2014年3月30日日曜日

「17th Breast Cancer UP-TO-DATE Meeting」in Tokyo

昨日、NK社主催の「17th Breast Cancer UP-TO-DATE Meeting」に参加してきました。昨年は猛吹雪で参加を断念しましたが、今年は行くときの天候は良好でした。

11:30発の便で羽田に向かったのですが、羽田から天王洲アイル経由で有明の東京ビッグサイトまで行くと思いのほか時間がかかってしまい、14:00の開始時間には間に合いませんでした(汗)。会場に着いて受付をしてから席に座ると、隣にはG病院時代に大変お世話になったT先生がいらっしゃったので一緒に講演を聴いていました。T先生はG病院退職後、岩手と静岡を行き来していましたが、今は岩手に戻られているようです。お元気そうで安心しました(笑)。

今回の内容と感想は、以下の通りでした。

SessionⅠ 「乳がん分子診断の臨床応用」
途中から聴いたのですが、3題目の”血中循環腫瘍ゲノム(CTG)の検出と乳癌腫瘍マーカーへの応用”の話は非常に興味深い内容でした。今後悪性度の診断、術前化学療法の効果判定と予後予測、術後の再発診断などにおいて現在用いられている腫瘍マーカーより有用な情報を提供してくれる検査法になるかもしれません。

SessionⅡ 「再発ホルモンの治療戦略」
1題目は以前聴いたことがある、ホルモン療法耐性機序のお話でしたが、その後の新たな知見も加えてわかりやすく説明して下さったので、知識の整理になりました。これからさらにこの研究が進むことによって、どのタイプの耐性が起きているのか、どの治療が有効なのか、ということが薬剤投与前に判断できることになるのではないかと期待しています。
2題目は最近のホルモン治療に関する臨床試験結果と現在行なわれている臨床試験の動向の解説でした。ここでも取り上げた内容もありましたし、だいたいは知っている臨床試験結果ではありましたが、このように整理されているととても勉強になります。できればこのスライドをT先生からいただきたいくらいです(笑)。

SessionⅢ 「胸骨傍リンパ節への対応」
今回参加する前にMRの方からモデルケースの治療方針のアンケートを書かされたのですが、その結果を踏まえたパネルディスカッションでした。「術前に胸骨傍リンパ節転移が疑われた場合に細胞診を行なうか?」「術前のリンフォシンチグラフィで胸骨傍リンパ節が染まった場合、どのような術式を選択するか?(胸骨傍リンパ節を切除するか?腋窩はどうするか?)」「細胞診で胸骨傍リンパ節転移が診断された場合の術式はどうするか?」などについてディスカッションを行ないましたが、なかなか結論が出るものではなく、アンケート結果とパネリストの意見が一致しなかったりパネリスト間でも意見が異なるなど、まだまだ統一された見解にはなっていないようです。それにしてもT先生もおっしゃっていましたが、最近の若いDrは胸骨傍リンパ節の細胞診も生検もしたことがないというのを知って少し驚きました。

今日は10:00発の便で帰ってきましたが、その後の東京は大荒れだったようですね。AKBのイベントが中止になったとか…。早めに帰ってきて良かったです(笑)。


2014年3月27日木曜日

乳腺術後症例検討会 31 ”2013年度最後!”

昨夜、今年度最後の症例検討会がありました。昨日は外科の送別会などが重なって少し参加者が少なく、なんとなく寂しかったのですが、院外からも2人参加してくれました。

今回も症例は4例。すごく珍しい症例はありませんでしたが、活発なディスカッションが行なわれました。

1例目は、広範囲の乳管内進展を伴う多発病巣で当院初の一次再建となった症例、2例目は、多発線維腺腫フォロー中に石灰化の集簇が出現し、ステレオガイド下バコラ生検を行なった症例、3例目は超音波検査で乳頭側と末梢側に乳管内進展が疑われた充実腺管がんの症例、そして4例目は非浸潤がんが疑われた濃縮嚢胞の症例でした。

終了後に、今後の症例検討会の方向について、技師さんたちから提案が出されました。以前、私も感じていたことではありますが、マンネリ化を防ぎ、より魅力的な症例検討会にするために、来月から新たな試みが始まります。彼女たちが自発的に考えてくれたことが私にはとてもうれしく感じました。これからも工夫しながらより良い症例検討会を行なっていきたいと考えています。

