2013年8月28日水曜日

乳腺術後症例検討会 26 ”祝 還暦!”

今日は2ヶ月ぶりの乳腺術後症例検討会でした。関連病院以外の施設からの1名も含めてけっこう集まってくれました。


今回の症例は5例。

最初の2例は、ともにエコー上、比較的境界明瞭な等〜低エコー腫瘤でMRはT2 high(出血や嚢胞、壊死、粘液を反映)で内部が不均一に造影される腫瘤でした。病理結果は1例は粘液がん、もう1例は乳管内に血液の貯留がみられた充実腺管がんの症例でした。

その他は、3ヶ月の間に乳頭陥凹と腫瘤の増大を認め、乳がんを疑った乳腺膿瘍の症例と腋窩に硬い明瞭な腫瘤を形成し、やはり乳がんを疑ったリンパ管嚢腫の症例、そして典型的な硬がんの画像を呈し、細胞診も硬がんの診断でしたが、病理結果で多発病巣が認められた浸潤性小葉がんの症例でした。

症例の提示後、関連病院のE技師さんが同じ関連病院のH先生の還暦をお祝いするスライドを作って供覧してくれました。H先生は、私が外科に入ったときからずっとお世話になっている大先輩のDrです。横綱北の湖関(現親方)の友人(相撲仲間…当時は近隣の地区の相撲大会を2人で荒らしまくっていたとか…笑)でもあり、毎年北海道マラソンに参加しているアスリートでもあります。最近ではアスベスト関連の仕事をしたり、キューバに行って肺がんの手術指導などの医療交流をしたりと精力的に活動されています。専門は肺がんなのですが、私が乳がんを専攻するまではH先生が中心になって乳腺疾患にも携わっていましたし、関連病院に移動してからは、乳がんにもいっそう力を入れて取り組んで下さっています。この症例検討会にもいつも参加していただいています。

そのH先生がいつの間にか還暦(私とちょうど一回りちがう巳年です)…。時の流れは早いものです。H先生は大ベテランの先生なのにとても腰が低く、誠実で、なおかつ愛されキャラなのです。12年後にH先生のようにみんなに還暦を祝福されるような医師に私もなりたいと思いました(笑)。

2013年8月25日日曜日

「ピンクリボン in SAPPORO 2013 ピンクリボンロード」終了!

今日はあいにくの天気…。朝刊の予報では午後から雨でした。事務次長のMさんに迎えに来てもらって大通の会場に向かう途中にはいきなりの雷と豪雨が…。大丈夫かなと思いながらホコテンに向かいました。結果的にはイベント前半は小雨が降っていましたが後半は晴れ間も見えてなんとか無事にイベントを終了することができました。

以前ここでも書きましたように、今回初めて私たちの病院でブースを出すことになったため、私とG先生、事務系職員3人、看護師4人の計9人の職員で、以前病院で作ってもらったピンクのTシャツを着て参加しました。


ブースには、自己検診用の乳がん模型を2つとG先生手作りの触診体験モデル(1cm、1.5cm、2cmのゴムボールをゲルの中に隠しておいて探してもらうもの)、遺伝性乳がんについてのパネルと遺伝性乳がんについて心配している方用のチェックシート、そして乳がん検診啓発と自己検診の方法を書いたビラと先日完成した乳腺センターが紹介された病院の広報誌を置きました。パネルやビラの準備は、検診センターのSさんが中心になって何度も修正しながら頑張ってくれました。また物品の準備やブースの横断幕作りなどは事務の2人がきっちりとやってくれました。ブースに来て下さった方達の対応は看護師と私たち医師で行ないました。


実際にブースに足を運んで下さった方の数は例年と同様にさほど多くはなかったのですが、親子でG先生お手製のモデルを触ってくださった方や母親が若年性乳がんで遺伝子検査を受けたいと思っている女性(予防的乳房切除や卵巣摘除まで考えておられるようでした)など、それなりににぎわいを見せていました。また、うれしいことに昨日のWith Youのために本州のS病院からいらっしゃっていたO先生がビラ配りまで手伝って下さいました。ありがとうございました!

ステージの方では、素晴らしいジャズ演奏、みんなで参加するドラムサークル(G先生と事務のNさんも参加 写真撮れなくてすみません)、合唱、チェアーフラなどで盛り上がりました。ジャズの間は雨が降っていたのですが、たくさんの方が足を止めて聴き入り、傘をさしながら椅子に座って演奏を聴いて下さいました。


今回は病院として初めての参加でしたが、参加した職員がこの経験を日常診療に生かしてくれることを期待しています。連日のイベントでちょっと疲れましたが、実りの多い2日間でした。

今日までのイベントの下準備、そして会場のセッティングの指揮、司会進行をして下さった三角山放送局をはじめとしたピンクリボン in Sapporoの事務局の皆さん、大変お疲れさまでした。来年もまた頑張りましょう!

