今日は不定期に行なわれているAZ社主催の再発治療の研究会でした。
この研究会は、今までは毎回参加者が治療方針に迷うような症例を提示して少人数で検討するアットホームな感じの研究会です。毎回私たちの病院からも症例を提示して検討してもらってきましたが、今回もG先生が症例を提示する予定でした。結局残念ながら手術が長引いてしまったために、G先生は参加することができませんでしたが、道内の乳腺MRの第1人者のT先生の講演はとても勉強になりました。
今日のT先生のお話は、いつもの乳腺MRについてではなく、再発診断における画像検査の特徴と選択についてのお話でした。局所再発、肺胸膜再発、肝転移、骨転移、脳転移など、それぞれの臓器別にどのような検査法を選択すべきかとか、その画像検査のpitfallとかについてわかりやすく教えて下さいました。
今回お聞きした中で印象的だった内容は以下の通りです。
①骨シンチはMRで写る30%くらいしか骨転移を検出できない。全身をdiffusionという方法で3DのMR撮影をすると骨転移のスクリーニングが可能で骨シンチより有用(短時間で可能なので乳腺MRのついでにできる)。
②胸水のない胸膜転移を見つけるために胸部CTは造影で行なった方が良い(私たちの施設では胸部のCTは通常造影はせずに撮影しています)。
③肝転移は単純CTでは見えるのに造影するとかえって見づらくなることがあるので、全身CTを造影で撮る場合は肝臓のみ単純撮影をしておくほうが良い(造影を1 phaseしか撮影しない場合)。
④肝転移の診断にはGd-EOB-DTPAを使用したMRがもっとも診断しやすい。
⑤PETは全身を見る上ではやはり有用だが、写らない場合もある。PET-CTならPET陰性でもCTで診断できる場合もある。他の臓器の悪性腫瘍の検出にも有用な場合があるが(特に大腸がんなど)、早期胃がんなどではあまり役立たない。良性疾患でも写ることがあるので、良悪の確定診断としては役立たない場合も多い。
⑥温存術後の乳房内再発の検査は、マンモグラフィと超音波検査だけでは判断が難しい。MRが有用なのは確かだが、造影で時間がかかって高額なので実際にはほとんど行なっていない。diffusionだけでもある程度の検出は可能で短時間ですむので考えても良いかもしれない。
今日のお話を聞いて、ずっと同じだった術後の定期検査を少し変えてみようかと思うようになりました。私たちの施設ではPETができませんので、CT/MR/シンチ/超音波検査/マンモグラフィなどをうまく組み合わせて、より良い術後検査の組み合わせを考えてみようかと思っています。
乳癌が心配だけど、どこに受診したらいいかわからない、乳癌になってしまって不安…、再発したからもうだめかもしれない…。そんな不安や悩みに少しでもお役に立てればと思って始めてみました。 (*投稿内容と無関係なコメント、病状のご相談はご遠慮願います*)
2012年8月26日日曜日
ピンクリボン in SAPPORO 2012 ”ピンクリボンロード”無事終了!
昨日からTVでは「24時間テレビ」が行なわれており、今日の午前中からは札幌市街で「北海道マラソン」が行なわれているという、イベント盛りだくさんの今日の日曜日でしたが、年1回の乳がん関連のイベント、「ピンクリボン in SAPPORO 2012 ”ピンクリボンロード”」も大通のホコテンで開催されました。
毎年夏に行なわれるイベントですが、札幌は好天に恵まれとても暑かったです。かなり多くの聴衆が集まっていて日射病になるのではないかと心配しましたが、体調を崩す方も発生せず無事終了しました。
今日のイベントはまず「ハーラウ・フラ・オ・ナーレイヒバ」によるフラダンスから始まりました(写真)。おそらく幼稚園児くらいの子供さんからベテランの中高年の女性までさまざまな年代でのフラを披露して下さいました。フラダンスと言っても明るい曲調の速いテンポのものから情緒豊かなスローなものまで様々なものがあることがわかりましたし、生まれつき下肢に障害を持つ方の座ったままでのフラもとても表現力が豊かで感動的でした(写真)。
次に行なわれたのは、札幌ドームのファイターズ戦でもおなじみの「KiKi&ピンクリボンクワイア」によるゴスペルライブ!(写真)もう3年くらい前から活動していますが、年々そのパフォーマンスは洗練されてきていて、素晴らしいライブでした。やはりプロのKiKiさんがずっと指導して下さっていることと、ピンクリボンクワイアの皆さんの熱意と努力による成果なんでしょうね。ホコテンの歩道には人だかりができていて大盛況でした(写真)。
最後は、これもここ数年恒例になっている「もえぎ色女学院」によるピンクリボンパフォーマンス(写真)。いつも彼女たちの元気のよさには驚きます(笑)これからもピンクリボン運動普及の担い手としてパフォーマンスを続けていって欲しいと思っています。ただ、女性だけの集団だったはずですが、いつの間にか男性が1人参加していたのにはびっくりでした(笑)。
また、特設テント内のブースでは今回初めて「ピンクリボンボディジュエリー」という、肌に描いた下絵の上に糊を塗って、その上にキラキラした砂のようなものを載せてきれいなアートをペイントしてくれるイベントが行なわれていました。座ったままのフラを披露してくれた女性は右腕にピンクリボンのアートを描いてもらっていましたが、とてもきれいでした!
