2013年8月14日水曜日

人工物留置者の検診マンモグラフィについて

胸部に人工物が留置してある場合にはマンモグラフィを避けた方が良いことがあります。何も言わずに検査を受けるとトラブルが生じる原因となる場合がありますので以下のような場合は注意が必要です。

①心臓ペースメーカー装着者

前胸部に留置したペースメーカーと心臓の間は細い金属のリード線でつながっており、このリード線を介して心臓を動かすための電気信号を伝えています。マンモグラフィを撮影する際のように強く乳房を圧迫すると、このリード線が断裂してしまうなどのトラブルが生じる可能性があります。
有症状の受診者の場合は、十分な説明を行なった上で同意を得てから慎重に撮影することがありますが、一般の検診においては撮影に十分な配慮ができない場合もあるために、平成18年に出されたマンモグラフィ検診精度管理中央委員会の見解ではペースメーカー装着者に対してはマンモグラフィ検診を行なわない方が良いとされています(代わりに超音波検査を推奨)(http://www.mammography.jp/mammo/oshirase17.html)。

②豊胸術後

精中委の見解ではインプラントの破損の可能性、インプラントのせいで病変が十分に写らない可能性があることなどを考慮して、原則的には検診マンモグラフィはお勧めできないとされています(http://www.mammography.jp/mammo/oshirase16.html)。もしどうしてもマンモグラフィ検診を受けたい場合や精査でマンモグラフィが必要な場合は、これらのトラブルなどの可能性を十分にご説明の上で同意が得られた場合にのみ行なうべきです。

③CVポート留置者、脳室・腹腔(V-P)シャントカテーテル留置者

精中委としての見解は確認できませんでしたが、私が調べた限りにおいては、宮城県対がん協会を始めとした多くの施設において破損の可能性があるために両者ともにマンモグラフィ検診の対象外とされているようです。私の施設ではCVポートを留置してマンモグラフィを受ける患者さんのほとんどが乳がん術後の患者さんです。マンモグラフィの必要性は一般の検診受診者に比べると高いですので、技師に十分注意してもらいながら可能な範囲内で撮影してもらっています(この場合は検診ではなく診療マンモグラフィです)。乳がん術後以外でCVポートを留置している方が乳がん検診を受けるケースはまれですが、もしそういう方でマンモグラフィを受けたいと思われる方は乳腺外科医に確認した上で検査を受けることをお勧めします。

6 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

両側の非浸潤がんで、7月下旬に両側の乳頭温存皮下全摘+再建術を受けた者です。
2月に要再検査となってから、先生のブログを拝見してきました。
術後、色々な自覚症状がある中で一つ疑問なことは、冷たい物を飲むと食道を流れる感じがわかるのです。
これはなぜでしょう?

hidechin さんのコメント...

>匿名さん
はじめまして。
すみません。ご質問に対する適切な答えは思い浮かびません。というか、私も冷たいものを飲むと食道を通る感じがわかりますが、それとは違うのでしょうか?私自身はなにも困ってはいないのですが、匿名さんはその症状でなにか問題があるのでしょうか?
いずれにしてももし疑問でしたら手術をしたDrにお聞きになるのが一番だと思います。

匿名 さんのコメント...

ご回答いただき、ありがとうございました。
言葉足らずで申し訳ありません。
冷たい物を飲んで冷やっとする通常の感じとは異なり、例えば熱い物でも今まで以上に胸の辺りに広がるような違和感があったり、衣服がチクチクと感じたり、ザワザワとした焦燥感のような物を感じたり、感覚が術前より非常に過敏になったようなのです。
手術によってそのようなことが起こることがあるのかを伺いたく、質問いたしました。

hidechin さんのコメント...

>匿名さん
再建はインプラントですよね?手術操作が及んだ範囲は胸部だけに限られていると思います。頸部も含めて食道周囲には手を付けていないはずです。ですから胸部周囲の違和感(知覚過敏)は起こりうるとは思いますが、なぜ術後にそのような食道に関する症状が出たのかについては前回お答えしたように私には回答が思い浮かびません。
むしろ逆流性食道炎などの別の疾患があるのではないですか?一度胃カメラを受けてみるとよいのではないかと思いますが…。最終的には主治医のDrにもう一度手術との関連をご確認の上でご判断願います。

匿名 さんのコメント...

丁寧にご回答いただき、ありがとうございました。
胸部周囲の知覚過敏は起こり得ると伺い、今自分にある症状も特異ではないと少し安心しました。
食道に感じる違和感については、主治医に伺ってみます。

私は毎年任意でマンモ+エコーで乳がん検診を受けてきました。
今回の件は、しこり等の自覚症状も家族歴もない中での指摘で、「なぜ自分が」と受け入れるのに大変でした。
精密検査を進めていくごとに不安で精神的に滅入り、本末転倒ではありますが、検診を受けなければ良かったと思うこともありました。

しかし、先生のブログを拝見していて、こんなに乳がんに対して研究を深め、予防や患者のために一生懸命になっている先生がいるのだと知り、自分の病気に対する気持ちが少しずつ変わってきたのです。

長くなり申し訳ありません。
顔の見えない言葉足らずの患者の質問に、真摯にお答えいただいたこと、心から感謝しています。
ありがとうございました。

hidechin さんのコメント...

>匿名さん
お話をお聞きした印象では、さまざまな不安や精神的に不安定な状況が、いまの多彩な身体症状の少なくとも悪化の原因の一つになっているような気がします。
もしまだ精神的に滅入っている状況があるのでしたら一度メンタルクリニックなどでご相談してみることをお勧めします。
私の患者さんの中にも同じような方は何人もいらっしゃいますよ。時間が解決してくれる部分も多いですが、辛いときは専門家に診てもらうことを私はお勧めしています。
早く良くなるといいですね。それではお大事に!