「第10回 With You 北海道~あなたとブレストケアを考える会〜」 終了!

昨日は札幌医大で「第10回 With You 北海道~あなたとブレストケアを考える会〜」が行なわれました。今回のテーマは「乳がん患者をサポートする」でした。


私たちスタッフは11:00に集合しましたが、今回は医大のK先生プロデュースのラベンダー色のTシャツが全員に配られました(写真 自宅で撮影したのでちょっと色が変かもしれません…汗)。ピンクというよりは紫に近い色ではありましたが、とてもきれいな色でデザインも素敵でした。K先生のセンスの良さを伺わせる作品ではないかと思いました(笑)


イベントは12:30開始。会場は昨年より多くの患者さん、ご家族、医療関係者が集まっていたのではないかと思います。特に今回は男性(おそらく患者さんのご主人)が多かったような印象を受けました。

特別講演を含めた講演は、盛りだくさんの5つでした。

・「乳がん最新治療」…パージェタ®(一般名 ペルツヅマブ)などの新薬やインプラントを用いた乳房再建が保険適用になったお話などをわかりやすく説明されていました。
・「がん治療の公的制度と医療保険」…普段私たちがわかっているようで十分にわかっていない医療制度に関するお話が聞けました。
・「10回目の With You Hokkaido を開催するにあたって」…今までの全国、北海道のWith Youの歴史についてビデオも交えて振り返ることができました。また今後の課題についての提案も出されましたので来年のWith Youは北海道から変化していくかもしれません。
・「がんになった親とその子供に対するサポート」…演者の先生のアメリカでの経験も織り交ぜながら、がん患者の親を持った子供に対する心身のケアと実際の活動について解説していただきました。なかなか心配りができていなかったことをあらためて知る機会になり、今後の私たちの医療活動にも貴重なヒントをいただきました。
・「がん患者の就労支援、現状と課題」…CSR プロジェクトの活動内容と日本のがん患者の就労状況について、内容はシビアではありましたがユーモアを交えた楽しい語り口で説明して下さいました。


そして今回の私のグループワークの担当は「再発後の不安・治療」でした。毎回このセッションは大変緊張します。私の役割はファシリテーターと言って、患者さん同士の会話がスムーズに進行するように補佐する仕事です。医療従事者、特に医師がその場にいるとどうしても医師に対する質問コーナーのようになってしまったり、1人の患者さんばかり話してしまって、まったく話に参加できない患者さんがいる状況になってしまうこともあります。この調整がなかなか難しく、私は下手なのです(汗)

今回のこのグループの参加者はスタッフ5人、患者さん5人、患者さんのご主人1人でした。最初に自己紹介をしていただきましたが、それぞれがけっこうシビアな再発状況にあることがわかりました。なんとかこのグループワークで自分の状況改善のヒントを得たい、救いが欲しいという思いを強く感じました。予想以上に厳しい状況で、話し合いが始まる前から涙を流す患者さんもいらっしゃり、私はさらなる緊張感を覚えたのですが、幸い再発後長い経過の方もいらっしゃった関係もあり、かえって皆さんが自主的にお話を進めて下さるという形で進むことができました。

具体的な内容については割愛しますが、私たち医療従事者(乳腺外科医、緩和治療医、精神科医、看護師など)が、再発患者さんの心のケアを十分にできていないという現状をあらためて強く感じました。うつ症状に対しては医師は薬を処方するだけ。でもそれよりも犬を飼ったり、同じような再発患者さんとお話しできる方がずっとこころの癒しになっているということがわかりました。私たち医療従事者はこのような状況をもっと理解していく必要があるようです。進行役の私の役目が十分果たせたかどうかわかりませんし、患者さんたちももっと話をしたかったような感じではありましたが、このグループワークに参加して良かったと少しでも思っていただけたらうれしいです。

今回で10回目を迎えたWith You 北海道ですが、さらなる進化を遂げて、少しでも多く患者さんと医療従事者の垣根を取り払う役目を果たしていきたいと考えています。

2013年8月23日金曜日

明日はWith you 北海道、明後日はピンクリボンロードです!

先日ご紹介しましたように、明日、札幌医大で「第10回 With You 北海道~あなたとブレストケアを考える会〜」が開催されます(http://hidechin-breastlifecare.blogspot.jp/2013/06/10with-you.html)。そして明後日は大通のホコテンで「ピンクリボン in SAPPORO 2013 ピンクリボンロード」が行なわれます。イベント続きでなんとなく頭がこんがらがっていますが、私は両日とも参加します。

心配なのは週末の天気です。明日は室内なので問題はないのですが、明後日は屋外です…。天気予報は、明日は午後から弱い雨、明後日は曇りのち雨…微妙な感じです(泣)なお、明後日は雨が降ったらさっぽろテレビ塔に場所が変更になります。

明日は乳がん患者さんたちと一緒に勉強をして、交流を深めてきたいと思っています。また明後日のイベントは、結局病院のスタッフは全部で9人くらいの参加になりそうです、みんなで乳がん検診の啓発活動を頑張ってきたいと思います!