個人的にはイベントが始まってからはほとんど何もすることはなく、最後に実行委員の1人として挨拶したのと終了後の後片付けをしたくらいでしたが、スタッフの皆さんの下準備はいつも大変だろうと思います。暑い中、お疲れさまでした。このイベントが、今まで乳がん検診に無関心だった方々の検診を受けるきっかけになってくれることを心から願っています!
2012年8月23日木曜日
乳腺術後症例検討会 22 ”ついに60回!”
月1回行なっている乳腺の症例検討会(病理検査を行なった症例のうち数例を提示)が、ついに今回60回目を迎えました。人間で言うと還暦?です。よくここまで続いたものです。
今回も症例は4例でした。病理診断名としては特に珍しい症例はありませんでしたが、生検痕付近に発生した非浸潤がんの症例は、針生検の組織に炎症所見と非浸潤がんがあったために超音波所見とMRの広がり診断が難しく、非常に興味深く勉強になる症例でした。
今回60回目を迎えたということで、今年(?)60才になって来年定年となるベテラン技師のNさんから、今までの活動を冊子にまとめたいとの提案が出されました。これは少し前にも個人的に打診されていた内容でした。このような活動のまとめは以前から私も考えていて、DVDにでもして技師の教育用に使えないかと考えていたことでした。ただ、具体的に考えるとなかなか簡単ではありませんので棚上げにしていたのです。紙で作るとなると、費用の面などでまた別の問題が発生しますが、なにか良い方法で活動をまとめられたらいいなと思っています。技師さんたちは熱意を持って取り組んでくれそうなので応援したいと思っています。
今回も症例は4例でした。病理診断名としては特に珍しい症例はありませんでしたが、生検痕付近に発生した非浸潤がんの症例は、針生検の組織に炎症所見と非浸潤がんがあったために超音波所見とMRの広がり診断が難しく、非常に興味深く勉強になる症例でした。
今回60回目を迎えたということで、今年(?)60才になって来年定年となるベテラン技師のNさんから、今までの活動を冊子にまとめたいとの提案が出されました。これは少し前にも個人的に打診されていた内容でした。このような活動のまとめは以前から私も考えていて、DVDにでもして技師の教育用に使えないかと考えていたことでした。ただ、具体的に考えるとなかなか簡単ではありませんので棚上げにしていたのです。紙で作るとなると、費用の面などでまた別の問題が発生しますが、なにか良い方法で活動をまとめられたらいいなと思っています。技師さんたちは熱意を持って取り組んでくれそうなので応援したいと思っています。
2012年8月19日日曜日
病院内での盗難にご注意!
