2014年1月30日木曜日

"チュチュ・プロジェクト(The Tutu Project)"

今日、なにげなく「アンビリバボー」を見ていたら、上半身裸でバレリーナのコスプレをした変なおじさんのことをやっていました。

ご存知の方も多いかもしれませんが、私は初めてこの番組で知りました。この男性は、ボブさんという写真家です。このボブさんはもともとかなり突拍子もないことを言ったり行動したりする人だったようです。ある時、バレエの魅力を紹介する写真を依頼されたものの、ボブさんはバレエをまったく知らないために困った末に自分のバレリーナ姿を写真に撮影して奥さんに見せたそうです。

その後奥さんは乳がんになって手術、そして残念ながら肝臓に再発してしまいました。落ち込んでいた奥さんをなんとか元気づけたいと考えていたボブさんは、以前のことを思い出し、再び半裸のバレリーナ姿を写真に撮って見せたところ、奥さんに笑顔が戻ったそうです。そしてその後も様々な場所でバレリーナ姿の写真を撮っては見せていたところ、奥さんはすっかり元気を取り戻し、再発から8年たった今も比較的お元気に暮らしているそうです。

もしかしたら笑顔が免疫力を上げて、このような結果につながったのかもしれないと主治医はTVで言っていました。以前にここでも書きましたが(http://hidechin-breastlifecare.blogspot.jp/2009/08/with-you-hokkaido.html)、実際、笑いは免疫力を上げるというデータはあるようです。もちろんそれが全てではありませんが、限りのある貴重な時間(これはがん患者さんに限らず全ての人に言えることですが)をできるだけ笑顔で過ごすというのは私も大賛成です。

ボブさんはこの経験を活かして、バレリーナ姿の写真集の売り上げを乳がん患者さんの治療に役立てるプロジェクトを立ち上げました。これが表題の”チュチュプロジェクト(The Tutu Project)”です。

興味のある方は、HP(http://www.thetutuproject.com/)をご覧になって下さい。

2014年1月29日水曜日

突出痛に対する新しい癌性疼痛治療薬

ちょっと遅くなりましたが、先週の土曜日に協和発酵キリンで昨年発売された「アブストラル」という薬剤の講演会に行ってきました。

ご存知の通り、乳がんに限らず、がんの再発は時に堪え難い疼痛を伴います。このような痛みに対しては、通常の鎮痛剤ではコントロールできないことも多く、医療用麻薬が使われます。以前は我が国では麻薬に対するアレルギーが強く(患者さんも医療者側も)、十分な医療用麻薬が使われてこなかった歴史がありますが、ここ10年くらいの間にかなりその有益性に関する知識が浸透してきたのではないかと思います。

昔からある医療用麻薬の代表はモルヒネですが、その後モルヒネ徐放錠(MSコンチンなど)、オキシコドン(オキシコンチン)、フェンタニル(フェントステープやデュロテップなど)が次々に発売され、患者さんの状況に合わせて様々な製剤が使用できるようになってきました。

麻薬系鎮痛剤の基本は、長時間作用型の徐放剤が基本ですが、体動時などに出現する突出痛(急激な痛み)に対しては即効性の麻薬が使われます。モルヒネ製剤の場合はオプソ、オキシコドンの場合はオキノームという薬剤が処方されることが多いと思いますが、以前はフェンタニル製剤の短時間作用型の製剤がなかったため、オキノームなどで代用せざるを得ませんでした。

今回協和発酵キリンから発売された「アブストラル」はフェンタニルの短時間作用型の製剤で、突出痛に有用とされています。この製剤の特徴は以下の通りです。

・消化器症状が少ない(特に便秘)
・モルヒネやオキシコドン内服中の突出痛にも有効
・1日量の多寡に関わらず(ただし経口モルヒネ換算30mg/日以上内服している患者さん)100μgから段階的に増量し(100、200、400μgの製剤があり、100、200、300、400、600、800μgの順で増量)、至適用量を決定する(今までは麻薬の1日量の約1/6程度が目安とされていました)(最高800μg/日)
・舌下錠で溶けやすい
・効き目が早く、効果持続時間があまり長くないので突出痛の経過に合っている(オキシコンチンやオプソは効果発現まで少し時間がかかり、必要以上に効果が長引く)。
・服用は1日4回まで(1日1回まで効果が不十分なら30分後に1回分までの量の追加可能)。

