2015年12月30日水曜日

仕事納め

いつのまにかもうあと2日で今年も終わります。昨日は仕事納めでした。

午前中は関連病院の外来でしたが、年の瀬にも関わらず思っていたより患者さんが受診されたので終わったのは定時でした。

午後は本院に戻って患者さんの対応をしてから恒例の外科の1年の総括会議が行なわれました。乳腺センターに関しては手術件数などの詳細はG先生がまとめ、私は乳腺センターの学術活動や医療活動のまとめをして報告しました。

今年の手術症例は、秋くらいまでは思うように症例数が延びずに焦っていましたが、10月以降になぜか怒濤の手術ラッシュが来たおかげで例年並みまで戻すことができました。今年の傾向は、院外の施設(病院、クリニック)からのご紹介が多かったことです。再発症例だけではなく、手術症例もけっこうご紹介いただけたことは大きな成果の一つだったと思います。

また、今年は例年以上に講演会や検討会での講演などの学術活動が多かったのも特徴の一つです。おかげでかなりストレスはかかりましたが、道内外のさまざまな分野の先生方と面識を持つことができたことは今後に活かされるのではないかと思っています。

今日は回診でしたが、年末年始は病棟患者さんがほとんどいませんので落ち着いています。残っていたマンモグラフィの読影も済ませてきました。1/1、1/2も回診なので手術台帳の入力をしてきます。こういう時でないと最近は忙しくてこのような仕事をする時間がなかなか確保できません(汗)。

明日は休みなので今日はのんびりしながらワインを飲んでいます。今日、近くの酒店で、前から探していたアマローネ(ブドウを陰干しして作るイタリアヴェローナ地方のワイン)を見つけたので2本買ってきました!1本は明日開けて、もう1本はしばらくワインセラーに保管しておきます!



それでは皆さん、良いお年をお迎え下さい!

2015年12月14日月曜日

当然の結果ですが…”40才代の乳がん検診における超音波検査の上乗せ効果”〜J-START〜

マスコミにもこの臨床試験の結果はリリースされましたのでご存知の方は多いと思います。日本発のエビデンスとしてはかなりインパクトのある結果です。概要を以下に記します。

臨床試験名:J-START(Japan Strategic Anti-cancer Randomized Trial)(無作為化試験)
目的:がん検診における超音波検査の有効性を検証する
対象・方法:40~49歳の乳がん検診希望の日本人女性を対象とし、超音波検査+マンモグラフィ群(介入群)とマンモグラフィ単独の対照群に割り付けた(割り付け期間 2007-2011年)。
結果:36859例が超音波検査+マンモグラフィ群(介入群)、36139例がマンモグラフィ単独の対照群に割り付けられた。平均年齢は44歳。3344例(4.6%)が、第一度女性近親者に乳がんの既往歴があると報告し、また、917例(1.3%)が1回以上の良性乳房腫瘍の既往があった。
介入群の感度は、対照群と比較して有意に高い(91.1 vs.77.0%、p=0.0004)が、特異度は有意に低く(87.7 vs.91.4%、p<0.0001)、マイナス面として偽陽性が有意に多くなることを認めた。
対照群と比較して、介入群ではがんがより多く検出された(184 [0.50%] vs.117 [0.32%]、p=0.0003)。検出されたがんにおける浸潤がんの割合は、対照群で74%(117例中86例)であるのに対し、介入群では70%(184例中128例)であった。
対照群と比較して、介入群では、臨床病期がStage0とIのがんの頻度が高かった(144 [71.3%] vs.79 [52.0%]、p=0.0194)。2群間で、StageII以上の乳がんの頻度に有意差はなかった。
対照群の35例(0.10%)に対して、介入群では合計18例の中間期がん(0.05%)が診断された。したがって、超音波検査の使用は、中間期がんの0.05%の低下と関連していた。介入群における18例の中間期がんのうち16例(89%)、および対照群における35例のうち27例(77%)が浸潤がんであった。
要精検数は、対照群(3,153例)よりも介入群(4,647例)で多かった。 1回目のスクリーニング後に実施された生検数も、対照群よりも介入群で多かった。
(11月5日付Lancet誌オンライン版 )


簡単にまとめると40歳代の女性に対しては、マンモグラフィ単独より超音波検査を追加した方ががん発見率が高く、中間期乳がん(検診の間で発見される乳がん)を半減でき、早期がんの割合が高かったということです。問題点として特異度が低い(がんではないのに要精検とされる率が高い)という点はありますが、期待していた通りの良い結果でした。

そもそもこの結果は多くの乳腺外科医は予測できていたものです。若年者にはマンモグラフィだけでは不十分で超音波検査の方が描出されやすいとほとんどの乳腺外科医は日常診療の中で感じていたはずです。40歳代ですらこの結果ですからさらに低年齢になるほどこの傾向は顕著になります。しかし、ここには必ず”エビデンス”の壁が立ちはだかります。

私たちの施設でも学会で超音波検査の有用性は報告してきていますし、乳腺専門のクリニックの中には超音波検査の併用をほとんど全例に勧めている施設もあります。私は以前から若年者のマンモグラフィ単独の検診は感度の面で問題があると確信していましたので、触診で硬結が強い場合や前回のマンモグラフィで乳腺濃度が高かった場合などは”乳腺症(疑い)”として超音波検査を保険診療で行ない、フォローしてきました。その中でマンモグラフィでは写らない早期のがんが多数見つかっています。しかしあくまでも”エビデンスがない”ということで超音波検査の併用検診は自治体検診としてはできませんでしたし、積極的に超音波検査を勧める私たちのような施設に対する批判的な意見もあったようです。

超音波検査の追加が本当に有効かどうかは生存率の向上に寄与するかどうかを確認しなければ実はまだわかりません。その時点で切除する必要のないごく早期のがんを検出しているだけかもしれないからです。しかし、印象としては乳腺濃度が高い症例において小さな浸潤がんを見つけやすい超音波検査は生存率を向上させる可能性がきわめて高いと私は信じています。

2015年12月10日木曜日

ピンクリボンin SAPPORO&With You Hokkaido忘年会!

昨夜市内某ホテルのレストランでピンクリボンin SAPPOROとWith You Hokkaido合同の忘年会が行われました。

毎年行なわれているこの会ですが、私が参加できたのは今回初めてでした。ビュッフェ形式の食事とお酒を飲みながら、乳腺診療と患者会、そしてピンクリボン運動に力を入れている医師、パラメディカルの方、患者さんたちと楽しい時間を過ごすことができました。

北海道の乳腺診療の現状と未来について話をしながら、参加者のテーブルスピーチやスタッフの余興を楽しみましたが、それにしてもS医大の先生方の芸達者ぶりには驚きました。H病院のO先生のギター演奏に合わせて、私がいつも研究会で指名して答えていただいている(嫌がられているかも…)女医のS先生やノリノリで郷ひろみを熱唱したM先生、そしてS医大乳腺外科のトップのK先生の歌やH病院のK先生のチェロ(私が好きなさだまさしのBirthdayを弾いてくれました)…とても盛り上がりました。来年は是非うちのG先生にも熱唱してもらいたいものです!


同じテーブルに座ったT協会のKさんとは今後の北海道内の検診が行き渡っていない地域での検診活動についてお話ししました。私たちの病院も道内の過疎地にいくつも診療所をかかえていますが、そのほとんどは地元で乳がん検診を受ける施設がありません。今までは町や市をまたいで自ら受診するかT協会の巡回検診車を利用するしかありませんでしたが、マンパワー不足もあってすべての地域に十分な乳がん検診を提供することができていないのが現状です。

そこで私たちの病院とT協会で協力しながらそれをカバーできないかということを提案させていただいたのですが思っていた以上にKさんは積極的に考えて下さり、これから話し合いを行なうことを約束して下さいました。これはずっと前から私が考えていたことだったのですが、こんなにスムーズに受け入れて下さるならもっと早くにご相談すれば良かったです。

今日さっそくうちの院長にも話してみましたが、院長もとても喜んで後押ししてくれました。あと何年できるかわからない私の医師人生ですが、またやりがいのある仕事ができました。なんとか近いうちに話し合いの場をセッティングして計画を練ろうと思っています。このことも含めてとても有意義な時間でした。知識もエビデンスも重要ですが、やはり人間関係あってのものです。このような会を通してさまざまな方々とお知り合いになれたことは私にとっては本当に貴重な財産です。

2015年12月6日日曜日

忘年会終了!と言っても…

昨日は病院の忘年会でした。と言っても私が参加したのは自分の病院ではなく、昨年に続いてご招待を受けたD病院の方に出席してきました。自分の病院の方は病棟で余興を毎年出しているのですが、ここのところ私はずっと応援専門でしたのでG先生におまかせして、いつも大変お世話になっているD病院の忘年会に参加したのです。

会場は市内中心部のKホテル。D病院の忘年会には私を含めて20人ほどの招待客が出席していました。その中には私のような近隣病院の医師や薬局薬剤師のほか、経営コンサルタント、弁護士の方もいらしていました。昨年同様、こちらの忘年会では余興はしませんのでテーブルをまわりながら歓談中心の和やかな忘年会でした。

2次会は同じフロアの別室で立食形式で行なわれましたが、こちらでちょっとしたハプニングが起きてしまいました、大事には至らなかったと思いますが、皆さんも飲み過ぎには注意しましょう(汗)。ここでも形成外科のI先生やN記念病院のO先生、K整形外科のH先生と美味しいお酒を飲みながら楽しく会話することができました。H先生とは初対面でしたが、彼のお兄さんは私とE先生の高校の同期ということもあり、また私の大学のバレー部の後輩とH先生が同期生ということもわかって初めてとは思えないほど会話がはずみました(笑)。

そのあとは途中で抜けてタクシーでワインバーに移動し、10人ほどで2時近くまで飲んでしまいました(汗)。ここでも美味しいワインを何本も飲んでとても楽しい飲み会でした。支払いは太っ腹のE先生が全部持ってくれましたがいくらかかったことか…(汗)。

自分の病院の忘年会を欠席する後ろめたさはありましたが、近隣の先生方やいつもお世話になっているD病院の職員の方々と親交を深めることができましたし、医療に対するいろいろな考え方や姿勢をお聞きするのは勉強になります。これは長い目で見れば私たちの病院にとってもメリットのあることだと思っています。また機会があれば是非参加してみたいです。

2015年11月27日金曜日

乳腺術後症例検討会 44 ”今年最後!”

今週の水曜日は今年最後の症例検討会でした。

今回は天候が悪かったことと、行事などが重なったことなどからいつもより参加者は少なめでした。G先生も手術後に病状説明などが重なり、ようやく会場に着いたのはほぼ終わる頃でした。それにしてもここのところの乳がん診断患者数は異常です。手術件数も急増し、11月は過去最高の件数になりました。12月も手術予定患者がびっしりです。おかげでG先生はかなりお疲れ気味です(汗)。

今回は、技師さんたちの学会発表の紹介が3つと症例検討が3例でした。症例検討は、ドップラーでがんを疑う所見がありましたが、線維腺腫だった症例、検診発見の両側乳がん症例、乳腺原発の両側悪性リンパ腫症例の3例で、それぞれなかなか興味深い症例だったと思います。特に悪性リンパ腫の症例は、他の臓器に病変があって両側乳房にも病変があったケースはありましたが、両側乳房のみにリンパ腫の病変があったのは初めてのような気がします。

来月は年末になるため休会です。次回は1月末に開催されます。田舎の病院ですので天候が悪いと集まりが悪くなってしまうので好天であることを祈っています。

2015年11月22日日曜日

2日連続の講演会終了!これで体調も回復?

2日連続の講演会が昨日終わり、9月からずっと続いていた人前で話をするストレスからようやく解放されました!

もともと特に不特定多数の前で話すのが苦手な私なのですが、最近、このような学習会や講演の依頼をされることが少しずつ多くなってきていました。本当はお断りしたいのですが、病院のアピールにもなると思いできる限りお引き受けするようにしていました。ところがこの秋は、学会の教育講演や製薬会社の講演などが立て続けに重なってしまい、ずっと気が重い日々が続いていました。風邪症状が改善しないのもこのせいだったのかもしれません(汗)。

まず一昨日は、KT病院のK先生から依頼されていた乳腺チーム医療に関するセミナーの講演がありました。こちらは今までの私たちの病院での取組みをご紹介する内容の講演でしたので比較的ストレスも少なく楽しくスライド作りができましたし、発表もそれほど緊張はしませんでした。E病院のK先生の造影超音波のお話や高名なU先生の超音波検査全般の講演もあったため、会場は予想以上に人が集まり、椅子が足りないほどでした。

終了後は会場で懇親会があり、その後場所を移して二次会まで参加してきました。私たちの取り組みに興味を持って下さった先生方がけっこう声をかけて下さり、頑張ってスライドを作った甲斐がありました(笑)。ビールと日本酒(久しぶり!)で0時くらいまで飲んでしまいました。

翌日の土曜日は、午前中が関連病院の外来(本当は外来日ではないのですが、ここのところの受診者増で臨時で外来を開いて対応することになったのです)を終わらせてから、一度帰宅してKK社主催の講演会に出かけました。

こちらの講演会は、化学療法、特にG-CSF(骨髄を刺激して白血球を増やす薬剤)に関するものでした。私はパネルディスカッションを頼まれていたのですが、乳腺外科医は私だけでしたので(他は血液内科と呼吸器内科の先生の計3人)めちゃくちゃ緊張しました(泣)。そもそも私は化学療法の専門家ではありませんのでどうなることかと心配しましたが、なんとか無事終えることができました。

パネルディスカッションの前には、H大歯科の先生の化学療法における口腔ケアのご講演と私が以前研修させていただいていた東京のG病院の血液腫瘍科のH先生のご講演がありました。どちらもとても興味深い、勉強になるお話でした。H先生はお話の内容はもちろんですが、その話術にも感動しました(笑)。

終了後は懇親会でH先生と直接お話をすることができましたが、なんとH先生が移転前のG病院勤務時に住んでいたのは私がG病院にいたときに住んでいたマンションの同じ部屋でした!不思議なご縁を感じました(笑)。またいつかH先生のお話を拝聴できればと思っています。

今朝は久しぶりに少しゆっくり寝ることができました。引越しのごたごたなどもあり、休日に7時まで寝ていたのはすごく久しぶりです。今日はなんとなく体調も良く、明後日からの仕事は頑張れそうです!(明日も回診ですが)

2015年11月17日火曜日

引っ越しました!

