2014年9月6日土曜日

Sapporo Oncology Board〜乳がん肺転移切除症例のまとめ

昨日AZ社主催で不定期に行なわれている再発治療に関する小規模の研究会(Sapporo Oncology Board)が行なわれました。

今回の担当は私たちの施設だったので、G先生にかなり前から発表をお願いしていました。依頼があった時は、私は研究会の司会や症例提示が続いていたためにG先生にお願いしたのですが、ここ数週の間、仕事が重なってG先生は超ハードな状態となってしまいました。でも急に担当を変更することもできないのでG先生には寝不足の中、直前までスライドを手直しして頑張ってもらいました。

今回発表したのは、当院における乳がん術後肺転移の手術症例についてのまとめです。詳細は書きませんが、バイアスがかかっているにしてもなかなか良好な成績でした。肺転移術後の最長生存は18年で、現在もまったく再再発なくお元気に通院されています。他院で乳がんの肺転移と診断され、当院の緩和ケアに紹介された症例が、実は原発性肺がんだったというケースもありますので(結局当院呼吸器外科で手術をしました)、単発の肺腫瘤の場合は、確定診断の意味も含めて切除することも検討して良いのではないかと私たちは考えています。

参加者は10人前後の小さな会ですが、その分自由に発言できてとてもアットホームな雰囲気で行なわれています。エビデンスを踏まえた上で、エビデンスだけでは不十分な領域についてお互いの経験を共有しながら勉強するというところが普通の研究会にはない面白いところです。今度いつできるかわかりませんが、できるだけ参加したいと思っています。

明日は大通でピンクリボンイベントです。天気は良さそうですので多くの方が立ち寄ってくださることを期待しています。

3 件のコメント:

ssamansa さんのコメント...

hidechin先生こんにちは。

4年前に石灰化のところで質問させていただきました、ssamansaです。
当時は本当に不安なところ適切なアドバイスありがとうございました。

現在48歳です。
術後、ステージ2b、ルミナルAタイプの硬がんでした。ホルモン強陽性で、リンパ節に転移がありました。
AC+ドセタキセルの治療をし、その後、ノルバデックスを一年半服用しましたが、左鎖骨下に転移の疑いで生検はできないとのことでホルモン剤をアリミデックスに変えました。
この時CTをとり両肺に淡い結節影が多発とのことでしたが、経過観察となりました。
2か月後生理が来てしまったので、リューブリン注射を追加しています。

一年半後の先週、CT検査の結果両肺の結節が複数大きくなり(最大1センチ)転移を否定できないとの判断が出ました。
左鎖骨下の物は再建時病理に出してもらって脂肪の塊ということでした。

そこで、今後の治療についてですが、名前は聞いていないのですが、ホルモン注射を1か月に一度リューブリンに追加するか、経口抗がん剤ということでした。

一応手術をして組織検査もしてもよいけど・・・・がんのタイプが変異することはあまりないからと言われました。

余命などの統計数字を見ながら、絶望していた時にこちらの記事を見てタイプは違うと思いますが、少し元気になってきたところです。

北大で受けることができる遺伝子検査を受けて自分に合う薬を使っていただくのは、先生はどう思われますか?
この段階では違うのかもしれませんが。
とても高額なので、無駄なことはできません。
手術はこの場合無理ですよね?重粒子線などの治療も。

アリミデックスが自分に合っていないのではとずっと思っていたので(主治医には聞きました。自分は閉経前の薬なのではないのかと)。

悔いのない治療をしたいと思っています。年金だって貰わなきゃと。

失礼かと思いましたが、先生に甘えさせていただきました。
よろしくお願いいたします。



hidechin さんのコメント...

>ssamansaさん
お久しぶりです。

まずは北大での遺伝子検査に関しては私も患者さんをご紹介したことはありませんし、まだ標準的な検査にはなっていませんのでなんとも言えません。抗がん剤を投与する際に主治医とよくご相談ください。

両肺に多発している転移の場合、通常は手術の適応にはなりません。ただし、他のがんの転移と鑑別が必要な場合(他のがんの既往がある場合)や転移かどうか判断が難しい場合、またサブタイプが変化している可能性が疑われる場合には切除することはあります。この場合はあくまでも検査目的ですので1個のみの切除になりますからがんが消える訳ではありません。稀に単発または2−3個の転移の場合に根治を目指して切除することはありますが、この場合も根治または長期生存に繋がるかどうかは全身療法の効果によるところも大きいのです。

重粒子線治療は適応が厳しいですが、日本放射線腫瘍学会のHPによると3個以内の肺転移は適応はあるようです。ただ通常乳がんの肺転移でご紹介することはありませんのでなんとも言えません。乳がんの場合、薬物療法が奏効することが多いですのであまり重粒子線治療を検討することはないと思います。しかも非常に高額です。

閉経前のリュープリンとアリミデックスの併用は本来保険適外です。しかし最近の臨床試験でリュープリンなどのLH-RH agonistとアロマターゼ阻害剤の併用の有用性が報告されてからは(臨床試験は術後補助療法ですが)、実臨床でも使用されつつあるようです(それでも自治体によっては査定される可能性があります)。ssamansaさんの場合、1年半継続できた訳ですので合わないと言う訳ではなく一定の効果はあったのだと思います。

なお閉経前に使用できるホルモン剤は、本来タモキシフェン、リュープリンなどのLH-RH agonist、ヒスロンHしかありません。ですから主治医の先生は、査定される可能性も考えた上でアリミデックスを投与したのだと思います。

ただ、提示された月に1回の注射(おそらくフェソロデックスだと思います)とリュープリンの併用は臨床試験のデータがないと思いますので査定される可能性はあるかと思います。それでも理論的にはリュープリンを使用すれば閉経後と同じホルモン環境になる訳ですから一定の効果は期待して良いかと思います。また経口抗がん剤(TS-1やゼローダ)もホルモン陽性乳がんにはよく効きますので十分選択する意義はあると思います。
以上です。

ssamansa さんのコメント...

hidechin先生おはようございます。
早速のコメント本当にありがとうございます。

アリミデックスについて、一定の効果があったと言うことで、
やはり素人考えで思い悩むことは時間の無駄ですね。
ホルモン治療は一つの薬を5年から10年飲み切るものだと勝手に思っていたので。

保険適応外というのは主治医も言っていました。

ホルモン陽性乳がんにお薬がまだまだあると言うことで
前向きに頑張ります。

治療中、新薬も出てくると信じて。

お忙しいところ本当にありがとうございました。