2012年6月27日水曜日

乳癌学会に行ってきます!

明日(6/27)から熊本に行ってきます。6/28-30はいよいよ乳癌学会です。

今回はいろいろと忙しくてなかなかやる気が起きずにぎりぎりまでかかってしまいましたが、なんとか発表の形は整いました。けっこう重いテーマなのでよけいに準備が進まなかったんじゃないかと思います。無事発表が終わると良いのですが…。

出向研修中のN先生は早々に完成させていて準備万端なようです。今回は症例報告ですが、とてもよく調べているようでした。さすがに初期研修からきちんとしたトレーニングを受けてきただけあります。G先生はいまだにスライドを見せてくれていません…(汗)。彼のことですからきちんと形にしてくれるはずですがちょっと心配です。

抄録集はまだきちんと目を通していません。明日の飛行機の中でチェックしておこうと思います。せっかくの年1回のがっかいなのできちんと勉強して来なきゃと思っています。でも熊本は初めてなので熊本城の観光と馬刺だけはなんとか堪能してきたいと思っています。

というわけでしばらくブログはお休みです。行ってきます!

2012年6月26日火曜日

定期検査を受けると乳がんにならない??

以前からとても気になっていたことがあります。まさかと思っていましたし、私たちの間でも冗談めかして話すことはあるのですが、まさか本当にそう思っていたとは…。

なんのことかと言いますと、乳腺症や乳がん検診で定期的に検査を受けている患者さんが、何を思って(期待して)病院に来ているのか?というお話です。

今日いらした長年通院している乳腺症の患者さんに、
「定期検査を受けに来る患者さんの中には、検査を受けに来ると乳がんにならないと思い込んでいる方がいらっしゃるんですよね〜」
とお話ししたら、真顔で
「違うんですか?私もそう思っていました。私の周りの友達もみんなそう思っていますよ!」
とおっしゃるのです…。

「え〜っ!!」
と私と看護師さんはびっくりしました。

「検診は早期発見のために受けるもので、検査をするだけでがんにならないようにできるはずはないでしょう?なにも治療していないんですから…」
とご説明すると、

「それは医者としての感覚ですよ!」
と言われました…。

まさかこれがほとんどの方の考え方ではないと信じたいですが、たしかに思い当たることはあります。

ずっと定期検査を受けていた方に早期乳がんが発見されると、
「どうしてきちんと検査を受けていたのに乳がんになったんですか?!」
と言われたことが何度かあるのです。その都度、
「定期的に検査していたから早期に見つけることができたのですよ!」
とご説明するとほとんどの方はその考え方(検査すれば乳がんにならないという)が錯覚であったことに気づいてくれます。ただ、中にはどうしてもそれが納得できなくて転院を希望されたケースもあったのです。

私たちは神様ではありません。検査をすることで「がんにならないようにする」ことなどできるはずもないのです。冷静に考えると当然のことなのですが、このような思い違いは起きうることなのだということをあらためて感じさせられました。

2012年6月24日日曜日

「がんの補完代替医療ガイドブック 第3版」




先日私の外来に通院している患者さんから、「がんの補完代替医療ガイドブック 第3版」を1冊いただきました。これは厚生労働省がん研究助成金による「がんの代替療法の科学的検証と臨床応用に関する研究」班(主任研究者 玄々堂木更津クリニック 住吉良光先生)と独立行政法人国立がん研究センターがん研究開発費による「がんの代替医療の科学的検証に関する研究」斑(主任研究者 国立病院機構四国がんセンター 呼吸器外科 山下素弘先生)がまとめた冊子です。

この冊子には、補完代替医療の概要と注意点、情報収集の方法、主な補完代替医療の実態と問題点、最新情報などがわかりやすく書いてあります。ただ全ての補完代替医療について記載しているわけではありません。残念ながら以前問題になったホメオパシーについても記述はありません。しかし補完代替医療に対する正しい認識方法について詳しく書いてありますので、周りの人たちに勧められたり、雑誌や本、ネットやTVのCMなどで宣伝されているような補完代替治療を試す前に一度目を通すことをお勧めします。