11/7に札幌の北のはずれからちょっと中心部に近い都会に引っ越しました。

今までは狭い部屋から広い部屋への引越だったため、荷物の収納には特に困りはしませんでしたが、今回は18年住んだ一軒家から3LDKのマンションへの引越だったため、とても大変でした(汗)

引越の1ヶ月前から大量の不要品を処分したりリサイクルに出したりして、なんとかなるかと思ったのですが、いざ引っ越してみると収納できない衣類などの段ボールが山積み状態…。さらに処分を重ねてようやく落ち着いたところです。

さらに今週末に2日連続で講演とパネルディスカッションの仕事があるので、その準備をしていたらなかなかブログの更新をする時間がありませんでした。この間J-START(40才代を対象に検診マンモグラフィに超音波検査を上乗せする有用性を検証した臨床試験)の結果が論文化されて一般に公表されたり、加速乳房部分照射の大規模試験の結果が発表されたりなどがありましたが、また機会があれば書きたいと思います。

引っ越してからは自家用車1台を売却したので公共交通機関での通勤になりました。徒歩3分でバスターミナル、20分弱でバスを降り、6分ほどの徒歩で病院に着きます。雪道の運転を考えると気が楽ですが、帰りに吹雪の中バス停で待つのは辛いかもしれません(泣)

2015年10月28日水曜日

乳腺術後症例検討会 43 ”吸引組織生検”

昨日の講演会が終わってホッとしたのもつかの間、今日の夜は定例の乳腺術後症例検討会でした。



今日はまず最初にいつも参加して下さっているM社のUさんが、スライドを使って”吸引組織生検”についてのお話をして下さいました。これは前回の症例検討会で関連施設の技師さんが、この生検装置を見たことがないということを話していたため準備して下さったようです。少しはイメージができたのではないでしょうか。終了後には何人かの技師さんたちが乳房の模型を使いながらこの装置を実際に触らせてもらっていました。

本日の症例は4例。1例目は、超音波検査では区域性の乳管拡張集合像のように見え、非浸潤がんを疑いましたが、2度の針生検で乳腺症と診断された症例でした。2例目は関係ない症状で受診し、検査にて小さな乳頭腺管がんと診断された症例、3例目はマンモグラフィと超音波検査を1年おきに受けていた方で超音波検査で小さな硬がんと診断された症例、そして4例目が円形に近い形状で後方エコーも減弱していない硬がんの症例でした。

今回の症例検討会は、今の形式になってから90回目でした。来年の秋には節目の100回を迎えます。この時にはなんらかのイベントを企画したいと思っています。

薬剤師向けの講演会

昨日、KK社主催の薬剤師向けの講演会に行ってきました。

この講演会の講演を頼まれたのはけっこう前ですが、この秋の連続ストレスイベントの中でも最大のストレスでしたので、ずっと気分が重かったです。

何がストレスかと言うと、
①薬剤師対象に話したことはない
②話の内容が”乳がんの化学療法について”なので全然面白くない
③そもそも人前で話すのが苦手
だからです。

しかも最近風邪が長引いていて喉の調子がずっと悪く、引越準備で寝不足が続き、北斗さん効果で外来や検診も忙しくて全然余裕がありませんでした。それでもけっこう時間をかけて50枚ほどのスライドを作り、本番に臨みました。当日は30-40名ほどが参加して下さいました。できるだけ写真や図表を入れてわかりやすくお話ししたつもりでしたが、特に質問も出ませんでしたので彼らにとって少しでも役に立てたのかどうかはわかりません(汗)。

とりあえず無事終了しましたのでほと安心です。自宅に帰ってから持ち帰った弁当をいただき、翌朝出す予定の大型ゴミを3つ2階から1階に降ろして寝たのは0時過ぎでした(汗)。なかなか体調を整える時間がありません(泣)。

2015年10月13日火曜日

今度の日曜は、”J.M.S"!

今年ももういつの間にか10月…。10月はピンクリボン月間です。

毎年10月の第3日曜日に行なわれている”ジャパン・マンモグラフィ・サンデー(J.M.S)”ですが、今年も10/18に行なわれます。私たちの病院も関連病院とともに賛同施設となっていますので日曜日の検診を行ないます。このイベントは全国で行なわれます。賛同施設はJ.POSHのHP(http://jms-pinkribbon.com/)で調べることができます。

今回も私は関連病院の検診担当です。G先生が本院担当で、N先生はいつも釧路の検診に行っていたのですが今年は体調を考慮して他の女性外科医に依頼しました。

それにしても最近、検診受診者数の増加がすごいです。どんどん検診受け入れ枠数を増やして対応していますが、追いつくのがやっとです。せっかく決意した検診をスムーズに受けられるように迅速な対応をしていきたいと思っています。


昨日から風邪が悪化し、咳、痰、鼻水、咽頭痛、頭痛、発熱など風邪の諸症状が満載の身体ですが、日曜までにはなんとか治して検診に望みたいと思います!

2015年10月9日金曜日

北斗晶さんの影響

北斗晶さんの乳がん罹患のニュースが流れてから、乳腺外来の受診者数は急増しているようです。

私たちの病院にも、

「前から痛みがあったけど、北斗さんは痛みがあったと言っていたので心配なので見て下さい」

「2年前の検診で脂肪腫があるけど心配ないって言われたけど、北斗さんのニュースを見て心配になったので受診しました」

「次回1年後で本当にいいのですか?北斗さんは毎年受けていたのにリンパ節に転移があったって言ってましたけど…」

「私はⅡB期なんですよね?私がリンパ節に転移があったことを知っている何人もの友達が、ニュースで5年生存率50%って言っていたからものすごく心配して連絡をくれるのでまた不安になってしまいました」

などとおっしゃる患者さんが多数いらっしゃいます。芸能人の発言、マスコミの報道の影響は本当に大きいですね…。検診の受診者も受け入れ枠を増やさなければ対応できないような状態です。

いろいろ問題もありますが、そのおかげで、ニュースを見て触ってみたらしこりがあったと受診した患者さん2人が乳がんとわかりました。少しでも早い受診につながったのは良かったと思います。

2015年10月4日日曜日

患者会温泉1泊旅行 2015 in 歌志内”チロルの湯”

昨日から1泊で患者会温泉旅行に行ってきました。今年は、歌志内の”チロルの湯”でした。

歌志内は私が医師3年目の時に(今から24年前)診療所の所長として1年間勤務した思い出の場所です。その当時チロルの湯の前身の温泉施設は所長住宅のすぐ山側のところにありましたが、けっこうぼろぼろで一度も行ったことがありませんでした。その後チロルの湯として改装され、道の駅も併設して生まれ変わったことを聞いていましたのでずっと行ってみたいと思っていた温泉でした。

今回は、患者さん16人、付き添いのご家族1人、職員8人(医師3人、看護師3人、事務2人)の計25人が参加しました。バスに揺られてホテルに着いてからはまず道の駅にみんなで行ってきました。山あいのこの街は、炭坑が閉鎖してから過疎が進み、正直言って目立った産業はあまりありません。特産物は、”なんこ”という馬の腸を使った食材や山菜、そして漬け物くらいですが漬け物はいろいろ種類があって美味しかったです。みんなお土産に買っていました。

その後温泉に浸かって(肌がツルツルになりました!)、夕方からは宴会場で一次会が始まりました。



今回N先生はご懐妊中のため、残念ながら参加は見合わせとなりました(泣)。そのかわりと言ってはなんですが、初めて研修医のTN先生(乳腺センターに所属予定)が参加してくれ、何度も歌を歌って踊って盛り上げてくれました(写真向かって左がTN先生、右は事務のKさん)。G先生もいつも通り歌いまくり、あっという間に2時間たってしまいました。



そのあとはいつも通り部屋で二次会!飲んでしゃべって、ゲーム大会で盛り上がりました(写真)。



途中からはラグビー日本代表を応援して、寝たのは1時くらいでした(汗)結局みんな朝寝坊してしまい、朝風呂に入る時間はなく、ご飯を食べて、男5人で部屋でカードゲームをしてから帰路につきました。

ちょっと疲れましたが、料理もおいしかったですし楽しい2日間でした!

2015年10月1日木曜日

乳腺術後症例検討会 42 ”マンモグラフィ撮影機の機種変更の影響”

いま札幌は強風が吹き荒れています。これからさらに悪化するのでしょうか…(汗)明日の朝が心配ですね。

昨日はいつもの症例検討会でした。参加人数はまずまず。まずは放射線技師によるマンモグラフィ撮影機の機種変更後の検討についての報告がありました。現在の機種になって2年たちますが、最初は機種の違いによるポジショニングの難しさがあったようです。今は読影の際に気になることはほとんどなくなっています。フィルムレスになってからは過去画像の比較も容易になり、私たちとしては非常に楽になりました。また、以前の機種では乳房の大きな方は1枚におさまりませんでしたが今の機種はおさまりますので被曝の軽減にもつながっています。今後は同じ機種を今年導入した関連病院の技師にノウハウを伝達することが重要だと思っています。

症例は3例。内部に脂肪を含むようにも見える多発腫瘤で発見された症例と皮膚のわずかな肥厚(よく見ると構築の乱れもありそう)で診断された広義の炎症性乳がんの症例、そして5年前の画像との比較で判断が難しかった局所性非対称性陰影で発見された症例で、後者の2例は無症状の検診発見乳がんでした。どれもちょっと油断すると見落としそうな症例でしたが、そのうち2例はリンパ節転移を伴っていました。

マンモグラフィのみで早期の乳がんを診断するのは時に非常に難しいことがあります。北斗晶さんのニュースが流れて以降、毎年、もしくは2年に1回の検診に対する不安を訴える方が増えています。毎年検診を受けていてもスピードの速いがんはその間に出てきますし、若くて乳腺濃度の高い方の場合はマンモグラフィのみの検診ではたとえ毎年撮ったとしても診断には限界があります。

現在、J-STARTという国内の臨床試験で、40才代の女性を対象にマンモグラフィに超音波検査を上乗せする有用性を検証中ですが、個人的には年齢だけではなく、乳腺濃度に合わせて超音波検査を併用すべきであると考えていますし、それは40才以上のみではなく、30才代(遺伝性素因のある方はもう少し早くから)にも適応した方が良いのではないかと感じています。ただ今のところそれを支持する臨床試験はありません。

おそらくどのような検診方法に変更しても、すべての乳がんを早期発見できるわけではないと思います。これは検査の限界、そして経済的な側面もあるからです。ただそれでもできるだけ多くの乳がんを早期に診断できるような検診方法が一日でも早く確立することを願っています。

2015年9月23日水曜日

北斗晶さんのニュース

Yahoo!ニュースを見ていたら、北斗晶さんが乳がんと診断されて治療予定という文字が目に入ってきました。芸能人の乳がんは非常に多いという印象を持たれる方も多いかと思いますが、12人に1人は一生の間に乳がんになると言われていますので、乳腺外科医の立場としては不思議ではありません。

このニュースに関するコメントを読んでみると、「全摘するんだから相当進んでいる」とか「全摘をすれば再発の危険が少なくなるから安心」などという間違った書き込みがありました。やはり一般の方には、乳房全摘をすることの意味が正しく伝わっていないのかなと感じました。

ちなみに、乳房全摘をするか乳房温存術をするかは、いわゆる進行度(病期)とは関係ありません。超早期の非浸潤がんであっても乳管内を広く広がっていれば全摘が必要です。広く広がっていても非浸潤がんであれば0期ですし、全摘すればほぼ100%治癒します。つまり全摘が必要か、温存術が可能かは、進行度ではなく、乳腺内の広がりによって決定されるということです。

さらに、乳房温存術が可能な乳がんに対して乳房全摘をすれば予後が良くなるということはありません。2つの術式の差は、温存術の場合は乳腺が残ることによる乳房内再発率が異なるだけであり、適応を守って、かつ局所再発を早期に発見すればその差は予後には影響しませんし、遠隔再発率(肺、骨、肝臓などへの再発)は2つの術式で差はないことが臨床試験によって明らかにされています。

いずれにしても北斗晶さんには、なんとかつらい治療を乗り越えて、また元気な姿を見せて欲しいと願っています!

2015年9月14日月曜日

第13回 日本乳癌学会北海道地方会

一昨日の土曜日、北海道がんセンターにて「第13回 日本乳癌学会北海道地方会」が開催されました。

当日は朝早くから会場入りしてスライドのチェックをし、9:30から一般演題を聞いていました。10:30からは、ずっと準備をしてきた教育セミナーが行なわれました。診断部門は私が担当で、治療部門はGセンターのW先生が担当でした。持ち時間が45分にも関わらずスライドを作っているうちに60枚になってしまったため時間内に終わるかどうか心配でしたがなんとか終了することができました。このセミナーがパネリストの若手の先生方やフロアの参加者に少しでもお役に立つことができたならうれしいです。

ランチョンセミナーは第2会場でS病院の精神科の先生のお話を聞きました。日常診療にすぐに役に立つような内容をわかりやすくご説明していただき、とても勉強になりました。

ランチョンセミナーが終わるとすぐに午後の一般演題が始まりました。私は最初のセッションの座長を務めましたが、「検診」というセッションにも関わらず検診に関する発表はなく、超音波検査に関するものが2題、MRに関するものが2題、免疫染色に関するものが1題でした。いろいろ質問を用意していたのですが、発表時間がオーバーしたり、フロアからの発言が続いたりで、あまり私から聞くことはできませんでしたが、それほど時間を超過することなく無事に終えることができました。

コーヒーブレイクセミナーでは、S医大のK先生が、抗がん剤による有害事象(主に発熱性好中球減少症)のお話をして下さいました。この内容は、11月の私の講演の内容とも重なるので興味深く拝聴させていただきました。

最後の一般演題のセッションでは、G先生がピンクリボンイベントで使用したお手製の乳がんの自己検診用の触診モデルと超音波検査用のモデルの作り方などについて発表しました。普通の学会ではあまり見かけない内容の発表でしたのでひときわ異彩を放っていました(笑)。

今回の学会は準備も結構大変でしたが、それ以上に本番のストレスはいろいろと大きかったです(汗)。自分が発表する方がずっと気楽に思えました。なんとなく未だに気持ちがすっきりせず重いです。

2015年9月10日木曜日

明後日は乳癌学会北海道地方会

With Youが終わって一息つく暇もなく、今週末は乳癌学会の地方会です。

今回は、S医大のK先生から教育セミナーを頼まれため、結構な時間をかけて準備をしてきました。あまりに力を入れすぎたためスライドの枚数が多くなってしまい、おそらく全部は供覧することができないと思いますが、なかなか面白いスライドになったと思います。

今回の地方会は、N先生はおめでたいことがあったため発表は控えることになりました。G先生は発表しますが、私はセミナーがあったため、自粛する(サボる?)ことにしていました。ところがセミナーの準備をしている真っ最中に、今回の主催者のGセンターのT先生から口演の座長を頼まれてしまい、結局あまり楽をすることができなくなってしまいました(汗)。ただ、今回私が担当するセッションはパラメディカルが中心の第2会場ですので、わりと気楽にできそうです。ちなみに私のセッションには、いつも症例検討会に参加してくれているT病院のH技師さんやKT病院のK先生が演者に含まれていますのできっとアットホームな雰囲気でできるのではないかと思っています。

これが終われば10/27がKK社主催の薬剤師対象の研究会で乳がん化学療法に関する講演、11/20がKK病院主催の研究会でチーム医療の講演、翌日の11/21が、KK社の講演会のパネリストとストレスのかかる院外の仕事が続きます。それが終わったら、来年の乳癌学会の演題申し込み締め切りが間近に迫っていて、年内はずっと落ち着かない毎日が続きそうです。

さらに私事ですが、ついに年内に札幌市の北の果ての豪雪&猛吹雪地帯から中心街近くに転居することになり、そちらの件でもばたばたしています。ようやく目処がつきそうですので、おそらく11月くらいには転居ということになりそうです。これで吹雪の中の運転や連日の雪かきからは解放されます!