2013年8月16日金曜日

もう少しで「ピンクリボン in SAPPORO 2013 ピンクリボンロード」!

先日「ピンクリボン in SAPPORO 2013 ピンクリボンロード」について告知しましたが(先ほどまで2013ではなく2913になっていたことに気づきませんでした…汗)、ついに私たちの施設でもブースを出すことが決まりました(ブースと言っても長机1個分ですが…)。

今回は検診センターのスタッフや看護師さん、乳腺センター担当の事務員や医療連携室、管理部の職員などが一緒に手伝ってくれています。当日は、以前ママチャリレースに出た時に作ったピンクリボンのTシャツをスタッフで着る予定にしています。きっと暑いので熱中症にならないように交代しながらブースを担当したいと考えています。

どんなことをするかはいまスタッフで検討中ですが、ホコテンを歩いている人たちが注目してくれるような内容を考えています。先日完成した乳腺センターの活動を載せた病院の広報誌も乳がん検診の啓発ビラと一緒に置く予定です。

ジャズなどのイベントを楽しみながら、集まった人たちが乳がん検診について興味を持ってもらえるようなお手伝いができればいいなと思っています。ご家族や友人に乳がんになった方がいらっしゃる方はもちろん、乳がんや乳がん検診について興味、疑問がある方は是非8/25(日)の13:30に大通のホコテン(札幌市中央区南1西3)にいらして下さい!


(写真は昨年のピンクリボンロード)

2013年8月14日水曜日

人工物留置者の検診マンモグラフィについて

胸部に人工物が留置してある場合にはマンモグラフィを避けた方が良いことがあります。何も言わずに検査を受けるとトラブルが生じる原因となる場合がありますので以下のような場合は注意が必要です。

①心臓ペースメーカー装着者

前胸部に留置したペースメーカーと心臓の間は細い金属のリード線でつながっており、このリード線を介して心臓を動かすための電気信号を伝えています。マンモグラフィを撮影する際のように強く乳房を圧迫すると、このリード線が断裂してしまうなどのトラブルが生じる可能性があります。
有症状の受診者の場合は、十分な説明を行なった上で同意を得てから慎重に撮影することがありますが、一般の検診においては撮影に十分な配慮ができない場合もあるために、平成18年に出されたマンモグラフィ検診精度管理中央委員会の見解ではペースメーカー装着者に対してはマンモグラフィ検診を行なわない方が良いとされています(代わりに超音波検査を推奨)(http://www.mammography.jp/mammo/oshirase17.html)。

②豊胸術後

精中委の見解ではインプラントの破損の可能性、インプラントのせいで病変が十分に写らない可能性があることなどを考慮して、原則的には検診マンモグラフィはお勧めできないとされています(http://www.mammography.jp/mammo/oshirase16.html)。もしどうしてもマンモグラフィ検診を受けたい場合や精査でマンモグラフィが必要な場合は、これらのトラブルなどの可能性を十分にご説明の上で同意が得られた場合にのみ行なうべきです。

③CVポート留置者、脳室・腹腔(V-P)シャントカテーテル留置者

精中委としての見解は確認できませんでしたが、私が調べた限りにおいては、宮城県対がん協会を始めとした多くの施設において破損の可能性があるために両者ともにマンモグラフィ検診の対象外とされているようです。私の施設ではCVポートを留置してマンモグラフィを受ける患者さんのほとんどが乳がん術後の患者さんです。マンモグラフィの必要性は一般の検診受診者に比べると高いですので、技師に十分注意してもらいながら可能な範囲内で撮影してもらっています(この場合は検診ではなく診療マンモグラフィです)。乳がん術後以外でCVポートを留置している方が乳がん検診を受けるケースはまれですが、もしそういう方でマンモグラフィを受けたいと思われる方は乳腺外科医に確認した上で検査を受けることをお勧めします。

放射線治療開始!

