2012年12月21日金曜日

乳癌の治療最新情報34 低用量エストロゲン療法

3年ほど前に「乳癌の治療最新情報6 ”エストロゲン”療法」(http://hidechin-breastlifecare.blogspot.jp/2009/09/blog-post.html)の中でも書きましたが、内分泌療法(抗エストロゲン剤、アロマターゼ阻害剤)に抵抗性になった患者さんに少量のエストロゲンを投与すると腫瘍が縮小することがあることは以前から報告されていました。前回の報告は米国からのものでしたが、今回の報告は日本での臨床試験(フェーズ2)の中間報告です(第50回日本癌治療学会学術集会)。

概要は以下の通りです。

対象: 2010年10月から2012年2月までに登録したER陽性・HER2陰性で、内分泌療法(化学療法も含む)に無効となった閉経後乳がん患者15人。

方法: エチニルエストラジオール(EE2)を1日に3mgもしくは6mg投与(3mg投与3例中2例で効果が見られたため途中からは3mgの単独アームに変更)。主要評価項目は臨床的有効率(CBR)で、副次評価項目は有害事象、奏効率(ORR)、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)など。

結果: 観察期間中央値 8.5カ月、年齢の中央値は63才(58-83才)。3例は内分泌関連症状のために早期中止。
4週間以上のEE2投与が可能だったのは12例で、PR(部分奏効) 53.3%、SD(不変) 20.0%、PD(増悪) 6.7%だった。治療開始4週間後には、血清エストラジオール濃度が上昇したほか、卵胞刺激ホルモン(FSH)濃度の低下が確認された。PRと、SDまたはPDにおけるホルモン環境に大きな違いは見られなかった。4週間以上投与できた患者12例中11例において、乳頭・乳輪の色素沈着、子宮内膜肥厚が確認された。グレード3以上の有害事象はなく、グレード2の悪心・嘔吐、膣分泌・出血が見られた。


通常、エストロゲンはER陽性乳がん細胞の増殖を促すため女性ホルモン剤の投与は禁忌とされています。今のところなぜ低用量エストロゲン療法がこのような患者さんたちに有効なのか、その作用機序は明らかになっていません。一定期間のエストロゲン枯渇療法後では腫瘍の遺伝子発現プロファイルが変化し、エストロゲンに対する反応が変化している可能性などが推測されているようです。

今後さらに症例を蓄積して低用量エストロゲン療法が有効な治療法であることが証明されると良いですね!

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