2013年3月25日月曜日

がん性胸膜炎の治療

乳がん患者さんの再発形式の一つにがん性胸膜炎(胸膜の再発=胸膜播種によって胸水が貯留すること)があります。

胸水が貯留しても少量では無症状のこともよくあり、定期検査の胸部写真やCTで発見されたり、腫瘍マーカーの異常の精査で発見されることもあります。咳が続いて診断されることもありますが、時に呼吸困難になるほどの大量の胸水が貯留して初めて診断されることもあります。

がん性胸膜炎の治療は、基本的には他の再発と同様にサブタイプに合わせた全身治療がメインになります。しかし、量が多かったり呼吸困難がある場合は、胸腔ドレーンというチューブを胸腔内に留置して胸水を排液します。胸水を抜ききったら一度ドレーンを抜くことが多いのですが、胸水貯留を繰り返す場合は、胸膜癒着術という治療を行ないます。この治療は、胸腔ドレーンから薬剤(タルクという鉱物やピシバニールという免疫賦活剤、ミノマイシンという抗生物質など)を注入して、肺側の胸膜と胸壁側の胸膜を人工的に炎症を起こして癒着させ、胸水の貯留を防ぐ方法です。

この治療に関連する副作用や合併症としては、以下のようなものがあります。

①胸腔ドレーン挿入時の出血、気胸(肺のパンク)…慣れた医師が行なえば通常ほとんど起きませんが、胸水の量が少なかったり、もともと複雑に癒着していたり、胸膜のがん自体を穿刺してしまったりしたときには起こりえます。

②再膨張性肺水腫…長く貯留した大量の胸水を短時間で排液した時に起きることがある肺水腫。重症では呼吸困難、低酸素血症、ショックを起こし、命に関わることもあります。ですから大量の胸水が貯留している場合は、数回(数日)に分けて排液するほうが安全です。

③胸膜癒着術施行時の痛み、発熱、ショック…薬剤によって引き起こされる炎症が原因で起きます。あらかじめキシロカインなどの麻酔薬を注入しておいてから行ないますが、それでも起きることがあります。鎮痛解熱剤や輸液などで対処します。

④癒着後の再貯留時の気胸、血胸…癒着術を行なって部分的に癒着を形成したあとで胸水が再貯留すると癒着していた肺が裂けて気胸を起こすことがあり、時に出血を伴うこともあります。先日も軽い気胸を起こしていた患者さんがいらっしゃいました。

がん性胸膜炎は乳がん患者さんにとって厳しい状態であることは確かです。しかし呼吸困難がきっかけでがん性胸膜炎を伴うⅣ期の乳がんと診断されてから10年以上生存された患者さんや、がん性胸膜炎で再発してから10年以上生存中の方もいらっしゃいますので、長期の生存を期待できる場合もあります。少なくとも自覚症状を局所治療でうまくコントロールしながら全身治療で病状全体を安定させることで、良いQOLを保たせることは可能なのです。

21 件のコメント:

MILKI さんのコメント...

こんばんは。こちらへもお邪魔しました。

左胸(原発、再発)のただれはタキソール(2010年5月から1年投与)で治まったのですが、

今は右腋リンパに転移でかなり硬く、腫れてます!うみ?が出そうです><

その下(乳房の横、脇腹)のところも柔らかく腫れる日もあって、胸水か心配してたら看護師さんが胸水は外には膨らまないよ。と教えてくれましたが、リンパ液か何かでしょうか?

よろしくお願いします。

hidechin さんのコメント...

>MILKIさん
再発治療、辛い思いをされていることと思います。
看護師さんが言ったように胸壁の外側に胸水がたまることは通常ありません。
それが何かと聞かれても検査結果も見ていないのでなんともお答えのしようがありませんが…。可能性の一つとして、局所やリンパ節に再発していることを考えるとリンパ浮腫なのではないでしょうか?リンパ浮腫は上肢に起きやすいのですが、局所やリンパ節に高度の再発をきたすとその周囲に起きることもあります。治療はマッサージなどのリンパドレナージと再発巣自体への治療に期待するしかないと思います。他の可能性については画像を見ていないのでわかりません。主治医にお聞きになってみて下さい。以上です。
それではお大事に。

MILKI さんのコメント...