今日は日曜特診の乳がん検診でした。朝8時から診察ですので平日と同じ時間に出勤しました。
最近の日曜検診は繰り返し受診者が多く、先日も書いたように平日でも受診できそうな高齢者が多い傾向がありましたが、今回は40才台前半の比較的若い方が多く見えていました。40才でマンモグラフィが初めての方も数人いらっしゃいましたが、いずれもがんを疑う触診所見の方はいらっしゃいませんでした。
日曜特診は、内科や婦人科の検診も兼ねて受診される方が多く、みなさん貴重品などの手荷物を持ちながら診察室や検査室を回ります。ところが今日乳がん検診にいらしていた中の一人が手ぶらで診察室に入って来られたのです。
「手荷物は?」とお聞きすると「待合室に置いています」とのこと。きっと決して他人を悪く思わない良い人なんだなあと思いつつ、「盗難事件も発生していますので貴重品は必ず持ち歩いて下さい」とお話ししました。
まさか病院で盗難なんて、と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、案外病院内での盗難は多いのです。待合室に置きっぱなしというのはあまりにも無防備ですが、入院中の患者さんに対しても盗難事件は発生しています。病院に来院する方、特に入院中の方はけっこう多額の現金を持っていることがあります。盗難のプロはそういうところを狙っています。患者さんの家族になりすまして病室に入ったりして金品を盗むようです。いくつもの病院をまわって病院専門に盗難を繰り返している人もいると聞いたこともあります。
病院には体調が悪い患者さんだけではなく、様々な人が出入りしていることを覚えておく必要があります。病院に行く際は(どこででも同じですが)、貴重品は必ず持参するかロッカーがあれば入れておくようにしましょう。
最近の日曜検診は繰り返し受診者が多く、先日も書いたように平日でも受診できそうな高齢者が多い傾向がありましたが、今回は40才台前半の比較的若い方が多く見えていました。40才でマンモグラフィが初めての方も数人いらっしゃいましたが、いずれもがんを疑う触診所見の方はいらっしゃいませんでした。
日曜特診は、内科や婦人科の検診も兼ねて受診される方が多く、みなさん貴重品などの手荷物を持ちながら診察室や検査室を回ります。ところが今日乳がん検診にいらしていた中の一人が手ぶらで診察室に入って来られたのです。
「手荷物は?」とお聞きすると「待合室に置いています」とのこと。きっと決して他人を悪く思わない良い人なんだなあと思いつつ、「盗難事件も発生していますので貴重品は必ず持ち歩いて下さい」とお話ししました。
まさか病院で盗難なんて、と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、案外病院内での盗難は多いのです。待合室に置きっぱなしというのはあまりにも無防備ですが、入院中の患者さんに対しても盗難事件は発生しています。病院に来院する方、特に入院中の方はけっこう多額の現金を持っていることがあります。盗難のプロはそういうところを狙っています。患者さんの家族になりすまして病室に入ったりして金品を盗むようです。いくつもの病院をまわって病院専門に盗難を繰り返している人もいると聞いたこともあります。
病院には体調が悪い患者さんだけではなく、様々な人が出入りしていることを覚えておく必要があります。病院に行く際は(どこででも同じですが)、貴重品は必ず持参するかロッカーがあれば入れておくようにしましょう。
2012年8月18日土曜日
第9回 With You 北海道~あなたとブレストケアを考える会〜終了
何回かお報せしてきましたが、今日は「第9回 With You 北海道~あなたとブレストケアを考える会」が札幌医大研究棟大講堂で行なわれました。
今回のテーマは「もっと多くの情報を!」ということで、お役立ち情報コーナーでは、乳がんの最新情報やネットの活用法、補完代替療法、リンパ浮腫セミナーについてのミニレクチャーがありました。とてもわかりやすい内容でしたが、それぞれの持ち時間が短かったのが少し残念でした。参加した患者さんたちはもっといろいろと聞きたいことがあったのではないでしょうか?