問題点としては、
①異なる用量の製剤を同時には処方できない(誤薬を防ぐため)
②外来で至適用量まで調整するのは難しい(入院の方が調整しやすいかもしれません)
③5回目の突出痛に対しては他の即効性製剤の服用が必要(あまり頻度は高くないと思いますが)
④薬価が高い(1錠あたり、100μg 573.60円、200μg 800.40、400μg 1116.80円)…1日4回100μgを舌下すると、3割負担なら1ヶ月で573.6×4×30×0.3=20649.6円、800μgなら1116.8×2×4×30×0.3=80409.6円!…かなり高いですね(泣)

2014年1月19日日曜日

HBOCコンソーシアム

HBOCコンソーシアムに参加して、今日の夜にようやく札幌に帰ってきました。

HBOCというのは、”遺伝性乳がん・卵巣がん症候群”と呼ばれる遺伝疾患のことです。昨年、アンジェリーナ・ジョリーさんが予防的乳房切除を行なったことで大きなニュースになったのでご記憶の方も多いと思います。

日本ではいまだに遺伝子検査も予防的治療も保険適用になっていないため、医療従事者の意識も低く、一般市民の関心もあまり高くはありませんでした。しかし、アンジェリーナ・ジョリーさんの件以降、マスコミに取り上げられることも多くなってきており、私たち乳腺外科医も遺伝性乳がんの関する十分な知識が必要となってきていますし、患者さんへの説明の責務も生じてきています。

ただ今までは、”遺伝性乳がんとわかったとしても対処法が整備されていないのであれば、結局その事実を知らせることはかえって患者さんや家族の心理的不安や社会的問題(子供の結婚問題など)を生じさせるだけではないか?”と思っていました。でも今回の講演を聴いて、その判断をするのは医療従事者ではなく患者さん側であるということがよく理解できました。

これからは今まで以上に遺伝性乳がんに対して勉強していきたいと感じた学会でした。

2014年1月12日日曜日

女性化乳房症

男性が乳房にしこりを自覚して受診した場合、そのほとんどは女性化乳房症です。特に痛みを伴ったしこりの場合は、症状を聞いただけで第1に女性化乳房症を疑います(逆に痛みを伴わないしこりの場合は乳がんも考慮します)。珍しい病気ではなく、内科のDrからよく紹介を受けます。両側に見られる場合もありますが片側のみのこともけっこう多いですので、患者さんも内科医も乳がんを心配して受診されることが多いです。

女性化乳房症は、なんらかの原因でエストロゲンが有意な状態になり、乳腺が刺激されて乳輪直下の乳腺が腫大し、板状の硬結になったものです。痛みを伴う場合がほとんどです。思春期と高齢者に多いと言われています。乳癌取扱い規約では「腫瘍様病変」の1つに分類されており、腫瘍ではありません。

原因としてよく経験するのは、薬剤性(利尿薬、抗潰瘍薬、抗精神病薬、高尿酸血症治療薬、前立腺治療薬など)と特発性(原因がはっきりしないもの)、そして思春期のホルモンバランスの乱れによるものです。他に肝硬変や腎臓病、甲状腺機能障害、慢性肺疾患などの慢性病や、まれに染色体異常の1つであるクラインフェルター症候群、精巣腫瘍、ホルモン産生腫瘍(下垂体腫瘍、肺がんなど)などが原因のこともあります。

検査としては、まずは乳がんの否定が必要と判断されたら超音波検査を行ないます。マンモグラフィや細胞診は超音波検査で悪性が否定できない場合に私は行なっています。女性化乳房症と診断された場合は、まず既往歴と内服薬のチェック、不妊の有無、精巣腫瘍の有無を確認します。さらに必要に応じて肝機能や甲状腺機能の検査を行ないます。ホルモン産生腫瘍の可能性が否定できない場合には血中のhCGやエストロゲン、LHなどの検査を行なう場合もあります。

治療は、原因薬剤があれば減量、休薬、変更を考慮します。ホルモン産生腫瘍と診断された場合はその疾患の治療を優先します。慢性疾患が原因であれば、その治療を行ないますが、すでに治療中の場合は経過観察もしくは切除を考慮します。特発性の場合も同様です。ただ経過観察中に自然軽快することも多いですので手術はあわてる必要はありませんし、困っていなければ必ずしも切除する必要はありません。

