2013年3月13日水曜日

Mucocele-like tumorと乳がん

以前もここで書きましたが(http://hidechin-breastlifecare.blogspot.jp/2010/11/mucocele-like-tumormlt.html)、粘液を貯留した腫瘤であるMucocele-like tumor(MLT)は、基本的に良性なのですが、時に乳がん(非浸潤がんや粘液がん)を合併することがあると言われています。

私たちの病院でも何例か切除したことはありましたし、経過観察している方もいらっしゃいますが、今まではがんの合併を証明された方はいらっしゃいませんでした。ですから「MLTはがんの合併があるので細胞診で粘液が引けた場合は切除したほうが良い」と言われていても少し懐疑的な印象を持っていました。

しかしついに私たちの施設でもMLTという術前診断で切除した結果、がんの合併があった患者さんを経験しました。もともと検診施設で区域性の微細石灰化(典型的な壊死型の石灰化に比べると角が丸い多形性)ということで紹介を受けた患者さんだったのですが、診断にかなり頭を悩ませた結果、最終的には乳腺部分切除を行なってようやく乳がんという診断に至りました。

最近も同様の所見の患者さんがいらっしゃったので、これから手術を検討するところです。術前にがんの診断がついていない状況での手術は少しストレスですし(切除範囲の設定は難しいのです)、患者さんに理解していただくようにご説明するのも大変ですが、今回のようながんの合併症例を経験すると患者さんにも説得しやすくなるのではないかと自分では思っています。

2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

はじめまして。先生にお伺いしたいのですが2月に乳がんの集団検診を受けました。結果はエコーは異常なし、マンモグラフィーは局所的非対称陰影10mm、カテゴリー3(2箇所)という事で、今日病院へ行ったのですがエコーの検査しかしませんでした。しこりはみつかりませんでした。マンモグラフィーの再検査はしなくていいのか聞くと被爆の心配があるという事、エコーでしこりがなければ大丈夫との事でした。何となく不安です。エコーが異常なしでマンモグラフィーが異常ありというのは矛盾しているのだそうです。この辺よくわからないので教えてください。それとマンモグラフィーは近々受けた方がいいですか?よろしくお願いいたします。

hidechin さんのコメント...

>匿名さん
検診マンモグラフィはスクリーニング検査です。簡単に言うと疑わしい所見があれば引っ掛けるということです。ですからマンモグラフィで要精検になって精密検査(まず最初に行なうのは通常エコー検査です)で異常なしというのはよくあるケースです。要精検となった方のうちで実際に乳がんと診断されるのは頻度的には少ないのです。

匿名さんの場合、局所性非対称性陰影(FAD)で要精検となったわけですので、もしがんがあるとしたら腫瘤を形成するタイプの乳がんの可能性が高いと考えられます。腫瘤の描出能はマンモグラフィよりもエコーが優れていますので、エコーで腫瘤がなければ問題ないと判断するのが普通です(もちろんエコー技師の力量にもよりますが…)。なおマンモグラフィをもう一度撮影して得られる情報、メリットは少ないと思います(検診が1方向のみなら頭尾方向の撮影を追加しますが)。

「エコーが異常なしでマンモグラフィーが異常ありというのは矛盾しているのだそうです。この辺よくわからないので教えてください。」
→この文章の意味は今ひとつわからないのですが…。上に書いたようにマンモグラフィでFADを指摘され、エコーで異常なしというのはよくあるケースです。この場合、FADの原因は乳腺の重なりと判断するのが普通です。ですから矛盾はしていません。
以上です。