ありがとうございます。


大変よくわかりました!

近かったら、先生の病院で診察して頂きたいぐらいです。


先日、匿名で他の記事にコメントさせていただいた者です。(フェマーラを開始した)
突然名前を入れたので、わかりにくくて失礼しました@@

カノン さんのコメント...

以前にも2回ほどコメントを書かせていただいた者です。浸潤性小葉ガン、肺や肝臓、リンパ節、骨に転移のある末期ガンの患者です。その節はありがとうございました。
今日、癌性胸膜炎による胸水の治療について読ませていただきましたが、私は非常にラッキーだったのだなと思いました。
というのは、2年程前から癌性胸膜炎の診断がついていて、胸水がたくさんたまり、最初は昨年の7月に外来で1000cc抜いていただき、マーカーもCEAが150程になってしまい抗がん剤をハラヴェンにかえたものの効果がなく、CEAは270、咳などの症状もひどかったので外来でまた胸水を1700cc抜きました。治療の最後の方は咳が出て非常に苦しかったけど、おかげで肺水腫などになることもなく、本当にラッキーだったのだな、と思いました。
その後、ハラヴェンは早々にあきらめて、パクリ&アバスチンになりましたが、それが劇的に効いて、マーカーも一挙に1クールで80程、2クールで50程と下がり、胸水もたまらなくなりました。
今はまたじりじりと上がっていて、これからどうしようかなという感じですが、先生が書いてみえた「少なくとも自覚症状を局所治療でうまくコントロールしながら全身治療で病状全体を安定させることで、良いQOLを保たせることは可能なのです」というのは本当だな、と実感しています。
副作用がいろいろあるので大変なことも多いですが、この半年くらいの間、少なくとも肺や肝臓の転移での症状はほとんど感じずにいられましたから。
パクリ&アバスチンがもう使えなくなった時にどうするのか・・・ちょっと怖い気もしますし、これからどうなるのかな、という不安もありますが、もう危ないかなと思ってから半年、何とか普通に近い生活を送れたので、それだけでも感謝です。
お忙しい中、いつもいろいろな情報をありがとうございます。

hidechin さんのコメント...

>MILKIさん
主治医の先生とうまくコミュニケーションを取りながら治療できると良いですね。それではお大事に!

hidechin さんのコメント...

>カノンさん
アバスチン+パクリタキセルが奏効して良かったですね!最近またマーカーが増加傾向なのは心配ですが、一度奏効が見られた場合は、他の治療もまた効くことがありますから焦らずに主治医の先生と一緒に次の作戦を相談して下さい。
それではお大事に!

ひまわり さんのコメント...

こんにちはひまわりです。
先月、4か月ごとに受けているCT検査をしたところ癌性胸膜炎と診断され、胸水がたまっていると主治医にいわれふあんです。

フェソロデックスをフェアトン錠40mg一日一回3錠服用していますが、3錠は多いということはないでしょうか?1錠飲んでいるという方もいます。
(軽い吐き気やむかつきがあるので)

フロデミド錠20mg、スピロノラクトン錠25mgも服用しています。
利尿剤は胸水を排出するのに意味はないと言う先生もいます(?)
副作用で腎臓に負担がかかることはないのでしょうか?
ご意見をお聞かせください。
よろしくお願いします。

hidechin さんのコメント...

>ひまわりさん
こんばんは。
胸水が溜まっているということで不安なことと存じます。
まずフェアストン40mgを3錠は多くありません。術後の補助療法として投与する場合は40mgが常用量ですが、再発治療の場合は120mgを投与する場合が多いからです(高用量トレミフェンと言います)。
次に利尿剤(フロセミド、スピロノラクトン)は確かにこれだけではがん性胸膜炎の治療としては不十分ですが、抗がん剤やホルモン療法と併用することはよくあります。ですから標準的な治療だと言えます。またその治療で腎臓に負担がかかるということはありません。ただし電解質(特にカリウム)の変動には注意が必要です。これは血液検査でわかります。以上です。
それではお大事に!

