2013年1月14日月曜日

再発治療の卒業

以前「再発巣完全消失後の治療継続期間(http://hidechin-breastlifecare.blogspot.jp/2010/07/blog-post_15.html)」の中でも書きましたが、再発治療で病巣が完全に消失した場合、治療をどこまで継続するかということについては何もエビデンスがありません。実際そう多いことではないということもありますが、再発したらいずれまた再再発するものだという意識が強いためにそのような検討が十分になされていなかったからなのかもしれません。

先日受診された患者さんは、乳房全摘後2年ほどで皮膚のリンパ管因子由来と思われる局所再発をきたし、その後2年くらいの間にリンパ節、肺に転移をきたしました。化学療法、SRT(定位照射)を含めた放射線治療を繰り返し、最終的にアリミデックス投与中に完全寛解状態(CR)になってから今月でついに10年が経過しました。

途中で患者さんとご相談した時には、「完全寛解してから10年はアリミデックスを続けましょう」とお話ししてきました。この患者さんは幸いアリミデックスの副作用はほとんどなく、この間の内服継続にはまったく抵抗がありませんでした。今回無事10年が経過したため、「これで治療を終了しましょうか?」というお話をしたのですが、「なんとなくやめると再発しそうなので心配です」とのこと。たしかに再発を繰り返した経過があるのでそういうご心配はよく理解できます。

実際ホルモンレセプター陽性の乳がんは何年経っても再発のリスクは一定あります。飲み続けるリスク(長期内服の副作用についてのデータは不十分)と治療を中止するリスク(再再発)を秤にかけなければなりません。こちらとしてはどちらが良いとも言えませんので、「とりあえずもう少し継続して、もしなんらかの副作用が問題になるようなら中止にする」ということにしました。

この患者さんは70才台半ばです。あと平均寿命まで10数年、なんとか再発なく過ごしてもらえればと願っています。今年中にもう一人、同じように肝動注+アリミデックスでCRになってから10年が経過する肝転移の患者さんがいらっしゃいます。この方はどう判断するかわかりませんが、再発治療の卒業の判断はなかなか難しいです。




14 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

初発六年前、二年後に皮膚、反対側胸、脇リンパに転移・再発したものです。その後、経口抗がん剤、ホルモン剤、免疫療法をして完全寛解が四年続きましたが、先日、再び二年前と同じような場所に1㎝ほどのがんが見つかりました。毎月の検診でのエコー、マーカーでは発見できず、MRIで発見されました。再再発、、で絶望的でしたが、先生の記事を読み、中には再発しても長く生きてられる方がいるんだ、、と僅かな希望の光を見出してます。
先日、セカンドオピニオンでは(初発かも。手術をすれば。)と言われましたが、主治医は再発と思っています。(初発から顔つきが似てるため)この辺の判断はどうすれば良いのでしょうね。

小さな可愛い子供を二人抱えています。せめて、二十歳になるまで生きたいです。あと、10年、、。再発・転移しても長く生きられる人は何が違うのでしょうか?また、どのくらいの割合でそういう人がいるのでしょうか?

hidechin さんのコメント...

>匿名さん
せっかく治癒したと思った矢先の再発で大変ご心配のことと思います。ただ実際に診察しているわけではありませんのでお答えできる内容には限界があります。
再発なのか初発かについてですが、初発の意味が不明です。そもそもどこに再発したのですか?最初の手術が乳房温存術で、温存した乳房内の再発という意味でしょうか?それでしたら新たながんという可能性はあります。また仮に再発でも乳房内再発でしたら切除(乳房全摘)の意味はあります。それ以外の皮膚やリンパ節などで初発というのは意味が理解できません。もしかしたらリンパ節再発のように見えるけど腋窩に近い乳腺内の原発性乳がんという意味でしょうか?このあたりが不明であることと、検査所見も見ていないことからこれ以上の推測は困難です。実際に診ている主治医やセカンドオピニオンの医師以上の意見を述べることはできません。
再発して長く生きることができる人とそうでない人を単純に見分けることはなかなか難しいです。一般的にはホルモン陽性の方が再発後の生存期間は長いのが普通です。しかしHER2陽性やトリプルネガティブでも長期に生存する方もいらっしゃいます。薬剤にどの程度反応してくれるかによるのですが、これもまだ十分にわかっていない部分もありますので安易に決めつけることはできません。また様々な方がこのブログを見ている可能性がありますので、誤解を招く可能性のある”長く生きられる人の割合”をここで書くことはできません。どうかご理解願います。
治療が順調に進むことをお祈りしています。それではお大事に。

匿名 さんのコメント...

