2013年5月11日土曜日

乳がん検診実施医療機関以外で精検を受ける場合の注意点

検診で精査が必要と判定された場合、その施設によって通知方法は様々です。対がん協会からのご紹介の場合は、検診の判定用紙、精検医療機関宛の紹介状、精検結果報告用紙そして返却不要のマンモグラフィフィルムを持参して来院されます。こういう場合は非常に対応がしやすいです。

最近増えてきたビル内にあるような検診専門のクリニックでの乳がん検診の場合は、所見には比較的細かく書いている場合もありますが(「カテゴリー3:右UにFAD」 など)、フィルムは持参されない場合がほとんどです。

しかし、乳腺外科のある一般病院での検診の場合は、要精検と判定された場合は自施設に来院することを前提と考えているためか要精検の通知内容が不十分で、マンモグラフィフィルムも持参されないケースが多いようです。

先日、市内の病院で乳がん検診(企業検診)を受けて要精検となった方が精査を希望されて私の外来に受診されたのはまさにこのケースでした。検診結果には「右カテゴリー3」のみしか書かれていません。所見の部位も内容(石灰化なのか腫瘤なのかFADなのか構築の乱れの疑いなのか)もまったく記載がありませんでした。もちろんフィルムの持参はありませんでした。

こういう場合は非常に困ります。通常、マンモgフラフィ検診で要精検になった場合はまずは超音波検査を行ないますが、微妙な病変の場合(淡い石灰化の集簇や構築の乱れなど)部位も所見内容もわからない状況で観察するのは技師にとってはかなりのストレスであり、見逃しの可能性も出てきます。

以上について受診者にお話しし、やむを得ず以下の選択を提示しました。

①当院ではなく検診を受けた医療機関に戻って精査を行なう
②検診医療機関に連絡をしてフィルムを送ってもらってから(もしくは取りに行ってもらってから)再度受診して当院で検査を行なう
③当院でマンモグラフィをもう一度取り直して再度判断する
④とりあえず超音波検査を行ない、同時に検診機関にフィルムの借用を依頼し、後日超音波検査結果と整合性をこちらで判断し、場合によってはもう一度来院してもらって追加検査を行なう

①は何かあった場合の通院の利便性から患者さんは希望しませんでした(検診は企業の指定があったためその施設で受けたようです)。③については本来不必要な被爆と費用が生じてしまうため、私はお勧めしないとお話ししました。②か④かというところでしたが、忙しい方のようでしたので、今回は④を希望され超音波検査を受けてお帰りになりました。同日その検診機関にマンモグラフィフィルム借用の依頼状を送り、後日再検討の予定です。

他の医療機関では③を選択している所が多いようです。しかし上に述べた理由で私はあまり望ましいとは思いません。本来、検診機関できちんとフィルムをご本人にお渡しするべきなのですが、なかなか実際にはそのシステムがうまくいっていないように思います。

検診はやりっ放しではやはりまずいですね。結果通知はもう少し受診者がわかりやすいような工夫が必要だと思います。要精検結果の通知の用紙に、「他施設に受診する際はフィルムをお渡ししますのでご連絡願います」と記載するだけでも良いのではないかと思います。また、検診受診者も検診施設以外の医療機関で精査を受ける場合、フィルムの持参がなければもう一度同じマンモグラフィ(本来受ける必要のない)を受けなければならないかもしれないことを知っておく必要があります。検診施設に問い合わせればなんらかの形でフィルムを渡してくれるはずですので無用な被爆と出費を避けるようにした方が良いと私は思います。

4 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

投稿とは別の内容になり、申し訳ありません。
決断までにあまり時間が無い中、ネットで色々と調べていたら、先生のブログを見つけてご相談させて頂ければと思っています。
失礼を承知でこの欄を使わせて頂いております。本当に申し訳ありませんm(__)m

私(honoka)は、40歳・女性・乳がん患者です。
抗がん剤治療をするかしないか悩んでいます。

左ECD領域7mm大の乳癌:IDC 4/10左乳房温存術・センチネルリン節生検を受け、5/10に病理診断の結果を聞きました。

以下、結果内容です。

診断:Breast cancer , invasive ductal carcinoma, papillotubular carcinama Invasivecarcinoma of not special type: left breast: Bp+SN