がんセンターが携わっている内容ですので北海道がんセンターにもあるのかと思いましたが、その患者さんが確認したところ残念ながら置いていないようです。一般病院の外来にも置いているところはおそらく少ないと思います。もし読んでみたいと思った方は、直接下記に問い合わせるか、日本補完代替医療学会のHP(http://www.jcam-net.jp/topics/guidebook.html)からダウンロードして下さい。

問い合わせ先:
〒292-0014 千葉県木更津市高柳4737 玄々堂木更津クリニック
(E.mail: yosumisama@gmail.com)
〒791-0280 愛媛県松山市南梅本町甲160 国立病院機構四国がんセンター呼吸器外科
(E.mail: myamashi@ahikoku-cc.go.jp  TEL: 089-999-1111  FAX: 089-999-1100)

2012年6月20日水曜日

乳腺術後症例検討会 20 ”検診発見乳がんの悪性度”

学会発表準備や日常業務に追われてなかなかブログの更新ができませんでした。ようやく学会準備もほぼ終了し、今日の乳腺症例検討会で発表内容の概要を紹介してきました。

今日の症例は3例でしたが、いずれも比較的典型的で画像的にもあまり迷うことのない症例でしたのでスムーズに進行しました。今回は来週の乳癌学会の影響で通常よりも1週早く行なったために場所の確保ができず、超音波検査室を使用しましたのでちょっと手狭でしたが、かえって距離が近くてアットホームな雰囲気になったと思います。

私の今回の発表内容は以前も簡単にここでご紹介しましたが、検診発見乳がんの悪性度についての発表です。検診が無意味だと主張する人たちをこの発表のみで否定するつもりはありませんが、検診発見乳がんすべてがおとなしいがんではないということは今回の検討からは言えそうです。

もちろん今の検診で悪性度の高いがんすべてを拾い上げることはできないのも事実です。しかし、そのことだけを取り上げて”検診で見つかるがんは命に関わらないようなおとなしいがんだから検診を受ける必要はない”とか、”治らないがんは早期発見しても治らないのだから早期発見は無意味だ”などと無責任に主張することは正しいとは思いません。

今の検診に問題があるのであれば、それをどうやって改善し、どうしたらもっと多くの患者さんを救えるような効果的な検診ができるのかを考えるのが医療者として正しい姿勢なのではないでしょうか?今回の発表がそのような課題の解決に少しでも役立てば…と思っています。

2012年6月13日水曜日

アロマターゼ阻害剤による関節痛に対するストレッチ動画

以前もここでアロマターゼ阻害剤(AI)の代表的かつもっとも多く見られる副作用である関節痛予防のストレッチについて書いたことがありますが(http://hidechin-breastlifecare.blogspot.jp/2011/01/blog-post_27.html)、アリミデックスを販売しているアストラゼネカ社のHPでこのストレッチ法(関節痛体操)についての動画を見ることができるようになりました。

URL:http://med.astrazeneca.co.jp/arimidex/ari_stretch/index.asp?mlst=zpmlREAISIwP

ちょっと見てみましたがなかなかわかりやすいと思います。動画はストレッチの概要の解説、痛みがない方向けの予防的ストレッチ、痛みがある方向けの治療的ストレッチに分かれています。ご自身の状態に合わせて見てみると良いと思います。

AIによる関節痛は、結構よく見られます。朝のこわばりだけの初期症状から、徐々に痛みが加わり、ひどくなると一日中症状が継続するようになる場合もあります。ただ、多くの方はきちんと原因をご説明し、ストレッチを指導すれば内服の継続が可能です。副作用をいたずらに恐れずに、主治医に症状の経過を報告しながら服薬の可否についてご相談して下さい。

2012年6月11日月曜日

乳がん体験者コーディネーター養成講座第8期生募集中!