こんにちは。以前にも一度先生のアドバイスをいただき、心救われた者です。
いつもわかりやすい情報発信をありがとうございます。
本日は、「アミノインデックス」という検査について先生の御意見を伺いたく、コメント投稿させていただきました。
私は昨年に乳癌ステージⅠ(術前では非浸潤性乳管癌の診断、術後に0.5mmの浸潤層が病理検査で発見された)の乳癌を経験いたしました。現在ホルモン治療(ノルバデックス服用)です。
二週間前、人間ドックで「アミノインデックス」という検査を受けた結果、「乳癌」「肺癌」「子宮癌」の結果が「ランクB」と出ました。
腫瘍マーカーの値はCEA、CA15-3は基準値内でした。
肺の方はレントゲンでは特に異常なし。子宮がんは半年に一度「子宮頸がん・子宮体がん」の細胞診を受けており、近々では5月に受信して問題なし。
「アミノインデックス」検査を受けたことは未だ主治医には報告していません。来週受診予定ですので、そのときに話す予定です。
このような状況ですが、次の点について御意見頂戴できましたら、幸いです。
●他に未だ何か検査を受ける必要があるでしょうか。
●ホルモン治療中にこのような検査をしても、意味が無い(正しい結果が出ない?)のでしょうか。
●乳癌を手術で取りきれたと思っていますが、今回の検査結果からは未だ身体の中に癌が残っているということでしょうか。
●それとも、乳癌治療直後は未だ体内のアミノ酸のバランスが崩れているということでしょうか。
●先生は、アミノインデックス検査を患者さんに推奨されていますか?
ご多忙の中、恐れ入りますが、可能な限りでアドバイスを頂戴できれば幸いでございます。
何卒よろしくお願い申し上げます。

hidechin さんのコメント...

>匿名さん
ご質問にお答えします。

●他に未だ何か検査を受ける必要があるでしょうか。
→それは普段定期的に検査を行なっている主治医の先生に結果をお話しした上で判断してもらって下さい。
●ホルモン治療中にこのような検査をしても、意味が無い(正しい結果が出ない?)のでしょうか。
→ホルモン療法とアミノインデックスの関係について私は知識がありませんし、検索しても情報はありませんでした。妊娠中は影響が出ると書いていましたのでなんらかの影響がある可能性はありますが詳細はわかりません(そもそもこの検査は乳がん術後の患者さんを対象にした検査ではなく、健常者のリスクを調べるための検査ですので…)。
●乳癌を手術で取りきれたと思っていますが、今回の検査結果からは未だ身体の中に癌が残っているということでしょうか。
→上に書きましたようにこの検査は再発予測のための検査ではありませんのでおそらくそのようなデータはないのではないかと思います。
●それとも、乳癌治療直後は未だ体内のアミノ酸のバランスが崩れているということでしょうか。
→乳がんの治療によってアミノ酸のバランスが崩れるという話は私は聞いたことがありません。
●先生は、アミノインデックス検査を患者さんに推奨されていますか?
→人間ドックなどの検診目的であれば、がん検診の対象者を絞り込むという意味で今後有用になるかもしれませんが、アミノインデックスで高率にがんを診断できるわけではありません。あくまでもランクが高いと有病率が上がるというだけです(ランクAは0.03-0.07%、ランクCが0.40-1.02%)。この数字を見ればこの検査の本来の目的がわかるはずです。ランクCでもほとんどの人にはがんは発見されません。リスクがランクAより高いというだけです。ですから私の患者さんにこの検査を勧めることはありません。そもそも一般の方以上のリスクを乳がん患者さんは持っていますし(特に対側乳がん、タモキシフェン使用者の子宮体がん)、それに備えた子宮がん検診、乳房検査を行なっています。医師によって考え方は違いますが、私は肺がんチェックも兼ねて胸部のCTも行なっています。ですからアミノインデックスを行なう必要性はまったくないのです。
繰り返しますが、アミノインデックスは、リスクをチェックする検査であって、異常だからがんがあるというわけではありません。もしランクCだったら、結局匿名さんがすでに受けているがん検診を推奨するというだけの検査なのです。おわかりいただけましたか?