2014年3月24日月曜日

第22回日本乳癌学会学術総会 演題採択結果

今年の7/10-12に大阪で日本乳癌学会学術総会が行なわれます。昨年末に応募した演題の採用通知が先日届きました。症例報告だったので今回はもしかしたらと思いましたがなんとか採択されたようです。G先生、N先生の演題も採択されたので3人で発表してきます。

乳癌学会学術総会には乳腺外科医になることを決意してからは、家庭の事情で演題を出さなかった1回以外は毎回発表しています。どのようなことを発表するかは毎年悩むところですが、私は日常診療の中で感じたことや珍しいと思った症例をピックアップしておいたり、手術患者台帳の入力やカルテの予後調査をしているときに興味深いと感じたことをメモしておいています。その中から学会で発表する価値がありそうなことを選んで発表しています。

最近では、FEC100療法やTC療法で以前報告されていた率に比べてあまりに発熱性好中球減少症(FN)が多いことと、長時間作用型のG-CSF(白血球を増加させる注射薬)(ペグフィルグラスチム 協和発酵キリン)が年内くらいに発売になりそうだということもあって、将来的な1次予防投与の是非を判断するために当院のデータをまとめてみることにしました。

今のところFEC100が約50例、TCが10例ほどの解析ですがなかなか興味深いデータが出ています。やはり、両者ともFNの率は1次予防が推奨される20%を大きく越えていました。一日も早くペグフィルグラスチムが国内でも使用できるようになることを期待しています。

2014年3月18日火曜日

”第11回 With You Hokkaido” 第1回運営委員会

今日は19:00から札幌医大でWith You Hokkaidoの運営委員会がありました。

今日は人数が少なかったのですが、昨年の反省と他の地域のWith Youの状況を踏まえて、今年のWith You Hokkaidoのテーマや内容について意見を出し合いました。

まだ詳細は決まっていませんが昨年までと流れが少し違う感じになるかもしれません。でも内容はきっと興味深いものになると思いますので楽しみにしていて下さい(笑)なお、日程は2014.8.23(土)の12:30からの予定です(終了時間は検討中)。

それにしても昨今の様々な状況の影響で、この会を支援してくれるスポンサーが減ってきているようです。この会を開催するためにはやはり資金は必要です。スポンサーになってくれる企業のMRさんは是非私にご連絡下さい!

2014年3月16日日曜日

”北海道HBOCネットワーク” 発足!

昨日、市内某所にて”北海道HBOCネットワーク 第1回ミーティング”が開催されました。

何度かここでも書いていますが、HBOCというのは昨年アンジェリーナ・ジョリーさんの件で世界中にその存在が知れ渡ることになった”遺伝性乳がん卵巣がん症候群”のことです。米国ではNCCN(全米総合がんネットワーク)がガイドラインを作成し、その拾い上げから検査、カウンセリング、予防治療、フォローアップなどのシステムが確立しつつありますが、日本ではまだかなり遅れています。ようやくHBOCコンソーシアムという組織が中心となって日本のHBOCの状況の把握、カウンセリングの講習会などが開催されるようになり、一部の病院では予防手術も行なわれつつあるようですが、多くの地域ではカウンセリングや遺伝学的検査の実施を行なえる環境がまだまだ不十分です。

北海道ではがんセンターと3大学などでカウンセリングと遺伝子検査の体制が整いつつありますが、私たち一般の乳腺外科医や婦人科医にとってはまだ十分な知識が不足しており、対応のノウハウがよくわかっていないのが現状です。

そこで北海道内のHBOC関連医療の普及、発展のためにこのネットワークを発足させ、昨日その第1回のミーティングが行なわれたというのが今回の経過です。私たちの施設からもG先生、N先生と私の3人が参加しましたが、全道から会議室いっぱい(40人くらい?)の乳腺外科医、婦人科医が集まり、その関心の大きさがわかりました。

会議の内容は、以下の通りです。

①開会あいさつ・HBOCネットワーク設立について(札幌医大 遺伝医学 櫻井晃洋先生)
②HBOCへの取り組み・症例報告(北海道がんセンター 乳腺外科 高橋將人先生)
③BRCA1/2遺伝子検査について(㈱ファルコバイオシステムズ 和泉美希子さん)
④全体討論