ひまわり さんのコメント...

お忙しい中、お返事くださりありがとうございました。
いろいろ不安なことだらけですが、主治医ともしっかり話しあい、納得のいく(安心して治療できる)状態で治療を頑張って行きたいとおもいます。

hidechin さんのコメント...

>ひまわりさん
大変だと思いますが治療頑張って下さいね。お大事に!

ひまわり さんのコメント...

こんにちは
またまたお邪魔いたします。
胸膜転移が見つかってからフェアストンに変更して三か月。先週二か月に一回CTと採血をしました。薬の効果があったのか胸水が消え腫瘍も小さくなってました。今週採血結果を聞きに病院へ行くと、nncc-st-439の数値が679.0???ありえない数値になっていて、主治医も首をかしげて「意味がわからない・・・」とのこと。
この様な数値はみたことがないので、不安です。このような数値が出ることがあるのでしょうか? 

hidechin さんのコメント...

>ひまわりさん
nncc-st-439はNCC-ST439のことだと思います。まず、NCC-ST439は4桁になることもありますのであり得ない数値ではありません。胸膜転移には効果があるのに腫瘍マーカーが上がっている場合は、他の部位の転移を考えなければなりません。例えば最近検査していないようでしたら脳MRを撮影するとかPET-CTを検査するなどが必要かと思います。主治医の先生とよくご相談下さい。
それではお大事に。

ユーミン さんのコメント...

はじめまして。乳がん、肺がんを経験し、4年目の先月がん性胸膜炎で再発しました。半年ごとの検査で腫瘍マーカーはずっと1.2位だったのが、半年前の検査で先生に結果を尋ねたら、見なくても大丈夫と言われました。そして今回の検査で腫瘍マーカーが120でびっくりしました。半年前の結果を尋ねたら5より少し下でした。ずっと1.2で、それが5近くと知っていたら、もう一度更なる検査をしたのに。。それから半年経ってマーカーは120になっていました。とてもショックです。

がん性胸膜炎で再発してから10年以上生存中の方もいらっしゃいますので、長期の生存を期待できる場合もありますとありましたが、がん性胸膜炎と診断されると通常半年~1年の余命だと書いてありました。長期生存の可能性もあるのでしょうか? 

19日に治療し、抗がん剤を開始します。抗がん剤も多々種類がありますので、不安になります。また、免疫細胞治療についてはどう思われますか?。。。

ユーミン さんのコメント...

はじめまして。乳がん、肺がんを経験し、4年目の先月がん性胸膜炎で再発しました。半年ごとの検査で腫瘍マーカーはずっと1.2位だったのが、半年前の検査で先生に結果を尋ねたら、見なくても大丈夫と言われました。そして今回の検査で腫瘍マーカーが120でびっくりしました。半年前の結果を尋ねたら5より少し下でした。ずっと1.2で、それが5近くと知っていたら、もう一度更なる検査をしたのに。。それから半年経ってマーカーは120になっていました。とてもショックです。

がん性胸膜炎で再発してから10年以上生存中の方もいらっしゃいますので、長期の生存を期待できる場合もありますとありましたが、がん性胸膜炎と診断されると通常半年~1年の余命だと書いてありました。長期生存の可能性もあるのでしょうか? 

19日に治療し、抗がん剤を開始します。抗がん剤も多々種類がありますので、不安になります。また、免疫細胞治療についてはどう思われますか?。。。

hidechin さんのコメント...

>ユーミンさん
はじめまして。
再発、とてもショックを受けたことと思います。たしかに平均余命はそのように書いてあるものもあるかと思います。ただその中には初再発の患者さんもいればさまざまな臓器に再発を繰り返したあとのがん性胸膜炎の患者さんも含まれています。さらに再発までの期間やがんのサブタイプ(ホルモンレセプターやHER2)によっても大きく異なります。
もちろん楽観できる状態ではありませんが、治療が奏効すれば長期予後も期待できることがあるのもまた事実です。今はまず悲観的になりすぎないように主治医の先生とよくご相談しながら治療方針を決めて下さい。
なお免疫療法は残念ながら今のところ標準治療以上の効果は得られていません。まずはそのことの正しい理解が必要です。本当に治療効果が期待できるなら標準治療として採用されているはずです。また標準治療と併用することを完全に否定はしませんが、過度に宣伝しているクリニックでの高額な治療は慎重にご判断下さい。以上です。
それではお大事に。

ユーミン さんのコメント...