匿名 さんのコメント...

おはようございます。
大変わかりやすいご説明をいただき、納得いたしました。
検査の意味を十分に理解せずに受けてしまったこと、反省いたします。
肺のCTは来週に主治医の下で受ける予定でございます。
本当にありがとうございました。
いつも適切なアドバイスをありがとうございます。感謝でいっぱいです。
暑い日が続きますので、先生もお身体を大切になさってください。
御礼まで。

hidechin さんのコメント...

>匿名さん
主治医の先生とよくご相談の上で今後の検査をご検討下さい。
それではお大事に!

匿名 さんのコメント...

はじめまして
数日前に告知された乳がん初心者です。

大学病院だからか、ほとんど先生と顔を合わせることなく手術が決められていて、全摘か温存かをお返事しなくてはなりません。
温存だと放射線治療が必要ということでした。

治療はホルモンが有効なのでホルモンだけになりそうです。リンパ転移は針を刺したので来週発表のご様子でした。でも切ってみないとわからないそうです。


硬癌のルミナールAといわれました。

しこりの生検結果は
2cm以下
Nuclear Grade 1
Nuclear atypia 2
Mitotic counts 1
comedo necrosis (-)
ER+(100%)
PgR+ (80%)
Her2 1+
Ki-67index 15%(カットオフは20%)


とにかく 素人の私が判断するには 情報不足なので 書き込みさせて頂きました。
まだ子供も小さいので死ぬわけにもいきません。

でも心配性な私なので、びくびくして生活するなら全部とってもと思ったり・・・
放射線のデメリットやホルモン治療の副作用の恐怖など、食べ物ものどを通らず、悩み迷い涙がでる毎日で・・・

ぜひご意見をお聞かせいただけたら幸いです。
よろしくお願いしますm(__)m

hidechin さんのコメント...

>匿名さん
はじめまして。
お聞きになりたいことは術式をどうするべきかということでしょうか?
匿名さんの場合にどうなのかということについては、画像所見(マンモグラフィ、超音波検査、MRなど)を見ていないので軽率にお答えすることはできません。やはり主治医から両術式のmerit、demeritについて十分納得するまで説明を受けた上でお決めになるべきだと思います。
幸い匿名さんのサブタイプはLuminal Aでおとなしいタイプのようですから良かったですね。今後長くおつきあいをしていくわけですので、あまりあわてずにまずは一番身近な主治医と良い関係を築くことをお勧めします。

匿名 さんのコメント...

さっそくのお返事 ありがとうございます。

大学病院だからか、先生も忙しそうで、話も簡素なのでよくわからず・・・ 早々にきりあげられてしまう感じです。

病院は温存推奨の病院なので、そっちをどちらかと言えば進められますが・・・

過呼吸で安定剤飲まないと苦しくなる状態です。(悩みすぎと これからの漠然とした不安と恐怖で・・・)

ネットのブログなどみてると、今回私のような感じのおとなしい癌でも、数年で再発したり、今度はトリネガで転移と治療の日々で。。。みたいなのを読むと、これからが怖くて怖くて・・・ 癌のあたりも痛みがあったりするので、浸潤中?転移?とか とっても不安になってしまいます。


もらった針生検の紙には
Inversive ductal carcinoma ,scirrhous >papillotubular
とも書かれおり MIXタイプ?とか思ったり。
素人なのでよくわからず ネット検索してしまいます。


不安と 怖い のループ状態で、食事ものどを通らずで・・・
手術前にダウンしそうな勢いです。
(でも明日から仕事の嵐なんで、元気な仮面をかぶらないとと思うと 焦ってしまいます)

私のようなタイプが 再発やトリネガや転移など予後が厳しいことは あるのでしょうか?
(全部摘出したら その可能性はどれくらい減るのでしょうか?)

変な質問ですみません。 聞くとこがないので、せっぱつまってます。
よろしくお願いいたしますm(__)m

hidechin さんのコメント...

