2015年6月23日火曜日

第12回 With You Hokkaido ”知ってほしい、乳がん診療の最前線”

今年の夏もWith You Hokkaidoが開催されます。今回で12回目を迎えるこのイベントですが、昨日ようやくチラシが病院に届きました。概要は以下の通りです。



日時:平成27年8月29日(土) 12:30-16:15(会場 12:00)

場所:札幌医科大学 臨床研究棟1階大講堂

参加費:1000円

プログラム:

1.参加者グループワーク
<テーマ>
・手術後の不安・治療 ・再発後の不安・治療 ・リンパ浮腫 ・補完・代替医療 ・ご家族のケア
・緩和ケア ・遺伝性乳がん ・乳房再建

今年も最初にグループワークを行ないます。参加者の積極的な発言を期待します。

2.開会の辞

3.特別講演
①「治療早期より始める乳がんの緩和治療」 町野貴幸先生(東札幌病院 内科・緩和ケア科)
②「遺伝性乳がんについて」 櫻井晃洋先生(札幌医科大学 遺伝医学)

いずれもホットな話題です。けっこう誤解されていらっしゃる場合も多いですので、この機会に一緒に学びましょう。

4.パネルディスカッション
「がんの緩和治療、遺伝性乳がん」

昨年、北海道で初めて取り入れた内容ですが、とても好評だったということで今年も行なうことになりました。特別講演で学んだ内容を踏まえて、北海道の医療現場の現状などを討論したいと思っています。

5.道内乳がん患者会の活動状況について

6.各地のWith You報告

7.閉会の辞

申し込み方法:各病院の外来に置いてあるチラシのハガキを郵送、または下記事務局にお問い合わせ下さい。申し込み締め切りは、8/21(消印有効)です。

事務局:東札幌病院内 With You Hokkaido事務局
 TEL: 011-812-2311(代表)
 FAX:011-823-9552
(受付時間 月曜ー金曜 9:00-17:00)

2015年6月13日土曜日

札幌乳癌カンファレンス 2015

今年で5回目を迎える札幌乳癌カンファレンスが昨日、よさこいソーラン初日でにぎやかな大通の某ホテルで開催されました。

毎年G病院病理部のA先生をお招きして行なわれるこの会は、乳腺病理の面白さと難しさを学ぶことができます。

今回は、まずA先生から、”筋上皮細胞の迷信”というご講演がありました。とても難しい内容ですので詳細は割愛しますが、良性の根拠になると信じられている所見(筋上皮細胞の存在)は必ずしも非浸潤がんの場合は当てはまらないことがあること(浸潤がんであれば筋上皮細胞は消失しているけれど乳管内の留まっている場合は残っていてもおかしくない)、非浸潤がんを今後もがんと扱うかどうかというとても難しいお話(他の臓器のがんではどうなっているか、新しいWHO分類についてなど)、最近話題になっている乳がん検診における過剰診断(良性をがんと診断しているわけではないので、この表現は誤解を招くとA先生はおっしゃっていました)のお話など、とても興味深い内容でした。

その後、症例検討を3例(1例はG先生が提示)行ない、A先生の解説(いつも短時間で相当細かく診断なさる姿に驚嘆します)を交えてディスカッションを行ないました。A先生のとても興味深いご講演で若干時間をオーバーしたこともあり、症例検討は駆け足になりましたが、いずれも興味深い症例でした(葉状腫瘍切除後の局所に線維腺腫の再発を繰り返す症例、命中しているはずの細胞診と針生検の結果が合致しない症例、前医でがんと診断されたけれど細胞の見直しで鑑別困難に変更になり、結果的に良性だった症例)。

終了後には、A先生を囲んで懇親会が行われ、楽しい時間を過ごしました。
来年もまたこの会が開催されることを願っています。AZ社の皆さん、よろしくお願いいたします!

