2012年7月27日金曜日

第21回北海道乳腺診断フォーラム

今日は年1回の乳腺診断フォーラムでした。今晩は豊平川の花火大会がある日でしたが、かなり多くの人が集まりました。

症例はいつもの2例。旭川の2施設からの症例でした。最初の症例は結局紡錘細胞がんなのか扁平上皮がんなのかがはっきりしませんでしたが、進展形式が嚢胞内から外側に広がるような形態を示した珍しいタイプの症例でした。2例目は関連施設からの症例で、あまり嚢胞部分がはっきりしない嚢胞内がん(一部浸潤あり)でした。バコラという生検器具で診断をつけたようで、出血の危険性を避けるためのコツや針穴をどうしているのかなどを質問しました。私たちの施設でも来春の新病院移転後にはバコラを導入する予定ですので参考になりました。

症例検討のあとは、デジタルマンモグラフィとモニター診断についての講演がありました。こちらも来春から導入予定ですので勉強になりました。ただ上手に使いこなすのはなかなか大変なようですね。またもや講習会を受けなければならないとは…いろいろ考えるとちょっと気が重くなりました。

終了後は懇親会に参加して22時近くに帰宅しました。明日から水曜日までは夏休みです。今日は札幌も32.5℃くらいまで上がりました。まだまだ暑い日が続きますが、皆さん体調には気をつけましょう!

2012年7月25日水曜日

乳腺術後症例検討会 21 病理医との連携

今日は月1回の症例検討会でした。いつも夕食を食べに行く喫茶店が手術が終わってから行くともう閉まっていたのでコンビニで軽く食べてから参加しました(笑)

今日の症例は、画像的には明らかに乳がんを疑いましたが、針生検では「間質肉腫の疑い」、最終的には「乳腺線維腫症(fibromatosis)」という診断を得た症例、広範な乳管内進展を呈した乳がん症例、高齢者で非浸潤がんを疑った乳管内乳頭腫の症例、硬がん様の超音波画像でしたが、脂肪内の高エコーが著明で、最終的には「浸潤性微小乳頭がん(Invasive micropapillary carcinoma)」だった症例の4例でしたが、いずれも画像的にはなかなか判断が難しい症例でした。

今日のミニレクチャーは「乳腺線維腫症」についてでした。この疾患は基本的には良性ですが、局所再発をきたすことが2-3割あるという点と、低悪性度の肉腫との鑑別が難しいという点で注意が必要です。この症例はより正確を期すために、乳腺病理の権威である坂元記念クリニックの坂元吾偉先生にconsultationを行ないました。

私たちの施設では、乳腺外科医と病理医の連携がスムースです。病理科の科長のK先生(私と同期です)は、乳腺病理診断の難しさをよく理解してくれているので、診断に迷うケースは、私たちとカンファレンスを行なったり、積極的にconsultationに出してくれたりします。時間を要することにはなりますが、慎重な彼の判断と風通しの良さには大変助かっています。そして毎月行なわれるこの症例検討会の病理スライドの準備と当日の解説には毎回顔を出してくれます。そしてそういうK先生の姿勢のおかげで部下の病理医の先生方の参加も回を重ねるごとに多くなってきています。

病理医と乳腺外科医が密接に連携をとることが正確な診断につながり、結果的に患者さんに利益をもたらす(不利益を避ける)ということを私はG病院での研修で教わりました。これからもこういう良い関係を継続して行ければと考えています。

2012年7月23日月曜日

第9回 With You 北海道~あなたとブレストケアを考える会〜続報

6月にも一度情報を流しましたが、正式に「第9回 With You 北海道~あなたとブレストケアを考える会」のポスターが送付されてきました(写真)。

詳細な内容が決まりましたので概要を追加します。

テーマ:もっと多くの良い情報を!
日時:平成24年8月18日(土) 12:30~16:15
場所:札幌市中央区南1条西16丁目 札幌医科大学研究棟1階 大講堂

内容:
①開会の辞(With You あなたとブレストケアを考える会代表 霞富士雄先生)
②お役立ち情報コーナー(司会:市立札幌病院 大川由美先生)
『乳がん最新治療』(札幌医科大学第1外科 九富五郎先生)
『ネット活用法』(北海道大学病院 乳腺・内分泌外科 細田充主先生)
『補完代替医療』 (東札幌病院ブレストケアセンター 亀嶋秀和先生)
『リンパ浮腫セミナーを振り返って~「学ぶ」・「つながる」の大切さ~』(札幌医科大学寄付講座緩和医療学 岩本喜久子先生)
③参加者グループワーク(「手術後の不安・治療」、「再発の不安・治療(再発の方のみ)」、「リンパ浮腫」、補完・代替医療」、「ご家族のケア」、「緩和ケア」、「若年者乳がん」)+何でもコーナー(グループワークに参加されない方対象)
④パフォーマンス(フラメンコ)
⑤特別講演(司会:札幌医科大学第1外科 鈴木やすよ先生)
「明日から出来る!からだにいい生活習慣」(東京医科大学乳腺科 海瀬博史先生)
⑥各地のWith You報告
⑦閉会の辞