本州では豪雨による洪水被害が深刻なようですね…。ニュースを見て心を痛めています。少しでも被害が少なく済むように願っています。天候が不順になると体調も崩しやすいです。私もどうやらまた息子の風邪をうつされたようです(泣)。皆さんもどうかご自愛下さい。

2015年8月31日月曜日

第12回 With You Hokkaido 終了!

一昨日、札幌医大で「第12回 With You Hokkaido ”知ってほしい、乳がん診療の最前線”」が開催されました。


今年は天気も良くて昨年のようなJRのトラブルもなく、順調に終了することができました。ただ参加者は昨年より少し少なかったような印象です。

今年も最初にグループワークが行なわれました。私は、「緩和ケア」のグループで、参加者は患者さん7人、スタッフ3人の計10人でした。当初は患者さん4人の予定だったのが当日の飛び込みもあって少し多くなってしまいましたが、できるだけ皆さんに均等に話をしていただくように頑張ったつもりです。再発して治療中の患者さん、進行がんのため手術をせずに全身療法を行なっている患者さん、再発はありませんが、術後にメンタルで苦しんだ経過のある患者さん、患者相談の院内ボランティアを行なっているので勉強したいと思って参加した乳がん術後長く経過した患者さんなど、さまざまな背景を持っている患者さんたちでしたが有意義な話し合いになったならうれしいです。

その後大講堂に戻って代表世話人の霞先生のご挨拶があり、引き続いて今回のメインテーマの「緩和治療」「遺伝性乳がん」の講演が行なわれました。2つともすべての乳がん患者さんにとって少なからず関係があるはずなのにちょっと近づきにくい話題だと思いますが、とてもわかりやすく説明して下さいました。


そのあとあらかじめ集約していたアンケートを参考にしたモデルケースを元に「緩和治療」「遺伝性乳がん」に関するパネルディスカッションを行ないました。昨年に引き続いてのこのセッションですが、今年も壇上に上がることになってしまいました。ここ数日ずっと緊張していましたが、幸い発言を求められたのは一度だけでしたのでつつがなく終了しました。来年はもう少し時間を長くして、パネリストの間で意見が分かれるような話題を取り上げてみても良いのかなと思いました。

そのあとあけぼの会の活動報告と全国のWith Youの報告があって、今年のWith You Hokkaidoを無事終えることができました。参加した皆さん、お疲れさまでした。少しでも今後の療養、診療に役立っていただけることを願っています。

終了後は、以前から約束していたため、E先生と一緒にワインを味わってきました。

写真は、1軒目で飲んだ赤ワイン2本です。その後ちょっと懐かしい雰囲気の店でさらにグラスワインを飲み(何杯飲んだか途中から記憶なし)、楽しい時間を過ごしました。もちろんその後はひどい頭痛で横になれず、ほとんど眠れないまま朝を迎えました(泣)
昨日はアルコールが抜けてからニセコの1泊旅行に行ってきました(今日は夏休みでした)。久しぶりの温泉に癒されて戻ってきましたが、到着した途端、この間の疲れがどっと出てぐったりしているところです(汗)。

早めに休んで明日から仕事頑張ります!

2015年8月26日水曜日

乳腺術後症例検討会 41 ”副乳がん”

しばらくぶりのアップです。この間、さまざまな院外での仕事とプライベートの仕事が重なってなかなかブログを書く気力がわきませんでした。これから11月くらいまでイベントが続きますので余裕があるときに書くようにします。

今日は2ヶ月ぶりの乳腺症例検討会でした、手術が遅くなってしまったため、私だけ先に手を下ろして参加しましたが、G先生は途中から、N先生は別件の会議で結局参加できず、技師のNさんは私用で欠席とちょっと寂しい検討会になってしまいました(20名ちょっとくらいの参加でした)。



症例は3例。
1例目は、腋窩のしこりを自覚して来院。精査にて乳房内にがんが見つかったのですが、腋窩は皮膚腫瘤だと思って切除してみたら副乳に発生した非浸潤癌だったという症例でした。乳房内と副乳に同時発生した乳がん症例は非常に珍しいのではないかと思います。この腋窩腫瘤の超音波画像を見て”副乳発生の非浸潤がんなども考えられる”と言った関連病院の超音波技師のTさん、さすがです!

その他は、微細石灰化で検診精査となり、乳がんと診断されたのですが実は石灰化自体は良性だった症例と男性の浸潤性微小乳頭がんの症例でした。

その後、先日の日本乳癌学会学術総会で発表した3演題の概要を紹介して終了となりました。

今日はなんだかすごく疲れました…(汗)でも帰ったらファイターズが大谷投手の好投で勝っていたのでちょっと元気になりました!

2015年8月7日金曜日

がん治療の案内板〜ESMO (欧州臨床腫瘍学会)診療ガイドラインに基づいた患者向け情報

このたび日本癌治療学会が、ESMO (欧州臨床腫瘍学会)による患者さん向け情報の日本語版をWeb上で公開することにしました(http://www.jsco.or.jp/guide/index/page/id/136)。

日本乳癌学会も患者さん向けの診療ガイドラインを作成していますが(http://www.jbcs.gr.jp/people/people_gl.html)、冊子を購入しなければその詳細を読むことはできません(税別2300円)。この本も非常にわかりやすく解説していますが、有料ということで購入する方は少ないかもしれません。

ESMOの患者向け情報には、乳がんの基礎、検査法、治療法、治療の副作用、術後の検査などが掲載されています。ただ乳癌学会の患者さん向けガイドラインに比べると情報量は少なめで、言葉などは少し難しいかもしれません。またサプリメントや民間療法などに関する内容も乳癌学会の方が豊富です。乳癌学会の方はQ&A形式で書かれているのも一般の方にはわかりやすいかもしれません。

ざっと乳がんに関する概要を見たいのであればESMOの方が読みやすく、じっくりと細かい内容を知りたいのであれば乳癌学会の方が良いのではないかというのが、私が最初に受けた印象です。ネット上で両者を見比べて、もしESMOではわかりにくい、もしくは不十分と思われる方は乳癌学会の患者さんのための乳がん診療ガイドラインを購入してみてはいかがでしょうか?

2015年8月1日土曜日

センチネル陽性で腋窩郭清を省略した場合の盲点

ACOSOG Z0011という臨床試験の結果は、一般紙にも取り上げられるほどのインパクトのある結果でした(
http://hidechin-breastlifecare.blogspot.jp/2011/02/blog-post_12.html、http://hidechin-breastlifecare.blogspot.jp/2011/07/blog-post_23.html)。

簡単に概要を書きますと、”T1-2、明らかなリンパ節転移がない、乳房温存術を受け術後に乳房照射と”適切な補助療法”を行なう症例、においては、センチネルリンパ節生検でリンパ節転移が2個以下であれば腋窩郭清は省略しても局所健存率および全生存率を低下させない”というものです。

ただこの臨床試験にはその後いくつもの問題点が指摘されています。それでもこの結果はもうすでに世界中をかけめぐり、あっという間にコンセンサスを得てガイドラインにも掲載されているのが現状です。

センチネルリンパ節転移が陽性でリンパ節郭清を省略した場合の一番の問題点は、実際に何個のリンパ節転移があるのかを確認できないことです。当院で手術を行なった症例では、センチネルリンパ節転移が1-2個陽性の場合に、腋窩リンパ節郭清をしてみると、その1/4程度は4個以上の転移がありました。

私が知っているある患者さんは、他院で乳房温存術+センチネルリンパ節生検を受け1個のリンパ節に転移がありましたが、郭清はしなかったそうです。術後は通常の乳房照射を行ない、ホルモン療法のみで経過を見ていましたが、数年後に鎖骨上リンパ節、肺、骨に再発したとのことでした。

この患者さんがセンチネルリンパ節転移陽性と判断した時点で腋窩リンパ節郭清を受けていた場合、もしもリンパ節転移の個数が多数あったとしたら治療方針が変わっていたのではないか?という思いが頭をよぎりました。つまり、転移個数が多ければ、術後に抗がん剤を投与していたはずですし、胸壁+鎖骨上リンパ節領域への照射もしていた可能性があるのではないかということです。もちろんこれはあくまでも推測に基づく可能性の話ですので、抗がん剤や放射線治療をしていても同じ経過だったのかもしれませんが…。

ちょうどこのようなケースを以前の投稿(上に貼ったURL)で想定していたのを発見してちょっとびっくりしました。

要するに個々の症例を見てみると、正しい転移個数を確認できないことで適切な術後治療を受けられず、結果的に予後に影響が出る場合もあるのではないか?ということです。今までも指摘されていたように、Z0011では過半数に強力な化学療法を行なっていたために、その差、影響が出なかった可能性もあります。ER陽性の乳がん患者さんにおいてセンチネル陽性で腋窩郭清を省略する場合に、ホルモン療法のみという術後補助療法の選択は妥当なのか、もう少し検討が必要かもしれません。

もちろんセンチネルリンパ節に転移があった全症例に郭清を追加すれば、結果的に不必要な腋窩郭清をしてしまうケースも多くなります。そのために術後長期間にわたってリンパ浮腫に悩まされる患者さんが増えてしまうのもまた事実です。機能温存と根治性を両立させるのはなかなか難しいです。

2015年7月20日月曜日

ピンクリボンロード2015 無事終了〜タッピー大活躍!

心配された天気も回復して、昨日無事にピンクリボンロードが開催されました。

ホコテンにはたくさんの人が集まって下さり、大盛況でした。ブースでは、私たちの病院とKクリニックで模型を用いた自己検診の啓発や超音波検査のデモ(写真)、医療相談が行なわれ、かなりの数の方々(子供さんや男性も含め)が訪れて下さいました。また恒例のピンクリボンジュエリーにも多くの方が立ち寄ってくれました。



私たちの施設からは、事務4人、看護師2人、検査技師2人、放射線技師2人、医師4人という大所帯で参加しました。メンバーでブースの対応と啓発パンフの配布を手分けして行ないましたが、人数が多かったのでかなりの数の啓発パンフを配布することができました。そしてこのブログを読んでくれている私の患者さん2人も応援に駆けつけて下さいました。

また今回は、研修医のY先生が是非参加したいとのことで(学生時代からこのような活動をしていたとのこと)、急きょ札幌市東区のマスコットキャラクター、タマネギの妖精「タッピー」の着ぐるみをお借りして、「ピンクリボンタッピー」として参加してくれました(写真)。子供にも大人にも外国人観光客にも大人気で写真を撮られていました(笑)。



ステージでは、”札幌ドラムサークル”による「輪になってドラムサークル」(暑い中、ピンクリボンタッピーも参加)、”プメハナ.カ・ハレ・フラ・オ・マーヘアラニ”による「ピンクリボンフラ」、”札幌西ロータリークラブ”による「札幌西ロータリークラブ合唱団ステージ」が行なわれ、たくさんの観客が足を止め、参加していました(写真)。



今回は、札幌西ロータリークラブさんからのご寄付で、全員おそろいのピンクリボンTシャツを着用しての参加でした。そのおかげもあり、今回のイベントはいつも以上に一体感があったような気がします。この場をお借りして御礼申し上げます。

乳がんで命を落とす方が1人でも少なくなることを願いながら、これからもこのイベントに参加していきたいと考えています。

*なお余談ですが、このイベントのあとで大通を歩いていたら突然うしろからカラスに頭を攻撃されました(泣)。幸い、たまたま頭に手をやった瞬間だったため、くちばしでつつかれずに頭を蹴られただけですみましたが、びっくりしました(汗)。
大通のカラスは昔から凶暴です。公園で弁当を食べていると奪われたりもします。皆さんも気をつけて下さいね!

2015年7月18日土曜日

明日はピンクリボンロードですが…

先日書きましたように明日は大通のホコテンでピンクリボンロードの予定です(http://hidechin-breastlifecare.blogspot.jp/2015/07/in-sapporo2015.html)。が、天気が怪しいです…(泣)

今まで私が参加したこのイベントでは雨天でのイベント中止、変更はなかったのですが、明日は微妙です。ただYahoo!天気を確認してみたら、朝方は雨ですが、9:00ころからは曇りになっていました。なんとか予定通りイベントができれば良いのですが…。万が一、雨天中止の場合は、テレビ塔2階でブース展示のみ行なわれます。

なお、昨年私たちのブースで大活躍してくれたニワトリ(写真)ですが、今年は残念ながら体調不良により不参加になってしまいました(泣)。そのかわり、東区のゆるキャラ、タッピーが参加してくれることになっています!見かけたら声をかけてあげて下さいね!