2015年6月11日木曜日

救急隊に感じたこと

私は週1回、関連病院の外来に行っています。いつもカルテチェックなどがあるので7:40くらいには着くようにしているのですが、先日出勤した時に駐車場から病院に向かって横断歩道を渡ると、病院と反対側の角の歩道で人が倒れて3人の女性が声をかけているのが目に入りました、

倒れていたのは70-80代くらいの男性でした。車も近くに止まっていたのではねられたのかと思ったのですが、どうやら倒れているのを偶然発見したようです。声かけには最初反応がありませんでしたが、間もなく返答できるようになり、ご本人のお話では、歩いていて転んだということでした。顔に擦過傷がありましたが、明らかな麻痺はありませんでした。ただ、名前の問いかけにも反応は鈍く、ただ単に転んだわけではなさそうでした。雨が降っていましたので身体が冷えるのも気になりましたが、とりあえず、傘で雨を凌ぎながら、救急車を呼びました。その後の問いかけで、名前をお聞きでき、整骨院に向かう途中だったということがわかりました。

ただ、身分を証明するものが整骨院の診察券しかなく、ご家族への連絡はできませんでした。数分後、救急車が到着しました。救急隊は、その老人を担架に乗せ、救急車に乗せようとしましたが、私が手伝おうとすると、”われわれでやりますから”と言い、そのまま搬送しようとしているような感じでした。私は、その間に聞き得た状況を急いで伝えて、連絡先は不明だけれど、整骨院に問い合わせたらわかるかもしれないということだけ説明しました。

まあ、私が医師だと名乗らなかったから機械的に業務をこなしたのかもしれませんが、せめて第一発見者や、その場に居合わせた人に状況を聞いてから搬送すべきではなかったのかなと感じました。もし私が何も言わずに搬送してしまったら、救急隊は搬送先の病院でなんと説明したのでしょう?

全国では救急隊の対応が問題になったケースはマスコミでも報道されています。たしかに忙しいのはよくわかります。しかし、せめてその場に居合わせた人からの情報収集くらいはすべきだと思います。札幌市の救急隊は優秀だと思っていましたが、ちょっと残念な出来事でした。

私たちの病院にも毎日何台もの救急車が来ます。そのうちの一部には、残念ながら救急車を呼ぶべきではない患者さんもいらっしゃいます。病院に到着した途端、歩いて病院に入る患者さん、この時間はバスがないからと救急車を呼ぶ患者さん…。そのような患者さんが多いと救急隊のストレスは増すことと思います。限りある救急車を本当に必要な患者さんのために使えるように市民も考える必要があります。

もちろん自分で判断できない場合もありますので、結果的に軽症であったからと言って、救急車を呼んだことに罪悪感を感じる必要はありませんし、迷った場合は119に電話することをためらう必要はありません。ただ、故意にタクシー変わりに救急車を使うのはやめてもらいたいものです。そのことで、救急隊員の緊張感が薄れてしまうと、本当に必要な判断ができなくなってしまう可能性があるからです。

2015年6月9日火曜日

社内学習会→研究会&Webセミナー連発→乳癌学会

最近やたらと研究会や講演会などが多いです。

先週の金曜日は、以前から頼まれていたKK社の社内学習会の講演(AZ社の研究会と重なったのでそちらは欠席しました)がありました。再発治療の話を中心に1時間ほど、私たち臨床医がどのようなことを考えながら再発患者さんの治療に取り組んでいるか、製薬会社にどのようなことを望んでいるか、などについてお話してきました。

今週金曜日はAZ社の研究会、来週は月曜日がAZ社のWebセミナー、金曜日がE社のWebセミナー、土曜日がDS社の研究会、そしてその翌週は乳癌学会総会です。ちょうど先日までASCO2014が行なわれていたこともあって、ネット上のWebセミナーも行なわれていました。

全部参加するのはきついので、仕事や会議の状況を見ながら参加しますが、今週金曜日の研究会はG病院のA先生が来られる定例の会なので参加する予定です。また、来週土曜日の研究会もG先生が症例を提示するので参加予定です。

乳癌学会も近くなってきました。Posterはすでに登録してありますので心配ないのですが、発表に備えた最後の詰めがなかなか進みません。今回も乳癌学会は前半のみの参加になりますし(G先生と交代で参加)、東京なので今ひとつわくわく感もありません。乳癌学会ももう少し地方で行なえると良いのですが、だんだん規模が大きくなってきたために、宿泊施設や会場の手配などでどうしても大都市になってしまうようです。金沢や倉敷みたいな場所でまた開催できると良いのですが…。