今年の私の担当グループワークは、病院の特性からあまり適任ではないような気もしますが、与えられた役割なので少し勉強して望みたいと思います。楽しくて実りある集まりになると良いですね。多くの方が参加されることを期待しています。

この夏も様々なイベントが盛りだくさんで忙しくなりそうです!





2012年7月22日日曜日

ちょっと二日酔いの乳がん検診

前回のピンクリボン in SAPPOROの記事がなぜか私のパソコンでは一瞬だけ表示されてから見れなくなる状態になっていましたが、皆さんは読めましたでしょうか?原因がよくわからないので、一度削除して作り直したらとりあえず読めるようになりました。

昨日は久しぶりにD病院形成外科のE先生と共通の友人Mさんと3人で飲みに出かけました。今回はすすきのではなく、石狩街道を挟んだ東側(テレビ塔の向かい側 南1東2)にある隠れ家的なワインバーに初めて行ってきました。

E先生に会うのは4ヶ月ぶりくらいでしたが相変わらずお元気で精力的に仕事をこなしているようでした。朝早くから2つの病院の入院患者さんの診察をして、外来診療のあとで手術を4件こなしてからワインバーに現れましたが、まったく疲れた様子もなく、たいした体力です(汗)さすが柔道部出身!私はバレー部でしたが体力が落ちる一方です(泣)そろそろ本格的に体力作りをしなければ…。


今日乳がん検診があるのでアルコールは控えめにしようと思っていたのですが、結局E先生とMさんとの話が楽しくてついつい0時まで3軒はしごしてしまい、ちょっと飲み過ぎてしまいました(汗)3人で白1本、赤2本空けて、その他にビールを3杯くらいでしたが、今朝起きたらまだちょっとふらふらしてました(泣)

それでも時間前にはきちんと出勤して乳がん検診を無事やり終えることができました。ただ検診受診者数が定数より少なかったのが残念です。しかもそのほとんどは休日じゃなくても受診できそうな高齢者ばかり…。

私たちの病院ではずっと前から2ヶ月に1回程度、日曜日に特別診療(特診)として検診を行なってきました。平日になかなか受診できない主婦や働く女性に検診を受けていただこうというのがその主旨です。30才以上が対象で、触診のみだった時代には、1回に100人近く来られることもありました。

それが40才以上が対象の隔年のマンモグラフィ併用検診になったころから日曜特診の受診者が減少傾向になっています。マンモグラフィを撮影できる数で制限が加わることもあるのですがその定数にも満たないことが最近目立っています。これはおそらく、ピンクリボン運動などの啓発活動が盛んになるとともに企業側の検診に対する意識が変化し、企業検診としての乳がん検診を平日に保障するケースが増えてきたことによるのではないかと思います。結果的に休日でなければ受けれないような比較的若い検診希望者が減ってしまったのではないでしょうか。もしそうなのであれば大変良いことであり、私たちが行なってきた活動はその役割を縮小する時期にきたのではないかと思っています。

(写真は2軒目の店で飲んだイタリア(シチリア)のワイン「il passo 2010」です。リーズナブルな値段の割にはとても香り高くて美味しかったです!)

ピンクリボン in SAPPORO 2012 ”ピンクリボンロード”

今年もさっぽろテレビ塔がピンク色にライトアップされます!

毎年夏に行なわれるピンクリボン in SAPPOROのイベントが、今年は8/26(日)の13:30-16:00までさっぽろホコテン(中央区南1西3)で開催されます。

イベントの内容は、
1.ピンクリボンフラ(「ハーラウ・フラ・オ・ナーレイヒバ」)      13:30〜
2.ゴスペルコンサート(これも恒例の「KiKi&ピンクリボンクワイア」) 14:00〜
3.ピンクリボンパフォーマンス(毎年恒例になった「もえぎ色女学院」) 15:00〜
4.ピンクリボンボディジュエリー(1回1000円で素肌にアート!)