2015年7月8日水曜日

ピンクリボン in SAPPORO2015 ”ピンクリボンロード”

以前ここでもご紹介しましたように(https://www.blogger.com/blogger.g?blogID=8139378504787083626#editor/target=post;postID=4896393767157755669;onPublishedMenu=posts;onClosedMenu=posts;postNum=1;src=postname)今年のピンクリボンロードは、例年より早い、7/19(日)に行なわれます。今日、その打ち合わせの会議が行なわれました。

場所は一昨年と同じさっぽろホコテン(札幌市南1西3)で、時間は13:30-16:00までです。雨天の際は、さっぽろテレビ塔の2Fすずらんに変更になります。

当日のステージでは、”札幌ドラムサークル”による「輪になってドラムサークル」、”プメハナ.カ・ハレ・フラ・オ・マーヘアラニ”による「ピンクリボンフラ」、”札幌西ロータリークラブ”による「札幌西ロータリークラブ合唱団ステージ」が行なわれます。また会場には私たちの施設を含む2施設での”メディカルチェックコーナー(医療相談や検診モデルを用いた自己検診指導など)”と毎年好評のピンクリボンジュエリーのブースが設置されます。夜はテレビ塔がピンク色にライトアップされますので是非見にいらして下さい。

そして今年は協力団体のご厚意によりスタッフがお揃いのピンクのTシャツを着用することになりました(写真)。私たちも今年はこのTシャツを着て乳がん検診の啓発活動を頑張りたいと思っています。時間のある方は是非お立ち寄り下さい。



2015年7月3日金曜日

乳癌学会から帰ってきました!

7/1に札幌を発ち、7/2から今日(7/3)の昼過ぎまで第23回日本乳癌学会学術総会に参加してきました。



東京は初日から曇りや小雨状態で、気温はそれほど高くありませんでしたが全身汗だくになるほどの不快な湿度でした。昨日は夕方に示説討論の自分の発表があったために日中はなんとなく落ち着かない状態で過ごしました。

私の発表に関しては、いま議論になりつつある内容でもあり、他にも同様の検討内容の報告もあったため、活発な討論が行なわれました。欧米のガイドラインに則れば、私が考えている方針が正しいはずなのですが、以前から自分たちのやり方でやってきた先生方にとってはその施設としての方針があることや、医療経済的な観点からもなかなか受け入れがたい状況があるようです。今後の推移を見守りたいと思っています。

昨夜は、私の発表が終わってから後期研修医のN先生と外来治療部門の師長のOさんと一緒に飲みに行きました。仕事の話だけではなく、いろいろな話で楽しく過ごしました(笑)。看護師さんや研修医の参加は初めてだったので、今後も継続していきたいと考えています。

今日はN先生(乳腺センタースタッフの)の発表のサポートをしてから、シンポジウムを聞いて、午後からはC社のブースで人型ロボットPepperと記念写真を撮影したり、会場内にある”相田みつを美術館”で癒されたりして過ごしました。



この2日間、蒸し暑さの中で歩き続け、立ち続け、並び続けたせいですっかり疲れてしまい、ようやく家にたどり着きました。明日は出勤なのでそろそろ寝ます!

2015年6月30日火曜日

第23回 日本乳癌学会学術総会

明日の夕方、乳癌学会(7/2-4)に出発します。今回は東京です(ちょっと残念…)。

私たちの施設からは私とG先生、N先生の3演題を発表します。私は7/2、N先生が7/3、G先生が7/4です。病棟を守るために私が前半、G先生が後半の学会参加ということにしましたので、私は7/3の夕方に札幌に戻ります。

今回の私の発表は、FEC100療法における発熱性好中球減少症に関する内容で、ポスター討論のセッションです。発表はたったの3分ですので、ざっとしか話せません。関連した内容の発表もいくつかありますので、有意義なディスカッションができればと思っています。

初日の夕方に発表、2日目の午後には会場を出なければなりませんので、あまり聞きたいセッションに参加できないかもしれませんが、限られた時間内で勉強してこようと思っています。

これから明日の準備にとりかかります!

2015年6月27日土曜日

”乳腺を語る会3”

昨日、某製薬会社会議室にて、”乳腺を語る会”が開催されました。

今回は、3施設から症例提示がありました。

1例目は紅斑がんの症例で、昨年相談されたその後の経過報告でした。非常に珍しい症例ですのでエビデンスのある治療がありませんから、参加者のさまざまな意見を取り入れながら治療に取り組んでいるようです。ただ、なかなか簡単ではなく、私自身も非常に勉強になる症例でした。

2例目は私たちの施設の症例をG先生が報告しました。他院での治療中断後にかなり進行した状態で当院に受診された症例ですが、局所で進行して治療に難渋する場合は、患者さんにとってはかなりの苦痛を伴います。組織診のサブタイプが生検するたびに異なっていたために、その結果に合わせて治療を行なってきましたが、最近、また増悪傾向となっています。なんとか良い知恵はないかと相談した症例でした。やはり局所再発巣の生検をもう一度してみてはどうかという提案を受けましたので、近日中に再々生検する予定です。

3例目は長い経過を持つ2個(両側)の肺転移症例でした。他の臓器には転移を認めず、薬物治療に縮小増大を繰り返していました。こういう症例に局所治療の適応があるのかということがテーマでした。参加者の多くは局所治療(手術、放射線治療など)の適応ありという意見でしたが、その後結局手術とラジオ波で治療したようです。今後の経過がとても興味深い症例でした。

終了後は近くの居酒屋で懇親会が開催されました。参加者は7人でしたが、飲みながらも乳がん治療に関する熱いトークが繰り広げられ、乳がんに対する熱意を感じることができた時間でした。

不定期に行なわれるこの会ですが、今まで参加してきた勉強会とは少し雰囲気も違って、なかなか面白い会だと思います。また次回も参加したいと思っています。

2015年6月24日水曜日

乳腺術後症例検討会 40 ”中間期乳がん”

今日は定例の乳腺術後症例検討会がありました。

先月は、元G病院の細胞診断士のI先生のご講演があったため、症例検討は2ヶ月ぶりでした。今日は本院と関連病院で各2例ずつの症例提示がありました。

いずれも画像的、病理学的にはとても珍しい症例というわけではありませんでしたが、そのうち2例は、中間期乳癌の症例でした。いずれも前回の検査所見は見直しても指摘することは難しく、早期発見の難しさを痛感した症例でした。その他は、針生検で硬がんが疑われたけれど最終病理が非浸潤がんだった症例と浸潤性乳管がんに浸潤性微小乳頭癌と扁平上皮がんの成分が混在していた症例でした。



今回は、前回ほどの人数ではありませんでしたが、KT病院のK先生やJ病院の技師さんなど、他の施設からの参加者も来て下さいました。K先生からは、11月にKT病院で乳腺センターのチーム医療に関しての講演を頼まれています。スライドを作成するために今日からは、さまざまざ活動を写真で残していこうと思っています。

症例検討会が終わった後、車に乗ってラジオをつけるとファイターズが7対0で勝っていました。結局最終的にはそのままで大谷が完封勝利!中田も久しぶりにホームランを打ったし、西川も3安打。やっぱり1番と4番が打たないとだめですね!
最近負けが続いて気分が盛り上がらなかったのに加えて、さまざまなストレスがあって鬱々としていましたが、久しぶりに良い気分でワインを飲むことができました(笑)。

来月の症例検討会は夏休みで休会です。メンバーでキャンプに行こうと毎年言っているのですが今年もどうやらだめそうです(泣)。

2015年6月23日火曜日

第12回 With You Hokkaido ”知ってほしい、乳がん診療の最前線”

今年の夏もWith You Hokkaidoが開催されます。今回で12回目を迎えるこのイベントですが、昨日ようやくチラシが病院に届きました。概要は以下の通りです。



日時:平成27年8月29日(土) 12:30-16:15(会場 12:00)

場所:札幌医科大学 臨床研究棟1階大講堂

参加費:1000円

プログラム:

1.参加者グループワーク
<テーマ>
・手術後の不安・治療 ・再発後の不安・治療 ・リンパ浮腫 ・補完・代替医療 ・ご家族のケア
・緩和ケア ・遺伝性乳がん ・乳房再建

今年も最初にグループワークを行ないます。参加者の積極的な発言を期待します。

2.開会の辞

3.特別講演
①「治療早期より始める乳がんの緩和治療」 町野貴幸先生(東札幌病院 内科・緩和ケア科)
②「遺伝性乳がんについて」 櫻井晃洋先生(札幌医科大学 遺伝医学)

いずれもホットな話題です。けっこう誤解されていらっしゃる場合も多いですので、この機会に一緒に学びましょう。

4.パネルディスカッション
「がんの緩和治療、遺伝性乳がん」

昨年、北海道で初めて取り入れた内容ですが、とても好評だったということで今年も行なうことになりました。特別講演で学んだ内容を踏まえて、北海道の医療現場の現状などを討論したいと思っています。

5.道内乳がん患者会の活動状況について

6.各地のWith You報告

7.閉会の辞

申し込み方法:各病院の外来に置いてあるチラシのハガキを郵送、または下記事務局にお問い合わせ下さい。申し込み締め切りは、8/21(消印有効)です。

事務局:東札幌病院内 With You Hokkaido事務局
 TEL: 011-812-2311(代表)
 FAX:011-823-9552
(受付時間 月曜ー金曜 9:00-17:00)

2015年6月13日土曜日

札幌乳癌カンファレンス 2015

今年で5回目を迎える札幌乳癌カンファレンスが昨日、よさこいソーラン初日でにぎやかな大通の某ホテルで開催されました。

毎年G病院病理部のA先生をお招きして行なわれるこの会は、乳腺病理の面白さと難しさを学ぶことができます。

今回は、まずA先生から、”筋上皮細胞の迷信”というご講演がありました。とても難しい内容ですので詳細は割愛しますが、良性の根拠になると信じられている所見(筋上皮細胞の存在)は必ずしも非浸潤がんの場合は当てはまらないことがあること(浸潤がんであれば筋上皮細胞は消失しているけれど乳管内の留まっている場合は残っていてもおかしくない)、非浸潤がんを今後もがんと扱うかどうかというとても難しいお話(他の臓器のがんではどうなっているか、新しいWHO分類についてなど)、最近話題になっている乳がん検診における過剰診断(良性をがんと診断しているわけではないので、この表現は誤解を招くとA先生はおっしゃっていました)のお話など、とても興味深い内容でした。

その後、症例検討を3例(1例はG先生が提示)行ない、A先生の解説(いつも短時間で相当細かく診断なさる姿に驚嘆します)を交えてディスカッションを行ないました。A先生のとても興味深いご講演で若干時間をオーバーしたこともあり、症例検討は駆け足になりましたが、いずれも興味深い症例でした(葉状腫瘍切除後の局所に線維腺腫の再発を繰り返す症例、命中しているはずの細胞診と針生検の結果が合致しない症例、前医でがんと診断されたけれど細胞の見直しで鑑別困難に変更になり、結果的に良性だった症例)。

終了後には、A先生を囲んで懇親会が行われ、楽しい時間を過ごしました。
来年もまたこの会が開催されることを願っています。AZ社の皆さん、よろしくお願いいたします!

2015年6月11日木曜日

救急隊に感じたこと

私は週1回、関連病院の外来に行っています。いつもカルテチェックなどがあるので7:40くらいには着くようにしているのですが、先日出勤した時に駐車場から病院に向かって横断歩道を渡ると、病院と反対側の角の歩道で人が倒れて3人の女性が声をかけているのが目に入りました、

倒れていたのは70-80代くらいの男性でした。車も近くに止まっていたのではねられたのかと思ったのですが、どうやら倒れているのを偶然発見したようです。声かけには最初反応がありませんでしたが、間もなく返答できるようになり、ご本人のお話では、歩いていて転んだということでした。顔に擦過傷がありましたが、明らかな麻痺はありませんでした。ただ、名前の問いかけにも反応は鈍く、ただ単に転んだわけではなさそうでした。雨が降っていましたので身体が冷えるのも気になりましたが、とりあえず、傘で雨を凌ぎながら、救急車を呼びました。その後の問いかけで、名前をお聞きでき、整骨院に向かう途中だったということがわかりました。

ただ、身分を証明するものが整骨院の診察券しかなく、ご家族への連絡はできませんでした。数分後、救急車が到着しました。救急隊は、その老人を担架に乗せ、救急車に乗せようとしましたが、私が手伝おうとすると、”われわれでやりますから”と言い、そのまま搬送しようとしているような感じでした。私は、その間に聞き得た状況を急いで伝えて、連絡先は不明だけれど、整骨院に問い合わせたらわかるかもしれないということだけ説明しました。

まあ、私が医師だと名乗らなかったから機械的に業務をこなしたのかもしれませんが、せめて第一発見者や、その場に居合わせた人に状況を聞いてから搬送すべきではなかったのかなと感じました。もし私が何も言わずに搬送してしまったら、救急隊は搬送先の病院でなんと説明したのでしょう?