最近、遺伝性女性化乳房(アロマターゼ過剰症)という疾患に関する研究が行われています。遺伝性女性化乳房症は、乳房の高度発育、低身長・性欲の低下などをきたすことが特徴です。さらに、症状の発現時期が早い(思春期より前)、父親または男の兄弟に同様の症状がある場合には本症が疑われます。乳房の増大の程度は、軽いこともありますが強い場合が多く、進行性に悪化(増大)してくる場合もあります。治療はアロマターゼ阻害剤が有効と言われています。

まだ私が乳腺外科医になったばかりのころに2人続けて若者(10代後半と20代前半)が女性化乳房で受診されたことがありました。2人ともよく見かける乳輪直下の硬結を呈する女性化乳房というより、本当の女性の乳房のような大きさと形状をしていましたので、恥ずかしくてTシャツになれないということで手術を希望されました。彼らの発症原因は、原因薬剤の内服や基礎疾患もありませんでしたので、思春期のホルモンバランスの乱れか特発性に分類されるのですが、進行性に増大していたことを考えるともしかしたら遺伝性女性化乳房症だったのかもしれません。

*最近、なぜか何年も前に書いたこの記事に対してのコメントが多いようです(ネット検索で引っかかるのでしょうか?)。PC版のトップページの注意事項にも書いていますが、基本的に個人的な病状のご質問やセカンドオピニオンを目的としたコメントは控えていただくようにお願いしています。それでも書き込まれてしまうとお返事はできるだけ書くようにはしていますが、ほとんどの場合、主治医に確認したり、以前のコメントのやり取りを見ていただければお分かりになる内容かと思います。ご理解いただければ幸いです。

2014年1月6日月曜日

アロマターゼ阻害剤の乳がん発生予防効果

ハイリスク女性に対する薬剤による乳がん発生予防に関しては、タモキシフェンの有用性が以前から報告されていますが(
過去の研究の統合解析では乳がん発生率を38%減少)、アロマターゼ阻害剤(AI)に関する研究は不十分です。今までに報告されているのはエキセメスタンとプラセボの二重盲検ランダム化比較試験のみで(National Cancer Institute of Canada(NCIC)MAP.3 trial)、エキセメスタン群で有意な浸潤性乳がん発症リスクの軽減効果が認められています〔ハザード比:0.35(95%CI:0.18-0.7)〕。

今回、乳がんのリスクが高いと判定された閉経後の女性に対して、代表的なAI剤のアナストロゾール(商品名:アリミデックスほか)の予防投与が乳がんの発症を大幅に抑制し、有害事象も許容範囲内であることが、ロンドン大学クイーンメアリー校のJack Cuzick氏らが実施したIBIS-II試験で示されました(Lancet誌オンライン版2013年12月12日号)。

概要は以下の通りです。

目的・試験デザイン:乳がん高リスクの閉経後女性に対するアナストロゾールの乳がん予防効果およびその安全性の評価を目的とする国際的な二重盲検プラセボ対照無作為化試験。

対象:年齢40~70歳の閉経後女性。45~60歳の場合は相対的な乳がんリスクが一般人口の2倍以上、60~70歳は1.5倍以上、40~44歳は4倍以上。

方法:被験者は、アナストロゾール1mg/日またはプラセボを5年間投与する群に無作為に割り付けた。主要評価項目は組織学的に確証された乳がん(浸潤性乳がんまたは非浸潤性乳管がん)の発症とし、intention to treat解析が行われた。

結果:登録期間は2003年2月2日~2012年1月31日で、アナストロゾール群に1,920例(年齢中央値59.5歳、閉経時年齢中央値50.0歳、経産婦83%)、プラセボ群には1,944例(59.4歳、49.0歳、84%)が割り付けられた。
①乳がん発症数…アナストロゾール群が40例(2%)、プラセボ群は85例(4%)であり、アナストロゾールによる有意な予防効果が確認された(ハザード比[HR]:0.47、95%信頼区間[CI]:0.32~0.68、p<0.0001)(フォローアップ期間中央値5.0年)。
②死亡数…アナストロゾール群で18例(1%)、プラセボ群で17例(1%)認められた。乳がん死はアナストロゾール群の2例(<1%)のみで、他がん死がそれぞれ7例(<1%)、10例(1%)であり、いずれかの群に特異的に多い死因はみられなかった(p=0.836)。
③有害事象…アナストロゾール群が1,709例(89%)、プラセボ群は1,723例(89%)に認められた。総骨折数や特定部位の骨折数には、両群間に差はみられなかったが、関節の痛みやこわばり、手足の疼痛などの筋骨格系の有害事象[1,226例(64%)vs. 1,124例(58%)、RR:1.10、95%CI:1.05~1.16]およびホットフラッシュや寝汗[1,090例(57%)vs. 961例(49%)、RR:1.15、95%CI:1.08~1.22]は、アナストロゾール群で多かった。