今回の私の発表は、発熱性好中球減少症に関するものです。昨年末にジーラスタ®が発売になってからは発熱性好中球減少症は非常に少なくなりました。患者さんにとってはもちろんですが、私たちとしても夜間・休日の救急外来受診や臨時入院がほとんどなくなって管理が非常に楽になりました。今回は、そのデータも含めて報告する予定です。

7/19にはピンクリボン in SAPPORO、8/29はWith You Hokkaidoがあります。秋には乳癌学会地方会の教育セミナー、KK社の研究会のパネリスト、KT病院のK先生に頼まれたチーム医療の講演など、慣れない緊張する仕事が控えていますので、その準備にも取りかからなければなりません。そんなこんなで、なかなかブログの更新ができません(泣)。

2015年5月31日日曜日

”第1回 東区乳腺疾患セミナー”

先日の金曜日に私たちの病院会議室において、乳腺センターとC社共催による第1回の”東区乳腺疾患セミナー”が開催されました。

この会は、定例で毎月行なっている、乳腺術後症例検討会の特別バージョンとして、以前から企画していたものです。今回は特別講演の演者として、元G病院で乳腺細胞診の第1人者としてご活躍され、現在もさまざまな学会や研究会などでご多忙な毎日をすごされていらっしゃるI先生をお招きしました。

I先生は、私やG先生がG病院で研修したときに大変お世話になった先生です。いつも緊急で細胞診をした患者さんの検体を夕方に持っていっても嫌な顔一つ見せずにすぐに染色をして診て下さったり、毎週夜に細胞診の勉強会(数枚のプレパラートを用意していただいて、研修医が見て診断するテストなど)を開いて下さいました。I先生はとても熱心に教えて下さるので、終わるのが夜の10時過ぎになることもよくありました。乳腺外科医としての細胞診検体の作り方や依頼書の書き方などについても御指導いただき、その教えは札幌に戻ってもずっと忘れずに守っています。

今回の講演会には、私たちと同じようにI先生にお世話になったことのある市内の先生方や技師さんたちに広く声をおかけしましたので、88人もの方に集まっていただくことができ、大盛況でした。I先生のお話も、乳腺細胞診の基礎から誤診を防ぐためのコツなど今後の日常診療に役立つお話をして下さり、期待通りの内容でした。私たちの施設の病理医や細胞診断士もこのご講演内容はもちろん、講演前に病理検査室で行なわれた症例カンファレンスでI先生のアドバイスをいただいて、とても勉強になったことと思います。

I先生のご講演後に、いつもの術後検討の症例も用意していたのですが、予想通りフロアから何人も質問があったために時間がなくなり次回に先送りになりました。しかしそれだけ価値のあるご講演だったと思います。

司会をしていた私だけがダメダメで申し訳なかったのですが、大変盛り上がった講演会で良かったです。講演会終了後には、私たちの施設の乳腺外科医、病理医、細胞診断士、超音波技師、釧路の関連病院の検査技師、そしてI先生の10人ですすきのに移動して懇親会を行いました。始まったのが21時過ぎでしたのであまり時間はありませんでしたが、とても楽しい時間を過ごすことができました。

今回は講演会ということで来ていただきましたが、今度はゆっくり時間をかけて病理医と細胞診断士に細胞診断の指導をしていただければと思っています。

2015年5月18日月曜日

7/19はさっぽろホコテンでピンクリボンロード!

先週の水曜日にピンリリボン in SAPPOROの理事会が某ホテルの和食処で行なわれました。

昨年度の会計報告と今年度の活動予定などを話し合ったのですが、今年度もさまざまな活動を行うことになりそうです。田中賢介選手も日本ハムファイターズに戻ってきてくれましたので、またアウトの数に応じて無料乳がん検診をプレゼントという企画が復活します。まだ受け付けていますので、最近乳がん検診を受けていないという40才以上の方はこの機会に応募してみて下さい(ピンクリボン in SAPPOROのHP http://pinkribbonsapporo.web.fc2.com/の中にある”田中賢介 ピンクリボンプロジェクト”のバナーをクリックして下さい)。なお、このプロジェクトには年齢制限はありませんが、マンモグラフィ検診の有効性のエビデンスがあるのは40才以上ですので、40才未満の方は有効性(家族歴があるなど)と不利益(被曝、痛みなど)をよくご検討した上でご応募願います。