詳細な内容は割愛しますが、現在行なわれている一般的なHBOCの1次拾い上げを行なうとその対象者は莫大な数になり(トリプルネガティブだけでも全体の15-20%になります)、その患者さんたち全員にHBOCについての詳細な説明を行なってカウンセリングにまわせる環境(特に説明の時間の確保)がなかなかないこと、得られた遺伝情報をどう管理するか(カルテに記載すべきか、別に管理すべきか、特に未発症者の情報はカルテには残さないのが原則だが、その後のフォローを誰がどうやって行なうかなど)、その患者さんがHBOCと判明した場合に、どの程度積極的に血縁者の人たちに知らせることを勧めるべきか(実際はほとんど十分には伝えられていないのが現状)など、遺伝性疾患特有の難しい問題があることがあらためて理解できました。

今回は初めての会合でしたが、これをきっかけにメーリングリストが作成されて情報交換が可能になるようですし、相談もしやすくなります。まだまだ道のりは長いですが、北海道におけるHBOC診療発展の第1歩になりそうです。

2014年3月9日日曜日

無料クーポン券の有効期限は今月いっぱいです!

昨日は関連病院の土曜日検診でした。関連病院では年数回の日曜検診の他に、ほぼ毎月第3土曜日に乳がん検診をしていますが、3月は毎年無料クーポンの駆け込みが多いため、今年は特別に第2土曜日も乳がん検診を行ないました。

この日、G先生は本院の方の乳がん検診、N先生は釧路の系列病院の乳がん検診(女性のみのスタッフで年数回行っています)ということで10月のJ.M.Sの時以来の3カ所の乳がん検診が同一日に行なわれました。

私が担当した関連病院では、予想通り受診した方のほとんどが無料クーポン対象者でした。ただいつもは繰り返し受診者が多いのですが、今回は初回検診の方が多かった印象でした。”無料クーポンが届いたから検診を受けてみようと思った”という方は今までも非常に多かったのは確かです。検診を受けるきっかけを作ったという意味では、この無料クーポン券の果たした役割は非常に大きかったのではないかと考えています。

新聞報道などでは、来年度(今年の4月以降)からは、無料クーポン券の配布は40才の方のみになるようです。せっかく検診受診率が徐々に増加してきたのにその傾向が止まってしまうのではないかと少し心配です。

昨年の4/1時点で満40、45、50、55、60才の方には夏頃に無料クーポン券が配布されているはずです(自治体によって中止したところもあるようですが)。まだ利用していない方は今月いっぱいが期限ですので、是非無料クーポン券を探して検診を受けましょう!

2014年3月7日金曜日

アンスラサイクリン系抗がん剤の血管外漏出治療薬

抗がん剤投与時の注意すべき合併症の1つが血管外に抗がん剤が漏れることによって起きる組織の障害です。このことに関しては以前ここでも書きました(http://hidechin-breastlifecare.blogspot.jp/2011/01/13_23.html)。また2011.9.7には抗がん剤血管外漏出の治療薬の開発・販売権をキッセイが取得して臨床試験にとりかかるということをニュースとして書きましたが(http://hidechin-breastlifecare.blogspot.jp/2011/09/blog-post_07.html)、ようやく今年になってこの薬剤が承認されたということです。なお、この薬剤はすでに世界32カ国で承認されており、厚生労働省に早期承認の申請が出されたことによってようやく承認されたという経過のようです。

今回製造承認されたこの薬剤は抗悪性腫瘍薬の血管外漏出治療薬、デクスラゾキサン(商品名サビーン点滴静注用500mg)という薬です。適応は「アンスラサイクリン系抗悪性腫瘍薬の血管外漏出」に限定されており、血管外漏出後6時間以内に可能な限り速やかに1~2時間かけて点滴静注するという薬剤です。アンスラサイクリン系抗悪性腫瘍治療薬で乳がんにおいてよく使用されるのはドキソルビシン(商品名 アドリアマイシン)やエピルビシン(商品名 ファルモルビシン)などです。

デクスラゾキサンは、トポイソメラーゼIIの作用を阻害することにより、アンスラサイクリン系抗悪性腫瘍薬が血管外漏出した際の細胞障害を抑制するものと推測されています。

ただ海外での臨床試験において、何らかの副作用(臨床検査値異常を含む)が71.3%に認められているとのことですので、十分な注意が必要です。主な副作用は、悪心(27.5%)、発熱・注射部位疼痛(各13.8%)、嘔吐(12.5%)であり、重大な副作用としては骨髄抑制(白血球減少、好中球減少、血小板減少、ヘモグロビン減少)に注意が必要とのことです。

今のところこの製剤の紹介は製薬会社からはありません。キッセイのMRさんとはお会いしたことがないです…。