全国では救急隊の対応が問題になったケースはマスコミでも報道されています。たしかに忙しいのはよくわかります。しかし、せめてその場に居合わせた人からの情報収集くらいはすべきだと思います。札幌市の救急隊は優秀だと思っていましたが、ちょっと残念な出来事でした。

私たちの病院にも毎日何台もの救急車が来ます。そのうちの一部には、残念ながら救急車を呼ぶべきではない患者さんもいらっしゃいます。病院に到着した途端、歩いて病院に入る患者さん、この時間はバスがないからと救急車を呼ぶ患者さん…。そのような患者さんが多いと救急隊のストレスは増すことと思います。限りある救急車を本当に必要な患者さんのために使えるように市民も考える必要があります。

もちろん自分で判断できない場合もありますので、結果的に軽症であったからと言って、救急車を呼んだことに罪悪感を感じる必要はありませんし、迷った場合は119に電話することをためらう必要はありません。ただ、故意にタクシー変わりに救急車を使うのはやめてもらいたいものです。そのことで、救急隊員の緊張感が薄れてしまうと、本当に必要な判断ができなくなってしまう可能性があるからです。

2015年6月9日火曜日

社内学習会→研究会&Webセミナー連発→乳癌学会

最近やたらと研究会や講演会などが多いです。

先週の金曜日は、以前から頼まれていたKK社の社内学習会の講演(AZ社の研究会と重なったのでそちらは欠席しました)がありました。再発治療の話を中心に1時間ほど、私たち臨床医がどのようなことを考えながら再発患者さんの治療に取り組んでいるか、製薬会社にどのようなことを望んでいるか、などについてお話してきました。

今週金曜日はAZ社の研究会、来週は月曜日がAZ社のWebセミナー、金曜日がE社のWebセミナー、土曜日がDS社の研究会、そしてその翌週は乳癌学会総会です。ちょうど先日までASCO2014が行なわれていたこともあって、ネット上のWebセミナーも行なわれていました。

全部参加するのはきついので、仕事や会議の状況を見ながら参加しますが、今週金曜日の研究会はG病院のA先生が来られる定例の会なので参加する予定です。また、来週土曜日の研究会もG先生が症例を提示するので参加予定です。

乳癌学会も近くなってきました。Posterはすでに登録してありますので心配ないのですが、発表に備えた最後の詰めがなかなか進みません。今回も乳癌学会は前半のみの参加になりますし(G先生と交代で参加)、東京なので今ひとつわくわく感もありません。乳癌学会ももう少し地方で行なえると良いのですが、だんだん規模が大きくなってきたために、宿泊施設や会場の手配などでどうしても大都市になってしまうようです。金沢や倉敷みたいな場所でまた開催できると良いのですが…。

今回の私の発表は、発熱性好中球減少症に関するものです。昨年末にジーラスタ®が発売になってからは発熱性好中球減少症は非常に少なくなりました。患者さんにとってはもちろんですが、私たちとしても夜間・休日の救急外来受診や臨時入院がほとんどなくなって管理が非常に楽になりました。今回は、そのデータも含めて報告する予定です。

7/19にはピンクリボン in SAPPORO、8/29はWith You Hokkaidoがあります。秋には乳癌学会地方会の教育セミナー、KK社の研究会のパネリスト、KT病院のK先生に頼まれたチーム医療の講演など、慣れない緊張する仕事が控えていますので、その準備にも取りかからなければなりません。そんなこんなで、なかなかブログの更新ができません(泣)。

2015年5月31日日曜日

”第1回 東区乳腺疾患セミナー”

先日の金曜日に私たちの病院会議室において、乳腺センターとC社共催による第1回の”東区乳腺疾患セミナー”が開催されました。

この会は、定例で毎月行なっている、乳腺術後症例検討会の特別バージョンとして、以前から企画していたものです。今回は特別講演の演者として、元G病院で乳腺細胞診の第1人者としてご活躍され、現在もさまざまな学会や研究会などでご多忙な毎日をすごされていらっしゃるI先生をお招きしました。

I先生は、私やG先生がG病院で研修したときに大変お世話になった先生です。いつも緊急で細胞診をした患者さんの検体を夕方に持っていっても嫌な顔一つ見せずにすぐに染色をして診て下さったり、毎週夜に細胞診の勉強会(数枚のプレパラートを用意していただいて、研修医が見て診断するテストなど)を開いて下さいました。I先生はとても熱心に教えて下さるので、終わるのが夜の10時過ぎになることもよくありました。乳腺外科医としての細胞診検体の作り方や依頼書の書き方などについても御指導いただき、その教えは札幌に戻ってもずっと忘れずに守っています。

今回の講演会には、私たちと同じようにI先生にお世話になったことのある市内の先生方や技師さんたちに広く声をおかけしましたので、88人もの方に集まっていただくことができ、大盛況でした。I先生のお話も、乳腺細胞診の基礎から誤診を防ぐためのコツなど今後の日常診療に役立つお話をして下さり、期待通りの内容でした。私たちの施設の病理医や細胞診断士もこのご講演内容はもちろん、講演前に病理検査室で行なわれた症例カンファレンスでI先生のアドバイスをいただいて、とても勉強になったことと思います。

I先生のご講演後に、いつもの術後検討の症例も用意していたのですが、予想通りフロアから何人も質問があったために時間がなくなり次回に先送りになりました。しかしそれだけ価値のあるご講演だったと思います。

司会をしていた私だけがダメダメで申し訳なかったのですが、大変盛り上がった講演会で良かったです。講演会終了後には、私たちの施設の乳腺外科医、病理医、細胞診断士、超音波技師、釧路の関連病院の検査技師、そしてI先生の10人ですすきのに移動して懇親会を行いました。始まったのが21時過ぎでしたのであまり時間はありませんでしたが、とても楽しい時間を過ごすことができました。

今回は講演会ということで来ていただきましたが、今度はゆっくり時間をかけて病理医と細胞診断士に細胞診断の指導をしていただければと思っています。

2015年5月18日月曜日

7/19はさっぽろホコテンでピンクリボンロード!

先週の水曜日にピンリリボン in SAPPOROの理事会が某ホテルの和食処で行なわれました。

昨年度の会計報告と今年度の活動予定などを話し合ったのですが、今年度もさまざまな活動を行うことになりそうです。田中賢介選手も日本ハムファイターズに戻ってきてくれましたので、またアウトの数に応じて無料乳がん検診をプレゼントという企画が復活します。まだ受け付けていますので、最近乳がん検診を受けていないという40才以上の方はこの機会に応募してみて下さい(ピンクリボン in SAPPOROのHP http://pinkribbonsapporo.web.fc2.com/の中にある”田中賢介 ピンクリボンプロジェクト”のバナーをクリックして下さい)。なお、このプロジェクトには年齢制限はありませんが、マンモグラフィ検診の有効性のエビデンスがあるのは40才以上ですので、40才未満の方は有効性(家族歴があるなど)と不利益(被曝、痛みなど)をよくご検討した上でご応募願います。



そして今年もまた夏(例年より早い7/19です)に大通のさっぽろホコテン(中央区南1西3)で”ピンクリボンロード”が行なわれます。詳細は上記のHPに記載がありますが、今年も私たちの施設でブースを出す予定です。きっとまたG先生が超音波検査の乳房モデルを作ってくれると思いますので、是非本物の超音波検査の器械を使ってしこりを探してみて下さい(写真は昨年のブースの様子です)。



ここのところ、乳癌学会や院内で開催される講演会、某製薬会社の社内学習会の準備などに追われてすっかりブログがご無沙汰になっていました。今日も超音波技師さんの学会発表の演題を探すためにパソコンの患者台帳を見すぎて眼痛がひどくなっていましたが、なんとか更新することができました(汗)。これからも無理せずマイペースで更新していきます。

2015年5月11日月曜日

夕食事の赤ワイン1杯で糖尿病患者の脂質・糖代謝が改善!

昔から少量の赤ワインは健康に良いとされてきましたが、今回夕食事の1杯の赤ワインが、糖尿病患者の脂質・糖代謝を改善するという研究結果が欧州肥満学会(ECO2015,5月6~9日,チェコ共和国・プラハ)で報告されました。

概要は以下の通りです。

臨床試験名:
CArdiovaSCulAr Diabetes & Ethanol(CASCADE)試験(ランダム化比較試験)

発表者:
イスラエル・Ben-Gurion University of the NegevのIris Shai氏ら

対象:
良好にコントロールされた飲酒習慣のない成人の糖尿病患者224例

方法:
対象者を①赤ワイン②白ワイン③ミネラルウオーターのいずれかを2年間,毎夕食時に150mL摂取する群にランダムに割り付けた。いずれの群も食事はカロリー制限なしの地中海食とし,栄養士によるグループセッションを試験開始後3カ月間は1カ月ごと,その後は3カ月ごとに実施。複数の食事評価ツールを用いて食事内容を評価し,ワインの摂取についても厳格にフォローした。ワインは同じ種類が無料提供された。

結果:
試験遵守率は1年後94%,2年後87%だった。
ミネラルウオーター群に比べ赤ワイン群ではHDL-コレステロール(HDL-C)およびアポリポ蛋白(apo)A1がわずかに上昇し,総コレステロール(TC)/HDL-C比,トリグリセライド/HDL-C比,apoB100/apoA1比が減少した(全てP<0.05)。また,赤・白ワイン群ではミネラルウオーター群に比べ糖代謝がわずかに改善し,特に赤ワインによる改善効果が大きかった。
さらに,赤・白ワインによる血糖コントロールのパラメータ改善効果は,アルコールの分解が早いことに関連する遺伝子変異を有する患者(ADH1B*2キャリア)に比べ,アルコールの分解が遅い患者(野生型ADH1B*1)で優れていた。
なお,ワインの摂取は薬物治療の内容や血圧および肝機能マーカーに影響しなかった。

結論:
・赤・白ワインはいずれもミネラルウオーターに比べてわずかに糖代謝を改善。また,赤ワインを摂取した患者では脂質プロファイルも有意に改善した。
・健康的な食事に加えて少量のワイン,特に赤ワインを摂取することは安全で心血管・代謝リスクを軽減できる。
・アルコールの分解能に関連する遺伝的素因の違いによってワインによる血糖コントロールのパラメータ改善効果に差が認められたという結果はアルコールが一定の役割を果たしていることを支持している。
・白ワインよりも赤ワインの方が心血管・代謝プロファイルの改善に優れていたことから,赤ワインに含まれるアルコール以外のなんらかの成分が寄与した可能性もある。


赤ワイン好きの私にはなんともうれしい報告です(笑)。ただ、グラス1杯以上(例えばボトル1本…)、毎日飲んだ場合にどのような結果をもたらすかは不明です(汗)。E先生、お互いに気をつけましょう(笑)

なお、アルコールの過量摂取は、乳がんの発症率を上げるとされていることも併せて記しておきます(どのくらい以上ならリスクになるのか、また乳がん患者の再発リスクも上げるのかについては不明な点もあります)。なにごとも控えめくらいが無難なんでしょうね!

2015年4月22日水曜日

乳腺術後症例検討会 39 ”乳房再建のお話”

今日は定例の症例検討会が行なわれました。

今回は、まずN先生による乳房再建のミニ講演がありました。症例検討会は、主に画像診断と病理の対比を行なって、乳腺疾患の診断技術や知識を研鑽する場ですので、乳房再建の話題は直接は関係ないのですが、最近一次再建を行なう症例が増えてきたこともあり、乳腺疾患に関する一般的な知識を拡げるという目的でN先生に依頼されたようです。

講演の内容は、乳房再建の種類や適応、当院で行なっている一次再建の術式、その後の流れ、そして合併症などについての一般的な内容をわかりやすく解説してくれました。

症例検討は2例でした。1例目は画像診断で選択肢に挙げるのが難しかった乳腺原発悪性リンパ腫の症例でした。いつもいつも悪性リンパ腫は忘れたころにやってくるので、病理検査前に疑うことができた症例は今までほとんどありません。これが悪性リンパ腫の特徴だというものがないのが悪性リンパ腫の特徴です。でもほとんどの症例では悪性を否定できない画像所見を呈するので、良性として経過観察してしまうことは今までのところはなかったと思います。

2例目は、検診マンモグラフィで左乳房に良性を疑う腫瘤を指摘されて精査になった症例でした。精査の結果、左は粘液を貯留した良性の嚢胞でしたが、超音波検査で偶然右乳腺内に乳管拡張集合像を指摘し、針生検の結果、非浸潤がんの診断となりました。やぶにらみで乳がんを発見できたケースでしたが、この手のタイプの非浸潤がんはマンモグラフィで指摘することはなかなか難しいと思います。

来月は、外部から細胞診のスペシャリストであるI先生をお招きして講演していただく予定にしています。G病院で研修中に私やG先生も大変お世話になった先生です。お話もとても面白いので今から楽しみにしています。

2015年4月21日火曜日

第12回 With You Hokkaido 打ち合わせ

今日、With You Hokkaidoの打ち合わせが札幌医大で行なわれました。

12回目を迎えるWith You Hokkaidoですが、前回好評だったパネルディスカッションが今回も行なわれそうです。講演の内容は、ここ数年トピックだった件に関するものと、乳がんと診断された方にとってはみな多少なりとも関わりのあることに関するものです。パネルディスカッションも講演に関する内容になりそうです。また、今回は患者会に関する紹介なども考えています。もちろん、グループワークも行なわれます。

詳細は正式に決まってから報告しますが、今年は8/29の土曜日、いつもの札幌医大研究棟1F大講堂で行なわれます。是非予定を空けてご参加下さい。

*最初の投稿では、日程が8/28になっていましたが、8/29の誤りでした。すみません(汗)。

2015年4月18日土曜日

乳腺を語る会2

今晩はDS社で”乳腺を語る会”が行なわれました。今回は私とG先生、そして後期研修医のN先生と一緒に参加しました。

症例は3例でしたが、今回も非常に興味深い症例でした。日頃私たちの施設でも迷うような症例でしたので、他の施設での考え方は参考になりました。それにしても効くと思ったはずの治療が効果がなかった場合に非常に困るのはどこでも同じであることがあらためてよくわかりました。私たちが頭を悩ませるような症例は、他の施設でも困っているのですね…。

例えばHER2陽性の進行乳がん。普通は抗HER2薬がかなり有効なはずですが、まったく効かない場合にどうするか?手術のタイミングは?
手術不能と判断された進行乳がんで、治療でほとんど腫瘍が消えた場合に局所治療をどうするか?手術をするか?腋窩は郭清するのか?放射線治療は併用するのか?
針生検で鑑別困難と診断された場合に、次の手段はどうするのか?