お返事ありがとうございます。
質問ですが、分子標的薬はEGFRとALKの遺伝子検査で変異があると使えるとありました。療法で変異があるという場合もあるのでしょうか?

hidechin さんのコメント...

>ユーミンさん
現在乳がんに対して保険適用となっている分子標的薬は、HER2陽性乳がんが対象のハーセプチン、タイケルブ、パージェタ、カドサイラ、そして閉経後ER陽性乳がんが対象でm-TORタンパクをターゲットにしたアフィニトール、そして血管内皮細胞増殖因子(VEGF)をターゲットにしたアバスチンのみです。
ですから肺がんにおけるEGFR 遺伝子変異陽性が対象のイレッサやALK融合遺伝子陽性が対象のザーコリなどは乳がんに対しては使用できません。これらの薬剤の乳がんに対する有効性は少なくとも十分には確認されていません。
ですから「分子標的薬はEGFRとALKの遺伝子検査で変異があると使えるとありました。療法(両方の書き間違いでしょうか?)で変異があるという場合もあるのでしょうか?」というご質問はネットで肺がんの内容を見て勘違いされたのではないでしょうか?
通常、HER2陽性であれば抗HER2薬を使用するはずですので、今回使用しないのであればユーミンさんはHER2陰性なのではないでしょうか?アバスチンに関しては今回、もしくは今回の治療が無効だった場合には使用を考慮すると思います。
以上です。

yuming さんのコメント...

外来初診の医師は、胸膜播種は余命1年から1年半で、この状態なら急いで入院する必要はない、イレッサも1年程度で耐性ができる、近い病院があるのに、なぜこんな遠い病院へくるのだと、私は親身になって一緒にガンと戦おう、あきらめるなと言ってくれる医師が主治医になってほしかったのに。。。こんな医師ばかりなのですか。。。

hidechin さんのコメント...

>yumingさん
そうですか…。実際にご説明の場にいたわけではありませんので詳細はわかりませんが、yumingさんにとってはこれからの闘病の支えにはなってもらえない印象なのですね?話している事実は同じでも説明の仕方によって受け取る側の気持ちはかなり違うものですよね。
これから長く治療をしなければならないことを考えると近くに良い病院があるのであれば紹介してもらうのも一つの方法だと思いますよ。大きな病院=良い病院と単純に言えるわけではありませんし、有名な医師=良い医師(知識や技量のことだけを言っているわけではありません)というわけでもありませんから。
より良い治療環境が整うことをお祈りしています。それではお大事に。

yuming さんのコメント...

こんにちは。11月28日よりイレッサの単独で服用が始まりました。北海道大学の発表を読み、イレッサは他の抗がん剤との併用療法の方が効果が高いとありましたが、どう思われますか。。。?また、抗PD-1抗体ニボルマブが発売されたとあり、非小細胞肺がんに良いとされていますが、どう思いますか?

hidechin さんのコメント...

>yumingさん
こんばんは。
あらためて読み直してみたのですが私は勘違いをしていたのでしょうか?がん性胸膜炎の原因は乳がんではなく肺がんなのですか?それは組織で確認されたのですか?それによって治療は異なると思うのですが…。イレッサを使ったということは肺がんの再発と診断されたということでよろしいのでしょうか?もし肺がんの再発なのであれば私は専門外ですのでお答えすることは控えさせて下さい。少なくとも私の知っている限りにおいてはイレッサは単剤で使用していると思います。またニボルマブについても私は十分な知識を持ち合わせておりません。少なくとも国内では肺がんに対しては未承認ですし(悪性黒色腫のみの適応)、フェーズ1の報告が出たばかりですので現時点では有効とは断定できないのではないかと思います。一度担当医にご確認願います。以上です。