ばれるもので、遺伝性乳がん・卵巣がん症候群(HBOC)の多くの原因はこれらの遺伝子の変異によるものと考えられています。最近の研究によってそれぞれの遺伝子変異について様々なこと(地域性や細かい遺伝子変異の部位など)がわかりつつあるようです。

④日本HBOCコンソーシアム(http://hboc.jp/)を設立し、日本における遺伝性乳がん(+卵巣がん)のデータベースの充実をはかり、今後の遺伝子診療に活かしていこうとしている。
→日本における遺伝性乳がんの情報収集は今後の診療においてとても重要になってくると考えられます。またこれらの情報を元に、遺伝子検査・治療の正当性や重要性について政府に働きかけることが、保険適応を早めることにつながるものと期待しています。

⑤HBOCに関する情報を収集するにあたって、被験者の法的保護や情報管理の整備が必要。
→これは大変重要だと私も思っています。今までなかなか遺伝性乳がんの研究、検査、治療がなかなか勧められなかった原因の一つは間違いなくここにあります。遺伝性乳がんであることを知ってしまったことがその人の不利益(就労問題や結婚問題、差別など)にならないような法整備が必要です。

これからもっとHBOCについて勉強しなければならないと強く感じた今回の乳癌学会でした。

2013年7月10日水曜日

病院広報誌の取材

今では多くの病院でその病院の活動内容などを定期的に掲載する広報誌を発行しています。私たちの病院にも以前からありましたが、当初は病院内部の職員が原稿作成や写真撮影などを行なって広報誌を作成していました。しかし前号からはプロの方に依頼するようになり、内容もかなり充実してきました。

そして今回のメインテーマは乳腺センターの活動ということで、今日、取材の方が見え、午後から乳腺センターの医師3人(G先生、N先生、私)の取材と撮影、そして関連施設(化学療法室、レントゲン室、超音波検査室など)の撮影を行なっていきました。

以前乳腺に関する記事を広報誌に載せたときは私が原稿を書いて写真を追加するという感じでしたが、今回は取材内容をもとにプロの方が原稿にしてくれます。作業的には楽になりましたが、自分の話した内容がどんな感じに記事になるのかちょっとどきどきしています。

そして写真撮影があるとは思わなかったのでまったくの普段着で撮影されてしまいました。前回撮影の時にはきちんとネクタイをしてきたのに、今回は白衣の下はブルーの検査着でした(泣)そしてなんとなくぎこちない表情で写ってしまったような…まあいいですけどね(汗)

(最近、いろいろ忙しくてなかなかブログの更新ができませんでした。というか、一応、この間に2つ書いたのは書いたのです。でもさまざまな理由でここに書いて良いのか迷ったのでアップできませんでした。公の目に触れるブログではいろいろと神経を使います。個人情報保護法や守秘義務の問題もありますしね。書きたいことはたくさんあるのですが…。)

2013年7月1日月曜日

乳癌の治療最新情報36  ペルツズマブ承認!

乳癌の治療最新情報28(http://hidechin-breastlifecare.blogspot.jp/2011/12/28.html)でご紹介してから1年半もたってしまいましたが、ようやく抗HER2ヒト化モノクローナル抗体ペルツズマブ(商品名 パージェタ®)が承認されました!

HER2陽性乳がんに対する分子標的薬は、トラスツズマブ(ハーセプチン®)、ラパチニブ(タイケルブ®)に続いて3剤目になります。

この薬剤が承認される元になった主な臨床試験は、多国籍無作為化プラセボ対照二重盲検第Ⅲ相臨床試験であるCLEOPATRA試験です。この試験の概要を以下に示します。

対象: HER2陽性転移性乳がん
方法: パージェタ®にトラスツズマブ(ハーセプチン®)およびドセタキセルを併用した群(「パージェタ®」併用群)と、プラセボにトラスツズマブおよびドセタキセルを併用した群(対照群)の比較試験。
結果: 「パージェタ®」併用群では、病勢進行または死亡(無増悪生存期間:PFS)リスクが38%減少し(ハザード比0.62;p<0.0001)、PFS中央値は対照群の12.4カ月に対し「パージェタ®」併用群では18.5カ月と、6.1カ月の延長が認められた。また、全生存期間(OS)については「パージェタ®」併用群の死亡リスクが対照群に対して統計学的に有意に34%減少した(ハザード比0.66、p=0.0008)。
有害事象はトラスツズマブおよびドセタキセルでこれまでに報告されたものと同様であり、「パージェタ®」を併用することにより有害事象の顕著な増加は認められなかった。

パージェタ®はトラスツズマブ(ハーセプチン®)とは異なる機序(HER2の二量体化というものを阻害します)で作用するモノクローナル抗体です。ハーセプチン®の作用を補完すると言われていますので併用によって作用が増強すると考えられています。

実際の薬価収載、発売にはもう少しかかると思います。添付文書を読まないとまだわかりませんが、問題はこの薬剤が「ハーセプチン®+ドセタキセルとの併用」のみにしか適応されないのか、「ハーセプチン®+タキサン系抗がん剤との併用」となるのか、「ハーセプチン®+抗がん剤との併用」となるのか、まったくしばりがないのか、ということです。上記の臨床試験に基づくとなればドセタキセルとの併用に限定されてしまうのが最近の傾向です。ただ、術後補助療法や再発治療にすでにドセタキセルを使用してしまっている場合には、このしばりがあるとけっこう使いにくいことになります(タイケルブ®がゼローダ®との併用のしばりがあって使いにくいのと同様に)。全身状態によっては、抗がん剤の併用は避けたい患者さんもいらっしゃいますので、その場合はハーセプチン®+パージェスタ®のみで治療したいところです。できるだけ使いやすい形で保険適応となることを望みます。

*併用薬に関しては以下の”関西の専門医さん”とのコメントのやり取りをご参照下さい(2013.7.3)。