参加者グループワークはここ数年行なわれていますが、進行の補助的な役割を私たちスタッフが行なっています。基本的には患者さん同士がそれぞれの思いを話し合うのが目的なのですが、スムーズな進行はなかなか難しいです。どうしても参加者の発言に偏りが出てしまったり、医師への質問コーナーになってしまったりということが起きてしまいます。いつもうまく進行できなかったことに自己嫌悪してしまいます。発言できた患者さんは良いのですが、自分が話し合いたいと思っていたことが言えなかった患者さんもいらっしゃるかもしれません。個人的にはむしろ質問コーナーと位置づけてもらったほうが気が楽なんですが…。
特別講演は「明日からできる!からだにいい生活習慣」という演題でT医大のK先生が講演をして下さいました。患者さん自身ができる食事と運動、そして補完代替医療について、ガイドラインに沿ってエビデンスを交えながらわかりやすく解説して下さいました。
今回のこのイベントには、いつも来て下さるG病院時代の恩師のK先生、そしてG病院関連で知り合いの沖縄のM先生、今もG病院で勤務するM先生、千葉でクリニックを開業されているN先生などたくさんの道外の先生方が参加して下さいました。いつもはるばる北海道まで来ていただきありがたいと思っています。
いつもは少し長く感じるこのイベントですが、今回は短く感じました。それはG病院研修時代に苦楽を共にした名古屋のK先生が初めて参加され、いろいろ話ができたからかもしれません。今や名古屋だけではなく、全国的にも名前の知れた先生ですが、プライベートでも非常にフレンドリーなナイスガイです。今回は夏休みを兼ねてご家族も一緒に北海道旅行をされるとのこと。子供さんたちにとっても良い思い出になればいいなと思っています。
今回のテーマは「もっと多くの情報を!」ということで、お役立ち情報コーナーでは、乳がんの最新情報やネットの活用法、補完代替療法、リンパ浮腫セミナーについてのミニレクチャーがありました。とてもわかりやすい内容でしたが、それぞれの持ち時間が短かったのが少し残念でした。参加した患者さんたちはもっといろいろと聞きたいことがあったのではないでしょうか?
参加者グループワークはここ数年行なわれていますが、進行の補助的な役割を私たちスタッフが行なっています。基本的には患者さん同士がそれぞれの思いを話し合うのが目的なのですが、スムーズな進行はなかなか難しいです。どうしても参加者の発言に偏りが出てしまったり、医師への質問コーナーになってしまったりということが起きてしまいます。いつもうまく進行できなかったことに自己嫌悪してしまいます。発言できた患者さんは良いのですが、自分が話し合いたいと思っていたことが言えなかった患者さんもいらっしゃるかもしれません。個人的にはむしろ質問コーナーと位置づけてもらったほうが気が楽なんですが…。
特別講演は「明日からできる!からだにいい生活習慣」という演題でT医大のK先生が講演をして下さいました。患者さん自身ができる食事と運動、そして補完代替医療について、ガイドラインに沿ってエビデンスを交えながらわかりやすく解説して下さいました。
今回のこのイベントには、いつも来て下さるG病院時代の恩師のK先生、そしてG病院関連で知り合いの沖縄のM先生、今もG病院で勤務するM先生、千葉でクリニックを開業されているN先生などたくさんの道外の先生方が参加して下さいました。いつもはるばる北海道まで来ていただきありがたいと思っています。
いつもは少し長く感じるこのイベントですが、今回は短く感じました。それはG病院研修時代に苦楽を共にした名古屋のK先生が初めて参加され、いろいろ話ができたからかもしれません。今や名古屋だけではなく、全国的にも名前の知れた先生ですが、プライベートでも非常にフレンドリーなナイスガイです。今回は夏休みを兼ねてご家族も一緒に北海道旅行をされるとのこと。子供さんたちにとっても良い思い出になればいいなと思っています。
2012年8月16日木曜日
乳癌の治療最新情報32 アナストロゾール+フルベストラントの併用療法
アナストロゾール(商品名 アリミデックス)とフルベストラント(商品名 フェソロデックス)はともに閉経後のエストロゲン受容体(ER)陽性乳がん患者さんに適応のある治療薬です。現在はまだこの2剤を併用することはエビデンスがなかったため推奨されていません。
アナストロゾールはアロマターゼ阻害剤(AI)の1つです。アロマターゼは脂肪細胞でアンドロゲン(男性ホルモン)をエストロゲンに変換する酵素で、閉経後の女性の体内ではこの働きによって微量のエストロゲンを作っています。ER陽性の乳がん細胞の周囲ではこのアロマターゼ濃度が増加することがわかっています(つまりがん細胞が自分で自分が増殖しやすい環境を作っているということ)。AIはこのアロマターゼの働きを阻害してエストロゲンの産生を抑制します。