>匿名さん
せっぱつまってご不安になるお気持ちはよく理解できますが、ここはネット上の世界です(トップページの注意事項もお読みいただければ幸いです)。お答えできることには限界があります。もし匿名さんが希望しても主治医からきちんとした説明を受けることができないのであればセカンドオピニオンという方法もありますのでご検討してみてはいかがですか?もし再度説明を受けることが可能なのでしたら、お聞きになりたいことを箇条書きにしてあらかじめ看護師に渡しておくことをお勧めします。

ご質問の中でお答えできる部分のみお答えしますが、まず「Inversive ductal carcinoma(浸潤性乳管がん)」は、日本では乳頭腺管がん(papillo-tubular carcinoma)、充実腺管がん(solid-tubular carcinoma)硬がん(scirrhous carcinoma)の3つのサブタイプに分けられています。しかし米国ではこの3つのサブタイプはなく1つのInversive ductal carcinomaとして診断されます。またこれらの3つはよく混在して見られます。ですから硬がんと乳頭腺管がんが混在していてもMixed typeとして特別扱いはしません。
もう一つ、Luminal Aがトリネガ(triple negative)ということはあるか?というご質問は矛盾しています。乳がんは簡単に言うと主に4つのサブタイプに分類されており、その1つがLuminal Aであり、triple negativeなのです。つまりこれら2つは別なサブタイプなのです。ただし、針生検のサブタイプと手術標本のサブタイプが多少異なる結果になることはあります(Luminal A→Luminal Bなど)。しかし匿名さんの場合はホルモンレセプターが高発現なので手術標本がtriple negativeということはまずないと思います。
なお、Luminal Aは他のサブタイプに比べて進行は遅く予後は良好ですが、再発(転移)はもちろん0%ではありません。進行してから見つかれば再発率が高い場合もあります。そのあたりをもし詳しくお知りになりたいのでしたら病理結果が出てから主治医にご確認下さい。
また、もし今のまま不安状態が続くようでしたら、今後のことも考えてかかりつけのメンタルクリニックを見つけておくことをお勧めします。それではお大事に。

匿名 さんのコメント...

ありがとうございました。

困らせてすみませんm(__)m


知りたかった内容の半分は 知ることができました。 感謝いたします。


田舎なのでセカンドオピニオンを考える病院がないので 不安はありますが このまま頑張ってみます。


もし 可能なら最後に1点だけ 教えてください。


抗がん剤治療はせず ホルモン治療だけになる感じなのですが、その場合、全摘して放射線をしないのと 温存して放射線をするのでは、再発率は どう変わってくるのが一般でしょうか?

放射線をするかしないか(放射線の後々の影響とうを考えて) そこで悩んでいます。

見えない癌をホルモン治療だけでやっつけれるならいいのですが、素人には抗がん剤や放射線でないとやっつけられないのでは?的なイメージがあるもので。

しなくても大丈夫な治療はしたくはないですが(影響を考えると)、せずに後で後悔もいやなので(子供が小さいので) 今、いっぱい考えてるところなので できれば、その考えるための 情報を頂けたらと思います。

無理をいってすみません。

hidechin さんのコメント...

>匿名さん
繰り返しますが、詳細は主治医にご確認下さい。

再発率についてですが、遠隔再発率(予後に直結する)に関しては両者は同等であることが複数の臨床試験でわかっています。

違いがあるのは局所再発率です。温存可能な程度の乳がんを乳房全摘した場合の局所再発率はほとんど0%に近いと考えられます。一方、乳房温存術の場合は、非照射の場合、10年で約10%程度の局所再発率(報告によって対象が異なるためかなりばらつきがありますが)と言われており、放射線治療を追加することによってその再発率は半分以下になると言われています(メタアナリシスの結果では70%減少させるとされています)。

なお、強力な治療(抗がん剤)ほど治療効果が大きいという考え方は昔の考え方であり、実際ホルモン受容体が高発現の場合は抗がん剤は効果が乏しいことが証明されています。ですから強い治療=効果の高い治療ではないのです。がんのタイプによって最適な治療を選ぶのが正しいと言えます。抗がん剤を追加することによって得られるメリットはそのがんの状況(ホルモン感受性、悪性度、リンパ節転移の数など)によって異なりますので、最終的には術後の病理結果を見て判断されます。
以上です。

匿名 さんのコメント...

無理をいって すみません

とてもよくわかりました。

頂いた情報を踏まえて 主治医とお話しする自信がつきました。ありがとうございます。

(突然の告知と選択を迫られる状況で、無知な自分の判断に自信が持てず、いろいろ調べて、少しは患者の知識?を持てたので、本当にありがとうございました)


無理を言って すみませんでした。


感謝いたします。

hidechin さんのコメント...

>匿名さん
主治医と良い関係を保って何でも質問できる環境になれば良いですね。それではお大事に。