所見:腫瘍径1.0×1.0cm 浸潤部径1.0×0.5cm 波及度 f 、ly0、 v0、 EIC(-)
充実性~篩状構造をとって増生する異型上皮よりなる腫瘍。浸潤巣に隣接して、乳管内病変を認める。切除断端は陰性。

Microscopic grading Tubular formation 2 Nuclear pleomorphism 2 Mitotic counting 1
Grade Ⅰ

免疫組織化学
ER(+) 70-80%
PgR(+) 70-80%
HER2 score : 0
MIB-1 index: 21.3%

SN周囲組織 No evidence of malignancy

センチネルリンパ節に転移の所見なし。 SN-1(0/3分割),SN-2(0/2分割)


主治医は、抗がん剤をするかしないか迷うところだが、するなら TC×4回 ・ 抗がん剤をする・しないの再発率の差は2~3%だと言われました。

家族や周囲の人は、再発率の差がその程度なら、辛い思いまでして抗がん剤治療を受けなくても良いのでは?という意見が多数です。
私もそう思う半面、決断しかねています。引っ掛かるのはMIB-1の数値です。
5/17の受診の際に返事をしなければなりません。
ご意見を頂ければ幸いです。
よろしくお願い致します。

hidechin さんのコメント...

>匿名さん(honokaさん)
はじめまして。
微妙なケースですね。迷う所ではありますが、Ki-67以外の所見は化学療法を上乗せする効果は乏しいことを示唆しています。施設によってはKi-67(MIB-1)は調べずに核異型度(grade)で代用している施設もあり(最近は少なくなったと思いますが…)、その場合はLuminal Aという判断になるのでホルモン療法のみで良いことになります。また、Ki-67は検査機関によって(施設によって)のばらつきが多いとも言われています。そう考えるとホルモン療法のみでも良いように思いますが、ご心配ならタモキシフェンに月経を止めるゾラデックスやリュープリンを併用するのも一つの方法です。また、お金と時間はかかりますが、Oncotype Dxという検査を依頼して判断するという方法もあります。
主治医の先生とよくご相談の上で判断してみて下さい。どちらを選んでも間違いではないと思いますよ。
それではお大事に!

匿名 さんのコメント...

コメントが遅れて申し訳ありません。
honokaです。

先生の投稿内容とは関係の無い私事の相談なのに、丁寧な回答をして頂いて感謝しています。

17日、病院受診しました。
抗がん剤はしないと伝え、女性の主治医も「うん、それで良いですよ。私も多分大丈夫だと思います。」と仰いました。
早速その日からホルモン治療が始まりました。
薬剤名は覚えていないのですが、腹部へ皮下注射をして、毎朝1回1錠服用のノルバデックス20㎎を処方されました。翌朝より服用しています。
採血もしました。
注射名、次回2週間後の受診の際はしっかり確認しておこうと思います。

その2週間後には放射線治療の事前説明があり、日程が決まります。

オンコタイプDXのことは最近知り、色々と私なりに調べていましたが、費用が高額なことと、更に迷う結果が出ることもあるようなので断念しました。

実は左胸の乳がんの他に、左耳の耳下腺腫瘍(多形線腫)と左耳上部に約5×4cmの円形脱毛症もあります。

それぞれの治療や内服薬との兼ね合いも気掛かりで、それぞれの主治医には事情をお話ししています。

心配事は尽きませんが、嘆いても仕方がないので、家族のためにも日々の生活を大事にしながら治療を受けていこうと思っています。

ご縁あって、先生のブログを知ることが出来ました。
今後の私にとって興味深い内容や参考になるものがたくさん載っています。
今後もしっかり拝見させて頂き、コメントも寄せたいと思っています。







hidechin さんのコメント...

>匿名さん(honokaさん)
そうですか。皮下注射はゾラデックスかリュープリンですね。その治療で良いと私も思いますよ。
いろいろご心配なことがあるようですが、これからの治療が順調にいくことをお祈りしています(私も2回円形脱毛症になりましたがストレスがなくなったらすっかり元通りになりましたよ 笑)。
それではお大事に!