札幌近郊にお住まいの方で、お時間のある方は、買い物ついでにでも是非お立ち寄り下さい。

*雨天時はさっぽろテレビ塔内に変更になります。


2012年7月16日月曜日

乳がん患者さんの労働環境の変化

私の患者さんの中にも乳がんと診断されてから仕事を辞めざるを得なくなったり、職場から嫌みを言われたりした方が何人もいらっしゃいます。このようながん患者さんに対する職場の理解と配慮の不足(職場にも事情はあるとは思いますが)、公的サポートの不足は日本だけの問題かと思っていましたが、海外でも同様の傾向がみられるようです。

Journal of Clinical Oncology誌オンライン版(2012年7月9日号)にスェーデンの研究者が乳がん診断後の労働時間や処遇の変化についてのコホート研究の結果を掲載しました。概要は以下の通りです。

対象: Regional Breast Cancer Quality Register of Central Swedenで登録された735例のうち、2回のアンケートを完了した女性505例(診断時63歳未満)。

方法: ベースライン時(診断後平均4ヵ月)およびフォローアップ時(診断後平均16ヵ月)にアンケートを行なった。未婚・既婚、子供の有無、学歴など社会人口統計学的因子に関する情報はベースライン時に、また自己申告による仕事に関わる情報はフォローアップ時に収集した。

結果: 
①労働時間→変化なし 72%、増加 2%、減少 15%、退職  11%
②化学療法は、退職や労働時間短縮の可能性を増加させる(オッズ比[OR]:2.45、95%CI:1.38~4.34)
*これらに影響した要因…診断前のフルタイムの仕事(OR:3.25、95%CI:1.51~7.01)、がんに関連した労働制限(OR:5.26、95%CI:2.30~12.03)、仕事に対する低い価値観(OR:3.69、95%CI:1.80~7.54)(化学療法を受けなかった患者では、年齢の高さ(OR:1.09、95%CI:1.02~1.17)と仕事に対する低い価値観(OR:5.00、95%CI:2.01~12.45)が影響)。

結論: サポートが必要な女性を識別するには化学療法とがんに関連する労働制限が重要な因子であり、さらに労働市場に参加することについての女性自身の価値判断を考慮することが重要である。


以上の報告は、乳がん患者さん自身の職場復帰に対する意欲(働かなければ生きて行けない状況なのかどうか、その職場における職責、労働内容への満足感などが関係しているものと思われます)と職場における理解と状況(復職の延期や労働制限を許容できる環境なのかどうか)が、乳がん患者さんの労働環境の変化に関係しているということなのだと思います。

病気による突然の欠員はその職場にも少なからず影響を与えます。そのような場合に備えて公的機関が臨時職員(様々な職種の退職者など)を登録しておく労働バンク的なシステムを作るなど、公的なサポートが必要なのではないかと思います。ただその場合、臨時職員に対する給与をどう捻出するかという問題が生じます。これは各企業で積み立てのような形で職員の給与から一定額を徴収しておくのが良いのか、企業として利益の中から捻出すべきなのか、それともそのようながん患者さんに対しての配慮を行なう企業に対する補助金として公的資金を予算化すべきなのか(今の国家財政では厳しいですが)なかなか難しいです。

現在の混沌とした政治を見ていると、このような細やかなことにまで目を向ける余裕はなさそうなのが残念です。なお、この問題はがん患者さんに限った話ではありません。突然の病気によって仕事を休まなければならなくなった時に企業と社会、政治がどうサポートするべきなのか、今の世の中はこのような問題に対してまだまだ未成熟なのではないかと思います。


乳管内乳頭腫のコメントについて

今まで書いた中で一番コメントが多いのは、2010.3.1に書いた「乳管内乳頭腫と乳癌」という記事です(http://hidechin-breastlifecare.blogspot.jp/2010/03/blog-post.html)。現在までに返事も含めて155件のコメントがあり、書いてから2年以上たつにもかかわらず、いまだに時々書き込みがあります。

これはやはり乳管内乳頭腫という疾患の独特の特徴(がんとの鑑別が問題になる、血性乳頭分泌で不安が強い、確定診断に手術を要することが多いなど)によるものなのだと思います。

そういう患者さんの不安がわかりますので今までコメントに対してすべてお返事を書いてきましたが、これだけ多くの質問にお答えすると重複するような内容が増えてきます。前に同じことを書いたような気が…というケースが多いのです。

できれば今までのコメントのやり取りを読んだ上で、それでも疑問があればコメントを書き込むようにしていただければありがたいのですが…。最近、かなり前の記事へのコメントも多く、記事によっては結構時間を要することもあり、お返事に追われてしまうことが時々あります。

そういうこともあり、もちろん仕事の忙しさも加えてなかなか新しい記事を書けなくなっています…。このブログは私の楽しみでもありますのでできるだけこまめに更新したいと思っているのですが、最近はなかなか時間が取れなくて残念です。

仕事でいろいろなことがありストレスがたまりしぎているので、どこか温泉にでも行ってゆっくりしたいのですが、夏休みは細切れになりそうでどこにも行けそうもありません(泣)