以上の結果から、「アナストロゾールは、乳がんのリスクが高いと判定された閉経後女性において乳がんの発症を抑制した」と結論づけています。

ただ確かに乳がん発生率は低下させていますが平均フォローアップ期間はまだ5年と短く、総死亡率の低下は証明されていません。健常者に対してこのような薬剤を予防投与する場合、目的のがんの発生を抑えることは大切ですが、予防投与に伴う有害事象によって総死亡率が増加してしまえば意味がありません。AI剤による予防効投与の真の有益性を証明するためにはもう少し時間がかかりそうです。

なお、日本人女性に対する乳がん発生リスクの予測モデルは存在しないことと、ホルモン剤の予防投与は保険適用ではないこともあり、日本国内での実用はまだまだ先になります。

2014年1月4日土曜日

仕事始め&大雪

今日は仕事始めでした。と言っても土曜日なので回診をしてから関連病院に行ってマンモグラフィを読んで仕事は終わったのですが、帰る頃には市内は大雪になっていました。

白石区にある関連病院から北区のはずれの自宅まで約15kmあるのですが、後半は畑の中にある吹きさらしの3車線道路です。幸い風はなかったのですがあまりの大雪で視界が悪く、途中2回ほどコンビニに避難しながらようやく無事に自宅にたどり着くことができました(汗)。

そして午後からは自宅前と2台分の駐車スペースの大量の除雪…。毎年毎年札幌のはずれにあるこの地域は降雪量が非常に多いため雪に悩まされます。連日の雪かきでどうしても憂鬱になってしまうので、今年の冬はスノーダンプで運んだ回数を数えることにしました。なんとなく回数を数えると”今日は○○回も運んだぞ〜!”という感じで頑張れそうな気がしたからです(笑)。

年末から何度か雪が積もって除雪しましたが、今までの最高は64回でした。で、今日の午後からのスノーダンプ運搬回数は、108回!正月ということで除夜の鐘の数(煩悩の数)に合わせて終了しました(笑)。終わる頃には雪もやんでやれやれという感じでシャワーを浴びて気持ちよくビールを飲んでくつろいでいました。

ところが…。夕方からまた雪が激しくなってきて、あっという間に元通りになってしまいました(泣)。明日は回診当番なので朝は時間がありません。仕方なくまた玄関前と通勤用の車の周りだけ除雪してきました。今度は75回…。1日に183回、スノーダンプで雪山の上まで雪を運ぶのはかなりきついです…。明日までもう降らなければ良いのですが…(泣)。

2014年1月1日水曜日

謹賀新年!! 風邪引いていませんか?

新年あけましておめでとうございます!

昨年は景気が回復傾向になったこと(実感はありませんが…)、東京オリンピックが決まったこと、そして私たちの病院が新築移転したことくらいしか良いことはなかったような気がします。今年こそは良い1年になることを期待しています。

北海道は今日から明日にかけて大荒れの予報です。札幌は今のところ風はなく、しんしんと雪が降っています。昨年のような悲しい出来事が起きないように、天候が悪いときは外出を控えましょう。

これからますます寒くなってきますので風邪やインフルエンザには注意が必要ですね。私も年末から鼻風邪が悪化してかなりつらいです(泣)。頻回に鼻をかんでいるので普通のティッシュだと鼻の周りの皮がむけてぼろぼろになります(泣)。やっぱり鼻風邪の時はネピアの「鼻セレブ」がいいですね!「鼻セレブ」には、保湿成分の「ソルビット」と「天然グリセリン」が配合されているそうです。でも今回はエリエールの「+Water」を使っています。「+Water」もグリセリンを配合しているようです。ただ個人的には「鼻セレブ」の方がよりしっとりするような気がします(あくまでも個人的な感想です…笑)。

正月は初詣や新年会など、人が多く集まる場所に行くことが多いと思います。私のような風邪ひきは周りの人を考えてマスクの着用を(外出しないのが一番ですが)元気な人は手洗い、うがい、マスクで予防を心がけて下さい。私も4日までには治さなきゃ…。