答えは一つではないかもしれません。エビデンスが十分ではない領域は、実際の臨床の中ではたくさんあります。このような研究会の中で方向性を見いだし、今後の治療に生かすことができればと思いました。

次回は是非私たちの施設の症例を持っていこうと思っています。飲み会に参加できなかったのは残念でしたが、今度は参加したいと思っています。

2015年4月15日水曜日

魚油サプリが化学療法の効果を減弱させる可能性

マウスを用いた研究では、魚油に含まれる16:4(n-3)という脂肪酸が、微量でも化学療法剤への抵抗性を惹起するということが以前からわかっていましたが、今回人体においても同様の可能性があることを示す結果をオランダ・Netherlands Cancer InstituteのEmile E. Voest氏らが,JAMA Oncol(2015年4月2日オンライン版 http://oncology.jamanetwork.com/article.aspx?articleid=2212208)で報告しました。

概要は以下の通りです。

対象:
①University Medical Center Utrechtでの積極的がん治療歴があり,2011年11月に同センターの腫瘍外来を受診した患者400例 
②健康なボランティア50例

方法:
①サプリメント使用状況に関する質問票を配布し記入 
②30例に魚油、20例に魚を摂取させて16:4(n-3)脂肪酸の血中濃度を測定。

結果:
①118例(30%)から回答を得た。EPAやDHAといったn-3脂肪酸含有サプリメントを常用していたのは118例中13例(11%)であった。
②まず6銘柄の魚油サプリメントと4種の魚(ニシン,サバ,マグロ,サケ)の16:4(n-3)含有量を測定。サプリメントは6銘柄とも相当量(0.2~5.7μM)の16:4(n-3)脂肪酸を含んでおり,マウスの実験では,シスプラチンに対する抵抗性を惹起するには,1μLの魚油を添加するだけで十分であった。また,4種の魚のうちニシンとサバは,マグロとサケに比べ16:4(n-3)を高度に含有していた。
健康ボランティア30例に魚油を,20例に魚を,それぞれ摂取させ,摂取後の脂肪酸の血中濃度を測定した。その結果,1日推奨摂取量である10mLの魚油を摂取後,16:4(n-3)脂肪酸の血中濃度は著明に上昇し,摂取前値に低下するのに8時間を要した。また,摂取量を50mLに増やした場合,血中濃度の上昇時間も延長された。魚を摂取させた群では,ニシンやサバで血中16:4(n-3)脂肪酸濃度が著明に上昇し,マグロ摂取では影響は見られず,サケでは短時間の弱い上昇を示した。

結論:
がん化学療法を受けた患者へのサプリメント摂取に関する質問票調査と,健康ボランティアを対象とした魚油サプリメントまたは魚摂取試験の結果,魚油サプリメントや特定の魚にはがん化学療法の効果を減じる脂肪酸が含まれており,魚油の摂取後,同脂肪酸の血中濃度の上昇が長時間続くため、化学療法中の魚油摂取が治療に悪影響を与える可能性がある。


がん患者さんは、再発や死に対する不安、治療の副作用に対する不安、西洋医学への不信感、ネットでの情報の氾濫などによって、サプリメントに頼るケースは珍しくありません。患者さんがサプリメントの併用を希望した場合、標準治療に対する併用をいっさい認めない施設もありますが、明らかな有害性が報告されてなければ許可する施設もあります。一般の方々の中には、サプリメントや漢方薬、食餌療法などは副作用もなく、安全であると思われている人も多いと思いますが、今回の報告はそれに警鐘を鳴らすものになりそうです。以前ここでも書きましたが、他にも漢方薬やサプリメントなどの代替療法が副作用をきたす可能性については報告されています。

この論文の著者は、「今回の知見に基づき,さらなるデータが得られるまで,がん患者に対し化学療法開始の前日から終了の翌日まで一時的に魚油摂取を中止することを勧める」と述べています。しかし今回の報告は、あくまでも魚油や魚の摂取後の血中濃度を測定した結果を元にマウスの臨床試験の結果から類推したものに過ぎません。実際に魚油の摂取が化学療法剤の効果(生存率など)に悪影響を与えるかどうかについては、前向きの比較試験を行わなければわかりませんが、当面はこの勧告に従う方が無難かもしれませんね。

2015年3月24日火曜日

乳癌の治療最新情報40 ”トポイソメラーゼI阻害薬Etirinotecan Pegol”

新しい抗がん剤の臨床試験の結果がネットニュースで報告されました(http://www.streetinsider.com/Corporate+News/Nektar+Therapeutics+(NKTR)+Reports+Phase+3+BEACON+Missed+Primary+Endpoint/10380783.html)。

臨床試験:BEACON(多施設共同オープンラベル無作為化フェーズ3)

対象:局所再発もしくは転移性乳がんで、アントラサイクリン系抗癌剤、タキサン系抗癌剤、カペシタビン(ATC)による治療歴のある女性852人。

方法:長時間作用型のトポイソメラーゼI阻害薬Etirinotecan Pegol(NKTR-102)を投与する群と医師が選択した化学療法(TPC)を投与する群を1:1の割合で患者を割付け、NKTR-102は145mg/m2を3週おきに投与した。

結果:医師が選択した治療薬は、ixabepilone、ビノレルビン、ゲムシタビン、エリブリン、タキサン系抗癌剤であった。
主要評価項目であるOSの中央値はNKTR-102群12.4カ月、TPC群10.3カ月だった(ハザード比0.87、p=0.08…有意差なし)。
脳転移歴がある患者グループでは、NKTR-102はOS中央値で5.2カ月延長し、有意な改善を示した。NKTR-102群のOS中央値が10.0カ月、TPC群が4.8カ月だった(ハザード比0.51、 p<0.01…有意差あり)。また脳転移歴がある患者の12カ月生存率はNKTR-102群が44.4%、TPC群は19.4% だった。

試験開始時に肝転移のあった患者グループでは、NKTR-102によりOS中央値は2.6カ月改善した。NKTR-102群のOS中央値は10.9カ月、TPC群は8.3カ月だった(ハザード比0.73、p<0.002…有意差あり)。また12カ月生存率はそれぞれ46.9%、33.3%だった。

副次評価項目である奏効率と無増悪生存期間(PFS)では統計的有意差は示されなかった。

グレード3以上の有害事象は、NKTR-102群48%、TPC群63%で、NKTR-102群で少なかった。NKTR-102群の主なグレード3以上の有害事象は下痢(9.6%)、好中球減少症(9.6%)、貧血(4.7%)、倦怠感(4.5%)だった。NKTR-102群でグレード4の下痢はなかった。 TPC群の主なグレード3以上の有害事象は好中球減少症(30.8%)、貧血(4.7%)、呼吸困難(4.4%)だった。グレード3以上の神経障害がTPC群で3.7%に見られ、NKTR-102 群では0.5%だった。グレード1/2の脱毛はNKTR-102 群では10%、TPC群は23%だった。


下痢が多いのが少し気になりますが、重篤な副作用は少なく、脳転移や肝転移という生命の危機に面している状態の治療選択肢としては期待できるのではないかと思います。これは単剤での報告ですし、この結果を受けて副作用の重ならない他の薬剤との併用の臨床試験にもつながるのかもしれません。国内での認可はまだまだ先だと思いますが、今後の報告を待ちたいと思います。



 

 

2015年3月16日月曜日

ゴセレリンによる卵巣機能保護

かなり以前から、乳がん患者さんに化学療法を行なう際に、ゴセレリン(ゾラデックス®)などのLH-RH agonistを併用すると卵巣機能が温存されるのではないかということは、臨床医の中では信じている人が多かったと思います(私もその1人です)。しかし、それを十分に立証するエビデンスが今まではないとされていました。

今回、クリーブランドクリニックのHalle C.F. Moore氏らPOEMS/S0230研究グループによる無作為化試験の結果、卵巣機能不全を予防し、早期閉経リスクの低下や、妊娠の可能性が向上することがようやく報告されました(http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1413204)。

概要は以下の通りです。

対象・方法:手術可能なホルモン受容体陰性閉経前乳がん女性患者257例(18~49歳)を、標準化学療法+GnRHアゴニストのゴセレリンを投与する群(ゴセレリン群)と、標準化学療法のみを行う群(化学療法単独群)に無作為に割り付けた(対象期間 2004.2-2011.5)。主要エンドポイントは、2年時点の卵巣機能不全(評価前6ヵ月間に月経がないことと、卵胞刺激ホルモン(FSH)値が閉経後の範囲値にあること)、副次エンドポイントは、妊娠アウトカム、無病生存率、全生存率などであった。

結果:218例(ゴセレリン群105例、化学療法単独群113例)が適格であると判断され、評価可能であった。エンドポイント分析時に生存していた患者の追跡期間中央値は4.1年であった。
主要エンドポイント評価は135例(66例、69例)が完了した。結果、卵巣機能不全が認められたのは、ゴセレリン群8%、化学療法単独群22%であった(オッズ比:0.30、95%信頼区間[CI]:0.09~0.97、両側p=0.04)。
評価可能であった218例の患者について、妊娠した女性はゴセレリン群のほうが化学療法単独群よりも有意に多く(21%vs. 11%、p=0.03)、無病生存率(p=0.04)、全生存率(p=0.05)についてもゴセレリン群が有意に高かった。

先日の講演会では、受精卵保存や卵子保存、卵巣保存のお話を聞いてきましたが、もしLH-RH agonistで同等の成績が得られるのであれば、治療の遅れや、その後の人工授精の負担などが軽減します。今度はLH-RH agonist併用群とART(Assisted reproducting techniques)群との比較試験を是非とも行なって欲しいと思います。

2015年3月15日日曜日

「18th Breast Cancer UP-TO-DATE Meeting」in Fukuoka

昨日、福岡でNK社主催の「18th Breast Cancer UP-TO-DATE Meeting」が行なわれました。毎年行なわれるこの会ですが、今回は少なくとも私が参加した中では初めての福岡開催でした。飛行機の便の関係で少し到着が遅れましたが、興味深いお話を聴くことができました。

SessionⅠ 「乳癌分子診断の臨床応用」
3題の講演がありましたが、途中から聴いたということを差し引いてもとても難しい話が多くて理解するのはなかなか困難でした(汗)。3題目はHBOCの話でしたので、先日聞いた話と関連があったこともあり、知識の整理に役立ちました。

SessionⅡ 「HER2陽性再発乳癌の治療戦略」
1題目は抗HER2療法の耐性機構の話、2題目はHER2陽性乳がんに対する分子標的薬の治療戦略の話でした。いずれもだいたいは今まで聞いたことのある話が中心でした。ただ耐性(薬が効かなくなること)の話は本当に奥が深いです。今回の講演で知識の整理ができたような気がしますが、数年経てばまた違った解釈になるのかもしれません。いずれにしても日本ではやはりトラスツズマブとラパチニブの組み合わせが保険適用になる見通しはなさそうです。

SessionⅢ 「若年性乳癌患者の妊孕性保持」
産婦人科の先生と腫瘍内科の先生の司会、パネリストによるパネルディスカッション形式の討議でした。若年性乳がん患者さんに対してできるだけ早い段階で、場合によっては繰り返し妊娠、出産の希望を確認しておくことの重要性や、年齢が進むに従って健常者でも卵子の機能が低下し妊娠率が低下するので、場合によっては数年かかる乳がん治療終了後の人工授精(Assisted Reproduction techniques: ARTと言い、受精卵保存、卵子保存、卵巣保存の3種類があります)による妊娠率は年齢によっては期待するほど高くはならないことや高齢出産のリスクも伴うことがあること、特に受精卵保存や卵子保存の場合は、抗がん剤治療の開始が少し遅れてしまうことのリスクもあること、そしてこれらの情報を迅速にかつきめ細やかに生殖医療医に伝達するためのネットワークやコミュニケーションの構築が重要であることなどを学びました。

終了後は懇親会に参加し、KS病院のT先生や名古屋の友人のK先生とディスカッションしながら楽しい時間を過ごしました。

そして今日は帰りの便を午後にして太宰府に行ってきました。たまたま乗った列車が、1年前から投入された観光列車の”旅人”という特別列車だったらしく、”にわか撮り鉄”たちが何人もカメラを向けていました(私も…笑 写真)。



今回どうしても太宰府に行きたかった理由は、花が咲いている飛梅が見たかったからです。今まで2度太宰府に行っていますが、6月とか11月だったため、花は咲いていませんでした。HPでは2/1に飛梅の見ごろという記事が出ていたのでもう間に合わないかと思ったのですが、なんとかまだ花が残っていてくれました(写真)。良かった!(笑)



その後、いつものお茶屋さんで梅ヶ枝餅と抹茶のセットをいただました。焼きたての梅ヶ枝餅は本当に美味しいです!それからは少し早めに空港に向かって、とんこつラーメンを食べてから帰ってきました。自宅に着いたのは18時すぎだったので疲れましたが、勉強もできて観光もできたので大満足です!

2015年3月8日日曜日

北海道HBOCネットワーク第2回ミーティング〜PARP阻害薬による合成致死療法

今日の午後、市内のアスティ45 12Fの会議室で”北海道HBOCネットワーク第2回ミーティング”が開催されました。HBOCとは、遺伝性乳がん・卵巣がん症候群(Hereditary Breast and Ovarian Cancer)のことです。主にBRCA1、2という遺伝子の変異を有する人に発生する遺伝性乳がんの1つで、アンジェリーナ・ジョリーさんの件で広く認知されるようになりました。

昨年は私とG先生、N先生の3人で参加しました。今回、両先生は都合が悪かったため乳腺外科医は私1人でしたが、外来主任看護師のOさんが一緒に参加してくれました。

今回は一般演題として下記の4題と特別講演が行なわれました。

<一般演題>

1.HBOCの拾い上げ:院内の取り組み(札幌医大 産婦人科 寺本瑞絵先生)
2.HBOCの遺伝カウンセリングについて(北海道大学 遺伝子診療部 柴田有花先生)
3.HBOCのリスク低減手術について:北海道がんセンターの体制(北海道がんセンター 乳腺外科 高橋將人先生)
4.HBOC総合診療制度について(がん研有明病院 遺伝子診療部 新井正美先生)

1、2に関しては、HBOCを疑う患者さんの拾い出し、特に家系図の作成をなんとかしなければと感じました(昨年も思ったのですが、なかなか実現できていません…)。これは医師だけでは困難な面もありますので、今回外来主任が参加してくれたのは大きいと思いました。昨年も何人かHBOCを疑う家族歴のある患者さんがいましたので他院での遺伝子カウンセリングを勧めたのですが、結局実際に受診した患者さんはいませんでした。その背景には、やはり院内にカウンセラーがいないということが大きいように思いました。まずはカウンセラーの人的確保が急務ではないかと感じました。

3に関しては、がんセンターではすでに数人予防的乳房切除(+再建)を行なっているというお話でした。形成外科医との連携で慎重に行なわれているようですが、この手術は健常な乳腺にメスを入れるという性質上、がんに対する手術とはまた違った配慮が求められ、十分な説明が必要であると感じました。

4は現在検討されているHBOCのネットワーク制度のお話でしたが、これからは日本におけるHBOCのデータ蓄積が必要になってくることと、予防的治療を慎重に行なうという側面などから、HBOC診療の認定制度を立ち上げようとしているようです。認定施設には、基幹施設、連携施設、協力施設の3種類あり、基幹施設と連携施設には臨床遺伝専門医の常勤が条件となり、民間病院ではかなりハードルが高いです。私たちの病院は、今のままでは協力施設にしかなれません。

<特別講演> 「PARP阻害薬開発の現状」 東京医科歯科大学 難治疾患研究所 三木義男先生

トリプルネガティブ乳がんの治療薬として期待されながら、臨床試験でその効果が証明できなかったPARP-1阻害薬ですが、BRCA1/2の変異がある患者さんのみに対象を絞るとかなり有効であることがわかってきています。今日の三木先生のお話は、その作用機序と治療効果だけではなく、そこから発展したさまざまな可能性についてまでわかりやすく解説して下さいました。特に”合成致死療法”のお話は大変わかりやすく、勉強になりました。

とは言っても一般の方にわかりやすく解説するのは私には難しいです(汗)。BRCA1/2は、DNAの2本鎖の障害を修復する役割を持っており、PARP-1は、DNAの1本鎖の障害を修復する役割を持っています。BRCA1/2遺伝子変異を有する人のがん細胞は、もともとDNAの2本鎖の修復能力が欠如または低下しています。この状態の患者さんに抗がん剤などを投与して1本鎖のDNAに傷がついた場合、通常はPARP-1が働いて修復するのですが、PARP-1阻害薬を投与されていると修復できないために、がん細胞はわざと2本とも切断してBRCA1/2で修復しようとするそうです。しかし、BRCA1/2の変異がある人ではこれができないのでがん細胞が死んでしまうというような理屈です。それぞれ単独ではがん細胞は死なないけれど、同時に2つ(BRCA1/2とPARP-1)をブロックするとがん細胞を殺すことができる、このような治療を”合成致死療法”と呼びます。簡単に書くとこんな感じでしょうか?