毎年書いていますが、今年もNPO法人キャンサーネットジャパンの第8期乳がん体験者コーディネーターBEC(Breast Cancer Experienced Coordinator)養成講座の案内が届きました。

第7期の養成講座には私たちの病院の患者さん(Nさん)が受講し、試験に無事合格しました(http://hidechin-breastlifecare.blogspot.jp/2012/05/blog-post_25.html)。Nさんのそもそもの受講動機は、自分の病気についてもっと知りたいということだったそうです。実際に受講して得たものは大きかったようで、ただ単に自分自身が乳がんの知識を得るということだけに留まらず、がんサロンでの活動に協力して欲しいという私の要望にも前向きに考えて下さっているようでした。

講座と申し込み方法の詳細は、NPO法人キャンサーネットジャパンのHP(http://www.cancernet.jp/training/bec)をご参照下さい。けっこう高額ですし、前期はパソコンが必要、後期は東京や大阪まで2回行かなければならないという制約がありますので、誰でも気軽にというわけにはいきません。ただ後期の開催地は、人数が集まれば地方での開催も可能ということですので、受講者を集めて、開催場所(病院の会議室など)を確保できれば少し負担は減らすことができるようです。また5/7-7/31までに申し込むと前期分が割引になります(90.000円→80.000円)。

けっこうハードルが高いですが、もしご興味のある方はHPを覗いてみて下さい(それにしてももう少し安くならないものでしょうか?…)。

2012年6月10日日曜日

第9回 With You 北海道~あなたとブレストケアを考える会~

今年もまた夏に「With You 北海道~あなたとブレストケアを考える会」が行なわれます。5月にその打ち合わせがあったのですが所用で出席できませんでした。どうなったか気になっていたところ、先日その打ち合わせの概要のメールがH病院のK先生から届きました。

まだ正式なポスターになっていませんが、およその内容をお報せしておきます。


テーマ:もっと多くの良い情報を!
日時:平成24年8月18日(土) 12:30~16:15
場所:札幌市中央区南1条西16丁目 札幌医科大学研究棟1階 大講堂

主な内容:
①お役立ち情報コーナー(ミニ講演):『乳癌最新治療』『ネット活用法』『補完代替医療』 『リンパ浮腫セミナーを振り返って~「学ぶ」・「つながる」の大切さ~』
②参加者グループワーク
③パフォーマンス(フラメンコ)
④特別講演

①は初めての試みですね!興味深い内容が聞けるのではないかと思います。恒例になったグループワークは、今回は各テーマ別のグループに不参加の方たちを対象に「何でもコーナー」という場を設けるようです。今までこのグループワークがちょっと苦手で参加をためらっていた方たちもこれで参加しやすくなるのではないかと思います。特別講演は演者の先生は決まっていますが内容は仮題ですのでパンフレットが完成しましたらご確認下さい。乳腺診療の第1線で活躍されている先生ですので楽しみにしていて下さい!

今回で9回目となるこのイベントですが、最近少し参加者が固定化してきており、人数も少なくなってきたような印象です。すべての乳がん患者さんとご家族が対象ですので、札幌近郊(もちろん道内どこからでも)にお住まいの方は是非ご都合をつけてご参加下さい。お待ちしております。

2012年6月8日金曜日

今月末は乳癌学会!発表準備、いよいよ大詰め…

サッカー日本代表の試合、すごかったですね〜!久しぶりにすっきりする試合を見ました。このままの勢いでオーストラリア戦も勝って欲しいものです!

ついつい夢中になってサッカーを見てしまいましたが、乳癌学会があと3週間弱に迫ってきてしまいました。今回はなぜかなかなか学会準備に集中できなくて例年より完成が遅れています。先週末から今週初めは統計ソフトがうまく動いてくれず、簡単な統計処理ができなくて足踏み状態でした。ようやくそれも解決していよいよこれから仕上げです!