今日からついに当院での放射線治療が開始しました。

たまたま別の用事で放射線治療室に行ったところちょうど1例目の照射が始まるところでした。無事に終了して戻って来た放射線技師さんたちはかなり緊張していたようでほっとした表情でした。

今日の1例目をはじめ、当面は乳がん術後の乳房照射の症例が中心になりそうです。ただこれから再発症例への照射も予定されており、今日放射線治療科に受診した患者さんも私が担当の再発患者さんでした。その患者さんに付き添って放射線治療計画策定の流れを見させてもらいましたが、今まではH大、がんセンター、K病院などにご紹介していたためにその詳細は見たことがありませんでしたからとても勉強になりました。

今日の患者さんは以前にK病院で放射線治療を受けた経験があります。今回は前回とは違って少し体調が悪い中での照射になりますので、私たちの病院で放射線治療を受けられることを喜んで下さいました。しばらくはドキドキしながらの治療になりますが、技師さんたちも一生懸命勉強しながら慎重に頑張ってくれていますので、きっと良い放射線治療を提供できるようになると信じています。


写真は放射線治療装置です。これからもH大から来て下さる放射線治療科の先生方、当院の放射線技師、看護師さんたちと密に連携を取りながら安全で効果的な放射線治療を提供できればと考えています。

2013年8月5日月曜日

第1回 放射線治療カンファレンス

いよいよ新病院での放射線治療が始まります。今日は午後からH大学のT先生をお迎えして第1回の放射線治療カンファレンスが行なわれました。

私は温存術後の乳房照射の1例、G先生は、乳房照射2例と胸壁照射の症例3例、N先生は胸壁再発の症例1例をさっそくカンファレンスにかけました。乳腺以外にも相談症例が数例あり、1回目としてはまずまずの症例数ではないかと思います。

ただ当院での放射線治療は今回が初めてのため、まだいくつかの制限が加わっています。そういう理由もあって、今回の症例のうち数例は当院ではなくH大学での照射予定となりました。今後技師を含めたスタッフの慣れ具合をみながら徐々に適応を拡大していく予定です。

今までは放射線治療に関する相談は、患者さんに受診していただくか、診療の合間での電話相談が必要でしたが、これからは放射線治療の専門医が来てくれますので気軽に相談することができます。私たち乳腺外科医にとってもとても勉強になりますし、ありがたいことです。

これからも大学との連携を密にしながら、患者さんにとって有益な治療を提供していきたいです。何か役に立つかもしれませんので私もこれから本格的に放射線治療の勉強を始めようと思っています!

2013年8月4日日曜日

医師会の乳がん・子宮がん検診普及啓発講演会&個人相談会

昨日は、医師会主催の乳がん・子宮がん検診普及啓発の講演会がありました。

乳がん検診はT病院のT先生が、子宮がん検診はF病院のF先生がご講演されました。
T先生は、乳がんの基礎知識に関してと欧米と比べた日本の検診普及状況の現状、乳がん検診を定期的に受けることの大切さなどについてわかりやすく話されていました。

子宮がん検診については、私も不十分な知識しかありませんのでF先生のお話はとても勉強になりました。子宮頸がんワクチンについては賛否両論ありますが、F先生のような婦人科医の立場からすると、やはり受けるべきだということでした。マスコミがかなりセンセーショナルに書き立ててしまったためにとても怖いものだという印象を与えてしまっていますが、他のワクチンに比べて重篤な副作用の頻度は変わりないとのことです。

もちろん、ワクチンによる副作用で重篤な障害が残ったり、命を失った方が身近にいたりすると、ワクチンに対する怒りや恐れを持っていても当然かもしれません。ただ様々なワクチンの開発によって、多くの命を奪っていた病気を予防できるようになってきた歴史的な経過があることも事実です。例えば天然痘にしても、ワクチンによる脳炎などで命を落とした方はけっこういらっしゃったようです(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A8%AE%E7%97%98)。でももしそのことでワクチンは危険だからと世界中で接種が行なわれなかったとしたら、もしかしたら今も天然痘は生命を脅かす脅威になっていたかもしれません。個々のリスクと全体のメリット、秤にかけて比較することは難しいですね…。

講演会が終わってからは、演者の2人の先生とS病院婦人科のW先生、そして私の4人で個人相談会を行ないました。例年けっこういらっしゃって何時に終わるかわからないということでしたが、今年は少なかったのでわりと早く終わりました。私のところにいらっしゃった方の相談内容は40才未満の検診について、乳房再建について、良悪の鑑別が困難なケースなどでした。特に問題なく終わりましたが、こんなに少ないならもう少し1人1人に時間をかけてお話しすれば良かったかなと後で思いました(人数をあらかじめ教えていただいた方が良かったのではないかと思います)。

日本の乳がん検診受診率は、マンモグラフィの導入、啓発運動、そして無料クーポン導入などによって、徐々に増加し、ようやく30%を越えたようです。しかし、目標の50%にはまだまだ遠く、70-90%という欧米のレベルにははるかに届きません。
今回のような普及啓発活動を地道に繰り返しながら、できるだけ早くに目標をクリアできるように私も頑張っていきたいと思います。