今日のお話を聞いて、最近勉強不足だったことがすぐわかりました。少しでも気を抜くと科学の進歩についていけなくなります。もっと勉強しなければだめだと感じた一日でした。

2015年3月5日木曜日

CLEOPATRA試験の最終報告(ペルツズマブ=パージェタ®の有用性の報告)

ペルツズマブに関しては、承認時に触れましたが(http://hidechin-breastlifecare.blogspot.jp/2013/07/blog-post.html)、その全生存率(OS)も含めた最終報告が論文化されました(http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1413513#t=abstract)。

概要は以下の通りです。

臨床試験名:”CLEOPATRA試験”(日本を含む多国籍ランダム化二重盲検フェーズ3試験)

対象:HER2陽性で化学療法歴または生物学的療法歴がない、18歳以上の転移性乳がん患者808人。

方法:トラスツズマブ+ドセタキセル+ペルツズマブの3剤併用を受けるペルツズマブ群と、トラスツズマブ+ドセタキセル+プラセボの投与を受ける対照群にランダムに割り付けて、2014年2月11日まで追跡した。患者登録期間は、2008年2月12日から2010年7月7日まで。追跡期間の中央値は、ペルツズマブ群が49.5カ月(幅は0-70カ月)、対照群が50.6カ月(0-69カ月)。

結果:
・主要評価項目 独立審査委員会が評価した無増悪生存期間(PFS)…1回目の中間解析で有意差が示された。ペルツズマブ群のPFSの中央値は18.5カ月、対照群は12.4カ月で、前者で6.1カ月長かった(ハザード比は0.62、P<0.0001)。

・副次的評価項目 
①全生存期間(OS)…ペルツズマブ群が56.5カ月、対照群が40.8カ月(ベルツズマブ群で15.7カ月有意に長かった)、ハザード比は0.68(0.56-0.84、P<0.001)。患者を治療歴、居住地域、年齢、人種、エストロゲン受容体の発現量などで層別化し、サブグループ解析も行ったが、ペルツズマブの併用によるOS延長効果が一貫して示された。プラセボからペルツズマブに切り替えた(クロスオーバーした)48人の患者に関する補正を行っても有意性に変化はなかった。
②医師が評価したPFS…ペルツズマブ群で6.3カ月長かった(18.7カ月と12.4カ月、ハザード比0.68、0.58-0.80、P<0.001)
③独立審査委員会が評価した奏効期間…ペルツズマブ群における奏効期間の中央値は20.2カ月(16.0-24.0)、対照群は12.5カ月(10.0-15.0)で、ペルツズマブ群が7.7カ月長かった。
④安全性…有害事象の多くは、両群ともにドセタキセル投与期間中に発生し、同薬の使用を中止すると改善した。左室機能不全の発生率はペルツズマブ群の方が低く(6.6%と8.6%)、心臓に対する長期的な安全性が示された。

予想通りペルツズマブの有用性が証明された結果となりました。HER2陽性乳がんの治療法は日進月歩です。問題はやはりトリプルネガティブですね…。

2015年3月1日日曜日

超音波検査室の懇親会

一昨日は、KT病院から乳腺超音波検査の研修に来ていたM先生を囲んだ懇親会がありました。

場所は病院最寄りの地下鉄駅の近くにある居酒屋でした。G先生は出張、N先生は体調不良で参加できず残念でしたが、KT病院のM先生と指導医のK先生、技師5人と私の9人で楽しい時間を過ごしました(飲み放題の赤ワインは悪酔いしそうな感じでしたが…)。

それぞれの病院での乳腺診療の現状も語り合いましたが、私たちの病院は技師さんたちが症例検討会も含めて積極的に乳腺診療に取り組んでくれているので乳腺外科医にとっては幸せな環境であることがあらためてわかりました。

また、途中で実は今日がM先生の結婚式であることがわかり、そのあとの二次会のカラオケではみんなで代わる代わるお祝いの歌を歌って盛り上がりました(なぜか上司のK先生が選択した歌はことごとくハッピーなようで結果的には悲しい結末の歌ばかり…でもかえってウケてました 笑)。早く終わる予定が結局23時くらいまで飲んでお開きになりました。

他の病院での医療を知ることは自分たちの勉強にもなります。KT病院とは、これからもK先生をはじめ、外科の先生方、そして技師さんたちとも交流を続けて行けたらと思っています。



2015年2月25日水曜日

乳腺術後症例検討会 38 ”臨床所見と病理所見の乖離”

今日は定例の症例検討会でした。KT病院から乳腺超音波検査の研修に来てくれているM先生と上司のK先生をはじめ、製薬会社の方やJ病院の技師さんたちなど多くの院外の方が参加してくれました。

症例は当院の2例+関連病院の2例の4例でした。

1例目は、検診マンモグラフィので石灰化で精査となりましたが、そちらではなく、対側の別な場所にがんが発見された症例(見直してもマンモグラフィでは指摘は難しいと思われました)。偶然の発見でしたが、結果的に要精検にしてよかった症例でした。

2例目は、石灰化の増加で精査となりましたが、その時のMRと超音波検査では悪性所見を指摘できず、半年後のフォローの超音波検査で病変が指摘された非浸潤がんの症例でした。やはり要精検後のフォローは重要であると再認識させられた症例でした。

3例目は超高齢の方です。嚢胞内病変で画像と年齢からは悪性を疑いましたが針生検で嚢胞内乳頭腫と診断された症例でした。この症例は高齢で認知症もあるために切除はできていませんが、画像診断的には悪性の可能性は十分にあるということでその後も慎重にフォローしています。画像検査で悪性を疑ったのに針生検で良性だった場合は、より慎重に判断しなければなりません。偽陰性になる可能性としては、病変に正しく当たっていない、良性と悪性が混在している(稀ですが乳頭腫の一部にがんがあるなど)、針生検の診断能の限界(良悪の判断が非常に難しいケース)などが挙げられます。これらの可能性を考慮した上で、さらなる検査(切除生検など)の必要性、フォロー間隔などを判断する必要があります。

4例目は、マンモグラフィで新たに出現した腫瘤もしくはFAD(カテゴリー3)と判定され、2回目の超音波検査で脂肪に良く似た内部構造を持った線維腺腫の症例でしたが、境界が明瞭とは言えず、粘液がんなどの悪性も疑われた症例でした。担当した技師さんは、針生検の結果が出たあとでもその結果(線維腺腫)に納得がいっていないようでしたが…(汗)。私としては、マンモグラフィと超音波検査の所見と併せると線維腺腫でも矛盾はしないかなと思っています。

というわけで今回はいつも以上に悩ましい症例で活発な意見が出されました。なかなか勉強になったのではないかと思います。KT病院のM先生は今週一杯で研修が終わります。金曜日には懇親会の予定です(笑)。


2015年2月19日木曜日

病名告知と予後告知とその後の人生

昨日のテレビで、元ダイエーホークスの故藤井投手のエピソードを放映していました。

この番組で藤井投手は末期の肺がん(推定予後3-6ヶ月)と担当医からご家族に告げられましたが、野球がすべてだった藤井投手が真実を知ってしまうと絶望してしまうことを心配したご家族の意向で予後はもちろん病名も告げなかったというお話でした(間質性肺炎ということにしたそうです)。結果的に球団、および王監督やチームメートの温かいバックアップに気力で応えた藤井選手は2軍で6試合投げることができ、最悪3ヶ月と言われた余命でしたが1年も頑張ることができたというお話でした。

私はこの番組を見ていろいろと考えさせられました。最近では本人に無断で家族だけ呼んでご家族にだけ病名を告げたり、本人に嘘の病名を告げることは非常に少なくなったと思います。特に乳がんでは告知もしないということは非常に稀です(認知症などで理解力がないと判断される場合くらいです)。肺がんでは状況も違うかもしれませんし、このエピソードも15年近く前の話ですので今とはかなり対応が異なっていたのかもしれません。

本人に病名を告げなかったからこそ、なんとか復帰したいという気力がわいて2軍で6試合も投げることができたのかもしれないと思う一方で、もし余命が短いとわかっていたら、その時間で他にやっておくことがあったのかもしれないと思う気持ちもあります。また告知していればもっと適切な緩和ケアができていたのかもしれません。こればかりは結果論でしか考えることができませんし、個々の患者さんで状況は違うと思いますので何が正解なのかはわかりません。ただ藤井投手の場合は、これで良かったのかなと感じました。

私はがんではありませんが、10年ちょっと前に末期の緑内障と診断され、主治医からは”いつ失明してもおかしくない”と宣告されました。その時点で私の視野は半分以上欠けており、患者さんに対する万が一の責任を考え、自らメスを置きました。その後は思ったより病状の進行は遅く、現在は3/4くらいの視野欠損で留まっていて、まだなんとか仕事をしています。

手術がしたくて外科医になった私としてはメスを置くのはつらい決断でしたが、当時はそれ以上に万が一そのことで患者さんに迷惑をかけてしまうことを恐れていたのです。でも最近時々思うのです。もし、そのとき”いつ失明するかわからない”と言われていなければ、この10年間の外科医としての過ごし方は違っていたのかな…と。

医師は、予後を告知する際、だいたい悪い方(短い方)の推定予後を話すことが多いと思います。これはもしそれより早くに亡くなってしまった場合、自分が責められるのではないかという保身が働くからだと思います。ですからテレビなどで、”医師から予後○ヶ月と言われたが、○○ヶ月も生きた”というケースが多いのはある意味当然なのです。

そのことで、予想より長く生きてくれて良かったと思うご家族も多いのですが、予後を告げられたご本人にとってはどうだったのかな…と思うことがあります。推定予後が過ぎ、いつ死んでもおかしくないという状況で生きて行く気持ちは、なんとなく自分に重なるのです。そのこともありますし、実際乳がんの場合は治療効果によってかなりの幅が生じますので私は予後告知はよほど差し迫った場合でなければしないことが多いのです。平均はあくまでも平均でしかありませんから。

病名告知は藤井投手のような一部の例外を除いて基本的にはすべきだと思います。予後告知については、判断が非常に難しいです。最近では、あまり患者さんのことを考えずに一方的に予後を突きつける医師がいるということを耳にします。それは医学的には正しいことを話しているのかもしれませんが、本当に患者さんにとって必要なことなのか、よく考えた上で行なうべきだと私は思っています。

2015年2月18日水曜日

某国出身の乳がん患者さん

最近、私たちの病院で某国(以下A国)出身の女性が乳がんと診断されました。

現在は日本在住で国籍も日本になったようですが日本語はほとんど話せません。N先生が外来で対応したのですが、病状を説明する際は通訳の方がいらっしゃったのでなんとかなりましたが、問題は入院中の対応です。手術などの説明の際は通訳の方が同席してくれますが、もちろん一日中ついてもらえるわけではありませんので、看護師さんもわれわれ医師も細かい対応に不安があります。

大学病院などにご紹介することもお勧めしたのですが、大学でもA国語を話せる人が常にそばにいるわけではなく、ご本人もご主人も当院での治療を希望されたため、病院として責任持った対応が可能かどうか師長室が中心となって協議しました。また病棟でも看護師、医師などが集まり、カンファレンスを行ないました(私は別の予定が入っていて参加できませんでしたが…)。

結果的には、病院の許可をいただき、その患者さんを迎えるにあたっての作戦(翻訳ソフトを乳腺センターのiPADに入れるなど)をG先生、N先生が中心となって考えてくれています。それにしても最近は便利なソフトが手に入ります。この日A翻訳ソフト(日本語で話すとその日本語と翻訳したA国語が表示され、正しいことを確認してからクリックするとA国語で話してくれるのです)はなかなかの優れ物です。

ちなみに以前A国から治療に来ていた子供の治療にあたった経験のあるD病院のE先生に当時の対応をお聞きしたのですが、その当時は100枚くらいの文字ボードを作ってコミュニケーションを取っていたようです。おそらく今回も文字ボードも使うことにはなると思いますが、それに加えて最新の翻訳ソフトという武器があるのでとても助かります。

それにしても英語圏の国の患者さんであれば、院内にも英語が得意な人材はそれなりにいますし、片言であれば私たちでも多少はなんとかなるのですが、A国語となると文字を見てもまったく読むことも予測することもできません。本当に難しい言語です(汗)。実際に治療が始まると予想よりも大変かもしれませんが、スタッフの努力と工夫でなんとか患者さんとのコミュニケーションをうまく取りながら治療を進めて行きたいと思っています。

2015年2月10日火曜日

受動喫煙と乳がん…日本における前向き研究結果

乳がんに対する喫煙の影響はさまざまな報告があります。しかし最近のガイドライン(「2014年度版 患者さんのための乳がん診療ガイドライン」にも記載があります)では喫煙(受動喫煙も含む)は乳がん発症リスクを高めるということがほぼ確実と考えられています。今回の報告は、日本における受動喫煙と乳がん発症リスクに関する集団ベースの前向き研究(高山スタディ)です(岐阜大学 和田恵子氏ら)(Cancer science誌オンライン版2015年1月23日号)。

概要は以下の通りです。

対象および方法:1992年9月から2008年3月まで、35歳以上の女性1万5,719人を追跡。乳がん発症率は、主に地域の集団ベースのがん登録で確認した。喫煙状況などのライフスタイルは自記式質問票で、またアルコール消費量は食物摂取頻度調査票(FFQ)で評価した。

結果:
・年齢、BMI、飲酒、身体活動、教育、初潮年齢、初産年齢、閉経状態、子供の人数、ホルモン補充療法の既往について多変量調整したところ、本人の喫煙と乳がんリスクとの関連はみられなかった。