一方、フルベストラントはタモキシフェンと同類の抗エストロゲン剤の1つですが、タモキシフェン(選択的エストロゲン受容体調整剤:SERM)と異なり例えば骨や子宮などに対するエストロゲン様作用を有していない、純粋な抗エストロゲン剤です。また、その作用はエストロゲンが受容体に結合するのを阻害するだけではなく、受容体そのものの数を減らすことによって発揮されます(このため、”選択的エストロゲン受容体ダウンレギュレーター:SERD”と言われています)。
この2剤は作用が異なっているために併用すると効果が増強するのではないかと期待されていました。今回、NEJM誌(2012年8月2日号)にRita S. Mehta氏らが発表した第3相無作為化臨床試験の解析によると、ER陽性転移性乳がん(無治療症例)に対する治療効果は、アナストロゾール単剤の群(1群)に比べるとフルベストラントを併用した群(2群)の方が有意に無増悪生存期間(中央値 1群13.5ヵ月、2群15.0ヵ月)と全生存期間(中央値 1群41.3ヵ月、2群47.7ヵ月)が優れていたという結果だったそうです。全生存期間は1群でクロスオーバー(増悪後にフルベストラントを使用すること)を許されていたにもかかわらず有意差が見られたというのは少し驚きです。
この結果を踏まえて、いつから併用が可能になるのかはまだわかりません。また、他のAI剤(エキセメスタン、レトロゾール)との併用は許可されるのかどうかも不明です。高価な薬剤ですので併用する場合は治療費がネックになりますが、アナストロゾールは近々ジェネリックが発売されると思いますので多少は負担が軽減されると思います。
問題点としては、例えば術後にAI剤が使用されていた場合にも同様の上乗せ効果があるのか(この場合はむしろフルベストラントに対するAIの上乗せ効果)が不明な点です。今回の検討は初診時に遠隔転移を伴っていた4期乳がん患者さんが対象のようですので、術後ホルモン療法を受けていた再発患者さんに対する効果については別の臨床試験で検討しなければならないと思います。
アナストロゾールはアロマターゼ阻害剤(AI)の1つです。アロマターゼは脂肪細胞でアンドロゲン(男性ホルモン)をエストロゲンに変換する酵素で、閉経後の女性の体内ではこの働きによって微量のエストロゲンを作っています。ER陽性の乳がん細胞の周囲ではこのアロマターゼ濃度が増加することがわかっています(つまりがん細胞が自分で自分が増殖しやすい環境を作っているということ)。AIはこのアロマターゼの働きを阻害してエストロゲンの産生を抑制します。
一方、フルベストラントはタモキシフェンと同類の抗エストロゲン剤の1つですが、タモキシフェン(選択的エストロゲン受容体調整剤:SERM)と異なり例えば骨や子宮などに対するエストロゲン様作用を有していない、純粋な抗エストロゲン剤です。また、その作用はエストロゲンが受容体に結合するのを阻害するだけではなく、受容体そのものの数を減らすことによって発揮されます(このため、”選択的エストロゲン受容体ダウンレギュレーター:SERD”と言われています)。
この2剤は作用が異なっているために併用すると効果が増強するのではないかと期待されていました。今回、NEJM誌(2012年8月2日号)にRita S. Mehta氏らが発表した第3相無作為化臨床試験の解析によると、ER陽性転移性乳がん(無治療症例)に対する治療効果は、アナストロゾール単剤の群(1群)に比べるとフルベストラントを併用した群(2群)の方が有意に無増悪生存期間(中央値 1群13.5ヵ月、2群15.0ヵ月)と全生存期間(中央値 1群41.3ヵ月、2群47.7ヵ月)が優れていたという結果だったそうです。全生存期間は1群でクロスオーバー(増悪後にフルベストラントを使用すること)を許されていたにもかかわらず有意差が見られたというのは少し驚きです。
この結果を踏まえて、いつから併用が可能になるのかはまだわかりません。また、他のAI剤(エキセメスタン、レトロゾール)との併用は許可されるのかどうかも不明です。高価な薬剤ですので併用する場合は治療費がネックになりますが、アナストロゾールは近々ジェネリックが発売されると思いますので多少は負担が軽減されると思います。