今年の私の学会発表内容は検診発見乳がんの悪性度に関しての検討です。マンモグラフィ併用乳がん検診の有用性の検討については、今までは乳がん発見率や乳がん死亡率などについての疫学的研究や臨床試験を元に行なわれてきました。今回の私の発表はアプローチを少し変えて発見契機別に悪性度に違いがあるのかどうかを検討したものです。さて、マンモグラフィ検診で発見される乳がんは、”放っておいても命に関わらないようながんもどき”ばかりなのでしょうか?生物学的悪性度の面から推測してみたいと思います。

今回の乳癌学会は熊本です。札幌からは羽田などから乗り換えか福岡から新幹線で移動になります。移動するだけでけっこう大変そうです。でも初めての場所なので楽しみにしています。昨年の乳癌学会には初めて病棟看護師も同行しましたが、今年も1人一緒に参加します。他の施設でどのような乳がん診療が行なわれているのかを学んで今後に活かしてくれたらと思っています。そしてこいう経験を通して乳がん看護認定看護師の取得に前向きになってくれる看護師が出てきてくれれば乳腺センターはもっと飛躍できるのではないかと考えています。また、会場では久しぶりにN先生の顔も見れます。G病院での出向研修できっと一回り大きくなっていることと思います。研修話を聞くのが今から楽しみです!



2012年6月5日火曜日

高齢者の炎症性乳がん??

先日、乳房の皮膚の広範な発赤と痛みで受診された高齢の患者さんがいらっしゃいました。

初診は一般外来だったのでマンモグラフィと超音波検査を施行後に私の外来に受診されました。再診時には発赤と痛みは軽減していましたが、超音波検査もマンモグラフィも視触診上も皮膚の著明な肥厚を認めました。その他には腫瘤などの所見はありませんでした。

このような患者さんを診た時にまず第1に頭に浮かぶのは炎症性乳がんです。鑑別には虫さされなどによる炎症性の疾患が挙げられます。ただ、炎症性乳がんというのは皮膚のリンパ管ががん細胞によって閉塞して起きる浮腫がその本態ですので著明なリンパ節転移を伴っている場合がほとんどです。しかしこの患者さんにはまったくリンパ節の腫大が認められませんでした。皮膚生検をすると診断がつく場合がありますが、炎症性乳がんの皮膚生検の陽性率はさほど高くないため、そこにがん細胞が証明できないからと言って炎症性乳がんの否定はできないのです。MRも有用ではありますが、認知症がひどくて腹臥位で長時間じっとしていることは不可能と判断しました。

実は同じような高齢の患者さんを以前経験したことがあります。間違いなく炎症性乳がんだと疑いもしなかったのですが、高齢ということで経過を見ていたら自然に浮腫は消失してしまったのです。結局原因は不明でしたが、リンパ流を阻害するなんらかの原因があったのか、皮膚によくわからない炎症があったのかのどちらかだと思います。

そういう経験があったことと、90才近い高齢者では炎症性乳がんに行なうような強力な化学療法は不可能であること、患者さんのご家族も皮膚生検を望まなかったことから今のところ経過観察をしています。1ヶ月後の検査ではまったく不変でした。まだ炎症性乳がんを完全に否定はできませんが、なんとなく違うのではないかと思っています。

高齢者の場合には、予期せぬことで原因がんと紛らわしい場合がたまにあります。例えばご本人の記憶にはなくても乳房の打撲で知らないうちに小さな血腫になっていてそれがあたかも硬がんのような腫瘤を形成していたり、特発性の血腫(おそらく動脈硬化による血管の破綻)によって乳房全体に巨大な腫瘤を形成していたり…。

今回の患者さんも炎症性乳がんではなかったとしたら、何らかの高齢者特有の病態が炎症性乳がん様の所見を呈する原因だったということになります。乳腺疾患の診断はやはり難しいです。