・非喫煙者の女性については、夫も非喫煙者である女性に比べ、1日21本以上喫煙している夫を持つ女性の乳がんリスクは1.98倍(95%CI:1.03~3.84)であった。

・喫煙者の夫を持つ女性の乳がんリスクの増加は、飲酒習慣がない女性で顕著であった。受動喫煙による乳がんリスク増大に対する飲酒の影響については、今後さらなる研究が必要である。


う〜ん…。理論的になんとなく納得がいかない部分が私にはあります。もちろん喫煙の有害性に異論を挟むつもりはありませんが…。


2015年2月6日金曜日

乳癌の治療最新情報39 ”palbociclib”

米食品医薬品局(FDA)が閉経後乳がん患者さんの治療薬として、経口のサイクリン依存性キナーゼ(CDK)4/6阻害剤palbociclibを迅速承認したと2/3に発表しました。

palbociclibは、がん細胞の増殖の促進に関与するCDK4/6を阻害します。対象はER陽性、HER2陰性の転移を有する乳がんで、内分泌療法を含む全身療法の治療歴がない閉経後の患者さんです。palbociclibはアロマターゼ阻害薬のレトロゾールと併用して投与されます。

<palbociclibの有効性を証明した臨床試験 PALOMA-1試験(フェーズ2)>

対象:ER陽性HER2陰性の進行乳がんで、転移に対する治療歴がない閉経後の女性患者165人。palbociclibとレトロゾールを併用投与する群(併用投与群)、またはレトロゾール単剤を投与する群(単剤投与群)にランダムに割り付けた。

結果:
無増悪生存期間(PFS)(主要評価項目) 中央値 併用投与群20.2カ月、単剤投与群10.2カ月、ハザード比0.488(95%信頼区間:0.319-0.748)(p=0.0004)
全生存期間(OS)〜現時点では明らかにされていない。
副作用〜palbociclibで多く観察された副作用は、好中球減少、白血球減少、疲労感、貧血、上気道感染、悪心、口内炎、脱毛、下痢、血小板減少、食欲低下、嘔吐、無力症、末梢神経障害、鼻出血だった。


palbociclibの投与にあたっては、125mgを1日1回、21日間投与、7日間休薬のスケジュールが推奨されており、治療開始前、各治療サイクルの開始時、最初の2サイクルの14日目、および臨床的に必要と判断される時点で、全血球計算を行うことが勧められています。

まだ現段階では全生存期間の改善は証明されていませんのでこの薬剤の最終的な評価はできませんが、PFSを2倍に延長したことを考えると期待できそうです。今後の結果を待ちたいと思います。

2015年1月28日水曜日

乳腺術後症例検討会 37 ”2015年初”

今日は2015年、初めての症例検討会がありました。

体調不良者が多く、参加人数はいつもより少なかったのですが、初参加の院外からの技師さんたちも来ていただきました。

症例は3例。

1例目は肺がん術後に腫瘍マーカーが増加したために行なっていた精査中に見つかった乳がんの症例。画像と経過からは肺がんの乳房転移も考えましたが、MR画像から術前に原発性乳がんであることが推測できた症例でした。

2例目は父親も乳がんだったという男性乳がんの症例でした。男性乳がんはLuminal typeが多いと言われていますが、この症例はERは陽性でしたがHER2も陽性(Luminal B(HER+))でした。男性乳がんでHER2陽性の症例はあまり聞いたことがありませんでしたのでC製薬のMRさんに情報をいただくことにしています。

3例目は関連病院の症例で、乳腺のはずれにあってマンモグラフィでわかりにくかった上に、かなり乳腺症の変化が強かったことと撮影時の月経周期の関係でMRが非常にわかりにくかった硬がんの症例でした。このような症例でも超音波検査はとてもわかりやすいと関連病院のT技師さんは自信満々に強調していました(笑)。

そのあと昨年技師さんたちが学会発表した内容を報告して今回の症例検討会は終了しました。

今年は以前から考えていた招待演者の講演を乳腺症例検討会の特別企画として行なう予定です。5月末に行なう方向で調整中ですが、招待演者の先生にもご快諾いただき、今から楽しみにしています。

2015年1月18日日曜日

2015年 患者会新年会

昨日午後から市内某ホテルで患者会の新年会が行なわれました。

毎年行なわれる新年会ですが、いつも参加者は30人ほどになります。今回の会場となったホテルは一昨年も利用しました(http://hidechin-breastlifecare.blogspot.jp/2013/02/2013.html)。そのとき利用した眺望の素晴らしい19階の和食処の個室はリニューアルで椅子席になったために30人は入れないとのこと。結局交渉の末、3階の宴会場を借り切って行なわれました。

患者さんの中で今回初参加は2名でした。それに久しぶりに参加したベテラン会員さんや初参加だった職員も多かったため、乾杯のあと自己紹介をしてから宴会が始まりました。

2時間という時間はあっという間に過ぎましたが、楽しいひとときを過ごすことができました。食事中、”このフライの魚はなんだろう?”ということが話題になりました。ワカサギにしては大きく、身も厚くて硬めでした。お店の女性に聞いてみると”ふぐ”とのこと。こんな小さいふぐも食べるんですね〜とか話していたのですが、一昨年のブログを見直してみてびっくり。なんとその時も同じふぐのことが話題になっているではありませんか(笑)。この時は骨を食べるか残すかで議論になったのですが、今回は骨は気にならなかったので私はまたまるごと食べてしまいました(笑)。

なお、今回は携帯で写真を撮るのをすっかり忘れてしまいました。写真自体は、会長さんのデジカメでたくさん撮っているたのですが…(汗)。この患者会ももうかなり長く活動しています。今まで撮りためていた写真を一度整理してアルバムにしてみては?と提案しておきました。

昨日の札幌は日中からかなりの雪と風でした。暖かくなったと思ったらまた寒くなったり、インフルエンザも流行っていますので体調管理には気をつけたいものです。
今年もみなさん、元気に楽しい1年を過ごせることをお祈りしています!

2015年1月15日木曜日

異型過形成の乳がん発症リスク

異型乳管上皮過形成(ADH)は、しばしば良悪の診断で病理医を悩ませる病態です。一応、良性ではあるのですが、ADHから非浸潤がん(DCIS)に移行している像が見られたり、ADHなのかDCISなのか病理医でも判断が分かれる場合もあります。

これまでもADHは、前がん病変、もしくは周囲に浸潤がんを将来発生させるリスク因子として捉えられていました。昨年、生検で異型過形成(ADH+ALH(異型小葉過形成))と診断された場合、そのまま経過を見るとどのくらいのがんが発生するのか、という研究結果がメイヨー・クリニック腫瘍学教授のLynn Hartmann 氏によって報告されました(http://www.ascopost.com/issues/november-1,-2014/what-is-the-real-risk-of-breast-cancer-associated-with-atypical-hyperplasia.aspx)。

この報告によると、1967-2001年に同クリニックで異型過形成と診断された女性698人を平均12.5年追跡した結果、143人が乳がんを発症したとのことです。さらに、バンダービルト大学でも別の集団を対象に検証したところ、異型過形成の女性の30%前後が乳がんを発症していたそうです。過形成の範囲が広いほどリスクも高かったようです。

異型過形成は米国で実施される乳房生検の良性所見のうち約10分の1に認められるそうですが(おそらく日本より高率)、今回の研究では、異型過形成のある女性の約30%が、診断から25年以内に乳がんになる(年率約1%)いうことで、今まで推測されていた率よりかなり高いことがわかりました。。

これを受けて、異型過形成と診断された女性は、予防的にタモキシフェンを服用したり、乳がんスクリーニングにMRを加えるなどのガイドラインの改正が必要かもしれないと述べています。

(この論文内における”breast biopsies ”は、切除生検ではなく、針生検、もしくは吸引組織生検を意味するのだと解釈していますが、以下はその前提で書いています)

私たちの施設でも針生検でADHと診断されることは、たまにあります。こういった場合、私たちは基本的に描出された病巣の切除生検をお勧めしています。こういう症例の中には、そのものが実はDCISだったり、DCISとADHが混在していることがあるからです。米国の今までの考え方からすると、やり過ぎだと言われたかもしれませんが、今回の結果を見るとやはり間違ってはいなかったのだと思いました。なぜならおそらく組織生検で異型過形成と診断されて、そののちに乳がんを発症した患者さんの中には、最初からDCISだった、またはDCISが併存していた症例が一定数含まれていると思われるからです(あくまでも推測ですが…)。

いずれにしても、ADHとDCISの診断は非常に難しい場合があります。私たちの施設ではこのようなケースでは、必ず坂元記念クリニックにコンサルテーションをお願いしています。まずは自分たちで診断し、さらに乳腺病理の第一人者の先生の診断を仰いで学ぶことから得られるものは、コンサルテーションにかかる費用よりはるかに大きいと私は思っています。私たちの施設の病理医も同じような意識で考えてくれているので乳腺外科医としては非常に助かっています。

「がんの2/3は”不運(ランダム変異)”が発生の原因」という研究結果

「Science」オンライン版(1/1号)に発がんに関する興味深い研究結果が掲載されました(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25554788)。

この研究は、ジョンズ・ホプキンズ大学医学部腫瘍学教授のBert Vogelstein氏らが行なったもので、不運と環境、遺伝の3つの因子ががんの発症にどの程度寄与しているのかを定量化するモデルを作製し、報告したものです。


その概要は、「遺伝や環境が発がんに関与しているのはおよそ1/3に過ぎず、2/3は幹細胞の分裂時に生じるランダムなDNA変異によって発生する」ということです。もしそうであれば、生活習慣などの環境要因の改善は特定のがんの予防には非常に有効ですが、その他のがんには効果がない可能性があるということになります。

今回の研究では、31の異なる身体組織での幹細胞の分裂数に関する過去の研究を検討し、その領域の生涯のがんリスクと比較しました。ただし、乳がんや前立腺がんなどの一部のがんについては、信頼できる研究がないため今回は対象としていないそうです。計算の結果、22種類のがんは主に細胞分裂時のランダム変異によって説明できることがわかりましたが、その他の9種類は、「不運」と環境や遺伝の組み合わせによる可能性が高いようであったということです。

もしこの報告が真実なら、食生活の改善などによるがんの予防には限界があるということになります。ただ繰り返しになりますが、この研究には乳がんは含まれていません。乳がんは、一部には遺伝が関与することも環境要因(食事やホルモン環境)が関与していることも今までの研究で報告されていますので、おそらく遺伝+環境+不運の組み合わせで発症するものと推測されます。不運は自分でコントロールできませんが、食生活を改めることはできます。それで全て予防できるわけではないという今回の結果ですが、自分でやれることはやっておいた方が良いのは言うまでもありません。

2015年1月9日金曜日

NSABP B36 ”リンパ節転移陰性乳がんに対するFEC100×6とAC×4の予後は同等”

昨年12月に行なわれたサンアントニオ乳がんシンポジウム2014で、リンパ節転移陰性乳がんに対するFEC100×6とAC×4の無作為化弟Ⅲ相試験(NSABP B36)の結果が報告されました。

観察期間中央値は82.8ヵ月(7年)、50歳未満が約40%、ホルモン受容体陰性が約35%、腫瘍径2cm未満が50.0%、グレード3が43-44%。人種は白人が約85%、術式は乳房部分切除術が68%で施行され、トラスツズマブは10-11%で投与されました。グレード3-4の毒性発現率は倦怠感、好中球減少性発熱、感染、口腔粘膜炎、血小板減少、血栓塞栓のイベントはいずれもFEC100で高かったとのことです。化学療法中の死亡はACで2例、FEC100で5例に認められました。

そして予後に関しては、DFS、OSともに両者でまったく差を認めなかったとのことです。もしこの結果が正しいのでしたら、毒性が少なく、短期間で終了し、治療費も安いACの方がより望ましいということになります。ただ、抗がん剤の臨床試験結果は、しばしば追試すると異なる結果が出ることがあります。ACが多く使用されている米国からの今回の報告を見て、FECを主に使用している欧州ではどう反応するのでしょうか?

論文を読んだわけではないので詳細は不明ですが、全例でG-CSFの予防投与は行なっているのでしょうか?FEC100は毒性が強かったということですが、そのために治療強度が下がっていたということはないのでしょうか?論文化されたらよく読んでみたいと思います。またリンパ節転移陽性の場合についても同じことが言えるかどうかもわかりませんので、私の施設では当面はFEC100を継続すると思います。

2015年1月5日月曜日

2015年 仕事始め!

今日から2015年の仕事が始まりました。

病棟、外来は落ち着いていました。年末にFEC100、そしてジーラスタを初投与した患者さん2人も副作用もなく、好中球の低下も抑制されていました。今まで3人に投与していますが、Nadir(好中球の最低値を呈する時期)の採血ではみな好中球減少が抑えられているようです(笑)。

午後からは学会準備の統計処理(有意差検定)をして、いまようやく抄録が完成したところです。N先生も私の注文に迅速に応えてくれて、なんとか抄録は間に合いそうです。G先生はまだ抄録を見せてくれません(汗)。締め切りは明後日なんですが…。

明日は気温が上がって雨→雪、明後日からは吹雪の予想です。憂鬱です(泣)。

2015年1月3日土曜日

!謹賀新年!

新年あけましておめでとうございます!(ちょっと遅くなりました 汗)

今年の年末年始は、雪かきに追われていました(泣)札幌市内ですが私の居住地は札幌の天気予報は当てになりません。どちらかと言うと石狩や当別、小樽に近い天候です。おかげで治りかけた腰痛がなかなか良くなりません(泣)。今朝はせっかく遊歩道に作っていた除雪用のスロープが除雪車の運んだ硬い雪で完全に潰されていました。しかたなくまた新しいスロープを作りましたが、今度潰されたら雪を捨てるのが難しくなりそうです(泣)。

この休みはG先生とN先生が回診をしてくれたので結局一度も出勤せずに過ごすことができました。おかげで箱根駅伝で感動することもできましたし、雪かきで運動不足の解消もできました(笑)。でも食べ過ぎ、飲み過ぎで体重は増加傾向かも…(汗)。

そして今年の日本乳癌学会学術総会(7/2-4 東京国際フォーラム)の演題締め切りが迫っています(1/7)。なんだか今回はまったく意欲が出なくてテーマも頭に浮かばず、結局別の機会にと思っていた内容をまとめることにしました。でも内容は今ひとつなので今度こそ採択されないかもしれません(汗)。月曜日に統計処理したら抄録は一応完成です!