問題点としては、例えば術後にAI剤が使用されていた場合にも同様の上乗せ効果があるのか(この場合はむしろフルベストラントに対するAIの上乗せ効果)が不明な点です。今回の検討は初診時に遠隔転移を伴っていた4期乳がん患者さんが対象のようですので、術後ホルモン療法を受けていた再発患者さんに対する効果については別の臨床試験で検討しなければならないと思います。
2012年8月13日月曜日
肥満と乳がん術後の二次がん
乳がん発がんに関する肥満のリスクについては以前からいくつかのエビデンスもあり、広く認識されています。今回、フランスのDruesne-Pecollo N氏らがBreast Cancer Research and Treatment誌オンライン版に掲載した報告は、乳がん術後の他臓器の原発がん(乳がんの再発ではなくまったく別のがん)の発生率と肥満との関連について解析したもので非常に興味深いと思いましたので概要をご紹介します。
目的:乳がん患者における二次原発がん発生率とBMI(Body Mass Index)との関連の解析
方法:PubMedとEMBASEで検索を行ってヒットした2012年5月までの報告(前向き研究13報、コホート研究5報、ケースコントロール研究8報)の系統的レビューとメタ解析を行った。
結果:肥満により二次原発がんのリスクは有意に増加することが認められた。
*肥満による二次原発がん発生の相対リスク(RR)→対側乳房1.37、(同側)乳房1.40、子宮内膜1.96、大腸1.89
*用量反応メタ解析では、BMIが5kg/m2増加することにより、対側乳がんのRRは1.12、(同側)乳がんのRRは1.14、子宮内膜のRRは1.46と、それぞれ有意に二次原発がんのリスクが増加していた。
結語:今後、体重過多の乳がん患者において、正常体重への減量による二次原発がん発生率への効果を評価するための臨床試験が必要である。
これが乳がん術後の患者さんに特有の結果なのか、そもそも子宮内膜がんや大腸がんが肥満の人に多いことが関与していただけなのかはこの報告からはわかりません。しかし、少なくとも乳がんの手術を受けた患者さんにとっては、温存術後の同側乳房内異時多発がんや対側乳がんの発生は誰しも避けたいところですし、乳がんだけでも十分苦しみを味わっているのに他の臓器のがんの治療は受けたくないはずです。
もちろん肥満予防や肥満の治療を受けるだけで全てを避けられるわけではありませんが、少しでも発生率を下げられる可能性があるのでしたら、健康のためにも肥満の対策は考えておいた方が良さそうですね。肥満を避けることは、ある特定の食品を過剰に摂取したり、逆に一部の食品をまったく摂取しなかったりというのとは異なり、想定される有害事象はほとんどないと思いますので安心してチャレンジできるのではないでしょうか。
目的:乳がん患者における二次原発がん発生率とBMI(Body Mass Index)との関連の解析
方法:PubMedとEMBASEで検索を行ってヒットした2012年5月までの報告(前向き研究13報、コホート研究5報、ケースコントロール研究8報)の系統的レビューとメタ解析を行った。
結果:肥満により二次原発がんのリスクは有意に増加することが認められた。
*肥満による二次原発がん発生の相対リスク(RR)→対側乳房1.37、(同側)乳房1.40、子宮内膜1.96、大腸1.89
*用量反応メタ解析では、BMIが5kg/m2増加することにより、対側乳がんのRRは1.12、(同側)乳がんのRRは1.14、子宮内膜のRRは1.46と、それぞれ有意に二次原発がんのリスクが増加していた。
結語:今後、体重過多の乳がん患者において、正常体重への減量による二次原発がん発生率への効果を評価するための臨床試験が必要である。
これが乳がん術後の患者さんに特有の結果なのか、そもそも子宮内膜がんや大腸がんが肥満の人に多いことが関与していただけなのかはこの報告からはわかりません。しかし、少なくとも乳がんの手術を受けた患者さんにとっては、温存術後の同側乳房内異時多発がんや対側乳がんの発生は誰しも避けたいところですし、乳がんだけでも十分苦しみを味わっているのに他の臓器のがんの治療は受けたくないはずです。
もちろん肥満予防や肥満の治療を受けるだけで全てを避けられるわけではありませんが、少しでも発生率を下げられる可能性があるのでしたら、健康のためにも肥満の対策は考えておいた方が良さそうですね。肥満を避けることは、ある特定の食品を過剰に摂取したり、逆に一部の食品をまったく摂取しなかったりというのとは異なり、想定される有害事象はほとんどないと思いますので安心してチャレンジできるのではないでしょうか。
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