「抗がん剤に保険適用拡大 臨床研究も促す 」という見出しの記事が日本経済新聞に掲載されました。
これは誤解されやすい書き方ですが、「保険外適応の薬剤」に保険が適応されるようになるわけではありません。 今までは例えばシスプラチンやカルボプラチンという薬剤をトリプルネガティブの再発乳がんの治療に用いようとした場合、本来保険が利くはずの入院費や他の薬剤費などの全てが保険外となっていた(つまり全額自己負担)のを保険外適応の薬剤のみ自由診療(全額自己負担)としてその他の費用は保険でまかなえるようにするということです。これはつまり「混合診療」を認めるということです。
混合診療に関しては様々な意見がありますのでWikipedia(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B7%B7%E5%90%88%E8%A8%BA%E7%99%82)をご参照下さい。
実際の診療で「混合診療が認められていたらこの治療ができるのに…」と感じることはないわけではありません。しかし個人的には…やはり反対です。いろいろな理由がありますが、混合診療を許すと必ずそれをいいことにエビデンスはもちろん有効性と安全性を完全に無視して金儲けに走る医師が出てくること、これをきっかけに今まで保険で認可されてきたような薬剤が認可されにくくなる可能性があること、治療を受ける患者さんの経済状況によって医療格差が生じてしまうこと、などがあるからです。
穿った考え方かもしれませんが、本来は混合診療を押し進めるよりエビデンスに基づいてすみやかな保険適応拡大を進めるべきなのに、あたかも患者さんのためであるかのような心地良い言葉を並べて世論を誘導し、医療費削減と経済界活性化のために患者さんの安全性を犠牲にして格差を増大させようとしているような気がしてならないのです。
この問題について詳細に書いているサイトを見つけました。ここに書いていることは私が感じていることに近いと思いますが、全て正しいと押し付けるつもりはありませんし、表現に多少疑問を感じる部分もあります。あくまでも参考までに掲載します。 「患者本位の混合診療を考える会」(http://kongoshinryo.jpn.org/static/) なお、私の考えとは少し違う考え方もあります。 少し古いですが「NPO法人 がんと共に生きる会」のHPにはこのような見解が掲載されています。 http://www.cancer-jp.com/report/data/archive/545.html
どちらが正しいとはなかなか言えない部分もありますし、この内容に共感できる部分もあります。またその患者さんの状況によっても受け取り方は違うのかもしれません。 厚生労働省は来年4月にもこの抗がん剤に対する混合診療を認める方針のようです。一見良いことのように見える今回の改正には、いずれにしても冷静な国民の監視の目が必要です。
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