そして今年もまた夏(例年より早い7/19です)に大通のさっぽろホコテン(中央区南1西3)で”ピンクリボンロード”が行なわれます。詳細は上記のHPに記載がありますが、今年も私たちの施設でブースを出す予定です。きっとまたG先生が超音波検査の乳房モデルを作ってくれると思いますので、是非本物の超音波検査の器械を使ってしこりを探してみて下さい(写真は昨年のブースの様子です)。



ここのところ、乳癌学会や院内で開催される講演会、某製薬会社の社内学習会の準備などに追われてすっかりブログがご無沙汰になっていました。今日も超音波技師さんの学会発表の演題を探すためにパソコンの患者台帳を見すぎて眼痛がひどくなっていましたが、なんとか更新することができました(汗)。これからも無理せずマイペースで更新していきます。

2015年5月11日月曜日

夕食事の赤ワイン1杯で糖尿病患者の脂質・糖代謝が改善!

昔から少量の赤ワインは健康に良いとされてきましたが、今回夕食事の1杯の赤ワインが、糖尿病患者の脂質・糖代謝を改善するという研究結果が欧州肥満学会(ECO2015,5月6~9日,チェコ共和国・プラハ)で報告されました。

概要は以下の通りです。

臨床試験名:
CArdiovaSCulAr Diabetes & Ethanol(CASCADE)試験(ランダム化比較試験)

発表者:
イスラエル・Ben-Gurion University of the NegevのIris Shai氏ら

対象:
良好にコントロールされた飲酒習慣のない成人の糖尿病患者224例

方法:
対象者を①赤ワイン②白ワイン③ミネラルウオーターのいずれかを2年間,毎夕食時に150mL摂取する群にランダムに割り付けた。いずれの群も食事はカロリー制限なしの地中海食とし,栄養士によるグループセッションを試験開始後3カ月間は1カ月ごと,その後は3カ月ごとに実施。複数の食事評価ツールを用いて食事内容を評価し,ワインの摂取についても厳格にフォローした。ワインは同じ種類が無料提供された。

結果:
試験遵守率は1年後94%,2年後87%だった。
ミネラルウオーター群に比べ赤ワイン群ではHDL-コレステロール(HDL-C)およびアポリポ蛋白(apo)A1がわずかに上昇し,総コレステロール(TC)/HDL-C比,トリグリセライド/HDL-C比,apoB100/apoA1比が減少した(全てP<0.05)。また,赤・白ワイン群ではミネラルウオーター群に比べ糖代謝がわずかに改善し,特に赤ワインによる改善効果が大きかった。
さらに,赤・白ワインによる血糖コントロールのパラメータ改善効果は,アルコールの分解が早いことに関連する遺伝子変異を有する患者(ADH1B*2キャリア)に比べ,アルコールの分解が遅い患者(野生型ADH1B*1)で優れていた。
なお,ワインの摂取は薬物治療の内容や血圧および肝機能マーカーに影響しなかった。

結論:
・赤・白ワインはいずれもミネラルウオーターに比べてわずかに糖代謝を改善。また,赤ワインを摂取した患者では脂質プロファイルも有意に改善した。
・健康的な食事に加えて少量のワイン,特に赤ワインを摂取することは安全で心血管・代謝リスクを軽減できる。
・アルコールの分解能に関連する遺伝的素因の違いによってワインによる血糖コントロールのパラメータ改善効果に差が認められたという結果はアルコールが一定の役割を果たしていることを支持している。
・白ワインよりも赤ワインの方が心血管・代謝プロファイルの改善に優れていたことから,赤ワインに含まれるアルコール以外のなんらかの成分が寄与した可能性もある。


赤ワイン好きの私にはなんともうれしい報告です(笑)。ただ、グラス1杯以上(例えばボトル1本…)、毎日飲んだ場合にどのような結果をもたらすかは不明です(汗)。E先生、お互いに気をつけましょう(笑)

なお、アルコールの過量摂取は、乳がんの発症率を上げるとされていることも併せて記しておきます(どのくらい以上ならリスクになるのか、また乳がん患者の再発リスクも上げるのかについては不明な点もあります)。なにごとも控えめくらいが無難なんでしょうね!